【緊急特集】ホテルで生き残れ!【6】
今回は、いよいよ脱出です。
脱出経路は、廊下から内階段もしくは屋外の非常階段を目指します。なお、この方法はラブホテルに限らず、すべてのビル火災に共通です。
まず、脱出装備を確認します。
■化学繊維の服を身につけていないこと。溶けて身体に貼り付き、重いやけどを引き起こすのを防ぐためです。
■フェイスタオルを濡らして、息が通る程度に絞り、覆面のように鼻と口を覆うこと。両手をなるべくフリーにします。ハンカチの場合は、濡らして軽く絞ってから折りたたみ、手で持って鼻と口を覆うこと。煙の粒子や有毒物質は水分に良く吸着されるからです。しかし完全に除去できるわけでは無く、あくまでも薄い煙の中しか対応できないので過信は禁物。
■バスタオルやシーツを十分に濡らし、頭からかぶること。その際、髪の長い人はなるべくまとめるか、服の中にたくしこんでおくこと。髪は最も熱に弱いからです。
断水していて、バスタブにも残り湯が無い場合は、トイレのタンクや便器の中に溜まった水が使えます。優先順位は、まず鼻と口を覆う布を濡らすことから。呼吸の確保は、何よりも重要です。
■照明を必ず持っていること。自前のライトか、部屋に備え付けの非常灯を。それらが無く、携帯電話にライトがついている場合は、部屋の中で点灯させてから脱出します。無い場合は、液晶画面の明かりが頼りです。ライターを照明代わりにしてはいけません。ガスが漏れていたり、不完全燃焼によって発生した可燃性ガスが充満しているかもしれません。着火した途端に爆発する可能性があります。
さて、いよいよ脱出です。最優先で目指すのは、屋外の非常階段か、耐火バルコニーです。屋外へ出れば、とりあえずひと息つけます。その方向がわからなければ、まずひとりが偵察に出るのもひとつの方法です。一般的なラブホテル程度の建物なら、それほど遠く無い場所に、必ず非常口があるはずです。煙が充満しはじめている状況で、ふたりで右往左往している余裕はありません。
廊下には他の客もいるでしょう。しかし、だれかが行った方向に、ただついて行くのは危険です。その人が非常口の場所を本当に把握しているかわからず、パニックを起こしているだけかもしれません。基本的には、自分の意志で進まなければなりません。過去のビル火災では、そのような集団が袋小路に迷い込み、そこで全滅したような事例が数多くあるのです。
廊下では、まず煙が流れて来る方向を確かめます。そちらが火元に近いか、煙が階下から上がって来る経路になっています。理想的にはそれと反対方向へ進みたいのですが、普通のラブホテルでは複数の避難経路が無いことも多いものです。床近くに見通しの効く空間が少しでも残っているならば、そちらへ行かなければならないこともあるでしょう。
廊下を進む姿勢は、できるだけ低く。低い場所の方が見通しが効き、有毒物質が少なく、酸素も多いからです。床にはいつくばってでも、とにかく低く。
そしてパートナーとはぐれないために、必ずお互いの身体を触れ合いながら進みます。視界はほとんどありません。少し離れただけで、お互いの場所を見失います。手を引く、ベルトや襟首をつかませる、身体をぴったり寄せるなどして常にパートナーを意識し、感触を確かめて。
非常口になっていても、防煙ドアがついていない内階段から、濃い煙がもくもくと吹き上がって来ていたら、その階段は使えません。無理にそんな階段を降りて火元に近づくと、さらに状況は悪化し、完全に煙に巻かれることになります。広島県福山市のホテル火災で、階段室で倒れていたふたりは、この状況だったはずです。
防煙ドアが閉まっている階段の場合、開ける前に必ずドアノブを手の甲で触り、温度を確かめます。防煙ドアは鉄製なので、ドア表面の方がわかりやすいかもしれません。いずれにしても、触れないほどの温度だったら、そこはあきらめなければなりません。階段室の中はすでに熱く濃い煙が充満しているか、火が回っています。そこを開くと、「バックドラフト」が起きる可能性が高いので、絶対に開けてはいけません。
廊下の途中で防煙ドアが閉まっている場合でも、ロックはかかっていません。必ず、押すか引くかするだけで開くことができますから慌てずに。シャッターが降りるタイプの場合でも、必ずロックされていないドアがついています。真っ暗な中で床にはいつくばっているとわかりずらいのですが、必ず通り抜けられます。とにかく慌てずに。しかし、ここでもまずドアノブや扉の温度を確かめる必要があります。もし触れない程の温度だったら、その先へは進めません。
この段階になって、他に脱出ルートが見つからない場合は、廊下からの脱出は困難だと判断しなければなりません。視界がほとんど効かず、煙がどんどん濃くなる状況では、あての無い脱出口を探している余裕はありませんから、一旦部屋に戻らなければなりません。もちろん、自分のいた部屋である必要はありません。なるべく煙が来ない方向の部屋のドアを手当たり次第に開けてみて、必ずドアを閉めてから、部屋の窓を開けて外の様子を見ます。もしかしたら、自室には無い脱出方法がみつかるかもしれません。
もちろん、この段階で部屋に備え付けの避難器具がある場合は、それを使うことになります。しかし、階下の窓から火や煙が吹き出している場合は、その位置からは脱出できません。別の部屋に移動する必要があります。
長くなりましたので、以下は次回へ続きます。
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