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2012年4月 3日 (火)

『南海トラフ最大級地震想定』の読み方

最初におことわりしておきますが、管理人は市井のいち防災研究者であって、政府や地震学者側に立つ人間でもありませんし、マスコミなどを一方的に批判するつもりもありません。この記事は、あくまで今回の衝撃的な発表の意味を正確に理解し、今後多く見られるであろうインパクト優先の報道に惑わされないための留意点をまとめたものです。


3月31日、東海・東南海・南海地震を引き起こすとされる「南海トラフ」で起こりうる最大級の地震・津波被害に関して、内閣府の有識者検討会から衝撃的な新想定が発表されました。

それによると、「南海トラフ」に連なる、東海・東南海・南海の三震源域連鎖によって、東日本大震災並みのマグニチュード9.0~9.1クラスの巨大地震が発生した場合、関東から四国にかけての6都県で20メートル超の津波が、10県で震度7の激震が起こりうるとのことです。特に高知県黒潮町での津波高想定は34.4メートル、東京都の島嶼部で約30メートル、伊豆半島先端の南伊豆町で約25メートルなど、従来の想定を大幅に上回る想定数値となっています。

この発表を受けて、今週から来週にかけて様々なメディアが大騒ぎになると思われます。キーワードは「南海トラフでマグニチュード9クラス」、「高知で津波34メートル」、「6都県で津波20メートル超」、「10県153市町村で震度7」辺りになるでしょうか。とにかく衝撃的なヘッドラインを出すネタには事欠かない内容です。先の「首都圏直下型4年以内70%」騒動どころではなくなりそうです。恐らくは、今までの想定が「甘すぎた」ことに対する批判的な論調も多く出るでしょう。

言うまでもなく、この想定は科学的な裏付けを伴った、実際に起こりうる事象です。しかし従来の想定が決して「甘すぎた」訳ではありませんし、特に気をつけなければならないのは、「6都県で津波20メートル超、10県で震度7」が同時に起こる可能性はゼロだ、ということです。


まず従来の想定は、過去にこの震源域で繰り返し発生しているマグニチュード8クラスで試算しています。マグニチュード値が1小さくなると放出されるエネルギーは約30分の一になりますから、マグニチュード9クラスよりずっと小さな地震ですが、我々が知る限り過去にこの震源域でマグニチュード9クラスが起きたことは無い(ずっと過去には起きていたかもしれませんが)ので、合理的な想定理由です。

しかし現実にマグニチュード9クラスの東日本大震災が発生したために、「南海トラフ」でも同規模の地震が発生したらどうなるかという想定に基づいた試算であり、「南海トラフ」でそのような規模の地震が近いうちに発生する可能性が出てきた、ということでは全くありません。東日本大震災の発生を受けて、想定の前提を「数百年に一度」レベルから「千年に一度起こるかもしれない最大級」レベルに変えた結果なのです。

現在の長期評価では、「南海トラフ」で今後30年以内に発生する巨大地震の確率は、東南海地震(マグニチュード8.1前後)が70%程度、南海地震(マグニチュード8.4前後)が60%程度、東海地震(マグニチュード8.0程度)は、参考値という但し書き付きで88%となっており、今回の発表を受けても、この評価は変わりません。今回の発表は将来的に発生する確率を伴わない、あくまで「最大級が起きたら」という試算なのです。

ちょっと無理矢理な比喩かもしれませんが、例えばサッカー日本代表が、ワールドカップ予選から本戦まで全勝で勝ち上がって優勝したら、どれだけの経済効果があるかという試算のようなものです。そんな確率は計算できないくらいに小さいけれど、千年に一度くらいは(笑)起こるかもしれない。でも、これから100年くらいの間に起こらないとは誰も言い切れない、まかり間違ったら、次の次の大会あたりで起きるかも、と言う感じでしょうか。

もちろん、だから安心というわけではありません。その前兆をまったく捉えられなかった東日本大震災でもわかるように、人類はまだ地震の予知どころか、確率を数値で正確に表すことなどできないのです。上記の確率も、あくまで主に過去のパターンからの推計に過ぎません。


もう一点。「6都県で津波20メートル超、10県で震度7」という超巨大災害が、同時に起こるという想定では無いということに気をつけなければなりません。この試算は、想定されるいくつかの震源連鎖パターンによる試算を重ねたものであり、それらが実現象として同時に起こる可能性は全くありません。

つまり、これは想定されるいくつかの震源域連鎖パターンのあらゆるケースにおける、地上の地震動と津波高さの最大値を「全部乗せ」したものです。ですから、今後メディアやブログなどで、6都県で津波20メートル超、10県で震度7という超巨大地震が想定される、または来るという記事などがありましたら、それは無知、勘違い、理解不足か確信犯的「アオり」に過ぎません。まあ、そんな「アオり」が多発しそうな気配ではありますが。

正直言って、今回の発表は恐るべき内容です。想定される最大級で本当に発生したら、対処不可能の状況も多発するでしょうし、まさに国家存亡の危機となるでしょう。しかし無闇に怖れるだけでは、何も変わりません。

防災に絶対はありませんが、正しい備えと正しい行動で、減災は可能です。もちろん行政の対応にもある程度は期待したいのですが、他人任せでは生き残れるとは限りません。皆それぞれが必要なものを揃え、必要な行動を知り、実践することで「生き残る確率」を上げること、我々に出来るのは、それだけです。

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