首都圏直下型地震を生き残れ!【21】☆旅行編
■旅行で生き残れ(その5)
今回は、家族で海水浴に行くことにしましょう。イメージとしては、太平洋岸で背後に高台が無い海水浴場で、海の近くの宿に泊まります。
この状況で一番怖れなければならないのは、やはり津波です。まず、泊まるのが鉄筋コンクリート造りで4階建て以上のホテルならば、もし宿の中で強い地震を感じたら、避難場所は迷わず4階以上の上層階とし、そのことを家族皆で確認しておきます。仮にはぐれても、それぞれの判断で、「階段を使って」最短時間で上層階へ行くのです。「津波てんでんこ」です。もちろん、非常階段の場所を事前に確認しておくのは、言うまでもありません。
周囲にさらに高いビルがあれば、そのビルへ行くという選択肢もあるでしょう。ただし、企業や商業施設のビルは夜間は入れませんし、入り口がオートロックのマンションもだめですから、そこまで確認しておくべきです。なお、立体駐車場のビルは、閉鎖されていても、徒歩ならば比較的「なんとかなりやすい」のです。詳しいことは書きませんが、利用される際にはその構造をチェックしてみてください。ゆめゆめ、夜間に忍び込んでみたりしませんように(笑)。その他、道路のオーバーパスなど、とにかく高さのある、鉄筋コンクリート造りの頑丈な構造物を探しておき、その情報も家族と共有しましょう。
しかし現実には、海水浴場の近くにはそのような施設が無いことも多でしょう。そのリスクを考慮した上で宿をどこにするかは、皆様それぞれのご判断ということになります。
さて、海水浴場に行きます。そこで強い地震を感じたら、まずは砂浜で待機です。そこが最も安全な場所です。一般に「海の家」は簡易な造りであることが多く、地震で倒壊する可能性がありますから、まずはとにかく砂浜に駆け出さなければなりません。もし磯場や堤防、消波ブロック(いわゆるテトラポッド)の上にいる時に地震を感じた場合、転倒したら大けがをします。すぐに這いつくばるように姿勢を低くして、しっかりと身体を保持します。
揺れが収まったら、間髪を入れずに津波からの避難行動を始めなければなりません。同時に、ラジオなどで津波情報を取得します。津波の危険が無いとわかるまでは、行動を止めてはいけません。着替えている時間も、海の家の会計をしている時間もありません。とりあえず足りる金額を渡し、すぐに最小限の荷物を持って、海から離れるのです。おつりは「生き残ってから」です。
ここでは公共交通機関での旅行を想定していますが、自家用車の場合、近くに高台やビルが無ければ、車で避難したくなります。津波からの避難は徒歩が原則とはいえ、実際には車に乗り込む人が大勢いるでしょう。でも混雑している海水浴場では、おそらく駐車場から出るだけでも、かなりの時間を要するはずです。そこで事故でも起これば、貴重な時間を浪費するだけで、脱出不能です。
道路に出られても、郊外のとても広い道路でも無い限り、確実に渋滞するでしょう。事故や地震による道路損傷の可能性もあります。しかも多くの場合、数キロ以上先の安全な内陸部まで、広大な道路が続いていることは無いでしょう。「行けるところまで行く」と考えて車で動き出し、渋滞の中で車を放棄したりすれば、それがさらに激しい渋滞の原因にもなります。そして、そのような人は少なからずいるはずです。
そう考えると、あまり人がいないような「辺鄙な」場所で無い限り、車での避難という選択肢は捨てなければなりません。言うまでもありませんが、1993年の北海道・奥尻島津波でも、東日本大震災でも、渋滞に巻き込まれたまま、そうでなくても車に乗ったまま津波に襲われた犠牲者が、あまりに多いのです。
そこで重要になるのが、やはり事前の準備です。海に向かう途中で、比較的安全度が高いと思われる避難経路を、複数確認しておくのです。望ましいのは、旅行の計画の段階で周辺の地図などを確認し、広い道路、最も近い高台の方向、そこへ距離などの確認をしておくことです。
そして現代は、ありがたいことに衛星画像やストリートビューが手軽に見られます。これを利用しない手はありません。地図ではわからない、実際の道路の様子、高いビルや構造物の場所、方位、距離も確認しておくべきです。そしてもちろん、その情報を家族と共有しておかなければなりません。
そして現地に着いたら、「複数の」地元の人に尋ね、情報を補強します。複数にするのは、個人レベルの情報は、往々にして間違いや思いこみが含まれていることがあるので、内容をクロスチェックするためです。買い物ついでなどに、気軽に聞いて見れば良いのです。「ここは津波来たら、どこへ逃げればいいですかね?」くらいな感じで。事前の情報が無くても、これだけは実行すべきです。
そして海岸で強い地震を感じたら、津波の危険が無いとわかるか、安全と思われる場所に到達するまで、決めた方針に沿ってひたすら避難行動を迅速に進めるだけです。「様子を見る」余裕など無いことは、何より現実が証明しています。
災害時に限らず、何か判断を求められた時にその正否を左右するのは、いかに正しい情報を把握しているかに尽きます。正しい情報無くして、正しい判断をすることは不可能なのです。そして情報を把握していることが、非常時にも冷静を保つことにつながり、それが行動の速度を上げて、ギリギリの状況になった時に、「命の一秒」を稼ぎ出すことにつながります。
残念ながら、防災に「絶対」はありません。しかし「生き残る」可能性を自ら高めることは可能です。要はその正しい方法を知り、正しく実行するかどうか、それだけにかかっています。
次回は、再び旅行で携帯すべき防災グッズについて考えます。
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