マスコミもセンセイも暴走中
恐怖は、カネになります。
あの「4年以内70%」記事以来、ひたすら恐怖を煽るようなメディア報道が目立ちます。それでも最後に防災の心得をつけておけば、なんでも良心的な防災情報の仲間になっているようです。
あの「4年以内70%」は、首都圏直下型地震の確率とされたものでした。でも、その後富士五湖地震が起きたので、すっかり東海・東南海・南海地震の連鎖と富士山の噴火ネタに「旬」が移っています。特に富士山ですね。何故なら、一番ビジュアル的な恐怖を煽りやすいからでしょう。
学者の方々もマスコミに乗せられてか、ついつい過激なコメントになるようですね。こんなのとか(引用元:女性セブン)なお、個人攻撃が目的ではありませんので、固有名詞は伏せます。
■以下引用------------
○○○大学歴史都市防災研究センターの○○○教授は語る。
「日本の大動脈である東海道の主要な道路や鉄道は全て崩壊してしまうでしょう。大地震の後に噴火してしまったら、救援物資も届かなくなってしまう。火山灰に弱い飛行機は飛ぶことができず、食料の輸入も難しくなってしまうでしょう。稲作は0.5cm、畑作や畜産は2cm以上の火山灰で1年間収穫が望めない。輸入が絶たれた状況では飢饉が訪れてもおかしくありません」
----------引用終了■
「飢饉」だそうです。地震、噴火の規模も、建築、交通に関わる根拠も示さず(そちらの専門では無いでしょうし)、「全て崩壊」などと安易に表現しています。もちろん重大なダメージを受けるでしょうが、復旧不能にまで完全破壊されるわけでは無いでしょう。それに飛行機が飛ばないと、なんで食料の輸入が絶たれるのでしょうか。日本全国の空港が閉鎖されるわけもでなし。それ以前に、食料の輸入は大半が船便だと思いますが。これなど素人の思いつきレベルとどう違うのでしょうか。
船にしても、太平洋側の港が被害を受けたとしても、東北も日本海側の港もあります。道路の復旧力は、我が国が世界一であることが、東日本大震災で証明されました。降灰地の農業は大きなダメージを受けるでしょうが、日本全土に及ぶわけでもありません。要は、ご自分の“専門”である「飢饉」という言葉を引き出すために、いいように被害を想定しているようにしか見えません。
他の“教授”の発言で、こんなのもあります(引用元:女性セブン)
■以下引用------------
「噴火の際に、山の半分から3分の1ほどが崩れる山体崩壊が起きてしまう可能性を政府はまったく想定していません。もし崩れるようなことがあれば、土砂の速さは最大時速100kmを超えることもあります。
川に沿って土砂は流れ、海まで達するでしょう。1792年に雲仙普賢岳が噴火し、山体崩壊が起きたときには1万5000人もの人が亡くなりました。現在の山梨・静岡の人口を考えれば、最低でも15万人、10万世帯にものぼる被害となるでしょう」
----------引用終了■
3000メートル超の巨大火山の三分の一が吹っ飛ぶ大噴火を想定している政府など、世界のどこにも存在しません。被害想定をするということは、税金を使ってその対策をしなければならないということですから、人類史上に記録が無いような規模の噴火など、想定するわけがありません。学者のように、論文出して終わりじゃないんです。それに大規模な山体崩落を起こすのなら、問題は土石流の速度ではなくて崩落量でしょうに。でも近年の超巨大噴火として知られる、大規模な山体崩落を起こした1980年のアメリカ、セントへレンズ火山噴火でさえ、そんな規模に達してはいませんし、先史時代から今まで、富士山がそのレベルの噴火をしているわけでもありません。
さらに、被害「想定」を18世紀との人口と街の集積度の比較でしか考えていません。現代では、火山噴火はほぼ完全に予知できますし(というか、そちらの世界の方の発言なんですけどね・笑)、避難体制もそれなりに整えられています。それを、何の観測網も連絡網も避難体制も無かった時代と、被災面積だけで単純比較するなど、学究の徒がすることなのでしょうか。知らないで間違った発言をするのとは、問題が根本的に違います。そんな薄弱な根拠で、15万人を“殺し”ますか?
一応、もっと長い発言をマスコミ的なインパクト優先の端折り方をされたために、発言の真意が歪曲されている可能性も考えられます。「4年以内70%」報道も、まさにそうでした。
いずれにしても、「防災意識を高める」という美名の下に、こんな“報道”が堂々と垂れ流されているわけです。否定する知識が無ければ、「平成の大飢饉」も、俄然現実めいたニュアンスを帯びてしまいます。マスコミの姿勢は毎度のことながら、科学者たる人々が、こんな素人以下の発言をしていることに、暗澹たる気持ちになりますよ。いかがですか?皆様。
富士五湖地震の後、「あの地震は東海地震と富士山噴火の引き金に“ならないわけがない”」くらいの発言をされていた“教授”もいましたが、ほぼ同一震源で1931年9月16日にマグニチュード6.3、1983年8月8日にはマグニチュード6.0の地震が発生し、その後特に大きな変化が無いことは、どのように説明されるのでしょうか。
「今回は違う」という、整合性のある理論なり発見なりを期待したいですが、少なくとも新しい話は出てきていませんね。強いて言えば、東日本大震災による大地殻変動の最中だ、ということくらいでしょうか。
言うまでも無く、三震源連鎖地震や富士山噴火が、絶対に起きないとは誰にも断言できません。いや、いつかは起きるでしょう。しかしそれを語る時、専門家の名を借りて、あまりにも稚拙な「怖い話」にすりかえられてはいないでしょうか。
私も好き好んで批判をしているわけではありませんが、あまりにも目に余るので、今回はひとつの雑誌からの引用だけで、好き放題言わせていただきました。こんな報道でも、防災意識を高めて自己防衛を始めるきっかけになれば良いという考え方もありますし、確かにその効果はあるでしょう。
でも、思うのです。
「その程度でいいのか?」と。
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