2019年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

« 【雄勝から女川へ】宮城・震災から1年8ヶ月【7】 | トップページ | 【ニュース解説】イランでM5.6、死傷者20人以上 »

2012年12月 6日 (木)

トンネルと建物の『吊り天井』

中央高速道路の笹子トンネルで発生した、天井板が130mに渡って落下して9人が死亡するという惨事を受けて、当ブログにも「吊り天井」のワード検索で訪れていただける方がこのところ急増していますので、急遽関連記事をアップします。実は当ブログの吊り天井関係の記事は、手前味噌ながら隠れた人気コンテンツでして、普段からかなりの数のアクセスをいただいています。

ただし当ブログで取り上げている吊り天井は、あくまで一般的な建物で採用されているものであり、トンネルの天井構造とは違います。共通点と言えば天井材を金属のステーで吊っているということだけで、その構造も特性も全く異なるものです。

ですから、当ブログにおける「吊り天井は危険」という指摘は、トンネルには当てはまりません。当ブログでは、一般的な建物で採用されている吊り天井の、地震に対する脆弱性を警告しているのです。

逆に、一般的な吊り天井が地震でもないのにいきなり落下する可能性はまずありません。それに天井材も石膏ボードやベニヤ板ですし、トンネル天井材のような重量もありませんから、平時に普通の建物の吊り天井を恐れる必要は全くありません。あくまで地震の際の危険ですから、その点はご安心ください。


笹子トンネルの事故はまだはっきりとした原因が究明されてはいませんが、設計的な問題と経年劣化に点検の不備が加わったことによるものと思われます。しかし単純に設計ミスや手抜き点検と断罪できるものでもないようですので、詳細な調査結果を待ちたいと思います。

これに対し建物の吊り天井は、十分な地震対策が施されていないと「出来たて」でも落ちるということが、東日本大震災で開業直後の茨城空港ターミナルビルの吊り天井が落ちたことからもわかります。我々が主に気にしなければいけないのは、こちらの方です。


そこで気になるのは、「トンネルの天井は地震で落ちるのか?」ということです。それについて乱暴に言ってしまえば、落ちることがあるかもしれないけれど、あまり気にするほどでもない、という感じでしょうか。

過去に、地震でトンネルの内壁が崩れた事例はあります。しかしそれはトンネルが貫いている断層の変位や直下型の激しい揺れやによるもので、トンネル本体の内壁が一部崩れるレベルです。

管理人の記憶では、1978年に伊豆半島地震で伊豆急行電鉄の稲取トンネルで内壁崩落と変位が発生し、数ヶ月に渡って不通となったのが直近で最大の事例でしょうか。これはトンネルが貫く断層のズレによるものです。

新潟中越地震や阪神・淡路大震災でも、一部のトンネル内壁に亀裂が入ったり少し崩落したりした事例はありますが、長期間不通になるようなレベルの崩壊は滅多に起きないのです。

地下鉄では、阪神・淡路大震災で神戸市営地下鉄大開駅の天井が落下しました。しかしこれは軟弱地盤と震度7の直下型地震の激しい揺れによって駅部の支柱が坐屈、つまり折れ曲がったもので、トンネル本体の崩壊ではありません。(下画像)
Photo_2
これらの事例からもわかるように、トンネルの構造体自体は地下鉄も含めてとても強固なのです。少なくとも主要道路や鉄道の長大トンネルが地震で大規模に崩れたような事例は無いはずです。

ただし上記の例は天井板の落下ではなく、トンネル本体や支柱が損傷したケースです。天井板を持つトンネルが上記事例と同じような地震を受けた場合、吊金具が損傷したり、天井板自体が損傷して落ちる可能性は考えられます。でも「構造が健全ならば」、滅多に起きることは無いでしょう。トンネルを通るたびにビクビクする必要などありません。

ちょっと補足しますと、建物の吊り天井を落とすのは地震の揺れそのものではなく、地震による「建物の揺れ」ですから、建物の構造や状態にも左右されます。これに対し、トンネルや地下鉄は「地面ごと揺れる」ので、地下の構造体に対する破壊力は、一般的にはずっと小さくなるのです。例外は、断層のズレや大規模な山体崩壊などによって異常な地圧がかかるケースです。


