首都圏直下型地震を生き残れ!【4】☆オフィス編
■オフィスで生き残れ(その1)
まず最初のテーマとして、オフィス内で大地震に遭遇した場合について考えます。オフィスとは勤務先はもちろん、訪問先の他社オフィスなども含みます。
建物の形態としては、平屋から超高層ビルまでいろいろありますが、まずはオフィス内の危険要素から明らかにして行きましょう。
一般家庭では家具備品類の固定や転倒対策をしている場合も多いでしょうが、オフィスではそのような対策が不十分なことが多いのが現実です。さらに室内の配置は仕事のしやすさが優先され、避難場所、避難動線などが優先的に考慮されている例は少ないでしょう。
そして、ガラス扉がついた、主に金属製の重いキャビネットや備品類が詰まった棚、室内を仕切るパーティション、多数のパソコンやモニタなどがあり、さらにガラス窓も、一般家庭よりは大きな面積であることが多いのです。
つまりオフィス勤務の方は、地震対策を行った一般家庭よりもはるかに多くの危険要素に囲まれながら、おそらく一日で一番長い時間を過ごしていることになります。それは即ち、オフィスにいる時に大地震に遭遇する確率が一番高いということでもあります。皆様のオフィスでは、いかがでしょうか。仮に対策がしっかりできているオフィスにお勤めでも、他社を訪問したりすることもありますよね。
ところで、大きな地震が来ると必ずと言って良いほど放送局オフィス内の映像がテレビで流れますが、そこで何が起きていたかを思い出してみてください。東日本大震災では、大きな揺れが続く中でも備品類の転倒、飛散などはそれほど起きていませんでしたが、これは地震動のタイプによるものです。震度6強や震度7であれが普通だと思ってはいけません。
よく、激しく揺れる棚やモニタなどが倒れないように押さえている映像がありますが、あれはまだ「立っていられる」程度の揺れだからこそできるのであり、最大級の揺れでは不可能どころか、自分がその下敷きになる可能性が大きいので、基本的にはやるべきではありません。東日本大震災は、陸地から離れた海底が震源のプレート境界型地震であり、震源域が非常に広かったことの影響で震動周期が比較的長かったために、振り回すような地震動があまり無かっただけです。では、最も危険なのは、どんな場合でしょうか。
阪神・淡路大震災後に繰り返し流された、NHK神戸支局内で地震の瞬間を捉えた有名な映像があります。Youtubeにアップされていますが、勝手にリンクできませんので、是非皆様ご自身でご覧になってみてください。「阪神・淡路大震災、NHK神戸」で検索するとヒットします(映像タイトルに誤字があって「阪神淡路再震災」となっていますが)。何度もご覧になっている方も、是非ここでもう一度。
阪神・淡路大震災は、内陸直下型地震で、最大震度7を史上初めて記録しました。その映像でわかる通り、最大級の直下型地震に襲われた場合、固定していないキャビネット類は一瞬で転倒し、人は無茶苦茶に振り回されて、文字通り「なす術が無い」のです。このような内陸直下型地震が、多くの場合最も危険な地震です。揺れはじめから激しい揺れが始まるまでのごくわずかの間の行動が、その後の運命を左右します。
近頃取り沙汰されている「南関東直下型地震」、例の「4年以内に70%の確率」と言われ(その数字は後に取り消されています)、最大震度が7に達すると新たに評価された地震が最大級で起きた場合、関東の震源直上の地域では阪神・淡路大震災と同等、もしくはそれ以上の揺れに襲われることになります。もちろん、関東以外の地域でも内陸直下型地震の可能性は常にあります。
前述の通り内陸直下型地震が多くの場合最も危険な地震動となりますが(超高層ビルと免振ビルは例外であり、それについては後述します)、それは周期1~2秒の、「キラーパルス」と通称される振り回すような速い揺れに襲われる可能性が大きいからです。そのような揺れの中では四つん這いになることも困難ですし、建物や備品類に最も大きな破壊力をもたらします。
仕事中とは、ある意味で「取り澄ました」顔でいる時間です。できることなら狼狽する姿など職場で晒したくないものですから、場合によってはそんな思いがその瞬間の行動をためらわせ、生き残るための貴重な時間を失うことにもなりかねません。そうならないためには、地震の規模を正確に判断し、最小限の動きで最大限の安全を確保する行動を、最短の時間で行えるだけの備えをしておかなければならないのです。
次回は、そのための具体的な判断方法と行動を考えます。
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>>激しく揺れる棚やモニタなどが倒れないように押さえている映像
「仙台の放送局内の映像」というキャプ付きで見た覚えがあります。私としては神戸のコンビニの監視カメラが店丸ごとシェイクされてるのを写してたのが強烈に印象に残ってるので、変な話「今回の揺れは現地でもこんな程度だったのか」と思いました。←語弊ありまくりですが意図は伝わるでしょうか。
あの様子を見て「日本人はあれだけの揺れに対しても冷静だった」みたいな自画自賛する話も出てましたがとんでもないことです。この風潮は非常に怖いですよね。子供には「机の下に隠れなさい」と教えつつ、大人には「命を張れ」と無言の圧力をかけてるようなものです。
神戸と東北では揺れのタイプがそもそも違ったんだということを訴えていかないと、記憶が「上書き」されてしまうような気がしてなりません。
もっとも、いい大人が机の下に潜るなんて…という抵抗が多少なりとも自分にもあるのは否めません。その躊躇が生死を分けるのかもしれませんね。
投稿: tnt | 2012年4月 9日 (月) 19時35分
>tntさん
おっしゃる意図、十分に伝わっております。
そうなんですよね。同じ震度7でも、プレート境界型と直下型では全く別モノなんですが、その辺を体系的に説明しているものって、ほとんど見かけません。さすがに最近はマグニチュードと震度を混同するような低レベルの話はみかけませんが(笑)
東日本大震災では震度7や6強だったにも関わらず、地震による建物被害や人的被害が非常に少なかったことから、管理人としても「この程度か」という印象になることを危惧しています。ですからこのような記事を書いているわけなんですが。命を守るために身体を張るのは尊いことですが、命と引き換えにモノを守るなどと言うのはナンセンス以外の何物でもありません。
いい大人が机の下に・・・などという意識も、確かにあります。実は次回の記事で、まさにそのことに触れています。間もなくアップしますので、ご覧になってみてください。
なお、地震の種類の違いによる揺れと被害の差については、今後何度も取り上げていく予定です。
投稿: てば | 2012年4月10日 (火) 14時03分