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2012年3月22日 (木)

家に備える防災グッズ【22】

今回は「クラッシュ症候群」への対処方法です。

まず「クラッシュ症候群」が疑われる場合は、最重症患者となります。トリアージは「赤」です。一見元気でも、突然致命的な状態になるのです。とにかく一刻も早く医療機関へ搬送し、医療機関に着いたら、すぐに「クラッシュ症候群の疑いあり!」と伝えます。

医療機関では、点滴によって脱水症状の改善を図ります。理想的には緊急に人工透析を行うべきなのですが、大災害時にそれが可能かどうかはわかりませんし、それは医師の判断です。

では「素人」である我々は、何ができるでしょうか。

まずは、救出したらとにかく水をたくさん飲ませ、脱水症状を改善します。これはもう「飲ませられるだけ飲ませる」ことです。スポーツドリンクなど吸収が早いものならば、より効果的です。そうしながら、医療機関への搬送を急ぎます。

クラッシュ症候群が疑われる場合、医療機関ではすぐに「クラッシュ症候群の疑いあり!」と伝えます。トリアージは「赤」、速やかな処置が必要な最重症患者となります。


もうひとつの対処法は、非常に難しい判断を迫られます。

破壊された細胞からカリウムが全身に拡散するのを防ぐために、壊死部より心臓に近い部位に止血帯を施すのです。しかし、効果的に動脈の血流を止めるのは、十分な訓練を受けていないと困難です。さらに、強い圧迫によって新たに組織の損傷を引き起こしてしまうこともあります。

仮に動脈の血流を十分に止められなくても、体表に近い静脈の血流を止めるだけでも、短時間ならばカリウムの拡散を防ぐ効果はありますが、その時間が長くなると新たな壊死を引き起こして、命が助かっても最悪の場合は手足の切断が必要になるかもしれないのです。

ひとつの基準として、「1時間以内に確実に医療機関に搬送できる場合」は、止血帯を施せというものがあります。しかし大災害下では、医療機関に着いたからといって、すぐに処置が受けられるかどうかもわかりません。混乱と情報不足の中、的確な判断ができる可能性は、非常に小さいと言わざるを得ないのです。

これは管理人の考えですが、「クラッシュ症候群」の発症がほぼ確実で、医療機関へ搬送する目処が全く立たない場合は、「すぐに助け出さない」のも選択肢のひとつなのかもしれません。もちろんその場合は要救護者を保温し、水と食糧を与え、明かりを灯し、すぐそばについて励ます必要があると思います。過酷な選択ですが、むざむざ死なせるよりはましというものです。

余震による二次崩壊の可能性がある中でそのような行動をすることは、とてつもない決意と勇気を必要とすることでしょう。そしてそれが本当に正しい選択なのかは、後になるまで誰にもわからないのです。そのような場合には、二次崩壊をできるだけ防ぐために、危険な場所をジャッキで支えたり、バールや金テコなどを突っ張り棒にするなどで、安全性を上げることができるでしょう。

もし、挟まれているのが自分の大切な人だとしたら。でも、いま助け出したら、急死するかもしれないとしたら。仮に、手足を失っても確実に生き残れるのなら良いのですが、それすらもわかりません。そんな場合の正解など、誰も持ち合わせていないのです。

ならば、少なくとも自宅にいる時にそのような状態にならないように、建物の耐震補強や家具類の転倒防止をしっかりやっておくことが、そんな「究極の選択」から逃れられる、一番確実な方法であるのは間違いありません。

次回は、このシリーズのまとめです。


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