ところで、やはりというか笹子トンネル事故を受けて、例によってメディアでは「危険なトンネルがこんなにある!」的な煽りが氾濫しはじめていますね。でも世の中の多くのものは、「想定される最悪のケース」にすべて対応できるようには最初からできていません。最悪のケースになれば(例えば富士山が三分の一吹っ飛ぶとか)、大きな被害を受けるのは当然です。でも、その「最悪のケース」が滅多に起きないから、我々はその隙間で生きているに過ぎません。

笹子トンネル事故も、トンネルの内部崩壊事故としては「最悪のケース」に近いレベルですから、無駄に怖れる必要はありません。それに、この機会に全国で一斉に点検が行われてますから、隠れたリスクはさらに小さくなるはずです。一生に一度遭遇する可能性も無いほどのリスクを針小棒大に騒ぎ立てるのは、いい加減ウンザリです。でも、数字取れるから無くならない(笑)


最後に、吊り天井とは直接関係ありませんが、笹子トンネルの事故で天井板の直撃を受けながら唯一現場を抜け出したNHK記者の話。

もちろん、通過のタイミングや先行車がいなかったなどの幸運が大半でしょう。ただ、天井が落ち始めたのを見て迷わずアクセルを全開にしたその判断こそが、当ブログで言う「命の一秒」を稼ぎ出すということに他なりません。

記者氏が普段どのようなお考えの方かは知りませんが、少なくともあの場面で最良の判断ができる心構えはあったと言えるでしょう。それが、僅かな生への可能性を拡げることに繋がったのです。

完全に余談ながら、つぶれてしまった記者氏の愛車(スバルインプレッサ22B)は、車好きにとってはちょっと特別な限定車で、2000ccクラスで世界最速レベルの車です。四輪駆動で300馬力を超えるそのパワーと頑丈なボディが、落ちてきた天井板を押しのけて脱出するために一役買ったのも間違いないでしょう。それも含めて、記者氏の生還は、幸運が重なった結果なのだと思います。

でもその幸運を活かせた理由は、あの場面での最良の判断ができたから、この一点に尽きます。トンネルの天井が落ちることを普段から想定している人など誰もいないでしょうが、想定外の状況に対して瞬間的な判断が必要になる時に備えて、どんな時でも意識の隅に危機意識を目覚めさせておくこと。

それがあったから、パニックに陥らずに最良の判断に繋がったのです。それがこの事故の生還事例から得られる、最大の教訓だと思います。


■■当ブログがお役にたてましたら、下の各ランキングタグへご支援のクリックをよろしくお願いいたします。

☆人気ブログランキング

☆にほんブログ村 ブログランキング
にほんブログ村 その他生活ブログ 地震・災害へ


« 【雄勝から女川へ】宮城・震災から1年8ヶ月【7】 | トップページ | 【ニュース解説】イランでM5.6、死傷者20人以上 »

日記・コラム」カテゴリの記事

コメント

NHK記者の話、凄いですね。レーシングレプリカに乗ってた15年前なら迷わずアクセル全開だったと思いますが、今はレンタカーでタラタラ走るのに慣れてしまいましたからね。同じ状況下なら逆にブレーキ踏んじゃうかもしれません。
もしかして「いい年こいてインプレッサかよw」と言われつつも気に入って乗ってた車だからこそ、どうにか逃げ切れたのかもしれません。全く、いつ何がどうなるか、何が役に立つのかホントに分かりませんね。

記者殿にはインフラ整備を虐げる浅はかさを内側から何とかしてもらいたいですね。私はミクロ的にはてばさん、マクロ的にはあの政党を支持してますw

>tntさん

私も以前はレガシィの3リッターとか乗っていて結構スバリストなんですが、今はミニバンでのんびり走ってます(笑)でもやっぱり速い車乗っていたりモータースポーツやってる人は、いざというときどうしようという心構えは持っていますよね。そういう事に遭遇する機会も実際多くなりますし。

あの記者氏の状況では、ブレーキ踏まなくてもアクセル抜いたら終わりだったでしょう。NHKテレビご覧になりましたか?ルーフがひどく潰れていました。古いインプですけど新車みたいにピカピカで、レカロのバケットにスパルコの4点入ってましたよ。愛情が伝わって来ましたね。

日本は産業立国なんですから、インフラの重点整備は必須ですよね。恐らく考えてることはご一緒かと。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: トンネルと建物の『吊り天井』:

« 【雄勝から女川へ】宮城・震災から1年8ヶ月【7】 | トップページ | 【ニュース解説】イランでM5.6、死傷者20人以上 »