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2012年5月14日 (月)

【緊急特集】ホテルで生き残れ!【1】

急遽、予定を変更します。

5月6日の竜巻発生を受けてお送りした緊急特集の後は、「デートで生き残れ」のレストラン編に復帰の予定でした。しかし、5月13日に広島県福山市で、7人が死亡する惨事となったホテル火災の発生を受け、レストラン編の続きの前に、再び緊急特集をお送りします。

実は、当初から「デートで生き残れ」シリーズの最後に、「お泊まりで生き残れ(仮)」として、いわゆるラブホテルでの地震対策を予定していたのですが、それを前倒しし、さらに一部の内容とタイトルを変更して、ラブホテルにおいて、火災・地震から生き残る方法を考えます。なお、管理人は「防火管理者」資格を保有しております。

当シリーズは火災に限らず地震対策も含み、多くの部分は共通しますので、カテゴリは【地震・津波対策】とします。


まず、今回の惨事の舞台になったホテルの条件についてまとめます。このホテルは、管理人がお泊まり編を準備するに当たり想定した「最悪の条件」を、ある意味で超えるものでした。

●1960年建築の木造二階建てに、1967年に鉄筋コンクリート造4階建てを増築した、建築基準法の耐震基準及び消防法の防火基準ともに「既存不適格」建物であり、1987年以来、消防査察で不備を指摘されても、何も改善されないままだった。

●内部は「迷路のような」複雑な構造で薄暗く、入館時にも内部構造が良くわからなかった(生存者談)。

●非常用照明設備、防煙・排煙扉、屋外の非常階段が設置されておらず、内装も不燃材・難燃材ではないので火の回りが早く、煙や一酸化炭素などの有毒ガスが大量に発生、充満した。

●非常ベルは故障もしくは電源が切られていて鳴動せず、火災発生の覚知が遅れた。

●窓の一部は板(扉ではない)でふさがれていた。

●従業員は75歳の女性ひとりで、避難誘導はなく、おそらく当初から想定も訓練もされていなかった。

以上のように、これ以上悪い条件のものを探す方が難しいというようなホテルです。そこで一旦火災が起きれば、このような惨事になるのは当然とも言える状態でした。これが大地震ならば、建物の倒壊もしくは大きな損傷から、さらに火災が発生する可能性も大きかったでしょう。何か起きたら、「生き残れない」可能性が非常に大きかったのです。しかし「価格の安さ」が魅力でかなりの需要があったようですし、似たような条件のホテルは、地方や郊外を中心に、全国どこにでもあるでしょう。

7人の犠牲者のうち2人は、屋内の階段室で倒れていたとのことですが、この火事は1階からの出火であり、猛煙が吹き上がって来る屋内階段から脱出することは、もとよりほとんど不可能だったはずです。他に脱出手段があったかどうかに関わらず、屋内階段を使おうとしたことは、この場合には致命的な判断ミスだったと言えます。その他の犠牲者は、みな自室内で煙に巻かれ、一酸化炭素中毒が直接の死因となったようです。つまり気づいた時にはもう遅かったか、眠ったまま一酸化炭素を吸って、火災に気づくことさえ無かったのかもしれません。

この火災は、火災報知器も鳴動せず、避難誘導も無かったために、宿泊客が(それどころか従業員も)、火災に気づくのが遅れたことが、惨事となった最大の原因と言えます。そして気づいた時には、建物の不備のために、脱出手段はほとんど残されていませんでした。

そんな状態の中に、あなたと大切な人が放り込まれたことを、リアルに想像してみてください。暗闇の室内に煙が充満し、ドアを開けたら火や猛煙が吹き込んで来る。ドアを閉めても、隙間から煙が入って来る。窓は少なく、室内に避難器具もない。ラブホテルですから、すかさず避難行動に移るのがためらわれる格好でもある。それ以前に暗闇と煙で、すぐに服装を整えることも難しい。仮に明かりがあっても、パニック状態で冷静な行動はできない。


この火災以前に、管理人が予定していた記事、「お泊まり編」の最初に強調しようと思っていたことは、ラブホテルを選ぶ際にはちょっと奮発して、なるべく新しくて、複雑な構造ではない、耐震性の高い建物を選ぶべきだ、ということでした。単純な外形の建物は一般に耐震性が高くなりますし、新しい建物は、消防法による防火・避難設備も整っているので、地震はもちろん、火災に対しての危険も大きく回避できるのです。

しかし、地方や郊外のラブホテルは建物自体が古く、複雑に増改築を繰り返したものも少なくありません。これは、昔の建物を取り壊して新築しようとすると、現行法では建蔽率、耐震基準、防火基準や風営法などの規制がずっと厳しくなっているために、それ以前と同様の営業が難しいことが多く、設備費用もかさむので、敢えて増改築とリフォームを繰り返して「凌いで」いるようなケースがあるからです。そのために、災害対策的には非常に問題のある建物になってしまうのです。

そうでなくても、ラブホテルの通路は一般のホテルに比べて狭く、意識的に通路を複雑にしたり、装飾物などで見通しを悪くしていることも多く、しかも従業員の避難誘導も期待できないことも少なくありません。それにホテルの性格上、非常ベルの誤作動を嫌うあまり、スイッチが切られているケースもあります。

つまり、そんな場所に泊まる時は、地震や火災の発生時にはかなり厳しい状態に「ふたり」が置かれるということを、常に意識していなければならないのです。

では、楽しいデートを惨劇の場にしないためにはどうしたら良いか。今回の火災現場のような、「既存不適格」ホテル、つまり1980年以前に建てられたようなホテルを選ばないということを大前提として、次回から具体的な方法を考えて行きます。


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