本当に知るべき危険とは?【対災害アクションマニュアル 02】
■第1章 危険を知れ(その1) 【本当に知るべき危険とは?】
ちょっと学生時代を思い出してみてください。あなたは、期末試験でどうしてもいい点を取りたいとします。ライバルに勝ちたいとか、進級が危ういとか理由はともかく(笑)あなたはどうするかといえば、試験範囲を一所懸命勉強しますよね。教科書だけではわかりにくければ、参考書とかも買い込んで。
この参考書というのがまた千差万別ですから、良く売れているものを選びたくなります。売れているイコール評判が良い。つまり「よくわかる」と思うのが普通です。そこで、あなたはどこの本屋でも良く見かける参考書を買ったところ、これがまた実に面白い。歴史の参考書ならば裏話のコラムが楽しく、数学ならば頭の体操や裏技のようなコラムが充実していて、ついついそちらばかりに目が行ってしまいます。これは売れるのもむべなるかな。本音を言えば、試験のことなど考えたくないものですから、余計にのめりこんでしまいます。
おかげで歴史の裏話や数学の裏技のようなことにはずいぶん詳しくなったけれど、肝心の期末試験は惨憺たる結果に・・・まあ、当然ですよね。「試験に出る」問題の対策をやっていないのですから。勉強のピントが、激しくズレています。
現在の「防災情報」も、実はそんな状態だとお感じにはなりませんか。特に東日本大震災後、本屋やコンビニにはいくつもの「防災本」が並び、テレビやネットにもそんな情報が山ほどあります。でも、そんな情報の大半が、あれが起きるだのこれが起きるだの、なぜ起きるだの、起きたらどうなるだの、そんな話ばかりが目立ちます。
ではそれに対してどうするかという部分は、家を補強せよ、家具を固定せよ、津波からすぐに逃げよ、すぐに帰るな、街中では頭を守れ、水は家族の3日分用意せよとか、通り一遍の情報が少々。でも、例えば家具の固定ひとつにしても、実際にやるとそうは簡単には行きませんが、その対策などはほとんど見かけません。管理人の考えでは、巷に溢れる「防災情報」の半分以上、場合によっては8割ほどもが、「生き残る」ためには大して必要ない情報です。興味の対象としては結構ですが、例えばプレートがどうこうという地震のメカニズムを知っていても、「生き残る」ためには何の役にも立ちません。
では震度7や、34メートルの津波が来る(かもしれない)とかいう話は?まず、それがあなたの活動範囲のことでなければ、不要な情報です。では、例えば最大震度7が予想される地域の方、あなたが襲われるかもしれないのは、どんな震度7ですか?阪神・淡路大震災と東日本大震災では、同じく最大震度7を記録しています。でも、阪神・淡路大震災では10万棟もの建物が全壊したのに対し、東日本大震災では、建物の倒壊はそれほど多くはありませんでした。あなたを襲うかもしれないのは、どちらの震度7かご存じですか?
揺れ方の違いの理由を知る必要は、特にありません。しかし、違うのです。この場合に必要な情報とは、最大震度よりも揺れ方の違いですが、それはあまり重視されていません。せいぜい「直下型」と「海溝型」という言葉だけで区別されているくらいで。でも、どちらのタイプがどこで起きるかで、対策の優先順位ややり方が変わって来たりもします。また、最大震度が上がるということは、強い揺れの範囲も広がるということでもありますが、両者は強い揺れの範囲にも大きな違いがあります。
「それは防災本に出ている揺れの予想図を見ればかる」と言われそうです。それもいらない情報なのかと。確かに、強い揺れの予想範囲にご自分のいる街が入っているのを見て恐怖を感じ、災害対策を進められた方も多いでしょう。なんだ役に立つ情報じゃないか。もちろんそれは否定しません。でも、大地震の際にあなたの命に危険を及ぼすのは、街全体ですか?敢えて「えげつない」表現をしましょう。あなたの身体を潰し、切り裂き、焼くのは一本の梁、ひとつのタンス、一片のガラス、一枚の瓦、そして最初は小さかった火なのです。それこそが本番で「試験に出る」問題とも言える、本当の危険なのです。
あなたを直接取り巻く身近な危険を知り、危険から遠ざかる方法を考え、危険を摘み取るアクションを実際に起こすこと。そのレベルにまで落とし込んでこそ、すべての情報は「必要な情報」に昇華されるのです。しかし多くの人にとってそれは面倒で、こまごまとしすぎ、余計な負担を強いるものです。どこまでやるかは、それぞれのお考え次第でしょう。
ただひとつ確かなことは、スポーツ選手が良く口にする「練習は裏切らない」という言葉の意味と、なんら違いは無いということです。でもスポーツや試験勉強と違うところは、「本番」の日が決まっていないということですが。ともかくも、災害対策も正しくやったらやっただけの成果が、「生き残る確率が上がる」という形で現れます。そのための第一段階として、「本当の危険を知る」ということが必要なのです。それを最も良く体現したのが、いわゆる「釜石の奇跡」だとも言えます。
こんなことは、既に災害対策を進められてる皆様には、釈迦に説法の類かもしれません。それでも、今一度考え直してみてください。マクロに捉われすぎて、ミクロを見落としていませんか?極論すれば、マクロ情報はこれだけ知っていれば良いのです。「でかい地震が来たら、こんな風に揺れる」
それを、あなたの居場所で何が起きるか、津波、火災、土砂災害などに落とし込み、さらにあなたの周囲3mの危険にまで落とし込んで考えなければなりません。それを実践するために使える情報を、この章でお知らせしたいと思います。
次回から、「危険を知る」具体的な方法に入ります。
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