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2012年11月

2012年11月30日 (金)

避難所チェックリスト【対災害アクションマニュアル 19】

■第1章 危険を知れ(その17) 【避難所チェックリスト】


今回は、避難場所に関するチェックリストをお送りします。

リストはふたつの項目に分けます。まずはフィールドワークに出る前にチェックしておくことと、現場でチェックすることです。


☆すべての避難場所共通の事前チェックポイント(地図・ハザードマップによる)

□津波到達予想範囲ではないか

□液状化危険地域ではないか

□揺れが強くなる軟弱地盤地帯ではないか

□周囲に化学工場、コンビナート等はないか

□徒歩圏内に他の避難場所はあるか、その周囲はどうか

□自宅からの経路は複数あるか


☆現場チェックポイント

□避難所までの移動時間はどれくらいか
 (最も遅い人の速度で考える)

□移動した時、どれくらい疲労するか
 (荷物を持っての炎天下、酷寒、暴風雨など悪条件を想定する)

□自宅等からの経路と周囲に危険はないか
 (住宅密集地・繁華街・倒壊危険物など)

□避難所周囲に危険要素はないか
 □古い建物、ブロック・石塀など(倒壊)
 □繁華街(落下物・火災・爆発)
 □住宅密集地(火災・火災旋風))
 □中小河川(津波遡上・土石流)
 □崖、土盛り、石垣、切り通し(崩落)
 □中小工場、石油・ガスタンク等(火災・爆発・有毒ガス)
 □近隣の中高層ビル(ビル風による火災旋風)

□建物の場合、倒壊・損壊の危険はないか
 (外壁やガラスの落下、ガラス壁の破損など)

□河川敷、運動場等の場合、すぐ脱出できるか、避難時にどの辺りに位置を取るべきか

□屋外の場合、風雨、直射日光を凌げる場所があるか

□家族などと離散した場合、再集合できる目印があるか

□周囲の見晴らしはどうか、監視できる場所はあるか
 (津波・土石流・火災等の接近を察知できるか)

□避難場所及び周囲の地面の状態はどうか
 (雨、冠水、液状化などでぬかるみになるか)

□脱出経路は複数あるか、それはどこで、周囲はどうか


現実的には、このくらいかと思います。あまり細かく気にしても、かえって混乱を招きます。しかしこれだけでも、各項目すべてで「安全」な場所など存在しないでしょう。そこで必要なのは、現実の危険を知った上で、事前にそれらに対処する行動を考え、装備を揃えておくということです。

そしてその備えこそが、ギリギリの時に「命の一秒」を稼ぎ出すことに繋がるのです。

各項目の中で最も大切なことを強いてひとつ挙げるならば、最後の「脱出経路は複数あるか、それはどこで、周囲はどうか」ということでしょうか。

これは避難場所に限らず、どこにいる時でも常に意識しておくべきです。つまるところ、どんな危険からでも脱出できれば良いわけで、それを最短時間で行える備えこそが最も大切なのです。

なお、本文では「津波避難場所」の危険を特に取り上げていませんが、他の避難場所の危険と基本的に共通するものです。ただ、建物でない「津波避難場所」の場合は自然の高台であることが多いので、斜面、崖、石垣などが崩落する可能性を特にチェックしておかなければなりません。

加えて「想定を超える」津波の襲来に備えて、場所によっては「さらに高い場所に上がれるか」もチェックしておくべきでしょう。また、急な坂や階段を上ることが多いですから、最も体力の無い人がどれだけの時間で安全圏に避難できるかも、事前に知っておかなければなりません。


ところで、「避難場所の危険」に関する情報は、少なくとも自治体などの公式リリースには存在しないはずですし、一般的な「防災マニュアル」にもほとんど見かけません。前述したように、公式には「避難場所は安全」という前提になっているからです。しかし、現実には多くの危険要素が存在することは、おわかりいただけたかと思います。

だから行政や他人任せではなく、自分の命は自分で守る。そのためには自分で危険を見つけ、自分で備えること。それが当ブログの主要テーマでもある、「セルフディフェンス」(自己防衛)と「フェイルセイフ」(予防安全)の考え方です。

あなたとあなたの大切な人の命を救うのは、管理人も含めた「防災屋」や各界の「専門家」ではなく、あなた自身なのです。

次回からは、その他の危険について考えます。


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2012年11月28日 (水)

【大きな変化あり】宏観現象による地震警戒情報【11/28】


千葉県北部の井戸水に、大きな変化が出たという情報をいただきました。変化の内容から判断すると、南関東で大きめの地震が発生する可能性が考えられます。

11月27日から井戸水に匂いが出て若干の砂が混入し、さらにこれが一番問題なのですが、水が褐色に濁って透明度が落ちているとのことです。

水が褐色に濁る現象は、東日本大震災後の数週間、つまり周辺でマグニチュード5以上、震度5弱から5強クラスの余震及び誘発地震が多発していた時期に見られた現象で、それが収まってからは、今まで一度も発生していなかったそうです。

その当時と同じような濁りが発生していますので、周辺部で大きめの地震が発生する可能性が高いと管理人は考えております。なお、当カテゴリの過去記事をご覧いただいていない方のために補足しますが、この井戸に変化が出た時には、小規模の地震が頻発している時を除き、周辺の震源域においてほぼ100%の確率で一定期間内に地震が発生するという相関が見られています。


現在、この井戸に影響しそうな震源域では、一時の小規模地震多発傾向は収まっていますが、茨城県南部M4.4・最大震度3、千葉県北西部M4.9・最大震度4と、比較的大きめの地震が起きています。

今回井戸に出た変化が震災直後と同様の理由によるものであれば、震度5強以上を強く警戒しておく必要もあるかと考えられます。少なくとも目に見える井戸水の変化は、震災直後と同じ状態だそうです。


では、過去の経験則により、ある程度の予想をしておきます。もちろんこれは経験則に当てはめただけでですので、「予知」というものではありません。しかし、過去には高い確率で、予想の範囲内での地震が発生しています。

■予想される震源域
茨城県南部・千葉県北西部・千葉県北東部及びその周辺 (下に詳しい図表を掲載します)

■予想される震源深さ
40〜60km(東京湾岸付近ならばそれより深い、80km程度の可能性あり)

■予想される発生日時
本日11月28日から7日間程度、12月4日頃までの間。なお、変化から4〜5日目のことが多い。

■予想される規模
本来は井戸の変化から地震の規模を推し量るのは困難ですが、震災後と同じ現象が以後初めて起きているということから、警戒すべき地震の規模としてマグニチュード5以上、震度5強レベルとしておきます。

例によってこれは経験則による予想に過ぎませんから、予想内容と異なることも、該当する地震が起きないこともあります。しかし、過去の例に照らし合わせれば、かなり警戒すべき状況と思われます。

この機会に備えを再点検し、その時取るべき行動を再確認しておくことをお勧めします。あまり大袈裟な表現をしたくはありませんが、当ブログで警戒記事を上げるようになってから、最大級の警戒をする状況かと思っています。


最後に、管理人作成の震源域図を掲載します。
Photo_2
上図は現在地震が多発している地域を表していますが、オレンジ色の部分が千葉県北部の井戸に影響すると思われる震源域です。さらに詳細な図も掲載します。
Photo
上図のうち、地震が最も頻発してるのは茨城県南部西側(埼玉県境寄り)から千葉県北西部に連なるオレンジ色の部分です。次に茨城県南部東側(霞ヶ浦付近)から千葉県北東部に連なるオレンジ色です。

なお、当ブログで茨城県南西部・南東部と表記しないのは、気象庁の表記が何故かいずれも「茨城県南部」となっているからです。これに対し隣接する千葉県は、北西部・北東部と分けて表記されます。

ピンク色の部分は、回数こそあまり多くありませんが、時々比較的大きな地震が発生する場所です。11月24日に東京と神奈川で震度4を記録したマグニチュード4.9の地震は、このピンク色の西端部、東京湾岸の深さ80kmで発生しました。地震が発生するとしたら、確率的にはオレンジ色かピンク色の部分である可能性が高いと思われます。

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2012年11月26日 (月)

一般的な避難所の危険【対災害アクションマニュアル 18】

■第1章 危険を知れ(その16) 【一般的な避難所の危険】

今回は、学校や体育館などを利用した一般的な「避難所」の危険について考えます。

ここまで「一時(いっとき)避難場所」や「広域避難場所」の危険について考えてきましたが、実際には、そのような場所に行く前に、近隣の「避難所」へ直接向かうことも多いでしょう。

これは前に何度か触れていますが、まずはあなたの住む町が近隣の避難所の収容対象地域になっているかを、自治体に確認しておくことをお勧めします。避難所の収容スペースが不足しているケースが多い中、耐震性が高い建物が多い地域やマンションなどの住人は、収容対象にカウントされていないことも少なく無いのです。

過去には避難所で収容を断られたというケースは知られていませんが、特に大都市圏において避難所が物理的限界に達してしまった時(十分に予想されることです)、非収容対象者の優先順位が落とされたり、他の避難所への移動を指示されることも無いとは言えません。

ですから、まず近隣の避難所に入る権利があるのかどうかを確認しておき、非対象だったらば、自分でオプションの選択肢を考えおかなければなりません。そして、可能な限り自力で避難生活を送れる備えもしておくべきです。

さて、一旦「避難所」に入ったら、かなりホっとするでしょう。しばらくは動くことも億劫になるかもしれません。しかしすぐに気を抜いてはならなことは、東日本大震災の実例を挙げるまでもないでしょう。本当に安全が確認されるまでは、最低でも発災後24時間程度は、荷物を全部解かずにいつでも移動できる体制を維持しているべきです。


場所にもよりますが、まず発災直後には津波の危険があります。発生した地震が「1000年に一度」や「数百年に一度」レベルだった場合、津波は現在のハザードマップに記された想定浸水区域を超えることもあるということを、我々は目の当たりにしたばかりです。

自分でラジオなどを持っていなくても、避難所に行けば、地震の場所、規模、津波警報などの情報が得られるでしょう。まずはそれを確認し、津波が発生するのか、するならば自分の居場所に到達する危険があるのかどうかを確かめます。

しかしその場合、避難者同士の話から情報を得ることはできるだけ避けなければなりません。強い不安の中で、デマや尾ひれがついて大げさになった話が広まる可能性が一番高い時間帯だからです。逆に、だれかが「ここにいれば安心だ」と言ったとしても、裏付けが取れなければそのまま信じてはいけません。仮にそれが自治体職員、警察官、消防隊員などだったとしても、すぐに信じるべきではありません。裏付けを取るために、情報を集め続けてください。判断ミスは一回も許されないのです。

ベストの方法は、自分でラジオ、テレビなどから直接情報を得ることです。ネットの場合、気象庁など信頼できるソースの情報ならともかく、ツイッターやSNSなどで流れる、「素人」の情報を鵜呑みにするのはあまりにも危険です。ラジオで言っていたとか、気象庁の情報によると、とかのネット情報でも正確で無かったり、それ自体がデマという可能性が大きいのです。そのような公式情報めいたデマは、過去の災害でも数多く流れています。

とにかく伝聞やネットでそこが危険だ、安全だという情報に接した時は、まず疑って裏付けを取る、これを必ず実行しなければなりません。その際、平常時から自分が行くべき避難所について、ハザードマップの表示に十分な安全マージンを加えた独自の想定をしておけば、情報の真偽を判断する大きな助けになります。


津波到達の可能性が無くなった段階か、その危険が無い避難所において最も大きな危険は、大火災です。避難所の周囲はどうなっているでしょうか。最も危険なのは、木造家屋が密集した地域なのは言うまでもありませんし、そのような中の避難所は実に多いのです。

近隣の家が火を吹いていたら、避難所自体へ延焼するかもしれません。消防車は、まず来ません。来ても断水下では水利が確保できないことも多く、効果的な消火はあまり望めません。そして時間の経過と共に、あちこちで火災が大規模化します。それが自分の避難所に迫って来るのかどうかを、監視し続けなければなりません。

大正12年の関東大震災では、9月というあまり乾燥していない季節でも、台風の影響による強風下で火災は1時間に1kmほどの速度で延焼して行ったそうです。火災旋風が発生して風に流されれば、さらに速い速度で延焼することもあります。

そして乾燥した強風下では、さらに延焼速度が速まるでしょう。いわゆる「木密地域」では、耐火性は大正時代とほとんど変わっていない上に、当時は少なかった電気、ガス、灯油、ガソリンなど、火災を大規模化させる要素がたくさんあるのです。木密地域やそれに近い場所で大火災が避難所から1kmに迫ったら、すぐに避難を始める必要があるでしょう。その後風向きが変わったりしなければ、ほぼ確実に避難所にも延焼することになります。

避難所において大火災を監視する具体的な方法と、危険が迫った時の集団避難の方法については、過去記事で詳しく触れていますので参考にしてください。
■首都圏直下型地震を生き残れ!【44】☆大火災編はこちらから

津波や火災の他には、有毒ガスの危険があります。近隣にコンビナートや化学工場があり、そこが爆発・出火した場合には、風向きによっては有毒ガスに襲われることもあります。東日本大震災では千葉県市原市の油脂タンクが爆発炎上しましたが、幸いにあの煙自体には強い有毒性は無かったものの、濃い油煙を浴びることになるかもしれず、その場合はパニックの発生も懸念されます。

もちろん、吸い込んだらすぐに危険な煙になることも十分に考えられます。しかし有毒性の有無は、現場ではすぐにわかりません。だからこそ、あの煙は非常に危険だという膨大なデマ情報がネット上を飛び交ったのです。

デマ情報に踊らされて、本来は安全な避難所から、さらに大きな危険の中に移動してしまうような判断ミスは、絶対に避けなければなりません。これに対しても、平時から避難所の周辺には何があるか、どんな危険物質が放出される可能性があるかを知っておくことで、情報の真偽を判断する助けになります。

しかし実際には、本当に危険な物質が放出されるかどうかの情報を素人が得ることは困難です。でも、仮に「ここからは危険なガスが発生することは無い」という情報を持っているだけでも、十分なアドバンテージになるのです。


そのほか、現実的な危険としては地盤の液状化があります。でも、これは避難開始時にはすでに発生しているものですから、避難所の危険というよりも、避難経路の危険と言えます。液状化のせいで、道路が通行できなくなる危険です。それに対応したオプションの経路を、平時から複数探しておくことで、危険の大部分は避けることができます。

