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2012年7月 9日 (月)

首都圏直下型地震を生き残れ!【46】☆大火災編

■大火災から生き残れ(その9)

今回は、さらに大火災から「生き残る」ための方法を考えます。

ところで、なぜ火災から避難しなければならないのでしょか。それは、言うまでも無く「火は熱いから」です。では、火はどれほど熱いのでしょうか。むかしは、あちこちで普通にたき火をしていたので、火の熱さを体験的に知ることができました。たき火に近づきすぎて髪や眉を焦がしたり、化学繊維の服を溶かしたりした経験のある方も多いと思います。

しかし最近は、そんな機会も減り、火の本当の恐怖を忘れがちです。火の温度は800℃とか数字で言われても、あまり実感はありません。でも、ここで火、特に火災の大きな火は、凄まじい威力を持っているということを、改めて認識しなければなりません。

管理人は以前、木造家屋の火災現場に遭遇したことがあります。開けた場所にある一戸建てで、火は建物全体、外壁にまで火が周り始め、窓からは大きな炎が吹き出しています。火災の専門用語で言うところの、「最盛期」です。そのような状態の建物に、人は無防備でどれほどの距離まで近づけると思いますか?まず、それは風向きに影響されます。風向きが自分と逆方向ならば、7~8mくらいでしょうか。それ以下では火の輻射熱で、むき出しの肌は熱いというより、鋭い「痛み」を感じます。その場にとどまることはできません。

そこで、風向きがこちら向きに変わりました。その瞬間、煙と共に目には見えない「熱の壁」が迫って来るような感じがしました。炎そのものからは距離があるのに、目の前で大きな火が燃えているような感覚です。肌はチリチリと刺すような痛みを感じ、そのままだったら数秒で髪の毛が縮れ、化学繊維の服は溶け始めるでしょう。すぐに退避が必要です。結局、30m近く離れなければ「熱の壁」から逃れることはできませんでした。それでも、風がこちら向きに強く吹いた瞬間などは、思わず顔を手で覆いたくなるほどの熱さを感じました。たった一軒の火災でも、それほどの威力なのです。

これがもし、あまり広くない道路脇の建物が軒並み火を吹いているような状況だったらと考えてみてください。もう、その道を進むことは事実上できません。「火に囲まれて逃げ場を失う」とは、そういう事です。もしあなたの進路が、下画像のような状態だったとしたら。
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このようなことが関東大震災でも、戦時中の空襲でも、阪神・淡路大震災でも、そしておそらく東日本大震災でも、実際に起きているのです。しかしその恐怖が、被災者の口から語られることはあまりありません。何故なら、そのような状態に陥った人は、ほとんどの場合「全滅」だったからです。

平常時の火災ならば、それが大火災であっても、基本的には出火点から燃え広がるだけですから、火に囲まれることはあまり無いでしょう。しかし大地震後の火災は、「同時多発」です。唯一の避難路の先が安全である保証は、全くありません。特に木造家屋の密集地、通称「木密(もくみつ)地域」では、危険は極めて大きくなります。猛火に包まれる建物の脇の路地などは、全く通れなくなるでしょう。

そのような絶体絶命の状態に陥る前に、安全圏に脱出するために必要な要素はただひとつ、「スピード」です。それは移動速度のことでもありますが、それよりまず避難を始めるタイミングの早さです。巨大災害下では、チャンスは一度のみだと考えねばなりません。「なんとかなる」も「様子を見る」も、最悪の状況下では一切通用しません。とにかく、「手遅れになる前に安全圏へ脱出する」ことが全てです。そして、その「スピード」を実現するために必要なのが、前回までに述べたような知識と方法なのです。


ここで、災害時の人間心理についても考えておきましょう。人は、大きなショックを受けた後は、しばらく積極的な思考ができなくなりがちです。大地震の危機から一旦脱出し、状況が少し落ち着いて来た時には、多くの人がそのような状態になっているでしょう。そこでまた「すぐに避難せよ」と言われても、目の前に火が迫っているのでもなければ、つい「なんとかなる」や「様子を見る」と、危険を過小評価してしまう可能性があります。「ついさっきあんなひどい目に遭ったばかりなのに、もうごめんだ」とか「もう勘弁してほしい」などという気持ちが、判断を狂わせるのです。大火災の具体的な危険を知らなければ、なおさらでしょう。

しかし、現実の脅威は人間の気持ちなど全く省みずに、荒れ狂います。「生き残り」たければ、行動するしかありません。それも、正しく素早い行動を。状況は、待った無しです。そこで必要となるのが、皆に状況を説明し、再避難のために立ち上がらせるための、正しい知識と強力なリーダーシップなのです。


当テーマ「大火災編」では、ここまで大火災危険地帯からある程度離れた場所での行動というニュアンスで述べて来ましたが、言うまでも無く、大火災が想定される木造家屋密集地などでは、地震直後から大火災の危険に晒されることになります。そのような場所では、地震からの一次避難の最中から、避難経路の状況や、一時(いっとき)避難場所の危険度を判断し続けなければなりません。居場所に留まるにしても、大火災という「次の危険」は、すぐ目の前にあります。大混乱と精神的ショックの中でそれができるかどうかが、「生き残れる」かどうかの分かれ道になる確率がより高くなります。まずは、ご自分の居場所で想定される被害を知ってください。

繰り返しますが、必要なことは「正しい知識」と「正しい情報」、それに基づく「正しい判断」と「正しい行動」です。それは大火災に限らず、すべての災害から「生き残る」ために必須です。それがわかれば、災害を無闇に怖れるだけで、根拠の無い予知だの兆候だのに気を取られていたりする暇は無いと思うのですが。

なによりまず、あなたの目の前で起こるはずの現実を「能動的に」学んでください。それがあなたと、あなたの大切な人の命を守るのです。ただ受け身でいて目に入ってくる情報は、役に立たない不良情報だったり、具体的な行動を示唆しない、インパクトだけの「トリビア」や「煽り」が大半です。でも「能動的」と言っても、ネットでキーワード検索する程度では、状況は似たり寄ったりですが。

ここまでは、大火災に関する知識と、情報の集め方について述べて来ました。次回からはやっと、具体的な「正しい判断」と「正しい行動」に入ります。


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