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2012年12月29日 (土)

続続続・鉄道の危険【対災害アクションマニュアル 23】

■第1章 危険を知れ(その21) 【続続続・鉄道の危険】

続が三つになってしまいました(笑)が、鉄道編は今回までです。

前回までは、通勤電車が脱線するような状況で、いかに身体を守るかについて考えて来ました。実際の車内では、さらに厳しい状況があります。

前回記事の耐衝撃姿勢は身体が壁や地面に衝突する際にはかなり有効ではありますが、改めて典型的な通勤電車の中を見てみましょう。
E231
E231_2
当然ながら、このように手すり、シートの側板、背もたれ、荷物棚などが林立しています。車両によっては、通路の真ん中に手すりが立っている車両もあります。

そしてそれらのパイプ類が、吹っ飛ばされた人間の身体に最も大きな損傷を与えるのです。もちろん正しい耐衝撃姿勢を取ることでその程度を軽くできる可能性はありますが、根本的な解決策とはなりません。

そこで最も大切なことは、車両に大きな衝撃が加わった場合、できる限り身体の移動距離を小さくすることと、圧縮される力を弱めることです。身体の移動距離を小さくするには、手すりやつり革にしっかりつかまること、シートの側板などに身体をつけてしっかり保持することです。つまり衝撃を受けた場合に、どれだけ衝撃と逆方向の力をかけられるかということです。

仮に最終的につかまった手を振りほどかれるにしても、出来る限り握り続けることで、吹っ飛ばされる際の「初速」を下げることができます。実はこれが非常に重要で、何かに衝突した際の衝撃荷重は速度の二乗に比例しますから、例えば速度が半分になれば衝撃は四分の一になり、身体の損傷度合いを確実に小さくできます。

さらに、衝撃をできるだけ小さくするために重要なのが、「編成のどこに乗るか、車両内のどこにいるか」ということです。ここでまたJR福知山線事故の画像をご覧いただきましょう。この事故は、100km/h以上の速度で脱線転覆するという、在来線の単独列車事故としては最悪に近いケースです。
Fukuchiyama00
ここで注目すべきは、鉄道車両は大抵先頭車両から脱線が始まり、衝突、転覆する可能性も前の方が大きいということです。脱線した中間車両が対向列車に衝突するという、2000年に中目黒駅構内で発生した地下鉄日比谷線脱線事故のような例もありますが、あくまでレアケースです。

福知山線事故でも、7両編成の後尾3両は、脱線せずに線路上に留まっているのがわかります。つまり、それだけ車両にかかる衝撃力が小さかったということであり、負傷者も編成後方へ行くほど少なくなっています。

過去多くの鉄道事故を見ても、編成の後ろの方ほど脱線・転覆する可能性が小さいということは確かです。通勤電車程度の速度では、例えば10両編成の全車両が脱線することなど、高架橋の崩落など極端なケースを除いて事実上ありません。

そうなると、どこへ乗ればより安全性が高いかわかりますね。編成のできるだけ後方、車両の中ではできるだけ進行方向の逆側ということになります。また、障害物が少ない通路上は「人のなだれ」が一気に発生するので、できればドア付近の方が良いと考えられます。しかし、ドア付近では手すりやシートの側板に衝突する危険が大きくなりますので、一概には言い切れません。進行方向側のシート側板にしっかり身体をつけ、手すりを握っていられるようならば、ドア付近が良いと言えるでしょう。

これまで述べたことから、確率的に最も安全な乗車位置は編成最後尾の車両の、最も後ろのドア付近ということになります。その場所が車両が脱線・転覆する確率が最も低く、仮に脱線しても衝撃が最も小さく、線路外のものに衝突する可能性も小さく、車内では人のなだれに最も巻き込まれずらい場所ということになります。

と、わかっていても、「鉄っちゃん」はつい最もハイリスクと考えられる先頭車両の運転席直後に張り付いてしまったりするのですが(笑)まあ、これが「at your own risk」という奴ではあります。


※【対災害アクションマニュアル】シリーズ記事の、年内のアップはこれで終了します。


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