なお、液状化に限らず水がたまって地面が見えない道路を進む場合は、沈んだ瓦礫を踏んで怪我をしたり、側溝やふたが外れたマンホールに転落する危険が大きくなります。地面が見えない場合は、杖をついて足下を確かめながら、慎重に進まなければなりません。

いずれの場合も、忘れてはならないのは、「避難場所も必ずしも安全では無い」という意識です。本当に安全が確認されるまでは常に情報収集を継続し、いつでも再避難できる体制を整えておかなければなりません。

次回からは、避難場所の危険を事前に知るための、フィールドワーク用チェックリストをお送りします。

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おすすめ書籍のごあんない【11/25】

管理人おすすめ書籍のごあんないです。

今回ご紹介する本は、なんだか他の防災系ブログでも取り上げられていたようですけど、内容については通り一遍の触れられ方ですね。こんな本がありますというだけで記事にするなら、誰でもできますが。当ブログで紹介させていただく本は、すべて管理人が自腹で購入した上で、良いと思ったものだけです。もちろん出版社、著者等とは一切の関係はありません。アフィリエイトもやってませんから、販売サイトへのリンクもありません。

さて、今回のおすすめはこちら。
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「災害時 炊き出しマニュアル」 特定非営利活動法人キャンパー・一般社団法人日本調理科学会共著
東京法規出版 価格1600円(税込)

この本の情報量はすごいですよ。大きく二部構成になっていて、前半は二週間に及ぶ炊き出しメニューの実際。間食も含めたメニュー構成、栄養価、材料、調理法、調理時間割りなどが、マトリックス形式で掲載されています。

さらには被災地方別のメニューのアレンジまで網羅されていて、至れり尽くせりという感じです。ただ、メニュー構成を見た正直な感想は、「避難所の炊き出しでこんなにいいもの食べられるの?」

もちろん理想的な構成ということではありますが、このメニューは炊き出しだけでなく、平常時の食事にも普通に流用できます。使用食材の種類も多く、普通にスーパーで買い物ができるか、大型冷凍車で被災地入りすることを前提としているようなレベルですから、日々の献立に頭を悩ます皆様にもお勧めです。なにしろ炊き出しメニューですから栄養価が高く、バランスも良く、そして作るのが簡単なものばかりですし。

しかし前半部は、それなりに料理ができる方でないと、誰でも実地ですぐに作れるという構成ではありません。作り方も書かれていますが、料理経験の無い方が本を見ながら作れるというレベルではないのです。日常的に料理をしている方には十分な情報量ですが、前半部は機材も人員もかなり揃い、経験もある集団が組織的に行う炊き出しのための情報と言って良いかと思います。


そして後半部が、この本の真骨頂と言えるかもしれません。ひとことで言えば「炊き出しのやりかたと注意点」です。混乱し、様々な制約があり、計画通りに事が進まないことが多い被災地において、どのように被災者を満足させる炊き出しを遂行するか。

被災地で○○の炊き出しがありましたなどというニュースは、イメージ的にはほのぼの系なもので、自分たちもやってみたいと思われた方も多いでしょう。しかし、被災地での炊き出しというミッションは、とても過酷なものだと知るべきです。

少し例を挙げれば、まず衛生面。食中毒など絶対にあってはなりません。作る量や配膳量は、確実に全員に行き渡らせると同時に、大量に残らないようにコントロールしなければなりません。他のグループとバッティングして作り過ぎたりしないように調整も必要です。食材の保存、場所の設営、炊き出しの告知なども簡単ではありません。それに炊き出しメンバーは被災地に負担をかけないように、寝食から排泄まで自己完結しなければなりません。

そのようなことを、平常時のシステムが止まった被災地で確実に遂行するのがいかに困難か、この本を読んで知っておくのも良いでしょう。未経験の素人が、善意だけでいきなりやれる事では無いということがわかります。

私事で恐縮ですが、ちょっと管理人の過去(笑)に触れさせていただきますと、イベント業に携わっていたことがあります。限られた時間や条件の中で、同時進行的に大人数が動くだけでも緻密な計画と経験が必要すし、必ず何かイレギュラーが発生します。しかし遅れや、ましてや流れを止めることは許されない。しかも制約だらけの被災地となれば、その大変さはどれほどか。「誰でもできる炊き出し」などと言うノンキな事は、管理人には絶対に言えませんな。

この本のサブタイトルは「誰にでもできる炊き出しを目指して」となっていますが、そうなんですよ。目指しているんです。実際には、とてもじゃないけどいきなり誰にでも出来るものじゃありません。緻密な計画と豊富な経験、そして強い意志が必要なのです。そして本書は、「目指す」ためのマニュアルとして一級品です。

もちろんマニュアルですから、提示された問題点には解決方法が具体的に示されていますので、炊き出しを行う各種団体、町内会、ボランティアグループなどのメンバーが共有すべき情報として、とても有用です。もちろん個人レベルでも、メディアでは表面しか語られない、被災地の「食」についての認識を深めるための資料としてお勧めできるものです。それに、前述の通り「簡単・バランスメニュー集」としても大いに参考になりますよ。

ちょっと大袈裟に言えば、炊き出しの解説の中から被災地の現実や被災者の心理までが浮かび上がってくる、そんな本でもあります。

ぜひご一読を。

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2012年11月25日 (日)

あくまで小ネタ(地震とは無関係です)

昨日は久しぶりに東京都内と神奈川県が震度4の揺れに見舞われました。このところ、震災の生々しい記憶も薄れ始めている方も多いと思いますが、改めて「関東にいつ大地震が起きてもおかしくない」という事を思い出し、気持ちを引き締めていただきたいと思います。

そんな中、不安な話ばかりでもなんですから、ちょっと小ネタなど。当ブログの裏側を、ちょっと公開させていただこうと思います。先日の「管理人ひとりごと」で、地震警戒情報の記事をアップするとアクセスが急増する、ということを書いたのですが、その実際です。

このところ、なんだか理屈っぽくて小難しい記事が続いているせいか(笑)、正直なところページビュー(PV)数はあまり伸びていませんでした。一日当たり400PVに届かない日も少なくありません。

そこへ、昨日の午後6時前に起きた千葉県北東部地震(震度4)に関する記事を急遽アップしました。管理人はちょうどパソコンの前に座っていたところでしたので、情報を集めてすぐに記事にまとめたのです。記事をアップしたのは、午後6時48分でした。その結果、どうなったかと言うと…
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初公開の、当ブログのアクセス履歴です。昨日は朝からかなり低空飛行という感じだったのですが、地震警戒情報をアップした18時台以降はご覧の通りです。緑は閲覧者数、黄色はページビュー数を表し、緑と黄色の差が大きいほど、一人の方がより多くのページをご覧いただいたということになります。

おかげさまで、初めて当ブログをご覧いただいた方も、過去記事までご覧いただける比率がとても高いので、ありがたく思っております。ちなみに昨日閲覧された記事の総数は150記事以上です。

そのような「宣伝効果」も大きいために、つい地震関連の記事を多くしてしまいたい誘惑に駆られるのですが、粗製濫造して内容が薄くなったり、警戒警戒とばかり言っている「狼少年ブログ」と思われても嫌ですので、そちら方面はかなり絞り込むことにしたのです。

ただ、このアクセス推移を見て、やはり地震情報への需要はとても大きいのだなと痛感した次第です。もちろん、その期待にお答えできる、管理人自身が納得できる内容のものだけをお出ししたいと思っております。


ところで、もしページビューだけにこだわるならば、オカルトだろうとエセ科学だろうと、「地震が起きそう」という記事を並べておけば、かなり安定的なアクセスを稼げるということが、このグラフからお分かりいただけるでしょう。地震が起きたとき、それについて何か書くだけでも、かなり破壊力のあるコンテンツとなるのです。記事の内容がどんなお粗末なものでも、とりあえず1ページは閲覧させることはできます。

そして、広告アフィリエイトをやっているブログなら、その数がそのまま収入増になるわけですね。掲載広告や記事で紹介した商品が売れたら、顧客が経由したブログやサイトにインセンティブが支払われるシステムもあります。

そんなブログやってたら、何よりまずPV数を稼ぐことが第一になるのは当然ではないですか。皆様も、なんだか興味を惹かれるタイトルに釣られて変なブログを見てしまったとしても、それがブログ管理者の目的で、閲覧者が収入を増やす道具にされてしまっているとしたら?管理人は絶対にそんなのゴメンですね。だから、エセ防災系のブログは、最低限の情報収集以外はむやみにクリックしません。

まあ、人の不安を煽って商売するのは昔からの王道のひとつ。絶対になくならないどころか、どんどん増えるのでしょうね。今はとにかく地震が「旬」ですから。多くの犠牲も、残された者の苦痛も商売のネタにされてしまう。もっとも、これはブログだけじゃなくて、マスコミこそ元凶ですけどね。

もちろん、管理人はアフィリエイトなど金銭に関わることは一切やっていません。そうでないと、完全にニュートラルな立場でいられませんので。

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2012年11月24日 (土)

地震警戒情報【11/24】

本日11月24日午後5時59分頃、千葉県北西部の東京湾岸、深さ80kmを震源とするマグニチュード4.9の地震が発生し、東京都内などで最大震度4を記録しました。

この地震は、東京都が被害想定の前提としている「東京湾北部地震」とタイプは異なりますが、大規模になると南関東に強い揺れをもたらす「南関東直下型地震」の想定震源域のひとつで発生しました。

南関東の地下では、上からユーラシアプレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートが下図のように三層に重なっていますが、この地震は深さ80kmということから、下図の5番に当たる、太平洋プレートの内部で発生した「スラブ内地震」の可能性が大きいと思われます。
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東日本大震災による地殻変動の影響で、太平洋プレートが陸側プレートの下にもぐりこむ速度が上がっていることが確かめられていますが、管理人の想像通りであれば、プレート岩盤(スラブ)内にかかる圧縮力による逆断層型地震だと思われます。これは、現在茨城、福島、宮城沿岸部で多発している地震と同様のメカニズムであり、それらの地域の多発傾向とも整合性があるものです。

なお、震源域としては当ブログで提示している最近の多発震源域(下図のオレンジ色)の中に入ります。本日24日の午前0時51分に茨城県南部の埼玉・栃木県境寄りで発生したマグニチュード4.4、最大震度3の地震と無関係ではないかもしれません。
121024
そうであれば短時間内で同一震源域内の違う場所が動いたと考えられますから、今後しばらくの間、関東南部の震源域で地震が続く可能性もあります。今日の地震が、さらに大きな地震の前震である可能性も考えておくべきです。

なお、前記事「管理人ひとりごと【11/24】」で触れた千葉県北部の井戸水の変化についても、この地震の前兆であった可能性も出てきました。地理的にも十分影響があり得る範囲内です。井戸の情報も含めて、何かありましたらこまめにアップして行きたいと思います。

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避難所の種類と危険【対災害アクションマニュアル 17】

■第1章 危険を知れ(その15) 【避難所の種類と危険】

今回は避難場所の種類と、それぞれにおける危険を考えます。前回記事の最後に「火災の危険」と書きましたが、それ以外の危険要素も含めるよう変更させていただきます。

まず最初は「一時(いっとき)避難場所」。住宅街の中のあまり大きくない公園、運動場や商業施設の駐車場、中小河川の河川敷などに設定されていることが多い避難場所です。

これは近隣の人々が発災直後の危険を避け、より安全な場所へ避難する前に集まるための場所です。その名の通り一時的な避難を想定している場所であり、特に都市部では、周囲の危険要素が最も多くなります。

市街地では、余震などによる近くの建物の倒壊、出火が最大の危険要素です。また、発災直後の混乱状態の中では、強い余震、近くの建物の倒壊や爆発などによってパニックが起きる可能性もあります。周囲の状況によっては避難場所に入りきらない数の人が殺到し、群衆が将棋倒しになったりする可能性もあります。

河川の下流域の避難場所では、発災後しばらくの間は津波の遡上を警戒しなければなりません。支流のような小さな川では堤防がコンクリート壁になっている場所もあり、一旦河川敷に降りたら、すぐに川から離れることが出来ない場所も少なくありません。

また、避難場所周囲に限らず発災直後の危険として、自動車の暴走があります。すべてのドライバーがすぐに車での移動をあきらめるとは思えず、さらに正常な判断力を失っているドライバーもいるかもしれません。

過去の地震災害では、家から飛び出した途端に車にひかれた実例はありますが、自動車の暴走による事故は知られていません。しかし絶対に起きないとはだれにも言えないのです。むしろ、起きて当然と考えておくべきでしょう。

このように「一時(いっとき)避難場所」やその周囲では、危険要素からあまり距離が無いことと、さらに発災直後の混乱による相乗的な危険が加わることが考えられます。


次に「広域避難所」です。これは大河川の広い河川敷、大きな公園、運動場、スタジアム、大規模商業施設など、広い範囲から数万人規模の避難者を受け入れられる避難場所です。

このような場所の多くは、一旦その中に入ってしまえば、しばらくの間はかなり安全ではあります。しかし、安心し切るわけには行きません。

そこでの危険は、まず河川敷における津波の危険が最大のものと言えるでしょう。過去記事でも書いた通り数十cmの冠水でも人は簡単に流され、そして高い確率でパニックを誘発します。誤報やデマによってもパニックが発生することも考えられます。

また、パニック状態にはならないまでも、屋外の場合は突然の強い雨でも、群衆はあわてて右往左往することになるでしょう。その中での事故は十分に考えられます。

さらに、特に夜間には水や食料、雨具、防寒具、お金などの盗難や強奪にも警戒が必要です。残念ながら、これは確実に起きるでしょう。災害時における日本人の我慢強さ、秩序正しさは間違いなく世界一ですが、すべての人が同じ感覚や考え方ではありません。過去の大災害時にも、このような事例は少なからず発生しています。ただ、ほとんど報道されないだけです。

その対処方法は、とにかく一人にならないこと。特に夜間は、周囲の人と協力して監視体制を作り、行動時は必ず複数で。特に女性はそうするべきです。物ならまだしも、身体に危険が及ぶことも現実問題として考えておかなければなりません。

