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2012年12月23日 (日)

【年末年始の災害対策 4】寒冷地ドライブ編

年末年始には、寒い場所や雪が多い場所へ行くことも多いものです。今回は、地震・津波対策カテゴリの中では変則的ではありますが、そんな場所へ車で行く場合の危険を主に考えます。

この場合、地震・津波に遭遇するよりも確率的にはるかに大きな危険があります。特にこの冬は気温が低めで天候も荒れ気味ですので、寒冷地に行く際は特に警戒が必要です。ちなみに管理人は、かつて札幌を拠点に道内あちこちを車で走り回っておりました。


あまり寒くない場所に住んでいる人にとっては、寒さや雪の本当の怖さはあまり実感できないものです。それに寒冷地でも平常時ならば、それほど危険な目に遭うこともありません。しかし何らかの道路障害が発生したり、天候が大荒れになったりした場合には、状況は一気に危険度を増します。

東北北部や北海道では、豪雪や猛吹雪による通行止め、地吹雪による視界喪失などは日常的に発生します。そんな中で多重衝突が起きたり、立ち往生した車の中で凍死するような事故が毎年何件も起きています。

また、積雪地では車が深い雪にはまって動けなくなる、いわゆるスタックもごく日常的です。誰もいない場所でスタックして脱出できなかったら、命に関わります。都市部の感覚で、どこでも携帯電話が通じるとは考えないことです。

地吹雪などの視界不良時に事故が起きると、後続車がほぼ確実に追突してきます。最悪の視界条件下では、止まっている車が見えた時には、ブレーキをかけてもスリップして止まれない距離に迫っているからです。そんな場合は、猛吹雪の中を車外に避難しなければならないこともあります。それだけでも、十分な装備が無いと生命に関わる事態となります。


では、積雪地・寒冷地での危険について、具体的な対処方法を考えましょう。

寒冷地で立ち往生した車の中で凍死者、つまり低体温症による死者が出るのは、車内で寝込んだまま燃料切れ、過冷却、排気管が降雪で塞がれるなどしてエンジンが止まり、ヒーターが切れる場合がほとんどです。ですから、立ち往生している最中に絶対に車の中で寝てはいけません。寒冷地の場合、上記のようにエンジンが止まる可能性があるのです。また、まれには排気ガスが車内に逆流して酸欠死することもあります。

それ以前に、寒冷地で特に山間部や峠越えの道を走る前には天気予報・交通情報で天候や道路状況を必ず確認し、荒れそうだったら計画を変更することも考えましょう。特に雪道や吹雪の中の運転に慣れていない場合は、絶対に甘く見ないことです。また、山に入る前に燃料を補給しておくことも忘れずに。

寒冷地を日常的に走る、特に山越えが多いドライバーは、立ち往生やスタックをした場合のために車の中に非常用装備を積んでいます。下記はその一例です。

【ゴム長靴、ゴム手袋、防寒服、雪かきスコップ、牽引用ロープ、スノーヘルパー(後述)、毛布、チョコレートなど非常用食料】

これらはスタック脱出用と、立ち往生してもエンジンをかけずに長時間持ちこたえることを前提とした装備です。スノーヘルパーとは、スタック脱出時にタイヤの下に噛ます、おろしがねを大きくしたような器具です。

もちろん普通はここまで用意する必要はありませんが、この中からピックアップするなら、最低限の装備として作業用ゴム手袋と牽引用ロープはあった方が良いでしょう。ゴム手袋は、タイヤチェーン装着や車に積もった雪を払うときなど、あらゆる作業で重宝します。吹き溜まりに突っ込んだりした時、ほかの車に牽引をお願いするときには、牽引ロープは自分のものを使うのが雪国のマナーでもあります。

前述のように地吹雪など視界不良時に事故などで道路上に止まると、ほぼ確実に追突されます。猛吹雪の中で脱輪やスタックしたときなどは、車外に避難する必要があります。そのための耐雪・防寒装備も考えておかなければなりません。

また、非常用ではありませんが、ウインドウの霜や凍結を削り取る「スクレーパー」は寒冷地ドライブには必需品です。でも、専用のものを買う必要はありません。実はCDのプラスチックケースで代用できます。下手をすれば専用品より良く削れるくらいで(笑)その他、プラスチック製や木製の、ある程度固い板状のもので代用できます。


