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2013年1月23日 (水)

【大川小からの報告3】宮城・震災から1年8ヶ月【13・最終回】

前回からだいぶ間が空いてしまいましたが、このシリーズ記事も今回で最終回として、考察とまとめをしてみます。管理人が現地で撮影してきた資料動画もアップしましたので、ぜひご覧ください。

youtube動画「大川小学校現場資料映像集」(4分5秒)はこちらから
http://www.youtube.com/watch?v=xHv6fV8kEvU


前回までの状況をお読みいただいて、もしあなたがあの場の管理者だったらどのような判断をしたかを考えて見てください。あまりにも困難な状況です。

もし管理人だったらと考えると、果たしてすぐに「裏山へ全員避難」と決断できたかどうか、正直言って自信がありません。ハザードマップの評価や過去の災害史を知っていることが、逆に判断を甘くしてしまったかもしれません。

情報が無ければ判断を誤る可能性が高かったでしょうし、あったらあったで「想定外」への対応を甘くするかもしれない。そして「現場」では大抵は情報が無いか、錯綜するかのどちらかです。ならばどうするか。

これはもう「なりふり構わず怖れる」しかない、つまり後のことは考えずに「最悪の状況を想定する」しかないかなと思います。そうして最大限の危機回避行動をする。

その結果、実際には大したことがなかったら、やりすぎだの大げさだのと批判を受けるのが世の常であり、それが判断を鈍らせる原因のひとつでもあります。でも、とにかく「生き残る」ことを優先するのだと、日頃から腹を決めておかなければなりません。死んだら終わりです。


ここで、皆様に軍隊の指揮官になっていただきましょう。下記の状況で、あなたはどんな判断をするでしょうか。

あなたは3つの部隊を指揮しています(それぞれA、B・C部隊とします)。AとBはそれぞれ第1地点と第2地点で敵と交戦中で、あなたは予備兵力のC部隊と共に後方にいます。あなたの任務は、第1、第2地点共に敵の攻撃から守り抜くことです。

そこへA部隊から連絡が入りました。「敵の数が多く突破されそうだ、増援を頼む」

C部隊の全部を第1地点へA部隊の増援に送れば、確実に敵を圧倒できます。でも、全部を送りたくない。半分送れば、とりあえず敵の数と拮抗します。実は、第2地点のB部隊は現時点では敵と互角に戦っているものの、少しずつ押し込まれています。今後増援が必要になる可能性があるので、手元に予備兵力を残しておきたいのです。

そこで指揮官であるあなたは、どのように部隊を動かしますか?

正解は「第1地点へC部隊全部を投入する」です。それ以外はすべて不正解です。状況は第1地点が赤信号、第2地点が黄信号と言えます。その状況でも、目前の最大の危機に対して、全力で対応しなければなりません。

ここでもし第1地点にC部隊を半分だけ送り、それでも危なければさらに半分を送ればいいと考えたり、C部隊を第1地点に三分の二、第2地点に三分の一を送る、一見合理的に見えるような判断をすれば、高い確率で両地点とも突破されてしまうのです。

ここで最も危険なのは、第1地点における敵の勢いです。同じ数の兵力を揃えただけでは圧倒されます。まず持てる全力でその芽を潰すことを最優先しなければ、結果はさらに悪くなるのです。まずは第1地点を確実に確保し、場合によっては第2地点を放棄、撤退という選択肢も考えなければなりません。

その場合、任務を達成できなかったあなたは後で責任を追求されることになるでしょうが、両地点を失ったり、部隊を全滅させるよりはマシなのです。

このようにすべてをうまくやろうとした結果、それぞれへの対応が甘くなり、結果的にすべて悪い状況に陥ってしまうことは絶対に避けなければなりません。でも、わたしは兵隊じゃないから関係無いと思ったあなた、違いますよ。
ここではわかりやすい例として軍隊を例に取りましたが、これはビジネスにもスポーツにも人間関係にも、もちろん災害対策にも、そのまま当てはまることなのです。

つまりは、最優先の目的のために、今できることをすべて全力でやらなければならない、ということです。軍隊を例にとったことにご批判の声もありましょうが、どちらも「命がかかっている」という点において共通です。

ビジネスやスポーツの失敗はやり直しもできますが、命がかかっているとそうは行きません。少なくとも、災害対策においては「中庸を得る」ことがベストとは言えません。できることを最短時間で徹底的にやるのです。「中庸」が良いのは主に処世術です。それ以前に、まず生き残らなければ。


こんなことを力説するのも、大川小はじめ各被災地を訪ねて、あまりに理不尽な状況をたくさん見聞したからです。その時できることを完璧にやったとしても、生き残れないことなどいくらでもあったのです。

でも、そんな中で一筋の光明を見い出す可能性を少しでも大きくしたい。そのために必要な基本的な考え方と行動が、ここで述べたようなことだと確信します。特に、他の人の運命を左右する立場の管理者、責任者の方は是非このことを覚えておいていただきたいと思います。

あの「釜石の奇跡」とは、普段からの教育と訓練により、結果的に皆が指揮官としての判断力を持った結果、最短時間で最良の避難行動が完成した例です。しかし、そんな集団はあまりありません。ほとんどの集団では、管理者、責任者の判断にかかっているのです。

災害犠牲者の恐怖と無念を想い、その「声無き声」を聴き取って、同じような悲劇を繰り返さないこと。それが生きている我々の責務なのです。

これで「大川小からの報告」を終わります。


■このシリーズは、カテゴリ【被災地関連情報】です。

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コメント


今朝、第三者委員会についての報道を見て興味をもち読みました。

一気に読ませていただきましたが、私の知らないことばかりに驚いています。
『生きのこる』って
こんなに大変なことだったのですね。
>実際には大したことがなかったら、やりすぎだの大げさだのと批判を受けるのが世の常であり、それが判断を鈍らせる原因のひとつでもあります。でも、とにかく「生き残る」ことを優先するのだと、日頃から腹を決めておかなければなりません。死んだら終わりです。

この言葉が印象に残りました。
『防災』って そういうことなのかもしれませんね。
考えが うまくまとまりませんが、どんな術を使っても 生き抜く!
この意識と根性、知識、行動力、運、その他諸々が 求められることを知りました。
ありがとうございました。

>さびしんぼうさん

突き詰めれば、雨が降りそうだから傘を持っていくかどうか、という事と同じなんですよ。

できるだけ身軽でいたいけど、濡れたくもない。ならばどのレベルの予報で傘を持っていくか、その判断と何ら変わりません。

それは、雨が降ると濡れるということを、どこまで真剣に考えるかということでもあります。まあ、なんとかなるさと思ってしまう人が多いわけですが、大災害では、それは「死」に繋がるわけです。しかも一発勝負で、後がない。

それが嫌なら、今出来ることを全力でやれ、そういうことです。いつも傘を持っていれば、とりあえずいつ雨が降っても安心ということです。

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