このように多くの人が集まる場所では、人、群衆そのものが危険要素となるのです。特に災害下で不安心理が強い時には、普段は想像もつかないことが起こります。

もうひとつの危険は、やはり火災旋風です。これは周囲の状況に大きく左右されますが、周囲に大火災が迫って来たら、早い段階での移動も考えて準備しておかなければなりません。火災旋風が避難場所を襲ったら、多くの場合で手遅れなのです。屋内の施設では外の状況がわかりずらいので、意識して監視していなければなりません。

なお、屋外の避難場所に共通する危険として、地盤の液状化が上げられます。埋立地、河川敷やその周辺で起きやすい現象ですが、地盤の液状化は地震の揺れとほぼ同時に発生しますので、発震時にその場にいない限り直接的な危険は大きくはありません。

しかし、当てにしていた避難場所に入れなくなる可能性もありますから、事前にハザードマップで液状化危険地域を確認の上、液状化の危険が無いオプションの避難場所も選んでおく必要があります。

次回は、学校や体育館などの「避難所」の危険を考えます。

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管理人ひとりごと【11/24】

こんなこと書くと誤解を招くかもしれないけど、敢えてアップ。

つい先ほど、24日午前0時51分頃、茨城県南部の深さ50kmを震源とするマグニチュード4.4の地震が発生し、茨城県笠間市などで最大震度3を記録しました。

ここ2週間近く、茨城県南部及び千葉県北部の震源ではそれ以前の多発傾向が収まって全く地震が発生しておらず、久しぶりに揺れたという感じです。

実は、千葉県北部のあの井戸水に匂いが出ていると、11月22日に情報を頂いていました。記事にしようかどうか考えて、結局今回はアップしなかったのですが、やはりあの震源域が静かなときは、井戸水の変化と地震の発生には明らかな相関が見られます。

後付けでこんなことを書くとなんだかエセ予知をやっている連中みたいで嫌なのですが、ひとつの事実として、敢えて公開しておきます。

というわけで、今後は想定される震源域で特に多発傾向になっていない時は、井戸水に変化が出た情報をいただけましたらすぐに「宏観現象による地震警戒情報」をアップします。

大きな地震に繋がる事も無いとは言えませんし、井戸水と地震の相関という事実を記録するためにもそうすることにします。


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2012年11月22日 (木)

避難所を襲う火災とは【対災害アクションマニュアル 16】

■第1章 危険を知れ(その14) 【避難所を襲う火災とは】

今回から、避難所における火災などの危険について考えます。

大正12年の関東大震災で、東京市本所区(当時)の陸軍被服廠跡地で起きた火災旋風による大惨事は、避難所における典型的な火災の危険と言えます。

なお、火災旋風は阪神・淡路大震災で大火災となった神戸市長田区や、東日本大震災における宮城県気仙沼市などでも発生が確認されています。関東大震災のように避難場所を直接襲うことは無かったのですが、延焼を加速し、犠牲者を増やしたことは間違いありません。

火災旋風は「炎の竜巻」と呼ばれることもありますが、それだけではありません。炎を伴わない、数百度に熱せられた空気の竜巻となることもあります。それでも燃えやすいものは発火し、人間の呼吸器は重大なダメージを受けるでしょう。喉や肺が、内側から焼かれるのです。

意外に忘れられているのが、竜巻としての威力です。自然に発生する竜巻と同等以上の破壊力があります。阪神・淡路大震災の大火災の中で発生した火災旋風の目撃談によれば、一度倒壊した家が再び立ち上がったように見えたとのこと。猛烈な上昇気流で吸い上げられてそのように見えたわけで、竜巻の規模を表す「藤田スケール」でF2からF3クラスとなる、家を丸ごと吹き飛ばす規模だったことが伺えます。風速は大型台風並み以上だったでしょう。

火災旋風というある意味で特殊な現象でなくても、避難場所に火が迫って来ることは十分に考えられます。現代は大正時代より建物の耐火性ははるかに上がっている場所が多いのですが、それは延焼しずらいという効果を生んではいるものの、絶対に大火災に発展しないということではありません。

何より、あの時代より市街区域ははるかに拡大していて、一旦大火災に発展すると、より広い範囲が危険に晒されます。そして市街区域の拡大は、危険地帯からの脱出を当時より困難にしているということでもあります。

しかも、いわゆる「木密地域」では耐火性という面においては大正時代とほとんど変わらず、それに加えて当時はあまり無かった電気、ガス、灯油、ガソリンなどの出火、延焼危険物が全域に存在しています。

当時は、かまどや七輪などの裸火を使用している昼時に木造家屋が倒壊することで多くの火災が発生しましたが、現代では出火原因こそ激減しているものの、一旦火がつけば、より危険な状態になるケースも多いのです。


また、これは本当のワーストケースですが、海岸部のコンビナート地帯から海上に油が流出し、それが燃え上がることもあります。そしてそれが津波で内陸に運ばれたり、沿岸部に漂着して火を放つという可能性です。

可能性というよりも、これは東日本大震災において宮城県の気仙沼市周辺で実際に起きたことです。水面に広がった油だけでは燃えにくいのですが、そこへ瓦礫が混ざると木材などがろうそくの芯のように油を吸い上げ、とても燃えやすくなるのです。火災だけでなく、燃える物質によっては有毒ガスの発生も懸念されます。

そして、東京湾をはじめとする海岸部のコンビナート地帯では、それが東北地方よりもはるかに大規模に発生する条件が揃っています。東日本大震災での千葉県市原市の油脂タンク爆発炎上は、水上消防隊などの決死の活動によって延焼が最小限に食い止められ、海上への油の流出も無かったという点で、まさに幸運だったと言えるでしょう。

もしあれが複数箇所で大規模に、同時多発的に発生していたら、しばらくの間は手のつけようが無くなってしまっていたかもしれません。

それらの影響は多岐に及びますが、まずは自分が行くべき避難場所にそのような危険、大規模建物火災、海上火災、有毒ガスなどの影響が及ぶ可能性があるのかどうかを、自分自身で確かめておかなければなりません。


行政側としては、基本的に避難場所は安全であるという立場を取ります。ただでさえ避難場所が足らないところが多いのに、「ここは危険だから行かない方がいい」などと公式には言えないのでしょう。

しかし現実には、住宅密集地のどまんなかの学校が避難所だったり、近くに化学プラントがあったり、沿岸部の津波到達予想範囲内だったりすることなど、ひと目見れば危険がわかる場所も少なくありません。特に港湾部近くであれば、津波で流された船や集積された大量のコンテナなどが衝突することもあり、その破壊力は東日本大震災で目の当たりにされました。

火災や津波だけでなく、避難場所が土砂崩れや土石流の到達予想範囲、または崩れる可能性のある崖の上だったりすることもあります。

このような多くの危険を突きつけられて、「そんなこと起きるはずない」と言ってしまうことは簡単です。人は巨大な危険に直面したとき、その危険を積極的に過小評価しやすくなります。対処しきれないと感じる、自分の能力を超える事象を過小評価することで、精神のバランスを保とうとするのです。これは心理学的には「正常化バイアス」と呼ばれるもので、誰でも陥る可能性があります。

しかしそれを理解した上で、恐怖や不安感に打ち勝って現実的な対処方法を考えておかなければなりません。それはかなり高いハードルであり、実は防災・減災活動を進める上で、心理的には最も大きな障害となるものでもあります。実は、いわゆる「防災の専門家」でも知らず知らずのうちに陥って、発想が甘くなってしまうことがあると指摘されています。


この章のテーマは「危険を知れ」ですが、現実の危険を知れば知るほど恐怖、苛立ち、無力感に苛まれます。そしてどうやっても「完全」な対処方法は見えて来ません。でも、それを乗り越えなければなりません。

演劇の内容もせりふも知らないまま舞台に立たされるより、台本を読み込んで、リハーサルをしてからの方が上手に演じられる、突き詰めれば、ただそういうことです。

次回は、避難所の種類と火災の危険について、具体的に考えます。

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避難所を襲う津波とは【対災害アクションマニュアル 15】

■第1章 危険を知れ(その13) 【避難所を襲う津波とは】

今回も続いて、避難所における津波の危険を考えます。

前回は、河川下流域の河川敷での津波の危険についてでしたが、津波の危険がそこだけでないことは、東日本大震災で証明されてしまいました。

東北地方の場合、想定津波浸水域は詳細な記録が残っている津波、具体的には1896年の明治三陸津波以降の浸水域を基準に設定されていました。

しかし超巨大津波の襲来で、多くの避難所が津波に呑まれました。例えば、あの大川小学校のある場所は明治三陸津波、昭和三陸津波、チリ地震津波でも津波は全く到達しておらず、震災前の想定津波高さは0~1mとされていました。しかも避難所でもある小学校は5m近くある堤防の内側でしたから、事実上全く危険は無いとされていたのです。

今震災は、我々日本人に「1000年に一度」という、かつては考えたことも無かった時間軸を突きつけました。古代は決して教科書やドラマの中の話ではなく、現代も当然ながら悠久の歴史に連なる先端部なのです。869年に東北地方を襲った貞観津波の話を聞いて、平安時代が妙に身近に感じた方も多いのではないでしょうか。

そしてその後の調査で、東日本の太平洋岸だけでなく、九州太平洋岸全沿岸部で、記録に残っているものをはるかに超える津波の痕跡が発見されています。さらに沖縄など南西諸島も例外ではありません。

ともかくも、数百年から1000年に一度レベルの地震による津波が発生すると、河川敷に限らず、条件によっては海岸から内陸数kmまでの地域も危険に晒されるということを、我々は目の当たりにしました。そして、その範囲にある避難所は、全国的にかなりの数が存在しているのです。


では「1000年に一度」の大地震、大津波はどこでも起こるのでしょうか。この規模の地震になると、発生するメカニズムは事実上限られます。それは地球を覆う地殻プレートの境界で起こる「プレート境界型地震」です。それは地球そのものが生み出す超巨大なエネルギーによって発生する地震です。

プレート境界が海底にある場合は海溝が形成されていることが多いので「海溝型地震」とも呼ばれます。東日本大震災は典型的な「プレート境界型(海溝型)地震」でした。

現在、我が国でそれが起こる可能性がある場所を考えて見ましょう。まず、東日本大震災の震源域では、膨大なひずみエネルギーが放出されたばかりですから、それこそ1000年レベルで発生しないでしょう。しかし、影響を受けた周囲の震源域ではマグニチュード8クラス、大雑把に言えば「数百年に一度」レベルの巨大地震と大津波が発生する可能性があります。

一方、関東から九州にかけての太平洋沿岸で起こる、いわゆる南海トラフ地震、具体的には東海・東南海・南海地震も「プレート境界型(海溝型)地震」となります。これらが東日本大震災のようにほぼ同時に連鎖発震した場合、「1000年に一度」レベルの規模となる可能性があります。

例の「死者32万人、津波最大高34m」の想定は、そのようなケースと考えて良いでしょう。ただし、南海トラフ震源域は、東日本大震災による地殻変動の影響を受けているのは間違いないものの、構造的にはあまり関連が無いので、直接的な影響が大きいとは言えません。南海トラフで巨大地震が発生する時はあくまで、主に「南海トラフの都合で」発生することになります。

ただし、南海トラフの複数震源域が連鎖せず単独の地震だった場合でも、「数百年に一度」レベルの規模となることは考えられ、その場合には、範囲は今震災より限定されるでしょうが、同レベルの大津波が発生する可能性があります。

南西諸島周辺では、少なくとも現時点では近いうちに巨大地震を発生させそうな震源域は確認されてはいないものの、小さな島がすべて水没するような大津波の痕跡が発見されたという研究成果もありますから、決して例外ではありません。

そして今震災の影響により、南西諸島周辺でも数cm~十数cmの変位が発生しています。その影響がどう出るかは、周辺部の歴史的記録や観測データが少ないこともあり、安易に判断できるものではありません。


まとめますと、東日本大震災震源域の周囲である北海道から青森の太平洋岸、房総半島沖、南海トラフ、そして南西諸島周辺で巨大地震が発生することが考えられ、このうち、広い範囲で複数震源が連鎖する可能性がある南海トラフでは「1000年に一度」レベルとなる可能性が比較的高いということです。

東日本大震災震源域での巨大地震は当分起きないとは言え、今回の被災地にも近隣震源域の地震による津波は到達します。さらに津波に関して言えば、震災の影響で発生する「アウターライズ地震」、いわゆる「津波地震」の可能性はあります。

ですから事実上東日本の太平洋岸から南西諸島まですべての地域で「想定を超える」津波が発生する可能性があり、その中で比較的可能性が高いのが、関東西部から九州にかけての太平洋岸と言って良いでしょう。

乱暴に言ってしまえば、北海道から九州の太平洋岸、それに沖縄まで全部気をつけろ、ということですね。なんだ全く救いが無いじゃないかと思われるかもしれないですが、ここで忘れてならないのは、「本当に最悪の状況は滅多に起こらない」ということです。

だから安心ということではありませんが、例えば富士山の噴火を考える時、日本一の山だから日本一の噴火をすると決めてかかっていませんか?富士山だって小さく噴くこともあるし、その可能性の方がずっと大きいのです。

それ以前に、今震災の影響で言えば、東北地方の火山の方がずっと危険な状態になっています。でも日本一の火山の近くに集中したインフラや首都機能が大ダメージを受けるというイメージだけが先行し(そんな風にメディアが煽っているからですが)、必要以上の不安を感じている方が多いのではないでしょうか。

そうなってしまうと言葉はあまり意味が無くなってしまうのですが、要は「正しく怖れろ」ということに尽きます。

避難所の危険と言いながらすっかりほかの話になってしまいましたが、つまるところ、海に近い低地にある避難所が津波で危険になるかはどうかは、すべて発生する地震の場所と規模に依存しているということです。

次回からは、避難所における火災の危険について考えます。その後に、具体的なチェックポイントへ進みます。

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2012年11月20日 (火)

どうなんでしょう、これ【ニュース解説の、ようなもの】

一応はニュース解説ですけど、タイトルは【~の、ようなもの】。解説というよりは、管理人言いたい放題という感じなので(笑)


東京都は11月14日の都防災会議で、首都直下地震対策を柱とする地域防災計画の修正を正式決定した・・・というニュースがあるのですが、その内容が、かなり凄いんですよ。

