【東名から野蒜へ】宮城・震災から1年8ヶ月【9】
今回は東松島市へ向かいます。
東松島市では2011年11月の訪問時と同じく、JR仙石線の東名(とうな)駅と野蒜(のびる)駅周辺へ行きました。
東名駅の様子は、1年前とほとんど変わっていませんでした。
しかしこの先も復旧の可能性はありません。この区間の仙石線は山側の新路線への付け換えが決まっているので、いずれ撤去されることになります。おそらくこれが見納めになるのでしょう。
東名駅から東名漁港へ向かう道の両側は、かつて200軒以上の家が並んでいましたが、海抜がほとんど無い地域のため、そのすべてが4~5mの津波に襲われました。
1年前にはかなり残っていた被災家屋も、かなり少なくなってはいます。しかしその他はほとんど変わっていません。荒涼とした無人の草原が広がっているだけで、ここがかつて住宅街だったことも忘れてしまいそうな光景です。
この地帯は震災直後に1m近く地盤沈下して排水が悪くなり、1年前もかなり大きな水たまりができていました。衝撃的だったのは、それが今回訪問時にはさらに大きくなっていたことです。
この写真は住宅街の西側ですが、水たまりというよりほとんど海岸にしか見えません。かつてここは畑が広がっていて、数百メートル先まで陸地だった場所です。すっかり海とつながってしまっています。
東側は、住宅地だった草地の先に見える灰色の広がりが、すべて「海」です。画像の右側が本来の海の方向です。地盤沈下がさらに進んだのでしょうか。東名地区の住宅街だった場所を細長く残して両側は完全に水没してしまい、かつての住宅街が細長い岬のようになってるのです。
その「岬」の突端にあるのが東名漁港です。復旧に向けての作業が本格化しています。1年前と同じ場所からの画像を比較してみます。
↓2011年11月6日
↓2012年10月13日
漁船の数もかなり増えました。とはいえこれらの漁船の多くは、ここから津波で流された船が回収されて来たもののようで、損傷しているものも少なくありません。本格復旧はまだまだ先のようですが、確実に前進を始めていることは感じられました。
次に、野蒜駅周辺に向かいます。野蒜駅も、崩れ落ちた架線ビームなど1年前の姿とまったく変わっていません。ここもいずれ撤去されるので、見納めです。
駅舎周りの店舗は未だ被災当時のまま、全く片づけられていない場所もあります。その画像は掲載しませんが、片づける人がいないということが何を意味するかを考えると、ただ手を合わせるのみです。
次に、1年前に訪ねた野蒜保育所がどうなっているか見たくて、駅から海沿いへ向かいました。下画像は、1年前の保育所です。赤い線は、この場所での津波水位を表しています。
近くまで行って、激しく戸惑いました。「陸が無い」のです。
かさ上げされた道路の周りは完全に「海」になっていて、おそらくこの辺りだったとしか、詳しい場所もわかりません。画像からも、かなり深い水に覆われていることがわかります。やはり沈下がさらに進んでいるように見えます。
この地域が復旧・復興を果たすためには、まだ相当に長い時間がかかるのは確実です。でも、震災から1年8ヶ月(訪問当時)、あちこちで復興への槌音を聞くこともできました。継続的な支援、具体的には寄付や地場産品の購入で、被災地を応援して行きましょう。
なお、隣の松島町は津波の痕跡など意識してもわからないくらいに復旧し、景勝地松島への観光客で賑わっています。観光地松島は、表向きはほぼ「復興」を果たしています。松島を訪問されることがありましたら、ぜひとなりの東松島市の海岸部へも足を伸ばしてみてください。できるだけ見て、知って、伝えること。それが支援にもつながります。
車ならば松島から東名・野蒜まで10分程度です。休止中のJR仙石線代行バスも走っていますが、松島でタクシーをチャーターされる方が便利でしょう。
次は仙台市の荒浜地区へ向かいます。そして、その次に当シリーズ最終回として、石巻市の大川小学校からのレポートをお送りします。
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