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2012年11月12日 (月)

避難所はあるのか?【対災害アクションマニュアル 13】

■第1章 危険を知れ(その11) 【避難所はあるのか?】

今回は、「避難所の危険」をチェックします。でも、具体的な危険を考える前に、知っておかねばならないことがあります。まずそこから。

防災フィールドワーク中のあなたは、大地震発生時にまず最初に避難することになるはずの、近隣の避難所に着きました。この「避難所」には、一般に四種類あります。以下に列挙します。

■「一時(いっとき)避難所」。地震による建物の倒壊や火災から一時的に避難するための場所で、市街地の中にある中小の公園や運動グラウンド、中小河川の河川敷、ショッピングセンターなど。発災直後に最初に避難する場所を表す「一次避難所」と区別するために、「いっとき」と読みます。

■「広域避難所」。数万人規模が集まれるような大規模公園、運動場、大河川の広い河川敷や、ショッピングセンター等の大規模建物など。

■「津波避難所」。津波到達予想地域やその周辺で、想定される津波高さに対して安全とされる高台や頑丈な建物など。

■いわゆる「避難所」。学校、体育館、公共施設など、ある程度の期間そこで避難生活を送ることを前提とした施設。

このうち上の3つは誰でもスペースさえあれば問題なく使えるものですが、まずお住まいの自治体に確認しておいていただきたいことがあります。あなたは4つめの「避難所」に入る権利があるのでしょうか。

実は、都市部の多くで避難所のスペースが不足しています。避難所の収容人数は、理想的には一人当たり4平方メートル、たたみ2畳強ほど必要とされていますが、それで収容対象区域の人口をカバーできている場所は多くありません。

実際には2~2.5平方メートル、つまりたたみ1畳分強から1.5畳分強ほどで収容人数を算定しているケースが多いのですが、特に東京23区内など大都市圏では、住宅密集地を中心にそれでも数十万人分単位で不足しています。ちなみにUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のデータによれば、一人当たり2平方メートル程度では、紛争地域における難民キャンプの平均よりも占有スペースが狭いとのこと。それくらい過酷な状況です。

そして実際の発災直後には、自宅が居住可能な場合でもライフラインの途絶、余震の恐怖、支援物資の受け取りなどのために避難所に人が集まり、多くの避難所は横にもなれないほどのすし詰めになることが予想されます。それは阪神・淡路大震災でも東日本大震災でも現実となっています。

このような現状のため、耐震性の高い建物が多い新興住宅街や耐震基準を満たしたアパート、マンションなどの住人は収容想定人員に繰り入れられておらず、それが住民に周知されていないケースも多く見られるのです。ですから、まずはお住まいの自治体の「防災課」に、ご自分の地域はどうなのかの確認をお勧めします。

さらに勤務先など出先では、いわゆる「昼間人口」は当然ながらその地域の避難所の収容想定人員に入っていません。ですから、まず自分はどこかの避難所に入れるのか入れないのか、入れないのならば代わりとなる帰宅困難者支援施設があるのかを、勤務先などの自治体の「防災課」に確認しておくことも併せてお勧めします。

もっとも、避難所に集まってきた避難者を追い返すようなことは実際には無いでしょうし、それ以前に収容時に現場で居住地域をチェックすることなど事実上不可能です。だからこそ、横にもなれないくらいにすし詰めになってしまうのです。

それは、あなたが近隣の避難所に入れる地域の住人だとしても、そこで必ずしも必要なスペースが確保されているという保証は無いということでもあります。「困った時はお互い様」の精神は大切なものですが、気持ちだけで解決できる問題でもありません。

このように避難所に入れない、または避難所にスペースが無いということも、避難生活の危険のひとつとして考えなえければなりません。順番が逆になってしまいますが、防災フィールドワークに出る前に、まず行くべき避難所について自治体に確認しておいてください。


ではこのような現状に対してどう対処するかというと、これはもう大規模災害時になるべく「避難所」に頼らなくて済む体制を作っておくしかありません。

具体的には、家がとりあえず無事ならば、なるべく自宅や自家用車の中などで持ちこたえられるように水と食品、カセットコンロなど火力の十分な備蓄、トイレ用資材の備蓄、庭や駐車場などで過ごせるように、テントやブルーシート、ロープ、ガムテープなどの備蓄をしておくことです。

屋外で過ごす場合の最大のポイントは「防水・防寒」です。その点を良く考えて、備蓄をセレクトしてください。もちろん、備蓄品の使い方に習熟しておくことは、言うまでもありません。

さらに、用意しておくべき非常に重要なものがあります。それは「運搬手段」。これは意外に見落とされていて、世間の「防災マニュアル」でもほとんど見かけません。発災後しばらくの間は支援物資は避難所に集まり、そこで配布されますから、それを受け取って自宅まで運搬する手段が必要なのです。

特に、水の運搬手段が大切です。例えば10リットル入りタンクならば、重さは10kgです。20リットル入りならば当然20kg。あなたはそれを手に持って、どれだけ移動できますか?さらにマンションなどの上階へ、階段で運び上げることができますか?給水車から飲み水を運ぶだけでなく、川や池などからトイレ用などの雑用水を運ぶこともありますから、実はかなり頻度が高い作業です。

そのために、重量物の運搬のためには牽引式カート、台車、理想的にはリヤカー(最近は軽量の折り畳み式もあります)などの準備を、管理人はお勧めしています。ちなみにリヤカーは、自動車が無い場合のお年寄り、子供、傷病者の搬送にも理想的な手段です。なお一般的なショッピングカートくらいでは、10kg以上の荷重をかけて使うと壊れる可能性が高いので、それなりに頑丈なものが必要です。

さらに、重量物を階段で運び上げるための手段として、登山などで使う「背負子」(しょいこ)があれば理想的です。高層階にお住まいの方は、是非用意しておいてください。

具体例については、当ブログの過去記事「家に備える防災グッズ【3】」で触れていますので、参考にしてみてください。
■「家に備える防災グッズ【3】」はこちらから

なお、リヤカーなどを個人で用意するのが現実的でなければ、町内の防災備蓄やマンションの自治会レベルで用意しておくと良いでしょう。余談ながら、そのレベルであれば発電機と救助用の電動チェーンソーなども現実的な選択となります。エンジン式のチェーンソーは、素人がいきなり使うには危険すぎますし。

次回は、避難所の具体的な危険をチェックします。


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