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2012年6月 9日 (土)

首都圏直下型地震を生き残れ!【28】☆高層ビル編

■高層ビルで生き残れ(その5)

今回は、「免震ビル」は本当に地震からの救世主か?ということについて考えます。

まず結論から申し上げましょう。免震ビルは、救世主です。建物の構造破壊を防ぐ上では、絶大な効果を発揮します…と、何やら条件付きなのですが、これから解説します。

まず、「免震ビル」とは何か。一言で言えば、基礎部分と上層部分が剛構造で結合されていない構造のビルです。そんなビルの床下に良く見られる(実際には滅多に見られませんが)構造が、下画像です。
Menshin
床下の柱の途中に、非常に大きな荷重に耐えるクロロプレンゴムと鉄板を積層した「アイソレータ」という装置を挟み、地面が揺れても「アイソレータ」が変形することで揺れを吸収し、上の柱にあまり伝わらないようになっている構造です。さらに、建物の揺れを押さえる鉛ダンパや油圧ダンパを併設してあります。免震構造には、ゴムを使用したもの以外にもいろいろなタイプがありますが、すべて原理は一緒です。バネと油圧ダンパを組み合わせた、自動車のサスペンションの原理と、基本的には同じものです。

この構造により、小さな地震ならば建物本体はほとんど揺れることも無く、大きな地震でも、前記事の「一次モード震動」や「二次モード震動」の発生を抑止する効果が絶大であり、建物の主要構造の破壊を防ぐ上では、まさに「救世主」なのです。

ところが最近、この構造の弱点が見えて来ました。まずひとつ目は、東日本大震災のような「想定外」の強い揺れが加わったり、想定以上に長時間持続する「長周期地震動」が加わった場合、「アイソレータ」や「ダンパ」が破壊されてしまうかもしれない、ということです。その場合、復旧工事が大変なことになりますが、それでも建物の主要構造を守る効果はありますので、ここでは除外します。

もうひとつは、こちらが問題なのですが、「必ずしも揺れが小さくなるわけでは無い」ということです。これは管理人の体験ですが、東日本大震災の時、埼玉県南部の耐震構造マンション2階にある管理人の住居では、キャスターつきのワゴンが大きく移動していたくらいで、特に被害はありませんでした。ところが地盤の条件はほぼ同じだと思われる、近所の免振構造マンションの6階では、家具の移動、転倒などが多発して部屋の中がぐちゃぐちゃになったというのを、住人の方から聞きました。なにしろ、凄い揺れだったと。

2階と6階という違いだけで、そこまで差が出るのかとも思えず、管理人もその時は理由がわからなかったのです。なにより耐震構造、つまり一般的な「剛構造」よりも、免震構造の方が揺れが大きいなどと言うことがあるのだろうかと。

その後、その理由がわかりました。2012年3月8日に東京大学で行われた「首都圏直下地震防災・減災プロジェクト最終成果報告会」で発表された、独立行政法人 防災科学技術研究所の実験レポートに、その答えがあったのです。つまり、それまでは免震構造の弱点を、公式には誰も知らなかったと言って良いでしょう。

この実験は、世界最大級の加震台、実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)の上に、実際に4階建ての免振ビルを建て、様々な地震動を加えてその影響を見ると言うものです。そのレポートの該当部分を、当日配布された資料の中から引用させていただきます。

なお、この実験で加えた地震波は、短周期地震動は阪神・淡路大震災で観測された地震波の加速度を80%にした、震度6強レベルのもの、長周期地震動は、想定される東海・東南海地震で、名古屋市中心部で予想される、震度5強レベルのものです。

【以下引用】-----------
短周期地震動の加振では、高い免震効果が発揮され、床の最大応答加速度は十分に低減され、建物の構造的な被害もほとんど見られませんでした。
(中略)
一方、長周期地震動の加振では、免震構造でありながら、床の最大応答加速度が1.3倍に増幅してしまい250cm/s2程度となりました。これは、免震構造の固有周期と地震動が持っている最もパワーのある周期(卓越周期)とが近接しているため、免震建物が共振し応答が増幅してしまったものです。しかし共振しても応答加速度が250cm/s2程度であるため、建物の構造的な被害はほとんど見られませんでした。
【引用終了】-----------

かなり専門的な記述もありますが、要は短周期地震動に対しては絶大な効果があるが、長周期地震動が加わった場合、免震構造が揺れを増幅することもある、ということです。しかしその場合でも、揺れの加速度は大きく低減されているので、建物の主要構造を守る効果は大きいのです。

東日本大震災では、管理人の家の近所で実際にそれが起きたわけであり、レポートを聞いた時点でやっと腑に落ちました。余談ながら、この報告会では、例の「南関東直下震度7の可能性」のレポートも発表され、メディアはほとんどそちらしか食いついていませんが、同時にこんな重要なレポートもあったのですよ。

ともかくも、免震ビルは建物の倒壊や大きな破壊が起こる可能性は小さくても、「長周期地震動」による大きな揺れに対する対策は、一般の耐震構造建物より強化しなければならない、ということです。

さて、いよいよ次回から、高層ビルにおける地震対策の実際について考えます。


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