首都圏直下型地震を生き残れ!【44】☆大火災編
■大火災から生き残れ(その7)
前回(その6)から続きます。
大火災が発生している最中や、津波の危険がある状況下では、一旦避難が完了しても「情報収集の継続」、つまり状況の変化を「見続ける」ことが必要です。しかし、この点は世間の「防災マニュアル」でもあまり触れられていない部分でもあります。
特に避難所など大人数が集まる場所では、意識的に監視体制を構築しなければ、「結局だれも見ていなかった」という状態になるでしょう。ただでさえ発災直後はやるべきことが山ほどあるのですが、それだけにかまけていては、危険の接近を見逃すことになります。
ここで管理人が提唱したいのは、大火災の危険が完全に去るまでの間は、「24時間の監視体制」を構築すべきだということです。避難所でも、マンションや住宅街でも、監視要員を任命して、交代で周囲の監視に当たるのです。
具体的には、ビルや高台の上に監視要員をできるだけ複数配置して、火災の状況を監視するのです。複数にするのは、複数が見た情報を総合することで、より正確な状況が把握できるため、監視者の精神的な負担を少なくし、思い込みなどによる錯誤をできるだけ排除するため、ひとりが伝令や休憩に出ている間も監視を続けられるようにするため、さらに余震など緊急時に相互に支援できるようにするためです。
特に、夜間の監視体制を途切れさせないようにすることが重要です。夜間は、避難準備や移動に昼間よりはるかに時間がかかるからです。状況が許せば、できるだけ明るいうちにバイクや自転車で周辺を定期的に「偵察」し、オプションとなる避難場所、道路状況、その他状況の変化をできるだけ早く把握しておくべきです。この場合も、上記の理由から複数であることが望ましいでしょう。もし夜間に出る場合は、暗闇の中での事故や、火事場泥棒などに遭遇することも考えられます。
情報が集まったら、避難が必要かどうかを判断するのはリーダー、もしくは協議の上ですから、監視要員には、例えば「風向きがこちらに向いていて、火が○○(ビルなどランドマーク)まで迫ったら、またはどの方角でも火災旋風が見えたら、すぐに報告してください」というように、取得すべき情報の内容を具体的に指示しておくことで、判断時の混乱を少なくすることができます
そして最も重要なのが、「情報と意識の共有」です。もし避難場所に大火災が迫って来たら、そこにいる皆が一斉に避難を始めなければなりません。そのためには、再避難が必要になるかもしれないということを全員に認識させて、危険が完全に去るまでは荷物はなるべくほどかずに、できるだけ短時間で移動を始められる状態を維持するよう協力を求めておきます。
そして、再避難時の「合言葉」を共有します。例えば、リーダーが「避難準備!避難準備!避難準備!」と繰り返し言ったら、それを周囲の人に伝達しながら、すぐに荷物をまとめて避難体制に入るということを周知しておきます。なお、グループをまとめる際に、会社名、マンション名、町内会名など何か名前をつけておくと、他のグループの情報との混乱が防げますし、メンバーに帰属意識が生まれ、より強い協力体制が生まれるでしょう。こんな時、人はだれもひとりにはなりたくありません。自分がそのグループに帰属し、協力しあえる人の中にいるという、安心感がそうさせるのです。
負傷者、乳幼児、お年寄り、身体障害者、病人など「災害時要援護者」がいる場合には、事前に健常者に協力を求め、再避難時の支援担当者を決めておく必要があります。この場合も、要援護者ひとりに対して複数の担当を割り当てておかないと、負担が大きすぎて機能しない可能性があります。しかし基本的には、そこにいる皆が協力しあうというコンセンサスを構築しておくことが必要です。
大人数で移動する際には、隊列の先頭にはリーダーと道案内できる人が付き、さらに途中での行き先変更などを後方に伝えるための「伝令」を置きます。基本的には、リーダー自らがいるべきポジション、この場合は先頭を動いてはいけません。行動中のリーダーの不在は、全体の混乱を招きます。列の中間と最後方にはなるべく体力のある人を配置し、リーダーからの情報の伝達と、脱落者の支援に当たらせます。
ところで、何度も「リーダー」が登場しますが、大人数が何か統一行動をしようと思ったら、どうしてもリーダーが必要です。それは個人の場合もグループの場合もありますが、それなくして効率的で迅速な行動は困難です。そしてリーダーに求められるのは二点。「迅速な判断」と、その前提となる「正しい知識」、これだけです。
知識は、知っている人がフォローすることができますが、判断だけはリーダーの仕事です。その判断が、グループ全体の命運を握ることもあります。特に大災害時からの避難は、時間との戦いです。逡巡している暇はありません。あなたのグループにそんな人や機能が欠けていたら、危機が迫った時に「生き残る」確率は、確実に下がります。
もしそのような不安があるのなら、答えはひとつです。あなた自身が学ぶのです。だれもがリーダー格になれるものではないかもしれませんが、正しい知識を身につけ、正しい行動をすることは誰にでもできます。自分や大切な人の命がかかっている時に、信頼できない他人に運命を委ねて良いのですか?
次回に続きます。
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