首都圏直下型地震を生き残れ!【11】☆ライブ編
■ライブで生き残れ(その1)
今回から、ライブ観覧中の防災を考えます。とりあえず便宜的にライブと総称しますが、コンサート、演劇、映画などすべてに共通する内容です。
まず、防災的に一番良い条件のライブは「屋外ライブ」でしょう。周囲に倒れそうな構造物や崖などの危険が無ければ、とりあえずじっとしていれば大丈夫。気をつけるべきは、周囲のパニックです。逃げる必要が無いのに、慌てて無闇に動き回る人が必ずいるはずです。そんな動きに絶対に付いていかないこと。もし移動する場合は、必ず自己判断で。敢えて言えば、ステージ直近では、巨大なPA装置などの転倒に気をつけるくらいでしょうか。
次に、ホール。場末の映画館とかでも無い限り、建物が簡単に倒壊することも無いでしょうから、揺れが収まるまでその場で待機することになります。ここでは歩いて移動できない程の揺れを想定していますが、もし移動が可能なら、頭を守りながら落ち着いて一番近い非常口に向かいます。停電しても、非常口の緑色のサインは消えないはずですから、とにかく落ち着いて。でもその他の照明が消える可能性は高いので、小型LEDライトは必ず持っているべきです。アイドル応援用のケミカルライトバーは、防災にもそれなりに役立ちます(笑)ちょっと照度不足ではありますが、何も無いよりはるかにマシです。ただしケミカルライトバーは、本体の光が直接目に入って瞳孔が収縮してしまうので、暗闇を見通しずらくなります。避難時には、自分の側を手などで覆うなどの対策が必要です。
そしてやはり、ここでも必ず慌てる人がいるでしょう。暗い中での避難行動中にシートの間や通路でだれか転んだりすれば、あっというまに人が山になります。特に非常口前でそんなことが起これば、かなり深刻な事態になるでしょうから、とにかくそこに巻き込まれないことが必要です。慌てて走る人を一旦やりすごすくらいの余裕がなければ、危険の中に自ら飛び込んで行くことになります。基本的には、可能な限り安全な場所に移動しながら、状況が落ち着くのを待つのです。
ところで、静かなクラシックコンサートなどならともかく、特にロック系、ましてやタテノリ系のスタンディングライブだったりしたら、かなり揺れが大きくなるまで地震に気づかないことが多いでしょう。猛烈に振り回されて初めて大地震だと認識し、そこで照明が消える。まさにパニックを起こしてくださいと言わんばかりの「舞台装置」です。
その中でどれだけ冷静な行動ができるかが、運命を左右します。冷静を保つためにも、開演前に自分の居場所から、避難すべき方向と経路を必ず複数確認しておくことです。オプションを多く持つことで、一つがダメになっても慌てないで済む可能性が高くなります。この「複数」ということについては、後で重要なポイントを述べたいと思います。
ロック系ライブのように、暗い場所に多くの人が密集し、ハイテンションの状態で大地震に遭遇すると、そのハイテンションが一気に極端な混乱状態に転化することが考えられますから、やはりそのようなライブが防災的には一番厳しい状況となります。ですからポケットにはLEDライトを忍ばせ、開演前には必ず避難経路を複数確認しておき、「その時」にはすぐに脱出しようとせず、一旦踏みとどまって状況を確かめること。右往左往する群衆にただついて行くことはせず、自分の意思で自分の行くべき方向へ進むこと。なんだかロックな生き方そのものじゃないですか(笑)
ロックな生き方はカッコ良いのですが、地震で群衆に踏みつぶされたりするのは、ロックな死に方だとは思いませんが。これは決して冗談では無く。カッコ良く、最後まであきらめずに「正しく」戦い抜こうよ。特に守るべきものがあり、守るべき人がいるのなら。
なんだか話がそれましたが(笑)、ホールの話に戻しましょう。まずパニックを避けることを主眼におきましたが、これは人が多い場所すべてに共通することです。これに加えて、映画館やホールには、忘れてはならない危険がある事が多いのです。
「買い物編」でも少し書いたので、お気づきの方もあるかもしれません。それは「吊り天井」。広い映画館やホールは、「吊り天井」構造であることが多いのです。東日本大震災では、関東から東北にかけての約2000ヶ所で「吊り天井」が落下したとのことですから、これに遭遇する可能性は非常に大きいと言えます。
しかも、普通のホールでは石膏ボードの天井板が多いのですが、音響を考慮したホールでは、厚い板の裏にグラスウールを貼ったものなど、かなり重量がある天井板のこともあります。その落下から、身体を守らなければなりません。ポイントは「直撃」を避けること。つまり落下物が最初に身体に当たらないようにすることです。まずはバッグ、上着、座布団など、手近なものを何でも頭の上に上げます。特に後頭部から首にかけてが人間の弱点ですから、そこを重点的に。何も無ければ、腕で頭をガードします。
椅子があるホールでは、椅子の間の床で背もたれよりも身体を低くして、落下に備えます。パイプ椅子でもかなりの防護効果があります。通路際に手すりがある場合は、それに身を寄せて、頭を守りながら姿勢を低くします。徒歩で移動できるようなら、できるだけ壁際に行きます。壁際は、天井板の直撃を受ける可能性が小さいのです。
また、二階、三階席などの最前列では、激しい揺れの最中に絶対に立ち上がらないこと。転落の怖れがあります。そういう席につく場合は、大きな地震が来ても絶対に立ち上がらない、床に膝をついて姿勢を低くすると、先に心に決めておくことです。人は混乱すると、咄嗟に立ち上がってしまうものですから。
実際、映画や演劇、クラシックコンサートなどでは、椅子の間などで天井の落下を避け、狭い通路や非常口付近での混乱に巻き込まれなければ、大きな危険を回避できたと言えるでしょう。しかしロック系のスタンディングライブなどでは、非常に強度のパニック状態になる可能性が高く、正直なところ何が起きるかわかりません。その中で「生き残る」可能性を高めるのは、事前の避難方法確認と、視界の確保です。そして何より、「絶対に生き残る」という強い気持ちが、大混乱から脱出する道を開いてくれるはずです。
次回は、さらにライブにおけるさらに厳しい状況を考えます。
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