今年4月に発表した、首都直下型地震による想定死者数が9600人。これは冬の夕方、風速15mの北風が吹いているときに、東京湾北部でマグニチュード7.3の直下型地震(東京湾北部地震)起きたとする、非常に厳しい、ある意味ワーストケースとも言える想定です。

この数字についての論評はここではしませんが、それを今後10年以内にさらに減らそうという数値目標が掲げられたわけです。以下、各項目の減災数値目標を比較してみます。■が旧目標数値、□が新目標数値です。

死者数 ■9600人→□3200人 (3分の1に減らす)
避難者数 ■339万人→□190万人 (4割減らす)
建物の全壊・焼失 ■30万棟→□10万棟 (3分の1に減らす)

上記をを達成するために、
住宅の耐震化率 ■81%(平成10年度)→□95%(平成20年度)

首都機能の維持のために
□電気・水道などライフラインを、震災発生後2ヶ月以内に95%を回復

とまあ、こんな感じの修正がなされたわけですけど、皆様どう思われますか?管理人は、なんだか「ああ、そうですか…」としか言えない感じなのですが。

それなりに根拠はあると思いますけど、例えば避難者がいきなり4割減るというのは一体?いや、わかります。住宅の耐震化率を上げて、避難所でなく自宅にいられる人口を増やし、昼間人口は会社に留まらせ、帰宅難民化する人口を減らすということなのでしょうが。

でも、どこにいても水も食べ物不十分で水洗トイレも無いんですよ。これは避難所やその後の仮設住宅などの数を絞るという意味合いが強いのでしょうけど、なんだか数字のトリックのような気もしますが。自前の居場所があれば、「被災者」だけど「避難者」ではない、ってのはどうなんだか。

耐震化率も、現在80%程度のままで長年足踏みしているのは、これはもう経費の問題に尽きるわけです。現状で、耐震化が可能な家主はほとんどやってしまっていて、残っているのは主に経費の問題で耐震化工事を行えないか、躊躇している層です。そして、そのような建物が密集して「木密地域」を形成している。

それを10年で95%まで引き上げるのは、CO2を6%減らすよりずっと難しいんじゃないか、という感じです。とにかく掛け声だけでは絶対無理。ある程度強制力を持った法整備と、補助金などの優遇制度をさらに強化することは必須です。それでも大変だけど。

ライフラインの復旧速度を上げるには、とにかく現場の技術者、作業員、機材を充実させるしかありません。でも東京電力など現場はだいぶ弱体化しているという声もありますしね。実際には全国からの応援部隊にかなりお世話になるのでしょうが、お金突っ込めばなんとかなるという問題では無いだけに、どのような根拠か詳しく伺いたいものです。まさか旧日本軍のような精神論ではありますまいに(笑)

建物の全壊・焼失が3分の1となっているのは、耐震化が進めば倒壊家屋が減り、倒壊家屋が減れば出火が減るという考え方でしょう。でも、冬の乾燥した強い北風の中を想定しているのに、火災旋風のような火災の暴走をあまり想定してはいないようです。

同じような発想で、地震で犠牲者が出る最大の理由は建物の倒壊だから、倒壊が減れば死者も減り、火災も減るから焼死者も減る、だから3分の1にできるということなのでしょう。それでも、街に人が溢れている時間帯の東京大地震で、阪神・淡路大震災の半分の死者って・・・。

ともかくこのような効果的な対策が進めば、それはすばらしいことです。でも、管理人はどうしても素直に納得できないのですけどね。根がアマノジャクですし(笑)

余談ながら、もちろんフィクションなんですけど、小松左京先生の「日本沈没」では、1970年代の状況が背景とはいえ、東京大地震での死者・行方不明者がなんと200万人と描かれているわけです。さすがにそれはあまりに現実的でないのですが、行政が出す数値も、なんだか逆の意味で「どうなのよ」と言いたくなるような気がしないでもありません。

で、この報道を受けて改めて思ったことは、やはり行政に頼るのではなく、自助努力で生き残り、生き抜く体制を作っておくしか無いのかな、と。

「本番」になって、やっぱりあの計画無理がありました!ということになって、その時「聞いてないよー!」と騒いでも後の祭りということです。

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2012年11月19日 (月)

河川敷避難場所の危険【対災害アクションマニュアル 14】

■第1章 危険を知れ(その12) 河川敷避難場所の危険 

今回は、避難場所における具体的な危険を考えます。

防災フィールドワークに出たあなたは、まず最初に避難するであろう場所に着きました。そこが学校や体育館などの避難所ならば、前回記事にも書いた通り、まずあなたの居住地が避難所の収容対象区域になっているかを確認しておきましょう。

その他「一時(いっとき)避難場所」、「広域避難場所」、「津波避難場所」のこともあるでしょうが、これらは多くの場合屋外です。特に悪天候下や寒さ、暑さがひどい季節には、屋外で軽装のまま長時間持ちこたえることは困難です。いずれはどこか「雨露がしのげる」場所に移動しなければなりません。

ですから避難場所を決める際には、「とりあえず危険を避けられる場所」と「避難生活を送れる場所」を、徒歩圏内で複数箇所選んでおく必要があります。

しかし、いわゆる「避難所」でも、発災後1~2日の間には、様々な危険が襲いかかる可能性があります。東日本大震災でも少なくない避難所が津波に呑まれてしまいましたし、火災で焼かれた場所もあります。

まず、避難場所なら安全、避難場所に着いたら安心という意識を捨てることから始める必要があります。その上で、あなたが行くべき避難場所の危険を詳細にチェックし、「最悪のケース」の対処方法を考えておかなければなりません。

避難場所での危険の主なものは、津波と火災です。津波浸水危険区域では、東日本大震災での気仙沼市のように、それらが同時に襲って来ることもあります。かなり内陸部でも、条件によっては津波の危険が全く無いわけではありません。


では、具体的に考えてみましょう。まず津波です。管理人が最も危惧するのは、河川敷に指定された「広域避難場所」です。もっとも、避難場所に指定されていなくても、下流域の広い河川敷には、数万~数十万人の避難者が集まるでしょう。

そこへ津波が遡上してきたらどうなるでしょうか。今震災のように数メートルの津波が遡上しなくても、例えば河川敷が50cmくらい冠水するような津波の遡上は、関東地方をはじめ大都市圏の河川でも十分に考えられます

今震災では、東京湾南部の木更津市や船橋市沿岸で2m以上、最大2.83mの津波を観測しました。東京湾最奥部では2m程度だったと思われますが、それでも荒川を埼玉県志木市付近まで、約35kmも遡上したのです。しかも、志木市の堰で止まったとのことで、もし堰が無ければ50kmは遡上したのではないかと言われています。

今回は河川敷の冠水はほとんどありませんでしたが、これが仮に3m以上の津波だったら、下流域の河川敷の多くが冠水するのは間違いありません。

50cm冠水すれば、津波が遡上する流速ならば人間は簡単に流されます。30cmでもあまり変わらないでしょう。河川敷で一旦流されたら、大抵は何もつかまるものも、流れ着く場所も無いのです。今震災で九死に一生を得た人のように、「木にしがみついて助かった」というような可能性はあまりありません。

しかし現実的にはそれ以上に恐ろしいのが、パニックです。数万人が密集している場所に津波が来たら、たとえそれが河川敷に溢れるほとではないにしても、群衆は一斉に堤防上に駆けあがろうとするでしょう。

たとえ本当に津波が来なくても、だれかが「津波だ!」と叫んだだけで、高い確率でパニックを誘発します。特に発災直後の夜間、停電下の暗闇ではそれだけでも不安感が強いところに、津波が事実かどうか確認することもできません。昼間でも、水面が見える人などわずかです。ですから、とりあえず逃げ出します。それも水面に近い場所にいる人から、群衆を押しのけて堤防を目指すのです。

どうでしょうか。もしあなたが暗闇の川沿いにいて津波が迫ったとしたら、そのような行動をしますよね。そしてそれは、ほとんどの人が同じなのです。さらに、群衆心理がそれに拍車をかけます。数万人がパニック状態になった中で、あなたは無事でいられるでしょうか。

今震災の津波からすんでのところで逃げ切った被災者の方の言葉に、恐ろしいけれどとても示唆に富んだものがあります。

「大勢が逃げる方にただついて行った人は、みんな死んでしまった」

これが現実です。群衆は、とにかく早く、たやすく逃げられそうな方角に、やみくもに移動しがちです。そして大きな人の流れは、群衆心理によってさらに膨らみます。みんなが行く方向なら、たぶん大丈夫だろうという心理が働くのです。しかしそれは、津波にとっても「流れやすい」、つまり流速、水深ともエネルギーが集中しやすい方角なのです。

しかしあなたがいるのは河川敷で、大抵は堤防が近くにあります。ならばそこに逃げた時何が起こる可能性があるかを知り、堤防上に最短時間で逃げるためにはどの辺りに位置を取るか、津波が来たらどの方角へ行くか、パニックの流れに呑まれないためにはどうするかを、十分に考えて行動を決める必要があります。

津波だけではありません。堤防沿いの街が大火災になっていることもあるのです。そのような危険がある場所は、都市部にはいくらでも存在します。そんな場合はどこへ移動し、津波が来たらどうするかなどの「オプション」を、十分にシミュレーションしておくのです。

群集心理に呑み込まれやすいのは、「自分の考え」を持っていない人です。どうすべきかの判断を急に迫られたとき、とりあえず大勢に依存してしまいやすくなる。そしてそれは、自分の運命をも他人に委ねてしまうことでもあります。


戦争映画で(そんなの見ない人はごめんなさい)、初陣で緊張する兵士に上官がかける定番の言葉に、「訓練通りにやれば大丈夫だ」というのがありますが、そういうことです。初陣の戦場=大災害下では、普段やっていないことなどろくにできません。ほとんどの人が、恐怖におののく初陣の兵士と同じです。ただ、事前の訓練=シミュレーションが十分だったかどうがが、生死を分ける可能性が高いのです。

もちろんシミュレーションだけでなく、移動にはどれくらい時間がかかるか、どれくらい疲労するか、どれくらいの荷物を運べそうか、子供やお年寄りが一緒だったらどうかなどを、実際に身体を動かして体感、つまり訓練しておく方が良いのは言うまでもありません。条件によって、出来ること出来ないことは、大きく変わります。

兵士だけではなんですからスポーツ選手の言葉に例えれば、「練習は裏切らない」のです。


余談ながら、「防災マニュアル」やブログなどの表現で、例えば「海沿いでは津波に注意する」とか「住宅密集地では火災に注意する」、「繁華街では落下物に注意する」なんてものが良くありますが、注意ってなんですか。

それを、実際にはどう行動するかという部分にまで具体的に落とし込んでおかなければ、「その時」には何の役にも立ちませんよ。世間には、そんなお気楽「防災」情報がやたらとはびこってますよね。

次回も「避難所の危険」です。


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2012年11月18日 (日)

石巻市・石ノ森萬画館が復活!

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市から、明るいニュースが届きました。

既に報道でご存知の方も多いと思いますが、昨日11月17日、サイボーグ009や仮面ライダーシリーズなどの作者として知られる漫画界の巨匠、石巻市出身の故・石ノ森章太郎先生の功績を顕彰し、その足跡を展示する施設である石ノ森萬画館が東日本大震災の津波被害から復活し、再オープンを果たしました。

Photo
画像は再オープン式典の様子。石巻災害復興支援協議会様のFacebookページからシェアさせていただきました。石ノ森漫画ファンにはたまらない光景ですね。ちなみに管理人も、子供の頃は仮面ライダー(1号、2号の時代!)で育ったと言っても過言ではない大ファンです。個人的には、ウルトラマンよりやはり仮面ライダーです。

石ノ森萬画館の公式サイトはこちらから
http://www.man-bow.com/manga/


石ノ森萬画館は石巻市の旧北上川河口部の中洲である中瀬(地名)にあり、東日本大震災では波高6m以上の津波に直撃されました。しかし頑丈な鉄筋コンクリート造りのために建物自体の損傷は免れ、来館者や職員は二階に避難して全員無事で、一階の直筆原稿など貴重な資料の多くも、津波到達前に二階に運び上げられて無事だったそうです。

しかしここ中瀬では他の建物はほぼすべて流失し、多くの犠牲者が出た場所でもあります。

実は管理人も、昨年11月初旬とほぼ1年振りの先月(10月12日)に石ノ森萬画館を訪ね、その様子を動画に収めています。被災後8ヶ月と1年7ヶ月後の様子を一本の動画にまとめましたので、ご覧ください。3分28秒です。

■Youtube動画「石巻市 石ノ森萬画館・津波被災から復活へ」はこちらから
http://www.youtube.com/watch?v=LVHRgzhX7Pg&feature=youtu.be

先月、10月12日に訪れた時には復旧工事が急ピッチで進んでおり、いよいよ復活かと嬉しくなりました。1年前の寂しい姿を見ていただけになおさらです。

しかし10月の時点でも、周辺の様子は1年前とそれほど違っていませんでした。流された中瀬の建物はひとつも再建されておらず、旧北上川河口の両岸の街は、一部の建物の撤去が進んだくらいで、いまだ被災時とあまり変わっていないのです。当然、そこには住民もほとんど戻っておらず、過酷な仮設住宅暮らしが続いています。

既にあまりメディアにも乗りませんが、全被災地の復旧・復興は未だに全く本格化していません。それこそメディアではほとんど無視されていますが、仮設住宅暮らしは想像以上に過酷であり、精神的に限界に近づいている方も少なくないと、現地の方は語ります。家がどうこうよりも、若い人でも将来に全く希望が持てない状況の方が多いのです。

街に人が戻り、そこで仕事をし、暮らせるようになって初めて復興と言えます。最近は、義援金の額も減る傾向だといいますが、被災地にはまだまだ多く支援が必要です。

石巻に石ノ森萬画館が復活しましたし、この機会に石巻始め、東北各地を訪れてみては。あまり難しいことは考えずに、まず行って、見て、感じて、考えながら楽しめば良いのです。現地へ行くこと、そして知ることが、大きな支援になります。管理人も、事情が許せばもっと行きたいのですが。

とりあえず、ちょっと気になったらとりあえず東北、いかがでしょうか。
なんだか東北の観光PRマンみたくなってますが(笑)、気持ちはそんな感じです。


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2012年11月16日 (金)

