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2012年8月31日 (金)

「死者32万人」の読み方

「南海トラフ巨大地震による死者は、最大32万人」(正確には32万3000人)という、インパクト抜群の被害想定が発表されました。これでまたしばらく、メディアでは「32万人大会」で賑わいますね。でも、その大半はマクロ的な被害について騒ぎ立てるだけで、「ならばどうしろ」という情報は、ありきたりの、しかも実践的では無い情報でお茶を濁されるだけでしょう。

この被害想定を読むためには、まずその前提を知らなければなりません。メディアに乗っている部分は、「冬の深夜に、愛知県沖で最大級の地震発生」というくらいなものですが、それは「在宅率が高く、睡眠中の人が多く避難行動が遅れる時間帯に、人口密集地に近い場所を震源とする、科学的に想定される最大級の大地震と大津波が発生する」という、最悪の条件を設定したものです。

では、犠牲者数の試算方法はどのようなものでしょうか。まず最初に、地震による家屋の倒壊や火災による被害が算出されます。これは想定した揺れに耐えられない、耐震性の低い建物が倒壊し、その住人の大半(正確な係数はわかりませんが)が、死亡もしくは自力避難不可能の状態になるとします。

次に、津波の予想到達範囲の危険地域に、津波到達時にどれだけの人口が残っているかを試算します。今回の想定では、地震発生後速やかに津波避難を開始するのは、津波到達予想範囲人口の20%と、かなり低く見積もっています。津波で生命の危険に晒される人が100人いたら、20人しか速やかに避難を開始しない、またはできないということです。

この20%という数字は、東日本大震災後の調査で判明した「実績」に基づいています。もちろん、津波の危険度を見誤って避難しないだけでなく、他の人を救ったり、探すためなどで避難が遅れる場合もありますが、とにかくそのような数字による試算です。それに、耐震性が低い建物の倒壊によって避難不可能のまま津波に呑まれると想定される数を加算し、さらに津波に呑まれた場合の死亡率、おそらく90%以上をかけて算出した数字が、最悪32万人という結果になったわけです。

例によって、この試算は「最悪中の最悪」ということなのです。ちなみに、ここで想定される規模の地震は、我々が知る限りの過去に発生したことはありません。また、先に発表されて強い印象に残っている「高知県で津波高34メートル」とされる地震とは、想定が全く異なります。そちらは、高知県沖が震源となる最大級の地震によるものです。それに対し、今回の試算は震源域沿岸に最も人口が密集している愛知県沿岸部が最大の被害を受けるという、つまり「最も死者が多くなる場合」として設定された条件なのです。

ですからまず、32万人もの犠牲が出るのは、ごくレアケースであると考えるべきです。この数字を前提に、ただ恐怖だけが先に立っては、百害あって一利なしです。では、危険地帯に住む人はどうすれば良いのでしょうか。実は今回の想定で、犠牲者数を80%も減らせる可能性がある試算も発表されています。

それはまず、危険区域において現在80%程度の建物の耐震化率、これは1981年以降の耐震基準によって建築・補強することを意味しますが、これを90%まで向上させることです。なお、現在建築される建物は、2000年に制定された、さらに強化された耐震基準によるものとなります。

もちろんこれには経費の問題が大きく絡みますので、一朝一夕に改善されるものではありません。これは特に個人宅の場合は、対策が遅れがちです。行政のさらなる補助や、ある程度強制力を持った条例制定などの対策が望まれます。

もうひとつは、速やかな避難をするということ。これは建物の耐震補強とも深く関係するのですが、地震発生直後に危険地帯人口の70%が、速やかに津波避難を開始するということです。それには何より、個個人の意識が大切です。自分の居住地の危険度を正しく知り、無駄足を辞さずに避難を開始すること。そして、東日本大震災の教訓としての「津波てんでんこ」を実現する避難・連絡体制を、普段から構築しておくことです。例えば、地形的な高台が少ない場所では、どのようなルートで、頑丈なビルなどの安全地帯へいかに短時間で避難するかや、離れている家族や関係者が、発災時にどのような行動をするか、どのように連絡をするかを、普段から考え、共有し、できる限り訓練しておくのです。

そして、それを実現するために建物の耐震性向上が重要となります。倒壊建物に閉じこめられたまま火災や津波に呑まれることを、リアルに考えなければなりません。たとえ建物が頑丈でも、家具ひとつの転倒で、脱出不能になることもあります。対策は、徹底的にやらなければなりません。

そのような対策が理想的に機能した場合、犠牲者は32万人の80%減、64000人程度に減らせるという試算になっています。これは、居住地や不測の事態などの条件を無視してかなり乱暴に言ってしまえば、あなた次第で危険度は80%も減らせるということでもあります。

まとめますと、想定される最悪の地震・津波が発生した場合でも、まずその時の居場所から速やかに脱出できること、そして津波到達前に安全圏に避難できること、このふたつが実現すれば、高い確率であなたは「生き残る」ことができるのです。そのためには、避難行動を阻害する要因をできるだけ取り除かなければなりません。マクロの被害想定など、いくら恐れても何も解決しないのです。その中で何ができるか、どうやってそれを実現するかを「あなた自身が」徹底的に考え、実践すること。それしかありません。


では、まず最初に何をするか。それは「危険を知る」ことです。お住まいの地域のハザードマップを見て、あなたの居住地や仕事場などが、地震の揺れ、津波、火災、液状化、洪水、土砂災害などの危険に、どれだけ晒されているのかを知ることから始めましょう。ハザードマップは自治体の防災課で入手できますし、多くの地域ではネット上でも公開されています。今回の発表を受けて、今後さらに改訂が加えられる場所も多いと思われますが、まずは現在のハザードマップを参考に、さらに独自の安全マージンを加えると良いでしょう。

そして起こりうる危険がわかったら、そこから具体的な行動を考えて行くのです。家の中ではどうするか、仕事場や学校ではどうするか、そのために何が必要か、など。

基本的な対策は上記のようなことですが、それぞれの置かれた条件によって、細かい対策は異なります。よくあるケースにおける避難方法や装備は、当ブログの過去記事でほとんど網羅していますが、もしどうしたら良いかわからない場合は、当ブログのコメント欄か、管理人宛メールでご相談に応じます。メールの場合は、一切の秘密は厳守することをお約束いたします。

大災害は明日かも、いや1分後かもしれません。すぐに行動を始めましょう。くれぐれもネット上などに溢れる、恐怖を煽るだけのような不良情報には惑わされませんように。間違った行動は、間違った結果しか生みません。

あなたとあなたの大切な人を守る最大の力は、あなた自身の意識と行動なのです。


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