首都圏直下型地震を生き残れ!【9】☆買い物編
■買い物で生き残れ(その2)
今回は、管理人が日常の買い物の中で危険度が高い場所と判断するもうひとつの場所、「デパ地下」について考えます。条件としては、ビルの地下にある食品売場ということです。
で、のっけから逆の話なのですが、ビルの地下は、地震に対してはかなり安全な場所です。地下は地面と一体になって揺れるので「共振現象」による構造破壊が起きず、揺れ自体も上層階より小さくなります。もし仮に地上部分が大きく崩壊しても、地下の生存空間が大きく失われる可能性は小さいのです。つまり、地上への脱出経路さえ残っていれば、それほど慌てなければならない場所ではありません。では、何が危険なのでしょうか。その要素は4つ。「混雑」、「食品」、「通路」と、「地下」であるということです。
皆様も、デパ地下の様子を思い起こしてみてください。まず「混雑」。人気のデパ地下は、狭い通路にたくさんの人が溢れていることが多いものです。それだけで防災的には難しい要素となるのはおわかりいただけるでしょう。
次に「食品」。とはいえ、食品が問題なのではありません。問題は、ショーケースです。生鮮品、菓子類が多い売場ですから、ガラスショーケースが密集していることが危険要素となります。
では次の「通路」とは。デパ地下は、一般に小さなテナント店舗で構成されています。そのため、通路が「回遊性」を考慮した、防災的にはあまり望ましくない形になっていることが多いのです。
皆様も、デパ地下で「道に迷った」経験はありませんか?目当ての店や出口を探しているうちに、「あれ、この店の前さっき通ったよ」というような。実は、それは意図的な通路設定によることもあります。
つまり、できる限り多くの店舗の前にまんべんなく客を導いて商品を見てもらうために、ちょっと乱暴に言えば「迷いやすい」動線構成になっています。デパート側としては、表現は悪いのですが、客をマグロのように店内をぐるぐる「回遊」させて、目的外の「獲物」も見てもらい、それに食いついてもらおうことなのです。
念のため申し添えますと、通路が望ましくない形というのは、あくまで理想的な避難動線ではないということであり、消防法で規定された安全のための要件は満たしているはずですので、その点は誤解のなきように。
そして、もうひとつは「地下」であるということ。最初に安全性が高いと言ったじゃないかと突っ込まれそうですが、それは建物のこと。危険なのは「人」、さらに言えば、「人の心理」です。人は地下に入る時に、無意識のうちに圧迫感、閉塞感を感じていることが多いものです。地下鉄に乗る時、地上の電車より、なんとなく不安になったりすることは無いでしょうか。あまり自覚していなくても、深層心理では、「地下=逃げ場が無い」と思いやすいのです。
それら4つの要素が、大地震の発生時には、負の相互作用をすることが考えられます。
デパ地下にいて、例の「ドン!」を感じたとしましょう。その瞬間の多くの人の心理は、「大地震だ!すぐに地上に出なければ!」となりやすい。階段は、エスカレーターはどっちだ?周りを見回しても、すぐにはわからない。
とりあえず、多分こっちだと思う方に走り始める。でも、逆方向だと思う人も多く、狭い通路で人の波がぶつかる。思うように進めず、さらに焦る。そこへ大きな揺れが来て、あちこちから悲鳴が上がり、場合によっては照明が消える。すぐに非常灯がついても、薄暗い。恐怖感がMAXになる。
避難誘導訓練を受けた店員は、おそらく「大丈夫!頭を守る!その場を動かない!」のように叫ぶ。一部の人はそれに従うが、我を失った人々がそこへ突入する。薄暗く、激しい揺れの中で、狭い通路でパニックになった人々が衝突する。
どこからか、「こっちが出口だ!」と聞こえる。一旦止まった人々も、その声の方向に、我を忘れて走り始める。早く地上に出なければ。でも通路は狭く、曲がっている。他の通路と合流する場所で、人の波が衝突する。何人かが転び、後から殺到する人々がつまづき、次々にのしかかる。
そんな大混乱の周囲には、たくさんのガラスショーケースがある・・・
などと、書いていてなんだか胸が悪くなりますが、こんなのが最悪のシミュレーションなのです。多分、デパートなどに立場に配慮しなければならないプロの防災屋だったら、こんなことは書かないでしょう。あくまで内々の話にしておくでしょう。でも管理人は何のしがらみもない、アマチュアの防災ブロガーですから。でも、書いている内容には責任を持ちますが。
もし最悪中の最悪を考えたら、もっと酷いことになるかもしれないのですが、それは流動的な要素にもよりますので、とりあえず「基本的な最悪」という感じでしょうか。
「ではどうするか?」という話は、次回ということで。
■当記事は、カテゴリ【地震・津波対策】です。
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