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2013年2月18日 (月)

【ニュース解説】隕石についてのいろいろ

ロシアに大きな隕石が落下しました。これで被害が出ていなければ、メディアは「壮大な天体ショー」くらいのノリだったのでしょうが、当初の想像以上に大きな被害が出ているようです。

管理人的に気になるのは、以前から予告されていた小惑星が地球に最接近する前日に、突然「巨大」隕石が落下したということです。両者の軌道は全く異なりますから、接近した小惑星の破片が飛び込んで来た訳でもありません。

宇宙的な時間軸で見たら、二日連続でこのような事態が起こることは、ゼロに等しいほど小さな確率なのです。しかし実際に起きました。それが究極の偶然なのか、それとも、地球に接近しているけれど観測できないほどの、しかし燃え尽きずに地上にまで達する大きさの小天体が他にもたくさんあることを表すのか、どちらなのでしょうか。

もし仮に、地球の周囲を観測できない規模の小天体が無数に通過していたとしても、次に地表まで飛び込んで来るのは数十年、数百年先でもおかしくはありません。宇宙の時間軸とはそのようなものですから、大隕石の落下と小惑星の大接近というイベントが二日連続という異常な短時間内に起きたということが、何より驚きではあります。今後の分析に注目したい思います。


さておき、今回の隕石が爆発したエネルギーが広島型原爆と比較してどうのとかいう報道も多いのですが、今回の隕石落下における被害の大半は爆発によるものではなく、隕石が極超音速で落下して来ることで発生した、強力な衝撃波(=ソニックブーム)によるものです。

衝撃波とは、大気中を超音速で移動する物体の前方に発生する圧力波のことです。低速ならば物体を避けて流れる空気も、物体が超音速になると避けきれずに、一部が物体前方で圧縮されるようになります。その圧力波が音速で拡散して地上に到達したものが衝撃波で、物体が高速になるほど圧力が高く、すなわち衝撃が大きくなります。

これは超音速の飛翔体にはつきものですから、超音速戦闘機などは、基本的には海上でしか音速に入れません。陸地上空だと、隕石ほどでは無いにしても大音響とガラスを割るほどの衝撃波が地上に到達してしまうのです。

今回の隕石は落下速度が秒速約30km、マッハ10に近い速度で成層圏を通過するという、人類の技術で言えば大陸間弾道ミサイル(ICBM)の弾頭が落下する速度以上という極超音速に達したため、建物を壊したり、窓枠ごと吹き飛ばすような強力な衝撃波が発生したのです。

ただ、最大の衝撃波が発生したのは、隕石が高度20~30kmで爆発する直前のはずです。そのような高空で小さく割れたため、この程度の衝撃波で済んだとも言えます。もし大きな塊のまま地表近くにまで達していたら、さらに強力な衝撃波によって被害が拡大していたでしょう。

報道でよく引き合いに出されている、1908年にシベリアのツングースカに落下した隕石は今回の隕石よりはるかに大型だと思われ、さらに地表のごく近くで爆発したために、広大な範囲の木々が同心円状になぎ倒されるという痕跡を残しました。これは爆発による圧力波(圧搾空気界)が木々をなぎ倒したもので、核爆弾の効果に近いものですから、今回の衝撃波被害とは本質的に異なります。もっとも、隕石が上空を通過した地上部では、今回よりはるかに強力な衝撃波に見舞われていたと思われますが。


一方で、隕石の落下から数日経って、あまり本質とは関係ないような報道も出てきました。その中でも噴飯ものをひとつ。敢えて直接は引用しませんが、ロシアの旅客機が隕石と「ニアミス」したというもの。ニアミスとは即ち、回避行動をとらないと衝突につながる可能性が高い距離にまで接近してしまうことです。

あるロシアの機長によれば、
『着陸のために高度を落としたら、まばゆい火の玉を見た。ぶつからずに通り過ぎるのを願うしかなかった』
そうです。これだけ見れば、危機一髪に思えないこともないですね。

でも「まばゆい火の玉」は恐らく爆発時の閃光で、その時の高度は低くても20km(20000m)以上でした。ジェット旅客機が飛ぶ高度は、一番高くて12km(12000m)です。しかもこの機体は、着陸のために降下中だったそうで。報道には隕石に遭遇した高度はありませんが。

もし隕石が自分の飛行方向に対しての衝突コース(コリジョンコース)に近かったのなら(パイロットならすぐ判断できます)、この機長の心配もわかります。直撃しなくても、細かい破片を浴びるかもしれません。でも、そのような証言もありません。要は、空の高いところから隕石を見たという、レアな証言に過ぎないのでしょうし、衝突の心配もあくまで機長の心情的な言葉でしか無いのでしょう。もし本当に危険を感じたら回避機動をするでしょうし。

他にはこんなのもあります。「隕石が機体の右側を落下して、爆発した。その時、副操縦士は窓越しに爆発の熱を感じた。(中略)非常に危険な状態だった」と。

前述の通り、ジェット機の飛行高度と隕石の推定爆発高度には最低でも10kmの差があります。それがコクピットの窓から見えたのですから、水平距離を加味すれば何十kmも距離が開いていたでしょう。それに、小型核爆弾並みの爆発だというのに、この乗務員は大音響や衝撃波の到達などは一切報告していません。つまり、事実上全く危険は無かったのです。隕石の爆発で数十キロ先まで熱が届くかは知りませんが、それも強烈な光による勘違いの類の可能性が大きいかと。

少なくとも、「非常に危険な状態」というのは乗務員の印象に過ぎず、物理的危険は皆無だったのです。いくらパイロットでも、巨大隕石を間近に見れば大袈裟な感想も抱く、ということでしょう。でも、「プロ」の言葉は、事実として独り歩きを始めます。

さらにそれがメディアの手にかかると「ニアミス」ですから。どうしても危機一髪の印象を持たせたいという意思が見え見えではあります。こんなおまけみたいなニュースなど、話題になってナンボですからね(笑)

とまあ、隕石について思いついたことを、いろいろ記してみました。

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