最後に、意外と知られていないスタックからの脱出方法です。スノーヘルパーはひとりの時やかなり深く埋まった場合に使うもので、普通の道路上での9割方のスタックは、ふたりもいれば脱出できます。その基本は「掘る」と「押す」。手順は簡単です。

■ハンドルをまっすぐに戻す。いかなる場合も、脱出するまでハンドルは切らない。曲がりながらの脱出はほぼ不可能。
■四輪の進行方向前側の雪を掘って、できるだけ取り除く。
■ゆっくり発進しながら、タイミングを合わせて「車体の後ろから」押す。タイヤが空転したら、すぐアクセルを戻す。
踏み続けるとどんどん深く埋まり、さらに脱出が困難になる。
■一回で出られなければ、アクセルのオンオフや、セレクターをドライブとリバースに交互に入れて車体を前後にゆすり、前進のタイミングに合わせて車体を押す。

ここでの注意点は、
■車が勢い良く飛び出すことがあるので、脱出方向に人やものが無いか、良く確認してから行う。できれば交通整理をする人を置きたい。
■車体の側面から、窓枠などを押してはいけない。車が一気に脱出すると前のめりに転んで、腕などをタイヤに牽かれることがある。車体の後ろから押せば、転ぶだけで済む。
■タイヤの下にスノーヘルパーや毛布、木材などを噛ませた場合は、基本的には車体を押していはいけない。タイヤが空転して、噛ませたものが後方に高速で弾き出されることがあり、実際に事故も良く起きている。タイヤ下にものを噛ます際は、後方の安全も十分に確認してから発進する。

ところで、四輪駆動の車は当然雪道に強いものです。しかし調子に乗って雪の深い場所に入り、車体の腹が雪に乗ってしまうと動けなくなります。そんな「重症」のスタックになると、人力での脱出はまず不可能です。くれぐれも四駆を過信しないことです。

また、四駆だと無闇にスピードを上げる人も多いのですが、四駆が雪道に強いのは駆動力だけであって、ブレーキ性能もコーナリング速度も、あくまでタイヤの性能で決まります。四駆だからと言ってブレーキが良く効いたり、コーナーを高速で回れるわけでは無いのです。

特に大型四駆が雪道で安定しているのは、その「車重」によるものが大半です。重いからタイヤの食いつきが良いだけで、四駆自体の性能ではありません。しかも一旦限界を超えると、二輪駆動車とは比較にならない複雑な動きをしますので、素人にコントロールすることはほぼ不可能です。その辺を勘違いされませんように。なお、最近は自動トルク配分装置などでコントロール性が上がってはいますが、いずれにしろオーバースピードは命取りです。
ちなみに管理人は、北海道では四輪駆動のピックアップトラックが愛車でした。

雪が降る中を走ると、雪の粒が自分に向かって飛んでくるように見えます。不慣れな人だとつい雪の粒を目で追ってしまい、それが続くと目が回って来ます。周囲の危険を見落とす危険も大きくなりますので、そんな時は意識して「雪を無視」して、前方を見通す必要があります。

特に大粒の激しい降雪の時は、これは言うほど簡単なことではありませんので、目が回りそうだったら無理をせずに、すぐ休憩することです。

最後に、これは車に限らず寒冷地サバイバルの基本ですが、立ち往生の最中などに喉が渇いたら、雪から水を作ります。この場合、絶対に雪をそのまま食べてはいけません。雪を食べると身体を中から冷やしてしまい、体力を激しく消耗します。雪で水分補給する場合は必ず溶かして、人肌程度にまで暖めてから飲まなければなりません。


雪道や凍結路での運転が危険なのは当然ですが、寒冷地では一旦天候が荒れだすと、どんな場所でも生命の危険に晒されることがあります。そのような環境で過ごした経験が無い場合は、常に状況を甘く見ずに、余裕を持って行動することです。不安だったら地元の方にアドバイスを求めて、それに従ってください。

次回は、「帰省」編です。

■このシリーズは、カテゴリ【地震・津波対策】です。

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