どうしたものだか。【管理人ひとりごと 11/17】

先ほど午後5時31分、千葉県北東沖(千葉県東方沖)の深さ20kmでマグニチュード5.5の地震が発生し、いすみ市などで最大震度3を記録しました。

マグニチュード5.5ですから、決して小さな地震ではありません。かなり沖合いで発生したから震度3で済みましたけど、陸地直近や直下だったら震度5弱レベルの地震ですよ。

震源は当ブログでも多発震源域のひとつとして挙げている場所ですから、本来ならばいつものスタイルで記事を上げるべきなのですが、その辺をどうしたものだか思案しております。

というのも、管理人は毎日の地震発生状況をモニターして発生傾向を把握はしているものの、そのような情報をいちいち上げてもそれほど意味が無いのではないか、最近の地震多発傾向でそのジャンルの記事が多くなり、本来の連載記事が埋もれてしまってはいないか、という思いがあります。当ブログは地震情報ブログではないですし。


正直なところ、「地震警戒情報」記事を上げるとアクセスが増えます。災害関連の新着記事リンクサイトなどでご覧になり、訪問してくださる方が多くなります。まあ当ブログの存在を宣伝するには良いのですが、「そういうブログ」だと思われるのは本意ではありません。

当ブログの地震警戒情報は、データの蓄積から傾向を見出すという科学的手法によるものではありますが、なんだか訳のわからない理屈で意味不明の「予知」とやらをやっている連中と一緒みたいで(笑)オカルトならまだ関わりたくないだけですが、全く無根拠の「科学ごっこ」をやってる輩は、本当に不快の一言ですからね。

それに、ちょっとアクセス少ないから「鉄板」の警戒情報を上げて数字取っとけ、なんてことになって来たら、そんなのマスコミの発想そのままじゃないですか。告白すると、管理人そう思ったこともあります(笑)


最近、千葉県北東沖も茨城県沖も福島県沖も、かなりの頻度で小さな地震が連続しています。特に茨城県沖が急増中です。そのうち、大きめに揺れることもあるでしょう。しかしそれもある意味当然の流れです。それをいちいち記事にせんでも、という感じですね。警戒しろしろと言っていると、送り手も受け手も麻痺しますし。

一応今後は、ある程度大きな地震(震度5弱を目安)があった場合、地震発生状況などに特筆すべき変化があった場合、例の井戸に異常な変化が出たとかの場合、「これは皆様にお伝えしなければ」というコンテンツがあった場合に、地震警戒情報をアップしようかなと思っています。加えて、時々は全体の発生傾向もレポートもしようかなと。

決してめんどくさくなったのではありません(笑)ブログのテーマに沿った記事をより重視したいのと、情報の質を維持したいという思いからですよ。


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2012年11月15日 (木)

【忘れられた被災地】宮城・震災から1年8ヶ月【6】

南三陸町を出て、国道398号線で女川町へ向かいます。南三陸町から女川町までの直線距離は約25km。でも実際の走行距離は56kmと倍以上になります。道路はリアス式海岸をなぞるように、ひたすらカーブとアップダウンが続くからです。

美しい海と海岸を横目にドライブやツーリングにもってこいのルートで、道中ツーリングライダーともかなりすれ違いました。しかし訪問時現在も崩落箇所での片側交互通行や落橋による迂回路が何カ所もあり、震災直後にこのルートを啓開した苦労が偲ばれます。

「櫛の歯作戦」というのをご存じの方はいらっしゃるでしょうか。震災直後に各所で寸断した道路を短時間で啓開して支援部隊の通行を可能にしたのは、全国から集結した国土交通省の急派部隊でした。

大型トラックにパワーショベルを積み、前進しながら障害物を除去し、道路を啓開して行きました。その際、最優先とされたのは国道4号線を中心とする山側の主要道から、海沿いの各地域までの道路を確保することでした。

その形があたかも櫛の歯のようであったことから「櫛の歯作戦」と呼ばれたのです。報道では自衛隊、消防、警察の活動ばかり取り上げられますが、それらの部隊が短時間で現場に入れた裏には、その前に国土交通省道路啓開部隊の壮絶な活躍があったことも、ぜひ覚えておいてください。

もっとも、海沿いの国道398号線は優先順位としては後位でしたが、地形的な困難さはより大きかったと想像されます。大型車がすれ違えないような狭い場所も多く、崩落が起きたのは大抵そんな場所なのです。

さておき、南三陸町の中心部を出て、管理人はすぐに車を停めました。
Photo
画像は追波湾の反対側から、南三陸町の中心部方向を見たものです。もちろんここも20m近い濁流に襲われていて、堤防はズタズタに破壊されたままです。海沿いまで迫った山裾には、小さな集落が壊滅した跡があちこちにあります。

さらにこの先、入り江の奥にある小さな漁港や集落が壊滅した跡を、何カ所も目の当たりにしました。震災直後、津波で集落が壊滅し、死者や負傷者が出ていても、電気・水道・通信は寸断し、町の中心部へ移動するための車は流され、あっても道路が切れていたことも多かったのです。

支援物資や情報が届く町の中心部までは数kmから十数km以上もあり、水も食料も少なく、さらに寒い中を着のみ着のままの高齢者が歩いて移動するのは、文字通り命がけです。

報道陣は大規模被災地に集中し、だれにも窮状を伝えられない。その後も支援物資は後回しになり、ボランティアも来ない。でも、雨露や寒さをしのぐ家ひとつ残っていない場所も多い。そこでは一体、何が起きていたのでしょうか。

そんなあまりに過酷な現実が、海や川沿いのすべての集落にあったのです。報道された場所だけが被災地なのではありません。そんな場所の被災者は、ため息と共にこう言います。
「ここは、忘れられているからねぇ・・・」

未曾有の超巨大災害だったからという、ある意味で仕方の無い部分もあるにはあります。しかし、このような場所にこそ優先的に支援や輸送の手をさしのべなければならないという、大きな教訓を残しました。道路が切れていても、ヘリ一機で吊れる量の物資だけで、当面を凌ぐのに十分な場所が多いのです。

別の場所ですが、次のYoutube動画をご覧ください。
■動画へはこちらから
動画をご覧いただけない方のために説明しますと、映っているのは北上川沿いの広大な津波被災地、石巻市の南釜谷崎地区です。撮影車が走る堤防を越えて、画面手前方向から濁流が流れ込みました。ここは田畑の中に集落が点在していた場所で、被災人口は多くはありません。南釜谷崎という地名を、報道で聞かれた方はほとんどいないでしょう。しかし、ここにも過酷な現実がありました。

この場所を示すのに、ひとつの明確なキーワードがあります。実は、あの大川小学校の対岸なのです。あれだけ衆目を集めた場所の間近なのに、ほとんどの人は知らない。それが、報道しか見られない我々の認識だということです。

被災人口がが少なかった、被害が比較的小さかったというだけで、忘れられた被災地の方がむしろはるかに広大だということを、改めて認識すべきではないでしょうか。

そして今でも、そのような場所は多くの支援を必要としています。どうしても復旧・復興は後回しになりがちなのです。遠くにいてもできる具体的な支援は、やはり金銭面が中心になるかと思いますが、復活しはじめた地場産品を買うことも、大きな力になります。

大川小学校の話が出たついでと言っては語弊がありますが、北上川対岸の吉浜小学校の状況をご覧いただきましょう。
Photo_2
画面左方の北上川からあふれた濁流が三階の半ばまで達し、校舎を突き抜けたことがわかります。この場所は、北上川の水面から優に5mはありますから、遡上した津波の巨大さがわかります。大川小学校は、ここから2kmほど上流の対岸です。

石巻市では、学校内で児童生徒の犠牲者が出たのは大川小学校だけでした。ここ吉浜小学校では津波到達前に下校が間に合ったものの、帰宅後に7名の児童が犠牲になりました。

そんな悲劇も、大川小学校という大惨事の前に、報道上は色あせてしまいます。当然のことながら報道とはそういうものであり、現実のごく一部しか伝えることはできないのです。ひとりだとか何十人だとかで、未来ある子供の命が失われた事実に軽重をつけるなど、本来はあってはならないのですが。しかし、報道はインパクト優先です。

このように忘れられた被災地、被災者のことを、いま一度思い起こしてみてください。できることなら現地に出向き、その現実をご覧になってみてください。決して物見遊山ではなく。実際に被災地を走ってみると、その広大さに驚くでしょう。メディアの報道がいかに一面的なものかが良くわかります。もちろん、被災地に出向いてお金を使うことは、大きな復興支援にもになります。

管理人は、敢えて大袈裟にこう言いたい。『日本人なら、特に若い人は、一度は被災地を見ておけ』と。そうしたくでも出来ない方が多いのは承知の上です。でも、できることならちょっと無理しても行ってみて欲しいのです。人が生きる、人が暮らすということの根源的な意味を、強烈に問いかけられるでしょう。現地で感じる様々な感情は、何一つ無駄なものはないはずです。


静まり返った中で、吉浜小学校の大時計は今もあの瞬間、2時46分を指したまま時を止めています。この校舎に子供たちの姿が戻るのは、いつの日なのでしょうか。
Photo_3

次回は、地理的な順番は実際とは異なりますが、雄勝町を経由して女川町へ入ります。

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おすすめ書籍のごあんない【11/14】

おすすめ書籍、二点あります。

まずはこれ。
Book_001

an・an特別編集 女性のための防災BOOK “もしも”のときに、あなたを守ってくれる知恵とモノ
㈱マガジンハウス刊 価格680円(税込)

災害対策は、つい「男性目線」になりがちです。しかし当然ながら、被災者の半分は女性なのです。「女性目線」の災害対策本として、管理人が知る限りもっとも秀逸なのが本書。そもそも「女性目線」の使える災害対策本など、ほとんど存在しなかったのですが。

内容は女性専用や女性に便利な備蓄品のアドバイスなどハード面から、避難生活における女性特有の問題からメンタルケア、さらにはありがちなデマの内容とその対策に至るソフト面まで、広く網羅されています。

東日本大震災の被災者(もちろん女性)への取材内容も現実的なレベルで反映されており、管理人もかなり勉強させていただきました。女性が「生き残ってから」の対策としては、とりあえずこの本の内容だけで十分と言えるでしょう。

内容の一例を挙げてみます。避難所生活中は、限られた数の支援物資を分配します。必要数を申告して受け取るわけですが、生理用品も例外ではありません。そして、分配担当者は大抵が男性なわけです。それだけでも、事前に自分でどうしておいたら良いか考えてしまいますよね。そのような、現実的なレベルの情報が満載です。

この本は男性諸氏、特に防災に関わる活動をされている方にも是非一読をお勧めします。過酷な避難生活の中で、女性が何に困り、何を感じ、何が必要かを知るための基礎的な情報となります。

実はこの本、昨年10月に発売されており、管理人もすぐに入手して、いろいろ勉強させていただきました。そしてmixiのコミュニティの方ではすぐに紹介させてもらったのですが、遅ればせながらこちらでも紹介させていただきます。

もう一点。こちらは本そのものではなく、記事なのですが。
Book_003
現在発売中の月刊宝島12月号です。㈱宝島社刊 価格580円(税込)

若干失礼ながら、意外なところに意外に優れた情報があったという感じです。実は管理人がこの本を購入したのは、メイン特集の中にある、福島の「警戒区域」内のレポートを読みたかったからでした。管理人自身も○○区域内で××××(あえて伏字)してきた経験がありますので、現在どうなっているのかを見たかったのです。そうしたら、こんな特集記事が。

東京直下型地震・想定特集 断水、酸欠、火災旋風・・・、地獄の業火があなたを巻き込む!
地震後の大火災からどう生き延びる!?

おどろおどろしいタイトルですがハッタリではなく、タイトルに負けない内容がある記事です。

管理人も、過去のシリーズ記事「首都圏直下型地震を生き残れ!」の中で、都市における大火災のメカニズムと危険を取り上げ、その対策を詳細にまとめまています。何より、安全なはずの「避難所」が、実は大火災や津波に対して危険な場所が多いという事実に警鐘を鳴らしています。

さらに、現在連載中のシリーズ記事「対災害アクションマニュアル」でも、これから「避難所の危険」を見つけだすためのポイントを紹介する予定です。

そんな管理人が、「これは素晴らしい」と素直に思えたのがこの記事。内容的には、はっきり言って当ブログで指摘しているポイントとほとんど同じです。大火災の際に起こることとその危険、事前に注意すべきことが過不足なくまとめられています。さらに、過去に他の資料や記事などでお目にかかったことの無いような知識もあり、管理人も勉強させていただきました。

本当に必要なこと、正しいことを突き詰めれば似通った内容になるのは当然ではあります。できることなら、筆者殿と一度お話できればと思っているくらいです。

特筆すべきは、大正12年の関東大震災で3万8千人が一瞬で焼死した大惨事、東京市本所区(当時)の陸軍被服廠跡地発生した大火災旋風の生き残りである、現在99歳(当時10歳)の方を見つけだしてインタビューしていること。その言葉の生々しさはまさに圧巻です。これなどいちブロガーには全く及びもつかないもので、素直に敬意を表したいと思います。

なんだか手前味噌&筆者殿への私信みたいになってしまいましたが、とにかくおすすめです。

以上二点、ぜひご一読ください。毎度ながら、管理人は発行社、執筆者等とは一切の関係はありません。管理人目線で、良いと思ったものだけをおすすめしております。


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2012年11月13日 (火)

管理人ひとりごとスペシャル【11/13】

何がスペシャルかなんですが(笑)、今回管理人は、ここでひとつカミングアウトをしたいと思います。なぜ今かという理由は特に無いのですが。

あの2011年3月11日、実は管理人は日本にいませんでした。ですから、本来なら東京都内か埼玉南部で遭遇していたはずの、震度5強の揺れも実際には経験していません。ずっと昔から防災に関心を持ってきたのに、まさに「その時」にいなかった。それが気持ちの上でかなり負い目になっているのは確かです。海外にいたから、怖い目に遭わなくて済んだという発想は全くありません。

当ブログの内容からもおわかりいただけると思いますが、管理人は基本的に「現場主義」です。机上だけの理屈では役に立たない、とにかく現場に立って自分の身体感覚にまで落としこまなければ、実際には使えないと防災に限らず考えていますから、多くの人が経験した大地震を、自分の身体感覚で測れていないということが負い目なのです。

