おすすめ書籍のごあんない【平成関東大震災】
昨日、東日本はかなり大きく揺すられましたが、あの程度では一日経ってみればすでに過去。でも、あんなの序の口だ、というくらいの意識だけは忘れずに。
などと言いつつ、おすすめ書籍です。今回は珍しく、小説形式の本です。
「亡国のイージス」、「終戦のローレライ」などのミリタリー系サスペンスや、ガンダムシリーズのノベライズでおなじみの作家、福井晴敏氏の作品、「平成関東大震災」です。(講談社文庫 価格400円税込)
でも、この本が最初に刊行されたのは、2007年8月とだいぶ前なんです。福井氏の著作はかなり読んでいる管理人も、この本の存在を知ったのはつい最近でした。内容的には小説なのですが、実は「週刊現代」に連載された記事をまとめたもので、途中に解説ページが何ヶ所も挿入されていて、やはり「小説形式」と呼びたくなる体裁です。
内容的には、平凡なサラリーマンが「平成関東大震災」に遭遇し、そこから生き延びるというストーリーですが、本来防災関連記事として連載されていたもので、敢えて説明的なキャラクターを登場させています。主人公と説明キャラが一緒に震災被害を乗り越えながら、そこで何が起きるか、そしてどうするべきかということを浮き彫りにしていくスタイルです。まあ、これは管理人もやっていることではあります(文末にリンクしときます)
ただ、さすが福井氏だなと思わせるのは、読んでいて「この人は良く理解している」というのがすごく良くわかるのです。調べただけの付け焼刃の知識ではなく、しっかりと血肉にまでしているなと。そこらの下手な「防災のプロ」が言うことよりも、ずっとポイントを押さえた構成になっています。つまり、ほとんど無駄が無い。
短い作品ですから一気に読めて、それでいて基礎的な知識が自然に身につくという感じです。小説ですからちょっと感動的な場面もあって、それがまた被災時の心構えに結びついているなど、シンプルながら実は良く練られた構成と言えるでしょう。
連載が2007年ですから、特に通信系の情報など現在にそぐわない部分もありますけど、それはまあ当然ですね。でもそれを差し引いても、有用な情報が十分得られます。
ぜひご一読を。
とまあ、今回こんな本を取り上げたのも、実はたくらみ(笑)があります。
当ブログは、来年の1月12日で開設一周年を迎えます。この一年いろいろ書いてきましたが、開設一周年記念企画として、新たな連載を始めようと思っております。それが、今回ピックアップした方面というわけです。実にあざといですね(笑)
今まで、短編のシミュレーションストーリーを当ブログにも何本もアップしていますが、それの集大成という感じではあります。でも恐怖が先に立つ「災害小説」ではなく、もっと軽い、敢えて言えば「ディザスター・エンターテインメント」という感じを目指した作品です。もちろん、実用的な情報もしっかり詰め込んであります。なんだ、今回の福井氏作品と同じ方向じゃないですか。やっぱりあざといですね(笑)
そんなわけで、来年早々から連載を開始します。乞うご期待。
なお、当ブログにアップ済みの短編シミュレーションストーリーは、カテゴリ「災害シミュレーション」にまとめてありますので、解説編も含めて下記リンクからどうぞ。
■カテゴリ「災害シミュレーション」はこちらから
なお、すべての作品は2007〜2010年にmixiの方にアップしたものを、ほとんどそのまま転載したものです。
■■当ブログがお役にたてましたら、下の各ランキングタグへご支援のクリックをよろしくお願いいたします。
« 三陸沖でアウターライズ地震発生【12/7】 | トップページ | ノロウイルス感染急拡大中 »
「日記・コラム」カテゴリの記事
- 生き残れ。Annex TVのことなど(♯1398)(2023.03.06)
- 久しぶりにYouTubeラジオ番組を更新しました(#1397)(2022.03.23)
- YouTube ラジオ更新しました(#1395)(2022.01.15)
- 【YouTube】EDC編第1回目をアップしました【#1394】(2022.01.08)
- 【謹賀新年】YouTubeラジオ始まりました(#1393)(2022.01.01)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
災厄太郎さんの物語ですね。新書版で初版の時に買いました。読了してすぐに社内の課題図書として回覧させました。
帰宅する際の心構えが盛りだくさんではありましたが、今にして思うと「帰宅困難者が無理して帰宅するお話」でしたね。まあ「そのまま都庁に留まる」では全然お話が進みませんがw主人公一家はハッピーエンドで終わりましたが、甲斐さんがいなかったら一家全滅でした。あのお話を読んだ人は、もしかすると「帰宅」の道を選ぶかもしれませんね。私もてばさんの記事に触れてなければ同じだったように思います。
「早く帰って安心したい」という思いは抗い難いものがありますが、「津波てんでんこ」の教えのように「絶対に逃げてるはず」という家族に対する信頼が明暗を分けるのでしょう。
この辺りも織り込んで物語を書くとすると一人称では難しそうですね。家族がお互いの状況を知り得ない。でも展開次第では災厄さん一家以上にドラマチックになるかもしれませんし、残酷にも描けそう。楽しみといってはなんですが楽しみですね。
投稿: tnt | 2012年12月 9日 (日) 12時58分
>tntさん
初版時から目を付けられていたとはさすがです。実際、この本はストーリーを楽しみながら自然に知識が身につき、情報の幅も過不足無いという点が特に秀逸だと思います。甲斐さんのような説明キャラは、下手をすると流れを台無しにするものですが、コミカルに仕立てることで違和感を軽くしていますね。
あの当時は、現在ほど帰宅困難という状況が認識されていませんでしたし、行政も積極的に「すぐ帰るな」とは言っていなかったと思います。関東では、やはり震災で実際に体験してから、認知度がぐっと上がりましたし。でも作品では確かに帰らなければ話にならないし、災厄氏と家族の話を別々に進行させてあとで集約するとなると、もっと長い話になるし。
まあ、フィクション形式なればこそという部分もありますね。実は私の作品も、現実を敢えて無視した部分もあります。リアルにこだわるよりも、必要なことが伝わるならばそうする、という感じですね。
私の作品をちょっとネタバレさせちゃうと、あるカップルのストーリーという体裁になっています。家族向けというより、独身サラリーマン層を主な読者ターゲットと想定して書いたものなんです。残酷な部分は敢えて外しました。当ブログのシミュレーションストーリーよりもずっと軽い感じなんです。
投稿: | 2012年12月12日 (水) 01時08分