防災科技研成果発表会に参加しました
去る2月25日、管理人は都内で開催された防災科学技術研究所の第8回成果発表会に参加して来ました。いろいろ興味深い話が聞けましたので、当ブログにも順次フィードバックさせて行きたいと思います。
実はあの日、発表の真っ最中に栃木県北部で震度5強が発生し、会場付近は震度3でした。会場の一橋大学講堂には300人以上の参加者がいたと思いますが、さすがというかなんと言うか、揺れを感じた瞬間にも誰ひとり微動だにしなかったどころか、小さな声を上げる人ひとりもおらず、静まり返ったままでした。
なにしろ参加者は普段から自然災害関連の研究をしていたり、興味を持っている人ばかりですから、最初のひと揺れを感じた瞬間に「問題ない」と判断したのでしょう。発表中だし、騒ぐには及ばないと。
管理人はとりあえず天井に吊した照明を見ながら、もし揺れが大きくなったら椅子の間に伏せようと、跳ね上げ式のテーブルに手をかけて様子を見ていました。しかし初期微動は感じなかったから震源は近くなく、主要動の立ち上がりも減衰も早かったから震源浅いな…ならば連鎖するようなこと無いだろうとも考えていました。会場の天井構造が、当ブログでも何度も危険を指摘している「吊り天井」では無いことは入場時に確認済みでしたので、大きな照明設備だけがちょっと気になったのです。
ちょっと驚かされたのは、地震から数分して発表が終わった後に、司会者が「先ほど栃木県北部、深さ10kmでマグニチュード6.2、最大震度5強が発生しました」と言っても、ざわめきひとつ起きません。シーンとしたまま。これが一般の集会ならば、震度5強と聞けば多少はざわめきますよね。でも管理人の印象では、「とんでもない場所で起きやがった」というような、憮然とした空気が支配的だったような気がします。さすが「慣れた」人たち。
もとより、地震の大きさで驚くような人たちではありません。どこで何が起きようとも、想定の範囲内なのでしょう。情報を聞いた瞬間に、それぞれが地震のメカニズム、具体的な被害の可能性や今後の行動などに思いを馳せていたのではないかと思います。管理人もそうでした。内陸の深さ10kmなら正断層型、震源直上付近では建物被害が出たはずだ・・・とか。(実際には正断層型ではなく珍しい横ずれ断層型だったのは、前記事の通りです)さらに、これも前記事にも書きましたが、数日前から栃木県北部での散発的な小規模地震を気にしていただけに、「やっぱりそこで起きたか!」という思いでもありました。と同時に、この会場の様子をブログに書こうと(笑)
今回の地震では、都内では緊急地震速報は流れなかったのですが、速報が流れていたらどうだったのか、ちょっと見てみたかったなどと言ったら怒られるでしょうか。
もうひとつ、面白かったけれど腹の立つ話。防災科技研の火山チームと気象チームの研究者が、奇しくも同じ事を言っていました。立場上、マスコミの取材を良く受ける方々です。
火山関係の取材では、ほぼすべて「富士山は噴火するか?」と聞いてきて、「その兆候は無い」と言うと、取材自体をキャンセルされる。他の取材を長時間受けても、最後に必ず「富士山は?」と聞かれ、問題無いと答えると、記事がすべてボツになると。
しかも、富士山は過去2200年も山頂からの噴火はしておらず、山腹からの中小規模の噴火しかしていないのに(1707年の宝永噴火も富士山としては中規模)、何がなんでも山頂からの大噴火の可能性があると言わないと「許してもらえない」ような圧力を感じるそうです。
気象チームには、「温暖化の影響で竜巻が増えていますよね」と、断定的に聞いてくるそうですが、確かに最近は増える傾向があるものの、長期的評価やメカニズムの解明無しには「増えた」とは言わないのが科学者です。だから「なんとも言えない」と答えると、やはり記事はボツになるとのこと。
当然ながら「真っ当な」科学者はいいかげんな事は言いませんが、マスコミはなんとしても権威のある科学者に怖いことを言わせる方向で決め撃ちして来て、望むような答えが得られないと、「大丈夫だ」という記事にさえしないということです。
それは言うまでも無く、恐怖を煽るのが一番「数字」になる、つまり売り上げや視聴率を稼げるし、権威ある人の発言ほど説得力があるからなのです。災害の場合の最強のブランドはやはり「東大教授」で、次がこの防災科学技術研究所という感じでしょうか。
しかしマスコミは、「権威」から望む答えが得られないと、はっきり言って「え、そんな大学あったの?」と言うようなところの「教授」にコメントを求めるわけです。「教授」はそれだけで強力なブランドです。そして、そのような人は、マスコミの望みに迎合した「怖い」コメントをしてしまう人もいるんですね。
当ブログでも過去に噛みつきましたけど、富士山の山体が三分の一吹っ飛ぶような噴火の可能性があるとか、富士山が噴いたら日本に飢饉が起きるとか、結構言いたい放題だったりする。とにかくも、多くのマスコミに流れているような派手な災害関連情報は、そんなバイアスがかかりまくったものであり、それに一番心を痛めているのは、「真っ当な」研究者なのです。
こうも言っていました。富士山の地震計や傾斜計のデータはウェブで公開されていますが、機器の不調で少し変わったデータが出ると、すぐに「某巨大掲示板」(実際にははっきり名指ししてましたけど)辺りで「これはおかしい!」と「祭り」が始まると。
さらに富士山地震計のデータはリアルタイムではなく、オペレーターによって適正な処理をしてからウェブに掲載するので、掲載までに数日かかるそうなのですが、マスコミなどからは「なんですぐに掲載しないんだ」と「苦情」が来るとも。こういうのは「陰謀論者」も喜ばせます。データが改竄されているとかのネタになって。
日々、防災・減災のために真摯に研究している人たちは、そんな状況に心底うんざりしているのです。しかしこれは文句を言っても、大地震や大災害の恐怖が「数字」に繋がるうちは、変わりはしないでしょう。せめて、正しい情報を追い求め、正しく理解し、正しく利用するという姿勢を、管理人は追求して行こうと思っています。当ブログを通じて、そんな姿勢が少しでも広まるのならうれしいのですが。
でも、こういうのを「ゴマメの歯ぎしり」って言うんでしょうね(笑)
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