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2012年3月 7日 (水)

【シミュレーション解説編】津波・漁港付近【2】

【1】から続きます。

2008年当時に書いた津波対策を今見ても、間違いは何一つありません。東日本大震災後にかまびすしく言われるようになった津波対策と何ら変わりません。何故なら、防災知識としては、ずっと以前から「常識」だったことばかりだからです。しかし、あれで不十分なこともあるのは、事実によって証明されてしまいました。

前記事でも言及しているリアス式海岸の危険性は、言うまでもないことでした。なお、関東では三浦半島にリアス式地形の特徴が見られることは、あまり知られていません。特に湾の奥に位置する横須賀、浦賀、逗子周辺は、津波が来る方向にもよりますが、波高が高くなる可能性がある地形だということは、知っておかねばなりません。

その後、2010年2月にチリ地震による津波が日本にも到達しました。その時には3メートル以上の津波を想定した「大津波警報」が、制度制定後初めて発表され、三陸海岸の一部で最大波高2メートルを記録しました。しかしその後の調査で、大津波警報で実際に避難した人の数は、危険地帯人口の約6%程度に過ぎなかったことがわかりました。確かに人的被害はゼロで、物的被害はかなり出たものの、結果的に「大したこと無い」という印象だけ残してしまったのかもしれません。

そして2011年3月11日。逃げなかった人、逃げられなかった人、逃げてから戻ってしまった人、そして逃げてもだめだった人。明治29年の悪夢が、いまこの時代に再現されるなどとは、だれが考えたでしょうか。

津波避難の常識として、「直ちに10m以上の高台か、鉄筋コンクリート建物の3階以上へ避難」と言われます。「以上」と言っているからには間違いでは無いのですが、問題は字面の正しさではなく、「生き残れる」かどうかということです。今震災では、海の近くでも3階が完全に水没する「波高」になった場所もありますし、4階まで水が達し、さらにその屋上にいても助からなかったケースもあります。地震の規模が、人類の観測史上4番目という超巨大なものだったせいもありますが、そのようなことが起きた場所は、それなりの理由があったことが見て取れます。

津波は「波高」と「遡上高」で計測されます。「波高」は、海岸部での水深です。そして「遡上高」とは、波が地面を駆け上がった海抜高です。津波は、海水が分厚くなって移動してきて、そのまま巨大な力で「押し上げられる」のです。今震災で確認された最大遡上高は40.5m。10階建てのビルの高さです。これは、山の斜面をそこまで水が駆け上がったということであり、10階建てのビルが水没するということではありませんが、その場所では、例えば海抜35m地点に家があったら、一階は完全に水没することを意味します。
Photo
画像は、管理人が撮影、加工した、昨年11月の宮城県女川町です。赤線は、地物の痕跡から管理人が推定した、水が達したと思われる高さです。左に見える女川町立病院前の土台は、高さ約15m、海抜は17mくらいになります。その病院の1階が、2m近く浸水しているのです。実は管理人が撮影している高台も、3m以上は冠水していた痕跡があり、すぐ横の家が跡形も無く流されています。こんな高い場所にいても、生き残れなかったのです。それは、あまりにも日常感覚とかけ離れていました。そして、画面左方向の街の奥に行くにつれて、水はさらに高い場所、恐らく海抜30m以上に達していた痕跡があるのです。

現場に立った正直な気持ちは、もし自分があの時ここにいても、ここまで水が来るとは、多分思わなかっただろうというものでした。むしろ、「10m以上」という津波避難の常識が邪魔をして、逆に15mも上がっていれば大丈夫という判断ミスを犯したかもしれないと思い、背筋が寒くなりました。

これは、地形によって狭い範囲に集中した津波のエネルギーが、海近くまで迫った山の斜面を、大きなエネルギーを保ったまま駆け上がるという、リアス式地形ならではの現象によるものです。ですから、これが平地でもどこでも起こるわけではありません。ただ、リアス式地形や、海の近くにまで山が迫る地形の場合は、相当な高さにまで水が遡上することを想定して、「10m以上、3階以上」に固執しない、独自の基準で避難場所や避難行動を考えなければいけないというのが、今震災の教訓と言えます。

一方、駆け上がるものの無い平地では、巨大な津波のエネルギーは、とんでもない内陸まで水を押し込みます。特に海に注ぐ川は津波がたやすく遡上し、今震災では河口から6kmの地点で氾濫しました。2010年のハイチ大地震では、平坦な地形を津波が奥深くまで遡上し、5km内陸まで数千トンクラスの大型船が流されました。

高台の無い場所は、津波避難においては、リアス式地形より厳しいものがあります。高くて頑丈な建物が無ければ、とにかく内陸に向けて移動するしかありません。時間的制約は、より厳しいものになります。都市部においては、こちらの方が現実的な問題です。

長くなりましたので、次回に続きます。


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