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2012年8月29日 (水)

根本的に間違っている

今朝、NHKニュースで、静岡県の小学校の津波避難訓練を採り上げていました。その中で、最初は避難の列を若い男性教諭が先導し、最後尾にリヤカーを牽いた女性教諭がついて落後者を乗せたが、結果的にリヤカーが隊列から大きく遅れてしまった、というものがありました。もちろんそれはすぐ改善され、女性教諭が先導し、若い男性教諭が最後尾で落伍者支援に回るようにしたとのことですが。

でも、もしこれが「本番」だったらどうなったでしょうか。言うまでも無く、落後者のグループが津波に呑まれた可能性が非常に高かったのです。

当ブログでは以前、東日本大震災の、いわゆる「釜石の奇跡」が成し遂げられた理由について述べましたが、そこでも子供の隊列を支援する大人の役割や配置について述べました。また、「大火災を生き残れ」シリーズの中でも、災害時要援護者を含む隊列が避難行動する際の支援隊形について述べています。
■「釜石の奇跡」の避難隊形についての記事はこちらから
■災害時要援護者を含む避難隊形についての記事はこちらから

大人数が移動する場合、その行動について行けない落後者が出ることは必ず想定しなければなりません。そして、それを支援・保護する役割の人員を配置するのは常識です。言うまでも無く、その役割は隊列の最後尾にいなければならないのですが、そこに、一般に男性に比べて体力、移動速度に劣る女性を配置するという発想が、根本的に間違っています。ただでさえ移動が遅い落後者を支援しながらの移動はさらにスピードが遅くなり、「弱者」だけの危険が増して行くのです。現実には、落伍グループを支援するために前方の男性教諭が後方に戻り、その間は本体の行動が停滞して、全体が危険に晒されるような状況も考えられます。

管理人としては、「そんなことちょっと考えればわかるだろう」と、正直腹が立ちました。それも、普段から子供の隊列を管理している教師が、なぜそんな発想をしたのかというのが理解できません。もっとも、落後しても特に危険が増すわけでは無い平時の発想と経験が、危機管理を誤らせたとも考えられますが。なにしろ、これが「本番」でなくて本当に良かったとしか言えません。


私事ながら、管理人はバイクに乗るのですが、初心者を含む多台数のツーリング時には、大型バイクに乗ったベテランが最後尾につくのが常識です。何かトラブルがあった場合、経験豊富なベテランが独自の判断で対処し、基本的には、本隊は先行します。そしてトラブル処理後、場合によっては落後者を乗せて本隊に追いつくのです。そのために、最後尾には経験豊富なライダーと、性能と工具などの積載能力に優れた大型バイクが必要なわけです。

多人数の避難行動時もこれと全く同じで、一番負担がかかる最後尾には、独自の判断で動ける体力に優れた人員が、可能ならば複数いなければならないのです。先導は、基本的には決められた行動をすれば良いわけですから、必ずしもリーダー格でなくてもかまいません。バイクツーリングでは、ちょっと慣れてきたくらいの人を敢えて先頭に立たせ、先導の経験を積ませるようなこともやりました。これはこれで、道路状況を判断しながら、同時に前よりもミラーで後ろを見ている時間の方が長いくらいの、かなり大変なポジションではあるのですが。

これに対し、最後尾は絶対にベテランでなければならないのです。運転技術や修理技術に長け、追い上げが効く高性能のバイクであることに加え、あらゆる状況において、本隊と離れても「独自の判断で安全に行動できる」ということが求められるからです。バイクの場合、判断を誤ればたやすく生命に関わる状況になるという点で、災害避難時に近いものがあるということもできます。

このように、特に災害避難時は「適材適所」でなければなりません。その誤りは、確実に「結果」に反映されます。平時の序列など意味を為さないのです。非常時には、すぐに「適材適所」の体制にシフトできるかどうか、そのコンセンサスが普段から出来ているかどうかも、重要なポイントです。一刻を争う非常時に、意見百出で右往左往している暇など無いのです。現実には、「船頭多くして船山に登る」というような組織が多いですよね。決して笑い事では無く。

もうひとつ残念なことは、津波危険地帯の子供を預かる教師なのに、究極の教訓である「釜石の奇跡」を十分に分析、研究しているような様子が見えなかったことです。テレビや新聞の報道からだけでは、表面的なことしか見えて来ません。目に見える行動だけ真似をしても、その効果は知れています。

なぜなら、「本番」では必ず想定外の事態が発生するからなのです。訓練通りに行くことなどありません。あらゆる状況を想定してオプション行動を設定し、さらに想定外の事態が発生したときの行動基準、優先順位を徹底的に計画、訓練しておくことでしか、「本番」におけるひとつの行動を、高い確率で完成させることはできません。釜石東中では、それが行われていたから成功したのです。ですから、以前も書いたのですが、「釜石の奇跡」ではなく「釜石の成功」、むしろ「釜石の勝利」と呼びたい事例なのです。

今日のHNKニュースはほんの一例に過ぎませんが、このような根本的な誤りがレアケースなのか、それとも普通なのか。管理人としては、後者の可能性が大きいのではないかと危惧しているのですが。紹介されたこの海沿いの学校は、それでもかなり防災意識が高い方だと思われますので、なおさら心配になります。


このニュースを見たからという訳でもありませんが、次回から新シリーズ【脱出せよ!】を始めます。地震が起こるの起こらないのと心配するよりも、あらゆる状況での脱出・避難方法を知っておく方が、余程役に立つというものです。内容的には、以前の記事と重複する部分も多くなりますが、このシリーズでは自然災害に限定せず、災害や事故に遭遇した場合の「最初の1分」の行動を中心にまとめて行きます。

発災・事故発生直後には、持参している防災グッズもあまり役に立てられません。「とっさにどう行動するか」、それがほとんど全てとも言え、そしてその結果が、「生き残る」確率を最も大きく左右するのです。


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