三陸沖でアウターライズ地震発生【12/7】
■当記事中、発震機構の方位表記に誤りがありましたので、下記の通り訂正いたしました。
誤・東北東
正・東南東
本日12月7日午後5時18分頃、三陸沖の深さ10kmを震源とするマグニチュード7.3の地震が発生し、東日本の太平洋岸の広い範囲で震度5弱〜震度4の揺れを観測しました。
この地震で宮城県沿岸に津波警報、青森〜千葉県沿岸に津波注意報が発表され、各地で1m〜数十cmの津波を観測しました。
この地震は、東日本大震災震源域よりさらに沖である、宮城県の金華山沖約240kmを震央とし、震源深さ10kmと浅いことから、東日本大震災後の地殻変動によって誘発された「アウターライズ地震」と判断されます。発震機構は気象庁の発表によると「西北西−東南東に張力軸を持つ正断層型地震」、つまり東西に引っ張られる力による地震ということで、それも「アウターライズ地震」の特徴に合致します。
いつもの図をご覧ください。下図の1が「アウターライズ地震」です。
東日本大震災で陸側の北アメリカプレートと海側の太平洋プレートの固着域(アスペリティ)が破壊され、太平洋プレートの「つっかえ棒」が無くなったために、北アメリカプレートの下に潜り込む速度が上がっていることが実測されています。そのため、沈み込み帯の沖側である「アウターライズ」部分により大きな引張り力がかかり、図のような正断層型地震となります。
今回のマグニチュード7.3という規模は、アウターライズ地震としては震災後二番目の大きさです。最大のアウターライズ地震は、震災本震の十数分後に発生したマグニチュード7.5で、今回もほぼそれに匹敵する規模でした。
一般に、アウターライズ地震は陸地から遠い場所が震源となるため陸地の揺れがあまり大きくならず、その割には大きな津波を発生させる「津波地震」になりやすいとされていますが、今回の地震は揺れが比較的大きかったものの津波は小規模でしたので、幸運だったと言えます。
管理人は地震波形を確認していないので断言はできませんが、埼玉県南部で管理人が感じた揺れ方によれば、初期微動とは異なる小さな横揺れがしばらく続いた後に大きな揺れが来ましたので、ごく狭い震源域内で複数の地震が連続的に発生したように思えます。
もしこれが正しければ、複数の地震が連続したために放出エネルギーは大きくなったものの、断層の動きが単発の地震ほど大きくなかったせいで、津波が小さかったのではないかと考えられます。
今後警戒すべきことは、まずこの地震の余震です。既に本震直後からマグニチュード6〜4台後半クラスの大きな余震が何度も起きていますが、陸地と震央が遠いために、地上の揺れは震度1〜3程度で収まっています。しかし、最大で本震と同クラスの余震が発生する可能性が小さいながらあります。
次に、今回の地震が「前震」である可能性です。つまり、同震源域でさらに大規模な地震が発生する可能性もあります。ただ、今回の本震直後からかなり大きめの余震が多発していますので、その可能性はあまり大きいとは言えないと思われます。
最後は、周辺の震源域の地震を誘発する可能性です。今回の揺れは東日本の非常に広い範囲に震度5弱〜震度4の揺れをもたらしましたので、ひずみエネルギーが溜まった他の断層の動きを誘発する可能性があります。これは、日本海側も含めてどこで起きるかわかりませんが、可能性としては東日本の太平洋側が中心となるでしょう。
東日本大震災という超巨大地震の影響は、発生から10年程度は確実に続き、その前半5年間程度は大規模な誘発地震が発生する可能性が特に高い時期です。これは世界の巨大地震後に起きた事実で証明されています。震災から2年も経っていない現在は、いまだその真っ只中にあるということをお忘れになりませんように。
ちなみに、今回はマグニチュード7.3、深さ10kmの地震が広い範囲に大きな揺れをもたらしました。東京都が想定している「最悪のシミュレーション」では、まさに今回と同じ地震が東京湾北部直下で起きることを想定しているのです。
今回は震源が遠かったために比較的周期の長いゆらゆらとした揺れになりましたが、これが直下型なら短周期の激しく振り回すような揺れになります。恐らく四つんばいになるのも難しいレベルの震度6強、軟弱地盤地帯では震度7になるかもしれません。
今回改めて恐怖を感じた方、備えをもう一度見直してください。防災グッズはもちろんですが、一番大切なのは「その時」どのように行動するかということを、場所別に何度も何度もシミュレーションしておくことです。地震災害でも「最初の1分」を切り抜ければ、生き残れる可能性は大きく拡がります。そのためにどんな行動が必要かを、徹底的に考えておいてください。
無闇に不安を煽るわけではありませんが、もちろんこれで終わりではありませんし、もっと大きな規模の地震が来る前提で備えなければなりません。ただ、それがはるか沖合いか、大都市の直下で起きるかは、今は誰にもわからないのですが。
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