家の中の地震対策【12・最終回】
今回は、火災対策編の続きで、このシリーズ最終回となります。
地震の際の火災に関して忘れてはならないのが「通電火災」です。阪神・淡路大震災でも多発し、地震で倒壊しなかった家までが、後になってから焼失しました。「通電火災」とは、地震後に停電になった時、アイロンやこたつ、電気ストーブなど発熱する電気器具のスイッチを入れたまま避難してしまったり、家や家具の倒壊によって電気器具が破壊されていた場合に発生します。
その場合、復旧作業によって通電が回復した際、発熱する電気器具が作動を始めたり、破壊された電気器具から電気火花が発生しすることにより、住人が避難して無人の家から出火する可能性が高いのです。
これを防ぐ方法はただ一つです。停電している家から避難する場合、ブレーカーを「切」に、つまり通電が再開した場合でも、ブレーカーから先は電気が流れないようにしておくことです。さらに、電気器具のコンセントはできるだけ抜いておきましょう。一見どこも損傷を受けていないように見えても、激しい揺れで屋内配線のどこかが損傷していて、通電時に電気火花が発生する可能性もありますので、地震後の停電時に家を空ける時は、必ずブレーカーを「切」にする必要があります。
通電再開後は、まず電気器具のスイッチがすべて切れていることを確認してからブレーカーを「入」にして、その後しばらく様子を見ます。もし、家の中のすべての電気器具が切られているのに電気メーターの円盤が回っている場合は、どこからか漏電している、つまり電気設備が損傷していることが考えられます。その場合は速やかにブレーカーを「切」にして、電気会社に連絡しし、指示に従ってください。なお、冷蔵庫など自動的に電源が入る器具は、コンセントを抜いた上で上記の確認をしなければなりません。
集合住宅では、どこか一軒が出火しても大変ですから、通電回復時は各部屋で声をかけあって、通電火災を防ぎましょう。
ところで、前回記事で、大災害時には消防も救急も警察も「来ない」と書いたのですが、これは「来ないと考えなければならない」と言う意味であり、出火した場合は消防に通報すべきなのは変わりありません。でも、慌てているとなかなか手際よく通報できないものですので、ここで通報手順を確認しておきます。これはもちろん災害時に限らず、平常時でも同じです。
ただ、順番的には、可能な場合には「初期消火」の努力をしてからということになります。複数の人がいる場合は手分けして行います。しかし、決して無理をして消し止めようとしてはいけません。前述の通り、火が天井に届くくらいになったら、初期消火は困難です。
119番通報すると、「こちら消防です。火事ですか、救急ですか?」と応答があります。まずは火事か救急なのかを答えます。
「場所はどこですか?」
通報は、基本的に都道府県の指令センターで受信しますから、まず市区町村から住所を答えます。集合住宅の場合は、建物名と部屋番号まで。できれば近くのランドマーク、例えば「○○スーパーの南側」というように答えられればベストです。携帯電話の場合は、自分の居場所をできるだけ確認して通報します。
「何が燃えていますか?」
家が燃えている、部屋の中が燃えている、建物から煙が出ているなど、状況を伝えます。
これで平常時ならば、普通は
「消防車が向かいます。すぐに避難してください」という言葉で終わりなのですが、災害時にはその限りでは無いということを意識しておかなければなりません。
通報は、慌てているとなかなか手際良くできないものですから、不安な場合は家の電話の近くや、目立つ場所に住所や通報手順を掲示して置くと良いでしょう。手順は、
■通報の種類「火事?救急?」
■住所、地番、建物名、周囲の目立つ建物など
■火災、救急の状況
普通はこのような順番で聞いてきますので、ひとつ深呼吸をして、できるだけ落ち着いて通報するようにしましょう。
なお、初期消火に成功した場合でも、思わぬところに火種が残っている場合があります。事後の処理は、消防に通報して対処を依頼してください。その場合でも、消防は「鎮圧火災」として出場してくれます。特にふとんが燃えた場合には、念入りに消火したつもりでも中に火種が残っていて、長時間経った後に再出火する可能性があります。火事が出た場合は「おおごとにしたくない」という気持ちを捨てて、必ず消防に通報してください。
しかし、繰り返しますが、大災害発生時は、消防も通常の対応ができない可能性が大きくなりますので、まずはとにかく「火を出さない」ということに尽きます。それには普段からの意識と準備がものを言います。大切な命と財産を守るために、できる備えをできるだけ進めてください。
このシリーズは今回で終了しますが、いろいろ書いたものの、つまるところ「家を倒壊させない」、「家具を倒さない」、「火を出さない」の三点に集約されるわけです。そのために出来ることはたくさんあり、それらを進めた分だけ、確実に「生き残る」確率を上げられるのです。
「その時」まで、残された時間は少ないかもしれません。いや、「その時」が一瞬後でもおかしくないのが、今の状況です。出来る対策を、すぐ始めましょう。
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