【緊急特集】ホテルで生き残れ!【7】
このシリーズは、次回で終了します。今回は、脱出編の続きです。
廊下からの脱出が不可能になり、部屋に戻って避難器具を使うことになりました。後は、とにかく冷静にはしご、避難袋、緩降機などの設定をして脱出するしかありません。過去の事例では、避難袋の入口を開くための枠の設定の仕方がわからず、本来は袋の中を滑り降りるものを、袋の外側にしがみついて降りようとして転落した事例も起きています。
冷静に、図解どおりに手順を踏めば、本来はそれほど難しいものでは無いのですが、一刻を争う状況や、パニック状態で初めて設定する時などは、かなりの困難が予想されます。せめて、一度はどんなものなのかを見ておきたいものですが、最近のホテルでは、避難器具のフタと非常ベルが連動しているものもあり、平時に下手に開けられないものもあります。同様の器具を使う避難訓練などの機会があれば、どんなものか良く見ておくべきでしょう。平常時ならば、この辺で消防が駆けつけて来るかもしれませんが、ここでは大地震後を想定しています。仮に消防が来ても、ラブホテルの周辺などでは、はしご車が使えるような場所は多く無いのが現実です。救助が間に合うとは言い切れません。
下がダメなら上層階や屋上へ逃げれば、という考えもありますが、これは本当に最後の手段です。巨大なビルならばまだ可能性がありますが、普通のラブホテル程度の建物では、屋上で猛煙に囲まれたら、進退窮まります。特にすぐに消防が来ない状況では、長時間持ちこたえるのは困難です。地上に降りられる手段と時間が残されているうちは、そちらに賭けるべきです。
我が国の災害史には、大地震の後にホテルやデパート、オフィスなどのビルが大規模な火災を起こしたという事例は無く、スプリンクラーなどの設備も作動せず、消防も対応できない中で、何が起きるかは想像するしかありません。そして、どのような想像をしてみても、平常時よりはるかに高い確率で、「逃げ遅れたら終わり」なのは確かです。今まで述べて来た脱出方法も、想定でもこんな状態になってしまうのですから、現実にはさらに困難な状態に放り込まれるでしょう。前述のように、このような行動は「対症療法」に過ぎず、確実性はとても低い上に、ひとつ判断ミスをするだけで、致命的な結果となってしまいます。
ならば、事前にできるだけ悪い可能性を潰しておくのが、「生き残る」ための近道です。それはシリーズ当初に述べたように、耐震・耐火性の高い建物を選ぶ、入室前に避難経路をできるだけ多く確認しておく、非常時に取るべき行動を知っておく、最低限の防災グッズは常時携帯するというような備えと、「その時」何が起こり、どうすれば良いかという正しい知識を会得しておくことです。
ここまで、多くの対処法を並べて来ましたが、「そんなに覚えきれない」と思われた方も多いでしょう。当然です。管理人にしても、不得意な分野だったら、これほどたくさんの(そして、これで全部では無い)知識を完全に詰め込むのは困難ですし、それをやっても大して役に立ちません。一夜漬けの試験勉強では、応用問題は解けないのです。しかし、現実は応用問題の連続です。
大切なのは、「自分の頭で考えること」です。防災グッズを揃えただけで安心したり、箇条書きの「トリビア」を覚えるのではなく、実際の状況に自分が放り込まれたことをできるだけリアルに想像し、そこで起こることを考え、ひとつひとつ対処法を考えておかなければ、イザという時に実行できないでしょう。現実には、それでも難しいのですから。
当ブログでは、その「考えること」をお手伝いし、できるだけリアルに災害をイメージしていただくために、あれこれ想定した状況をお伝えしているわけです。常に、「自分ならどうするか?」という視点を持って、お読みいただければ幸いです。
このシリーズは、次回で最終回です。最後は、火災の際に「生き残る」可能性を大きく高めるグッズを紹介します。
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