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2012年10月30日 (火)

被災者の方にお話を聞きました【管理人雑感】

当ブログでは、災害から「生き残る」ための考え方、行動、技術、装備などを科学的、実践的に考えています。それらはイザという時に確実に役に立つものには違いないのですが、残念なことに、常に「確実」でもありません。なんだか自己否定のようにもなってしまいますが、それが巨大災害の現実でもあります。

先日、福島県南相馬市の津波・原発事故被災地域から埼玉県内に移住された女性に、お話を伺える機会がありました。その節は長時間にわたっていろいろお聞かせいただき、ありがとうございました。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。

その方は地震発生時にはたまたま地元を離れており、地震や津波による直接的な生命の危険には晒されなかったそうですが、しばらくの間地元に戻れず、出先で過酷な避難生活を強いられたそうです。やっと地元に戻ると見慣れた街は崩壊し、何人もの知人が亡くなったり行方不明になったりしていて、さらに放射線の危険にも晒されていたのです。

奇しくも、管理人が南相馬訪問時に撮影し、以前当ブログにも掲載した写真の消防車(下画像)に乗っていて津波に巻き込まれて亡くなった消防団員の方を、直接ご存じでした。
Photo
その方も、大津波警報に際してすぐに仕事を切り上げて出場し、避難を呼びかけている最中に津波に呑まれたそうです。このように、自らの職務や他を救うために生命を賭した方々は、全被災地にたくさんいらっしゃるのです。

あの消防車を見た時「乗っていた人はどうなったのだろう」と気になっていた管理人は、その方のお話を聞けて、なんだかとてもほっとしたような気持ちになりました。外部の人間としては、漠然と犠牲者のご冥福を祈るより、ある特定の方を思い浮かべられる方がより心を込めて祈れる、そんな気がします。だからこそ、南三陸町の防災対策庁舎での出来事や大川小学校の悲劇に対する注目が集まり、それは基本的には善意なのでしょうが、やはり人知れず生命を賭けた人々のことも、決して忘れずにいたいと思うのです。

さておき、過酷な現実を目の当たりにしてきたその女性の言葉で一番印象的だったのは、

「生きるか死ぬかは、結局"運”でしかない」

というものでした。災害規模が大きくなればなるほど、人間の都合や努力をあざ笑うかのうように、理不尽な現実が襲いかかります。あの震災の時は、津波の到達時にどこにいたか、それだけが多くの人の生死を分けたのです。彼女の言葉は、激戦の戦場から生還した方の言葉とも共通するものです。いち市民である妙齢の女性と激戦を生き残った兵士から同じ言葉が出るとういうことが、そこで起きたことの異常さを物語ります。実際にその光景を見ていない我々は、いくら話を聴いても映像を見ても、実は本当のことなど何も理解していないのかもしれません。そして結局、すべては運だというのでしょうか。

しかしそんな言葉を聞いて、「災害対策が甘かったからだ」などとただ批判的に考える人がいたら、それは全くのナンセンスです。究極の「机上の空論」です。それに当てはまる例が無い訳ではないでしょうが、いかなる備えや行動をも超える現実に晒されることもあるということを、我々は今震災で改めて突きつけられたのです。


管理人は、震災後に何度も被災地に入りました。災害対策に関して、管理人がそれなりの知識を持っていることは認めていただけると思いますが、それでも、行く先々で何度もこう思ったのです。

「あの時、ここにいたら生き残れなかった」と。

それは逃げ遅れた場合に限らず、その場にいたらおそらくここへ逃げたろうと思われる先が壊滅していたり、逃げる場所さえ無かったり、いろいろなケースがありました。持てる知識を総動員しても、結論が「無理」になるのです。では、災害対策とは所詮運次第で意味の無いものなのでしょうか。すべて否定はしません。そういうこともあるのです。しかし「最悪の状況」で無ければ、生き残れる可能性が出てきます。そして、常に「最悪の状況」ばかりとは限りません。

災害時にあなたが「最悪の状況」に放り込まれるかどうか、それは正直なところ運次第です。でも、わずかでも生き残る可能性があればそれを見出し、拡げるための力を身につけること。それこそが災害対策の原点なのだと、改めて考えさせられました。生命の危険が迫った時に、すぐに「あ、運が悪かった。あきらめよう」と思える人などいないでしょう。人は誰でも最後の瞬間まで、生き残る可能性を見出そうともがき続けるのです。災害対策とはつまるところ、そんな「もがき」でなければならないのではないでしょうか。そのくらい、本能的に生命を守るための行動でなければ。

当ブログでも何度も述べていますが、世間で言われる災害対策の多くが、「生き残ってから」の「避難生活快適グッズ」を薦めるようなものばかり目立ちます。もちろんそれも大切ですが、その前にやること、考えることがあるということを、くれぐれもお忘れになりませんように。当ブログではそのためのお手伝いをしたいと、管理人は常々考えて記事を書いております。

災害対策の優先順位が間違っていることに「その時」気づいても、もう遅いのです。


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