家の中の地震対策【7】
今回は、家具の固定の問題点と、その実際です。
まず、代表的な家具の転倒防止器具をご覧ください。
おなじみの「突っ張り棒」に、下写真の左は「アングル金具」、右の二つは「固定用ベルト」です。すべて管理人の持ち物なのですが、なぜ使用状態の写真でないかというと、使っていない、いや「使えなかった」からなのです。
まず「突っ張り棒」。タンスなどと天井の間に入れて突っ張り、建物の揺れとタンスの揺れを強制的に同調させることによって、タンスだけが暴れて転倒するのを防止するものです。十分な効果を発揮するためには、かなりの突っ張り力をかけなければなりません。
しかし大抵の場合、天井材は和室なら板張り、洋室なら石膏ボード張りではありませんか?それでは、この器具が十分に機能するほどの力をかけられないのです。無理に力をかければ天井板が抜けますし、なんとか持ちこたえさせても、強い地震の揺れが来た瞬間に天井が抜けてしまっては、何もつけていないのとほとんど一緒です。
このタイプは、マンションなどでコンクリートの建物躯体に直接突っ張れるような場所でなければ、本来の機能を発揮しないのです。さらに、天板がベニヤ板の洋式家具(食器棚などに多いですね)の場合も、突っ張り力をかけすぎると天板が抜ける恐れがあります。もし、天井材や家具天板の強度に合わせて弱めの突っ張り力でつけている方がありましたら、是非とも他の器具と併用してください。それだけでは転倒を防げない可能性が大きいと思います。最悪の場合、激しく揺れ始めた瞬間に、突っ張り棒が吹っ飛ぶ怖れもあります。
ちなみに、薄い天板の家具に使うときは、天板の大きさと同じサイズの板を突っ張り棒との間に挟んで、面で押すようにするという解決策があります。天井が強固な場合にも、天井と突っ張り棒の間に同サイズくらいの板を挟むことで、器具が揺れでズレたり外れたりしずらくなり、より安全性が高まります。
次に良く見るのが、アングル金具、ベルトやチェーンなどで壁と家具を結着する方法です。ナイロンベルトはそれ自体に伸縮性があるのでチェーンより衝撃吸収能力が高いと考え、ベルト式を買って来ました。ところが、家具の後ろの壁も、大抵の家は石膏ボードか、和室は漆喰壁なんですよね。そんな所に取り付けボルトを植え込んでも、大した強度は期待できません。激しい揺れでベルトや金具に衝撃がかかった瞬間、ボルトがズボっと抜けてしまう可能性が高いのです。
ベルトをギチギチに締め上げておけば、壁と家具が一体になって揺れるために衝撃がかかりずらくはあるのですが、常時高いテンションをかけていると、石膏ボードがどんどんゆがんで劣化してしまい、そのうちヒビが入るか、割れるでしょう。それをなんとか防げないか、管理人はこんなものまで買ってきて、いろいろやったのですが。
根本的解決にはなりませんでしたね。
ボルトを植え込むタイプの器具は、家具の後ろに上手い具合に柱が二本あるとか、木製のサンが通っている場所とかでないと本来の機能は発揮しませんし、そんな場所はあまりありません。建前上は、石膏ボードなどの裏に通っている筋交いなどの構造部材の位置を調べ、そこまでボルトを貫通させろとかいう、見事な机上の空論を唱える「防災のプロ」もいましたが、部屋の内壁にそんなもの普通ありませんし、素人がそれをどうやって調べろというのでしょうか。
机上の空論ついでに、この場合の解決策として、石膏ボードの裏面に同じ大きさの鉄板を入れ、鉄板までボルトを植え込めとか“本に書いていた”「防災のプロ」もおりました。できるものなら、まず自分でやってみろ(笑)
さて、では家具の背後がコンクリートの躯体そのものだったら。管理人の家にもそういう場所があります。ボルトを植え込むには理想的です。でも、躯体そのものに穴を開けるのは、賃貸の方には事実上無理ですよね。我が家は分譲ではあるものの、結局断念しました。
まず、ドライバーでボルトをねじ込める硬さではない、ということ。電動ドリルで穴をあけてから、そこへギリギリとボルトをねじ込むことになります。実は妙なものをたくさん持っている(笑)管理人は、電動ドリルもビット(ドリル刃)も持っています。でもやはり、建物の躯体に傷をつけるのはイヤだったのです。下手をすれば、その穴からクラック(ヒビ)が拡がるかもしれません。
ものすごく余談ながら、管理人は文系のくせにコンクリート構造物にはやたらとうるさく、今のマンションでリフォームのため内装を剥いだとき、躯体を隅々まで調べてクラック、中性化による変色、アルカリ骨材反応の徴候、鉄筋のサビによる爆裂、炭酸カルシウムの析出などを徹底的に観察した奴です。もちろん、耐震強度が落ちるような症状が無いかのチェックだったのですが。すいませんマニアックすぎる話で(笑)
というわけで、画像の耐震グッズは、我が家では結局出番がありませんでした。誤解なきように付け加えますが、これらのグッズに問題があるわけではありません。ただ、一般的な家屋には、本来の性能を発揮できる場所が実はとても少ないということなのです。これらの器具でしっかり対策済みの皆様は、うらやましいくらいにラッキーだったのだと思います。
次回は、「では一体どうしたのか?」という話です。
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