皆が「怖かった」と言います。「身体が動かなかった」、「死ぬかと思った」とも聞きます。ではどのように怖くて、どのように身体が固まって、何ができて、何ができなかったのか。その実感は、管理人の中にはありません。さらに、初めて大規模に発生した長周期地震動とはどんな感じで、さらにそれに短周期地震度が混ざった揺れとは実際にはどう感じるものなのかは、いくら話を聞いても実感することはできません。

帰国後、福島でボランティアをやっている時に直下型の震度5弱を経験しましたが、それは規模的にもメカニズム的にも震災本震とは全く別物であり、ある意味で、「想定の範囲内」でした。

しかしそんな負い目が、その後のボランティア活動や被災地支援、ひいては当ブログの誕生のための大きなモチベーションになっているのは確かです。管理人は、常に「本当のことを見たい、本当のことを伝えたい」と、強く願っています。

もっとも、それも管理人が関東の人間だからであって、もし東北の住人で、海外に行っている間に故郷が壊滅し、家族や知人が亡くなったとしたら、一体どう感じるのかはわかりません。でも、そこにいたら自分の命も無かったかもしれないとしても、自分がいても家族を助けられなかったとしても、管理人は「現場にいなかった」ことを、いろいろな意味で悔やむことだけは確かでしょう。実際に被災地に入っても、「あとから来て一体何がわかるんだ」という悔しさのようなものは、常に感じています。


ところでその時管理人はどこにいたかというと、米国のワシントンD.C.にいました。なぜそこにいたかということに、ちょっと手前味噌になりますが触れておきます。

管理人は、米国のドキュメンタリー専門TV局「ディスカバリーチャンネル」の大ファンでありまして、ここ数年、テレビはほとんどNHKとディスカバリーチャンネルしか視ていません。一部のエンタメ番組を除き、民放は全然興味が無くなりました。

そのディスカバリーチャンネルでは、2010年から11年にかけて、番組レビューを書いて一定数以上投稿するといろいろなインセンティブがもらえるキャンペーンを行っていました。その最高賞が、ディスカバリーチャンネル本社とワシントンD.C.旅行招待だったのです。

管理人は、本気で狙いに行きました。何故なら、ワシントンD.C.の博物館群を見るのが、昔からの夢だったからです。そしておかげさまで最多レビュアーとなり、招待を受けたのでした。そして本社訪問の日付が、3月11日だったのです。画像はメリーランド州シルバースプリングのディスカバリーチャンネル本社です。
Washington_179
Washington_180

震災当日、現地では10日の晩ですが、現地のホテルで家族からのメールを受け、すぐにCNNをつけました。ちなみに、関東・東北地方が大規模な通信障害に陥っている最中でも、日米間のメールも電話も全く問題なく使えました。もちろん系統が全く別のせいですが、こんな経験からも、可能であれば海外経由で被災地と連絡を取る方法もあるのだということを、以前にちょっと書いています。海外にいる人に、情報を中継してもらうわけです。

物理的に情報インフラが破壊されていては仕方ありませんが、通信トラフィックの集中による規制のために通信できないのなら、迂回すれば良いのです。被災地からの発信は比較的容易なので、国内の遠隔地を情報集約拠点としておいても、かなり効果的です。実際に、都内対他地方の通信がほとんど途絶していた中で、都内にいた家族の無事を遠隔地の実家に知らせたのは、米国にいた管理人でした。


CNNでは震災報道特別番組が始まっています。FOXでもやっていましたが、なぜかABCは通常編成です。驚いたことに、米国でもNHKワールドなどの映像を使い、ほとんどリアルタイムで震災報道が流れています。ライブ映像もありました。

はるか海外で、自分の国が「壊れていく」映像を何もできずにただ見続けるのは、それは異常な体験でした。あまりにも現実感が無くて、ただ呆然と画面を見ていることしかできませんでした。「祖国」という言葉を、これほど強く意識したことはありません。

現地のCNN報道特番を少し画面撮りしてありますので、Youtube動画でご覧ください。米国東部標準時間の3月11日午前5時35分過ぎ、日本時間では3月12日の午後2時35分過ぎ、つまり米国時間で発災から二日目の明け方の映像です。眠れずに、ただずっと見続けながらカメラを回しました。4分18秒です。
■Youtube動画はこちらから

そして3月13日、成田空港の閉鎖解除後の第一便で、しかも計画停電の混乱が始まる前日に、無事帰国できました。帰りの機内には予定通りに日本に向かう米国人も多くいました。急遽取材に向かうTV局のクルーもいます。しかし機内では、果たして成田からの電車は動いているのか?道路は走れるのか?余震はどれくら起きているのか?そして、原発はどうなっているのか?そんな情報はほとんどありませんでした。日本に着いたら一体何が待っているのだろう・・・。日本に近づくにつれて、皆だんだん無口になって行きました。

しかし結果的に、信じられないくらいスムーズに帰宅できました。大地震から二日後だというのに、本当にこの国は凄いと思いましたよ。街の様子も、普段とあまり変わっていないし。そしてその後の電力、物資不足と原発事故の影響は、管理人も皆様と同じ体験をすることになったわけです。


あくまで個人的な長話におつきあいいただき、ありがとうございました。


■当ブログは、カテゴリ【日記・コラム】です。

【気になります】宏観現象による地震警戒情報【11/13まとめ】

なんだかあざといタイトルですいません(笑)でも本当に気になることがあります。

当ブログでは、11月5日に千葉県北部の井戸水に砂粒が混入したという情報に接し、それから7日間、だいたい11月11日くらいまでは、茨城県南部と千葉県北部周辺で震度4以上の地震に警戒を、という情報を発しました。しかし結果的に、現在のところはそのような地震は発生しておりません。

過去にはこの井戸に変化が現れると、事実上100%に近い確率で対象震源域内で地震が発生したものですが、10月初旬頃から対象震源域では小規模の地震が頻発しており、この状況では過去の経験則は当てはまらなかったようです。

その一方で、ちょっと気になる状況になって来ています。11月初旬までは、茨城県南部、千葉県北東・北西部を震源とする震度1~2クラスの地震が3日と空けずに発生していました。しかし、今回の警戒情報を発した11月5日から本日13日の1300時までの間には、対象震源域での地震がほとんど起きていないのです。

たった一度、11月10日の午前0時30分に、千葉県北西部を震源とするマグニチュード3.0、震度1の地震が起きたきりで、ほとんど沈黙しています。今回がそうだとは言えませんが、小規模の地震が頻発した後にしばらく静穏期があり、その後に比較的大きな地震が発生するという例は少なくないものですから、その点が少し気になります。

いずれにしろ、この震源域は関東南部では一番活発には違いありませんし、首都圏に大きな被害をもたらすとされる、南関東直下型地震の想定震源域のひとつですから、常時警戒が必要な場所ではあります。


またその一方で、10月中旬までは落ち着いていた千葉県北東沖(千葉県東方沖)の震源域では、小規模の地震が再び毎日のように発生し始めています。ここは東日本大震災本震直後から、小規模の地震が集中的に発生している場所です。

この場所は、南西方向から陸側のユーラシアプレートと北アメリカプレートの下に潜り込んで来ている、フィリピン海プレートの地下の先端部に当たり、小規模地震の頻発はフィリピン海プレートの存在と無関係では無いとされています。ただし、この震源域では、少なくとも震災から今までの間には陸上の揺れが震度5強以上となるような規模の地震は発生していません。もしその規模になれば、津波の発生も懸念されます。


なお、前の「津波防災講演会」の記事で触れた、東日本大震災震源域の「となり」に当たる房総半島沖の震源域とは、この千葉県北東沖震源域よりずっと沖側になる別の場所です。もしマグニチュード7を超えるような大規模地震が発生するのなら、そちらの震源域での可能性の方が高く、その場合はかなり大きな津波が発生する可能性があります。

この「房総半島沖」震源域で1677に発生した大地震は、沿岸部に残された津波の痕跡からマグニチュード8を超える規模であったと推定されています。その時の津波は、千葉県、茨城県沿岸部では高さ10mを超えていた可能性が高いのです。

東日本大震災に誘発され、そのような地震と津波が再発する可能性が震災前よりはるかに高まっているということも常に心に留めておくだけでなく、特に沿岸部にいる方は、具体的な避難行動を常に考えていていただきたいと思います。

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2012年11月12日 (月)

避難所はあるのか?【対災害アクションマニュアル 13】

■第1章 危険を知れ(その11) 【避難所はあるのか?】

今回は、「避難所の危険」をチェックします。でも、具体的な危険を考える前に、知っておかねばならないことがあります。まずそこから。

防災フィールドワーク中のあなたは、大地震発生時にまず最初に避難することになるはずの、近隣の避難所に着きました。この「避難所」には、一般に四種類あります。以下に列挙します。

■「一時(いっとき)避難所」。地震による建物の倒壊や火災から一時的に避難するための場所で、市街地の中にある中小の公園や運動グラウンド、中小河川の河川敷、ショッピングセンターなど。発災直後に最初に避難する場所を表す「一次避難所」と区別するために、「いっとき」と読みます。

■「広域避難所」。数万人規模が集まれるような大規模公園、運動場、大河川の広い河川敷や、ショッピングセンター等の大規模建物など。

■「津波避難所」。津波到達予想地域やその周辺で、想定される津波高さに対して安全とされる高台や頑丈な建物など。

■いわゆる「避難所」。学校、体育館、公共施設など、ある程度の期間そこで避難生活を送ることを前提とした施設。

このうち上の3つは誰でもスペースさえあれば問題なく使えるものですが、まずお住まいの自治体に確認しておいていただきたいことがあります。あなたは4つめの「避難所」に入る権利があるのでしょうか。

実は、都市部の多くで避難所のスペースが不足しています。避難所の収容人数は、理想的には一人当たり4平方メートル、たたみ2畳強ほど必要とされていますが、それで収容対象区域の人口をカバーできている場所は多くありません。

実際には2~2.5平方メートル、つまりたたみ1畳分強から1.5畳分強ほどで収容人数を算定しているケースが多いのですが、特に東京23区内など大都市圏では、住宅密集地を中心にそれでも数十万人分単位で不足しています。ちなみにUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のデータによれば、一人当たり2平方メートル程度では、紛争地域における難民キャンプの平均よりも占有スペースが狭いとのこと。それくらい過酷な状況です。

そして実際の発災直後には、自宅が居住可能な場合でもライフラインの途絶、余震の恐怖、支援物資の受け取りなどのために避難所に人が集まり、多くの避難所は横にもなれないほどのすし詰めになることが予想されます。それは阪神・淡路大震災でも東日本大震災でも現実となっています。

このような現状のため、耐震性の高い建物が多い新興住宅街や耐震基準を満たしたアパート、マンションなどの住人は収容想定人員に繰り入れられておらず、それが住民に周知されていないケースも多く見られるのです。ですから、まずはお住まいの自治体の「防災課」に、ご自分の地域はどうなのかの確認をお勧めします。

さらに勤務先など出先では、いわゆる「昼間人口」は当然ながらその地域の避難所の収容想定人員に入っていません。ですから、まず自分はどこかの避難所に入れるのか入れないのか、入れないのならば代わりとなる帰宅困難者支援施設があるのかを、勤務先などの自治体の「防災課」に確認しておくことも併せてお勧めします。

もっとも、避難所に集まってきた避難者を追い返すようなことは実際には無いでしょうし、それ以前に収容時に現場で居住地域をチェックすることなど事実上不可能です。だからこそ、横にもなれないくらいにすし詰めになってしまうのです。

それは、あなたが近隣の避難所に入れる地域の住人だとしても、そこで必ずしも必要なスペースが確保されているという保証は無いということでもあります。「困った時はお互い様」の精神は大切なものですが、気持ちだけで解決できる問題でもありません。

このように避難所に入れない、または避難所にスペースが無いということも、避難生活の危険のひとつとして考えなえければなりません。順番が逆になってしまいますが、防災フィールドワークに出る前に、まず行くべき避難所について自治体に確認しておいてください。


ではこのような現状に対してどう対処するかというと、これはもう大規模災害時になるべく「避難所」に頼らなくて済む体制を作っておくしかありません。

具体的には、家がとりあえず無事ならば、なるべく自宅や自家用車の中などで持ちこたえられるように水と食品、カセットコンロなど火力の十分な備蓄、トイレ用資材の備蓄、庭や駐車場などで過ごせるように、テントやブルーシート、ロープ、ガムテープなどの備蓄をしておくことです。

屋外で過ごす場合の最大のポイントは「防水・防寒」です。その点を良く考えて、備蓄をセレクトしてください。もちろん、備蓄品の使い方に習熟しておくことは、言うまでもありません。

さらに、用意しておくべき非常に重要なものがあります。それは「運搬手段」。これは意外に見落とされていて、世間の「防災マニュアル」でもほとんど見かけません。発災後しばらくの間は支援物資は避難所に集まり、そこで配布されますから、それを受け取って自宅まで運搬する手段が必要なのです。

特に、水の運搬手段が大切です。例えば10リットル入りタンクならば、重さは10kgです。20リットル入りならば当然20kg。あなたはそれを手に持って、どれだけ移動できますか?さらにマンションなどの上階へ、階段で運び上げることができますか?給水車から飲み水を運ぶだけでなく、川や池などからトイレ用などの雑用水を運ぶこともありますから、実はかなり頻度が高い作業です。

そのために、重量物の運搬のためには牽引式カート、台車、理想的にはリヤカー(最近は軽量の折り畳み式もあります)などの準備を、管理人はお勧めしています。ちなみにリヤカーは、自動車が無い場合のお年寄り、子供、傷病者の搬送にも理想的な手段です。なお一般的なショッピングカートくらいでは、10kg以上の荷重をかけて使うと壊れる可能性が高いので、それなりに頑丈なものが必要です。

さらに、重量物を階段で運び上げるための手段として、登山などで使う「背負子」(しょいこ)があれば理想的です。高層階にお住まいの方は、是非用意しておいてください。

具体例については、当ブログの過去記事「家に備える防災グッズ【3】」で触れていますので、参考にしてみてください。
■「家に備える防災グッズ【3】」はこちらから

なお、リヤカーなどを個人で用意するのが現実的でなければ、町内の防災備蓄やマンションの自治会レベルで用意しておくと良いでしょう。余談ながら、そのレベルであれば発電機と救助用の電動チェーンソーなども現実的な選択となります。エンジン式のチェーンソーは、素人がいきなり使うには危険すぎますし。

