家の中の地震対策【6】
今回は、建物自体の耐震補強の次に重要な、家具類の転倒・飛散防止についてです。
まず、阪神・淡路大震災のデータをご覧いただきましょう。犠牲者総数6434人のうち、約83%、約4590人が、自宅建物の倒壊等による原因で死亡しています。そしてそのうちの約10%、約460人が、家具類の転倒による原因で死亡しているのです。
意外に少ないとお感じになられた方もあるかもしれません。しかし、この数字は「明らかに家具の転倒が死因である」と識別されたケースだけの数字です。つまり、まず家具の転倒に巻き込まれ、脱出の機会を失った後に家が倒壊したり、火災によって死亡したようなケースは含まれていません。つまり家具が転倒・飛散しなければ助かったかもしれない人々が、何千人も存在した可能性があるのです。
さらに、死亡者数だけに注目すべきではありません。残念ながら管理人は正確なデータを持ち合わせていませんが、家具類の転倒や内容物の飛散によって負傷した人の数は、この何十倍にも及ぶはずなのです。大災害後の報道では、ある意味で「元気な」人々の様子が中心です。重傷を負って、負傷者が溢れる病院で苦しんだ人々、病院にも行けずに苦しんだ人々の現実は、倫理上のこともあってほとんど報道に乗りません。でも、メディアに乗らないからといって、忘れてはいけないのです。
東日本大震災においては、阪神・淡路大震災に比べて地震の揺れ自体が建物を破壊する力が小さく、家具の転倒も比較的少なかったはずです。しかし、犠牲者の中には、家具の転倒や建物の崩壊に巻き込まれ、脱出の機会を失ったまま津波に呑まれた人々が、確実に存在するはずです。そんなケースがどれだけあったかは、今となっては永遠の謎ではありますが。
とにかく、地震に対して最も大切なのは建物が倒壊しないこと。その次が、家具類が転倒・飛散しないこと。それが何より「生き残る」ための近道なのです。
「家具の固定」は、特に阪神・淡路大震災以降、かまびすしく言われるようになりました。そのための器具も、たくさん発売されています。既に十分な対策を取られている方も多いでしょう。でも、本当にそれで大丈夫ですか?これから対策をしようと思われている方、市販の対策器具を用意すれば、簡単にできるとお考えではありませんか?
管理人に言わせれば、この「家具の固定」こそ、机上の空論の宝庫なんですよ。
次回は、その実際をご覧いただきましょう。
■このシリーズは、カテゴリ【地震・津波対策】をクリックしていただくと、まとめてご覧いただけます。
« ありがとう!6000PV&おしらせ | トップページ | 家に備える防災グッズ【6】 »
「地震・津波対策」カテゴリの記事
- 【熊本・大分の皆様へ】『家の中の地震対策』リンク集(#1192)(2016.05.01)
- 最初の、しかし忘れがちな危険とは(#1157)(2016.03.16)
- ☆再掲載☆高層ビル編14【首都圏直下型地震を生き残れ!39/54】(2013.12.12)
- ☆再掲載☆高層ビル編12【首都圏直下型地震を生き残れ!38/54】(2013.12.06)
- ☆再掲載☆高層ビル編11【首都圏直下型地震を生き残れ!37/54】(2013.12.02)
コメント