次回は、避難所の具体的な危険をチェックします。


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2012年11月10日 (土)

津波防災講演会に参加しました

管理人は今日11月10日、皇居近くの一橋大学一橋講堂で開催された、気象庁主催の津波防災講演会「過去を知って未来に備える」に参加してきました。

内容は、テレビの天気予報でおなじみの気象予報士、木原実氏が軽妙に語る津波講談(お題はあの「稲むらの火)」、元東大地震研究所の都司嘉宣(つじよしのぶ)氏による、津波の科学的解説、気象庁職員永井章氏による、新しい津波警報システムについての解説でした。

管理人としては、中でも都司氏による講演に最大級の賛辞をお送りしたいと思います。過去に知られる限りの、文字通り全国津々浦々の津波被災地での詳細なフィールドワークと、歴史的資料の詳細な分析、伝承の聞き取りに基づく考察と今後の予想には、圧倒的な説得力がありました。実際に現場に出向いて事実を徹底的に調べて行くことで、遠い過去に起きたことも鮮明に浮かび上がって来る、その過程がまさに圧巻です。できることならそれだけを何時間でも聴きたいくらいです。

今講演の内容は、今後当ブログでも逐次反映させて行きたいと思いますが、とりあえず非常に重要な事実をふたつ、ここに記しておきたいと思います。


まず、超巨大地震の集中。20世紀中に発生したマグニチュード9以上の巨大地震は5回ありますが(一般には、人的被害がほとんど無かったアラスカとアリューシャン列島のM9地震が除外されていることがあります)、そのすべてがたった18年間という短い期間に集中しているという事実。100年のうちの18年間ですから、これは偶然ではありません。

しかしその理由は、現在の科学では判然としません。地球の自転速度の変化による影響など諸説ありますが、どれも仮説の域を出るものではありません。

そして21世紀。20世紀最後のマグニチュード9クラス、1964年のチリ地震(M9.5)から40年の空白を経て、2004年にスマトラ沖地震(M9.1)、そして7年後の2011年に東日本大震災(M9.0)が発生しました。過去の事実から考えればこれで終わりでは無く、「次」もそれほど遠く無いと考えるべきでしょう。今世紀の超巨大地震多発期は、既に始まっているのです。


もうひとつは、地震の連鎖。巨大地震が発生すると、その震源域外縁、つまり「となり」で被害が出るレベルの海溝型地震や内陸直下型地震が発生することが非常に多いのです。その期間は、原因となる地震から5年以内が圧倒的に多く、そしてその影響は10年は続くとされます。

東日本大震災の震源域に当てはめれば、本震直後の2011年3月12日の長野県栄村地震、3月16日の静岡県富士宮地震がそれに当たります。そして、今後誘発地震が発生する可能性が高い主な「となり」の震源域は、海底の場合は北海道の太平洋沿岸、青森県東方沖、房総半島東方沖です。このうち房総半島東方沖は、1677年にマグニチュード8クラスが発生して以来、330年以上沈黙している震源域です。

内陸の場合は東北地方の日本海側、北陸地方、そして関東地方南部です。もちろんここに挙げた場所だけに限定されるものではありませんが、大きな地震が誘発される可能性が高い場所であることは確かです。

東日本大震災から1年8ヶ月。いまだその影響のまっただ中にあるということを、改めて認識させられました。大地震と大津波への備えは、今まさに必要とされているのです。

最後に全く余談ながら、当ブログ読者の方で、この講演会に参加された方はいらっしゃいますでしょうか。質疑応答時間に、都司氏に二番目に質問した若い人のとなりにいた赤シャツが管理人です。いえ、たまたまそこにいただけなんですけど(笑)


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2012年11月 9日 (金)

手段を選ぶな【対災害アクションマニュアル 12】

■第1章 危険を知れ(その11)【手段を選ぶな】

今回は、住宅密集地で前後を火にふさがれて、進退窮まった状況を考えます。

当ブログでは以前もちょっと書いたのですが、どこの「防災本」にも書かれていないし指導もされていない、おそらく日本で管理人だけが提唱するチェックポイントがあります。まあ、こんな内容は「社会的地位のある防災指導者」の方々は決して言わないでしょうし、それ以前に考えたことの無い方も多いかとは思いますが(笑)

その方法とは「道路以外の脱出路」のチェック。これは特に住宅密集地、木密地域で有効な方法です。例えば、狭い路地で前後を火災でふさがれたとします。そんな時はどうしますか?必死で脱出路を探しますよね。ではあなたが探す脱出路は、道路だけですか?


そんな場合、何も道路を行かなくても良いのです。もちろん、建物の間の通れそうな隙間などあればチェックしておきますが、それも無かったら。

その時は、周囲の建物の敷地を通り抜けるのです。さらには、建物の中を通り抜けることも考えます。住宅密集地や木密地域ではそれが可能な場所、つまり人家の敷地や庭をチェックしておきます。それで通り一本裏に出られれば、脱出できる可能性は大きく膨らむわけです。

もちろん、チェックの際には道路上からで、平時に実際に通ってみたり、じろじろのぞき込んだりしないように(笑)さらりと眺めて、とりあえず「ここは通れそうだな」という場所をチェックしておくのです。

そして実際の災害下で進退窮まったら、人家の中を通り抜けて脱出することをためらう理由はありません。その時は壁を乗り越え、生け垣を折り、門扉を壊し、さらに家の鍵が閉まっていたらガラスを割り、ドアを壊すことになるでしょう。

その場合、法律的には他人の土地建物に無断で入ることで不法侵入罪、カギやドアを壊したり、室内を傷つけることで器物損壊罪を犯すことになりますが、生命が危険に晒され、そうしなければ生き残れないような状況だったと認められれば「緊急避難」が成立し、法的責任を問われないはずです。


でもそんな理屈以前に、たとえ後で罪に問われようと、そこで死ぬよりはマシというものです。管理人は、もし実際にそんなことをやって生き残れたら、仮にその家が灰になっていても、後で住人を探してお詫びとそれなりの補償をするつもりではありますが。何しろ、命あっての物だねです。

言うまでも無く、それは本当に「最後の手段」でなければなりません。でもそんな状況では、そこにいるのはあなたひとりではないことが多いと思います。そこであなたが唯一の脱出路を開けば、全員がそこへ殺到します。通り抜けられた家は、かなりの被害を受けるでしょう。

仮にその行動が後で問題になり、最初に誰がやった?あいつだと指摘され、罪をかぶせられるのならばそれでも良し、それくらいの覚悟をしておくことです。そこにいた皆が「あの人のおかげで助かった」とかばってくれる?そんなことは期待せずに。でも後でどんな目に遭おうと、その場で黒こげになって転がっていることになるよりは、はるかにマシではないですか。

東日本大震災でも、津波に巻き込まれてずぶ濡れになりながら、寒さをしのぐために他人の家の中から衣服や布団を持ち出して生き残った方も実際にいるのです。生命の極限で、だれがその行動を責められましょうか。とにかく普段から、最後は手段を選ばないという「覚悟」をしておくことです。


実は、あの「大川小学校の悲劇」が起きたひとつの要因は、この「覚悟」の問題だったと言うことができます。すぐ近くに安全な避難場所がありながら、そこが津波避難場所として想定されていなかったこと、深い山の中での集団の掌握が困難と思われ、事故の可能性があったこと(要は責任問題)、児童を迎えに来た父兄への引き渡しができなくなること、学校に集まった一般避難者に高齢者が多く、山を登らせるのにためらいがあったことなど「生き残ってから」の理由を引率者が優先したために、「生き残る」チャンスが失われたのです。

それは、引率者に「後でどうなろうと、子供たちを守ることを最優先する」という「覚悟」が足りなかったために、判断の遅れを招いたということができます。極端な話、子供たちだけでも山に登らせるという選択肢もあったのです。

ただし、管理人はその判断を報道だけで一方的に批判するつもりもありませんので、先日実際に大川小学校跡に出向いて、なぜそのような判断になったのかを、管理人なりに検証して来ました。それが、このような悲劇を繰り返さないために必要だと思うからです。そしてそれは、管理人自身の「覚悟」を補強するためでもありました。

動画も含めた大川小学校からのレポートは、並行して連載中の「宮城・震災から1年8ヶ月」シリーズの中でお送りします。

さて、防災フィールドワークに戻りましょう。避難場所が見えて来ました。次回は、避難場所周りのチェックです。


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【茨城・千葉継続警戒を】宏観現象による地震警戒情報【11/9】

本日11月9日午後12時52分頃、福島県沖の深さ20kmを震源とするマグニチュード5.5の地震が発生し、茨城県日立市などで最大震度4を記録しました。

なお、当ブログではひとつ前の記事で、11月5日に千葉県北部の井戸に現れた変化を受け、茨城県南部から千葉県北部で発生する震度4以上の地震に警戒との情報を出しております。しかしこの地震は、現時点では井戸の変化とは無関係と判断します。井戸の場所からは震央まで100km以上の距離があること、過去にこの震源域での地震と井戸の変化には、特に相関が見られていないからです。

よって茨城県南部、千葉県北東部・北西部を中心とする震源域(下図のオレンジ色)での震度4以上に、引き続き警戒していただきたいと思います。期間としては、とりあえず変化の発生から7日目となる11月11日までとしておりますが、厳密に区切れるものでもありませんので、あくまで目安です。
Photo
今日の震度4は上図の赤い×印が震央で、この地震は黄色で表した最近の多発震源域での発生と考えて良いでしょう。震源深さは20kmと浅めですが、本震に続いて余震と思われる震度1~2クラスが、深さ30kmで発生しています。上図は管理人が観察し続けた地震発生状況から作成しましたが、茨城・福島沖震源域の範囲と震源深さについては、少し修正が必要のようです。

今後も、いつどこで大きな地震が発生してもおかしく無い状況が続きます。警戒情報を出しておきながらこう言うのもなんですが、一面的な情報にとらわれず、日々の備えを習慣としていただきたいと思います。


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2012年11月 7日 (水)

宏観現象による地震警戒情報【11/7】

いつも情報をいただいている、千葉県北部の井戸の変化に関する情報です。

10月初旬くらいから、この井戸の変化と関連がありそうな地域の地震が一週間に2~3回以上の頻度で発生していたために、この情報はしばらくアップしておりませんでした。しかし今回いただいた情報は、ちょっと気になるものですので、記事にしておきます。

11月5日の時点で、井戸水に砂が混入しているのが確認されています。この井戸に出る変化は水の匂い、細かい浮遊物や沈殿物が主なのですが、時々砂が混入します。過去の経験則によると、砂が混入した時は比較的大きめの地震が発生することがあったため、念のため震度4以上を警戒していただきたいと思います。

対象となる震源域は、茨城県南部、千葉県北西部、千葉県北東部及びその周辺の可能性が高いと思われます。下図のオレンジ色の地域となります。
121024_2
この震源域で、震源深さが40kmより深く、地上の震度が4以上となる地震が発生する可能性が高まっていると思われます。

発生の時期は、過去の例に当てはめれば変化から7日間程度の間で、特に4~5日目の可能性が高くなっていますので、明日11月8日から11日くらいまでの間は、特に警戒していただきたいと思います。

対象震源域のうち、茨城県南部の埼玉・栃木県境寄りから、その南側の千葉県北西部で比較的大きな地震が発生していますので、まずその周辺での可能性が高く、次いで茨城県南部の太平洋寄りである霞ヶ浦周辺から、その南側である千葉県北東部と考えられます。

これはあくまで過去の経験則と現在の地震発生状況から予想したもので、当然ながらこれに当てはまらなかったり、関連のありそうな地震が発生しないことも考えられます。しかし、震災後にこの井戸に変化が出た時は、規模の大小はともかく、ほぼ100%と言える確率で関連のありそうな地震が発生していることも事実です。

現在はこの震源域でも数日と空けずに小さな地震が連続している状況ですので、過去の例がそのまま当てはまらないかもしれませんが、こればかりは事前になんとも判断のしようがありません。念のための警戒情報としてアップしておきます。

なお、毎度のことですが、当ブログの情報が他のブログやサイトなどの地震関連情報と重なる部分があっても、それは単なる偶然であり、他の情報との関連を一切否定します。この情報は、夢だの体感だの気象の影響だのというオカルトやエセ科学とは一切無縁です。継続的に観察したことで得られた経験則による、あくまで科学的な予想であることをお断りしておきます。


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【千葉県北東沖でM4.3】地震警戒情報【11/7】

今まで当シリーズは「臨時地震警戒情報」としてお送りしてきましたが、昨今の地震多発状況により臨時でもなんでもなくなってしまいましたので(笑)今回から「地震警戒情報」としてお送りします。規模に関わらず注目すべき地震をピックアップして情報をお伝えし、その後の警戒を促すという記事内容については変更ありません。

本日午前0時07分ごろ、千葉県東方沖、深さ10kmを震源とするマグニチュード4.3の地震が発生し、千葉県銚子市で最大震度3を記録しました。今回の震央は下図の赤い×印です。図では「千葉県北東沖」と表記しています。
Photo
この震源域は、東日本大震災後に深さ10~20kmの小さな地震が集中的に発生していて、無感地震も含めれば現在でもその状態は続いています。しかし、時間の経過と共に発生回数は漸減してきており、特にここ2~3ヶ月ほどの間は、震度1以上の有感地震に関しては震災前に近いレベルまで減っていました。

しかし11月初頭から震度1クラスが1日1回くらいの頻度で発生し始めたので、前記事で改めて「しばらく様子見」と書いたのですが、やはり今回少し大きめの発震がありました。今回は海底のマグニチュード4.3で陸上の最大震度は3でしたが、この震源域は一部が千葉県銚子市付近の陸地にもかかっていますので、もし陸地直下の「ごく浅い」場所で発生した場合、この規模でも最大震度4~5弱になることが予想されます。

今年の3月14日には、マグニチュード6.1、銚子市などで震度5強を記録する地震がありましたが、今回と同じ震源域で発生したものです。この震源域は陸地に近いことと、10~20kmという比較的浅い場所での発震が中心のため、被害が出る地震となりやすい場所でもあります。マグニチュード6台後半になれば津波の可能性もありますから、今後も引き続き警戒すべき震源域です。


震災後に多発している震源域は、すなわち地震が発生する理由がある場所ですから、一時的に小康状態になっても、すぐに警戒を解くべきではないという認識を改めてさせられました。大きな地震の後の余震は、基本的には時間の経過と共に漸減するものですが、いま日本列島では、超巨大地震後の地殻変動によって多くの地震が誘発されている状況であり、普通の余震と同じに考えるべきではありません。

当ブログでも良く書いていますが、地質学的な時間軸で考えたら、この大地殻変動はまだ始まったばかりであり、当初の激烈な変動が収まりかけている段階に過ぎません。そして今後、その影響は数十年単位で続くのです。その間に、現時点で大きなひずみエネルギーが溜まっている震源域があれば、むしろ「影響を受けない方がおかしい」くらいの状況であることを認識しなければなりません。

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2012年11月 5日 (月)

【続々・南三陸町防災対策庁舎跡から】宮城・震災から1年8ヶ月【5】

今回は、宮城県南三陸町の防災対策庁舎跡の周辺で、津波の威力の痕跡を調べます。ちょっとわかりずらい話ではありますが、ここでの津波の威力を端的に示すものです。

在りし日の町役場をもう一度見てみましょう。
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防災対策庁舎をはさむように、役場の庁舎がありました。それらの建物は中空の軽量鉄骨構造だったため、津波と瓦礫の直撃を受けて、コンクリートの土台と一階床だけを残して跡形も無く流されました。このことからも、防災対策庁舎のような強固な鉄骨構造が、津波と瓦礫の衝突に対していかに頑強かがわかります。

管理人は建築の専門家ではありませんが、素人なりに興味がある分野ではあります。そこで被災地では、残された建物の基礎部分を、かなり詳細に観察しています。まず最初にこの写真をご覧ください。これは昨年11月の被災地訪問時に撮影したもので、石巻市の旧北上川河口部の「中瀬」に建っていた、木造アパートの基礎と建物部分を結着していたボルトです。
Photo
画面右側から津波の水流を受けています。この場所は河口にほど近いために瓦礫の量はあまり多くなく、主に水の力で建物が押し流されたと思われます。高張力鋼製のボルトが飴のように捻じ曲げられていますが、これは比較的ゆっくりと、イメージとしては「メキメキメキ…」という感じで捻じ曲げられています。一気にドカンと力が加わったならば、もっと鋭角的に折れ曲がるはずです。

このような基礎ボルトの曲がり方は、堤防を超えた津波が一気に流れ込んだ仙台市の荒浜地区など、各地で普通に見られました。津波による一般的な破壊状況と言って良いかと思います。

これに対し、南三陸町で見た破壊状況には背筋が寒くなりました。被災前の役場画像で、防災対策庁舎の右側にある建物の基礎部分です。
Photo_2
画像の左方向から津波を受けています。高張力ボルトの破断面を見てください。斜めになった断面が、ささくれ立っています。これは津波と瓦礫の衝突によって巨大なせん断応力と引っ張り応力がかかり、ボルトは曲がる間もなく瞬間的に「引きちぎられた」ことを示しています。高張力ボルトというくらいですから引っ張り応力に対しては非常に強いのですが、それがご覧のような状態なのです。

最初は、残った基礎部分を撤去する際に重機で引きちぎられたのかとも思いましたが、他の部分のボルトも同じような状態でしたから、津波による破壊と判断しました。それに被災直後の画像でもわかるように、重機で撤去するような残骸は、周辺には何も残っていなかったのです。

さらに、中空の軽量鉄骨の基礎部分は、このような状態でした。
Photo_3
画面左から津波を受けています。軽量鉄骨のような薄い鉄板は、最初の一撃を受けた瞬間にあたかもボール紙製のようにひしゃげ、根元からあっさりと引きちぎられていることが見て取れます。

町役場と海の間数百メートルは南三陸町の中心部ですから、瓦礫の量が多くなって衝突の衝撃力が強まったという理由もあるでしょう。しかしそれ以前に、前回記事で掲載した画像からもわかるように、この場所の津波の水量、速度、衝撃力は群を抜いていたとも言えます。それは既に波ではなく、水深を20m近くも増した海全体が、そのまま激流のよう高速で「移動して」来たのです。

その理由はリアス式海岸の影響はもちろん、牡鹿半島を回りこんだ津波が集中する場所だった、他の震源域から発生した津波と合成されたなどいろいろ考えられますが、とにかくこの場所が、津波災害に関しては最も過酷な場所のひとつだったことが伺えます。残された多くの画像からもわかるように、町全体が水深20mの「激流」となったのです。

流された建物の中には、多くの人が残っていました。流されなくても、激流が貫通しました。建物を一瞬で引きちぎる激流に襲われた時、そこにいた人たちがその時何を見て、どうなったのか。それを想像すると、恐ろしいというよりもただ、やりきれない気持ちになるのです。あの時ここにいたら、自分もそのひとりだったかもしれないのです。決して他人事ではありません。

次回は、女川町へ向かいます。


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2012年11月 4日 (日)

【福島沖震度4など】臨時地震警戒情報【11/4】

昨日11月3日午前7時34分ごろ、福島県沖の深さ30kmを震源とするマグニチュード5.0の地震が発生し、福島県天栄村で最大震度4を記録しました。天栄村は福島県中通りであり震源の直近ではありませんが、そこだけで震度4を記録した理由は不明です。一般的には地盤の関係と考えられるものの、かなり山の中の地盤が比較的強い地域の一ヶ所だけで震度4が測定されていますので、測定機器の問題である可能性もあります。

この地震は、深さ30kmということから当ブログで指摘している茨城・福島県沖の多発震源域の地震とタイプ的には似ていますが、震央位置は現在多発している場所よりはかなり沖合いです。(下図の赤い×印)この場所は東日本大震災本震に連なる一連の地震の震源域であり、震源深さも本震に近いですから、震災本震の直接的な余震とも考えられます。
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この地震と、沿岸部で多発している地震(上図の黄色の地域)との関連はわかりませんが、現在も震災本震と同メカニズムの余震が起きることは当然の時期ですから、これは直接的な余震と考える方が自然です。規模はマグニチュード5.0とやや大きめでしたが、陸地との距離が開いているので、震度3~4程度の揺れで済みました。この規模が陸地近くの沖合いや陸地直下で起きた場合、地上の揺れは震度5弱~5強となることが予想されますし、そのような地震が起きる可能性はかなり高い状態だと言えます。

一方、前回の当シリーズ記事で「千葉県北東沖震源域はかなり落ち着いている」と書いた途端に、その震源域(上図の青い地域)で立て続けに震度1~2クラスが起きはじめました(気象庁の発表では「千葉県東方沖」となっています)。11月1日から3日まで毎日1回ずつ発生しており、やはりもうしばらく様子を見た方が良さそうではあります。

その他にも、上図の多発震源域すべてで震災前よりはるかに多い、ざっと考えても数十倍と言える数の地震が、毎日のように起きています。最近は被害が出るような地震が無いから良いようなものの、震災後の日本列島は異常事態が続いているのです。そして毎度書いていますが、小さな地震の数が増えると、大きな地震の発生確率が上がることに疑いはありません。

こうやって言葉で書いても、それ自体に全くと言って良いほど恐怖感はありません。書いている管理人自身も、字面だけでは怖くない。必要なのは想像力です。それも得体の知れないくだらない想像をするのではなく、「正しく怖れる」想像をしなければなりません。余談ながらこの「正しく怖れる」という表現、最初に使ったのはあの寺田寅彦らしいとのこと。

そして、その怖れを実際の「正しい行動」に結び付けて、初めて「生き残る」力がアップするのです。日本列島は、いま備えを進めなくていつやるのだ、というくらいの状況なのですけどね。

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2012年11月 1日 (木)

ありがとう!20万PV

本日11月1日、当ブログの累計ページビュー数が20万PVを突破いたしました。

画面に表示されるアクセスカウンターはPCとスマホからのアクセスのみカウントしており、これに携帯電話からのページビュー数を加算すると20万を超えます。

当ブログのスタートは今年1月12日。それから9ヶ月と半月ほどでここまで来ました。特に目標とかあったわけではありませんが、PV数もさることながら、参加しているブログランキングでも常に上位に押し上げていただいております。

ランキングに変動はありますが、科学的な防災情報ブログとしては常に最上位です。エセ科学やオカルト、商売のブログなどとは本来土俵が違いますから、そんなものはどうでも良いのですが。

このような場所にまで押し上げていただいた皆様に、心から感謝いたします。

愛読いだだきまして、本当にありがとうございます。

今後も、より充実した「本当に役に立つ」科学的で実践的な情報をお届けするべく、がんばってまいりますので、今後とも「生き残れ。Annex」をどうぞよろしくお願いいたします。

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外へ出よう【対災害アクションマニュアル 11】

※東日本での地震多発状況のためにレギュラーシリーズが滞ってしまっていましたが、再開します。お待たせいたしました。

■第1章 危険を知れ(その10)【外へ出よう】

さて、今回は実際にフィールドワークに出発します。避難訓練とは違いますから、服装は普通の動きやすい軽装で良いでしょう。

持参するものとしては、筆記用具と前回いろいろ書き込んだハザードマップまたは周辺の地図とメモ用紙、ノートなどをできればバインダーに挟んで、途中でいろいろ書き込めるようにすると良いでしょう。記憶だけに頼るのは見落としを招きますし、メモすることで記憶もより確実になります。

写真やビデオを撮っておくと後で確認する際に役に立ちますが、公共の場所はともかく、人家の中や通行人が写る場合には注意が必要です。あらぬ疑いをかけられませんように、その点には十分に配慮してください。


ところで、防災フィールドワークに出る時は、普通は天気の良い昼間を選ばれると思います。しかし災害はいつ起こるかわかりません。実際に避難するのは、夜間や豪雨、大雪、強風の中かもしれないのです。

ですから想像力をいっぱいに働かせて、そこが停電した夜や台風、雷雨、大雪だったらどうなるか、そこで何が必要になるかを良く考えながら、街を歩いてみてください。関東地方の方は、あの計画停電の夜を思い出して。


さて、前回の「計画」では、地図上や記憶で、街の「大きな危険」をチェックしました。今回、実際に街を歩きながら行うのは、計画段階でわからなかったことを実際に確かめることと、あなたの身体に直接危険を及ぼしそうな「小さな危険」のチェックが主になります。

歩くルートは、まずは地図上で決定した最優先ルートです。そこが本当に最良なのか、実際にはどんな危険があるのかを良く見て行きます。以下は、チェックするポイントの例です。


□【道路の広さ】家、電柱、壁などの倒壊や火災、放置車両などがあっても通れるかどうか、その場合、近くに安全な迂回路があるか。行き止まりの袋小路はないか。

□【倒壊・崩壊危険物】ブロック塀、石塀、石灯籠、鳥居、転倒対策が無い、または不十分な自動販売機、石垣、切り通しなど。

□【倒壊危険建物】倒壊して道をふさぎそうな建物。古い木造家屋、商店、ビルなど。

□【落下危険物】看板類、割れそうな窓ガラスや落ちそうな外壁(特に古い建物の外装タイル、モルタル、石材)、大型ガラス壁、大量の電線、古い陸橋や高架橋(橋桁や破片の落下)など。

□【橋・川】落ちそうな橋ではないか、落ちた場合に迂回路はあるか、川を徒歩で渡れるか、津波の遡上や土石流の後でも通れそうか(水面からの高さを見ておきます)

□【その他の危険】工場(特に化学工場)、ガス・石油タンクなど、火災・爆発・有毒ガス発生の危険がある場所など。ガソリンスタンドは、地震による火災・爆発の危険はあまりないので除外。むしろ災害時に支援拠点となるガソリンスタンドも多いので、それもチェックを。


主に上記のようなことをチェックしながら、歩いて行きます。以前の記事の動画も参考にしてみてください。
■Youtube動画 「東京地震災害危険地帯を行く(その2)」はこちらから

上記に限らず、直感的に危ないと思ったことは、どんどんメモして行きましょう。地震災害に限らず、例えば見通しの悪い交差点、狭いけれど交通量の多い道、人通りが少なく人家や街灯も少ない道なども、普段の生活における危険要素です。そのような目で見て行くと、街は本当に危険だらけです。

それだけでなく、大地震後には街のどこからでも火災が発生してもおかしくありません。特に古い木造家屋は短時間で炎に包まれる可能性が高く、狭い道では、その脇を通り抜けられない可能性も大きくなります。

津波や土砂災害危険地帯を除けば、地震発生直後を切り抜けた後の最大の危険は、火災です。行く手を塞がれそうな場所では、事前に考えた迂回ルートはもとより、危ないと思った場所ではその場で迂回ルートを探して、実際に歩いておくことをお勧めします。

次回は、火災や津波などに行く手を塞がれ、進退窮まったらどうするかについて考えます。


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【機器故障と判明】放射線警戒情報【新潟県長岡市】

【11/1 15:10追記】下記記事については、計測機器故障による誤報と判明しました。放射線については、何も問題は発生しておりません。当該情報配信元である、Yahoo!のおわび記事を転載します。

(以下転載)----------
11月1日10時35分ごろ、新潟県長岡市宮内町の放射線測定機器より放射線上昇の通知がありました。地球環境スキャンニングプロジェクトに確認しましたところ、放射線測定機器の故障が原因であることがわかりましたためお知らせいたします。また、山口県山口市中市町の放射線測定機器でも故障が確認されているため、現在、これらの測定機器による観測の一時停止、メンテナンスをする予定となっています。
お客様には、ご心配おかけしました事おわび申しあげます。
(転載終了)----------

というわけで、何も心配ありません。お騒がせいたしました。


------------(以下の記事は、誤報です)------------------

本日午前10時35分、新潟県長岡市宮内町地内において、平常時の約5倍である、0.107マイクロシーベルト毎時の放射線量が計測されました。

原因は不明です。この線量では特に危険はありません。通常通りの生活をしていて問題はありませんが、周辺地域の方は、今後の情報に注意してください。計測機器のトラブルの可能性もあります。

計測地点における平常時の放射線量は、0.015マイクロシーベルト毎時前後ですが、0.15マイクロシーベルト毎時までは通常の範囲内とされています。しかし短時間での急上昇が見られたため、原因等が判明するまでは警戒が必要です。

続報がありましたら、当記事に追記します。


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