自動車の危険・落水02【対災害アクションマニュアル 30】
■第1章 危険を知れ(その28) 【自動車の危険・落水02】
今回も、自動車で水中に落ちた時の危険を考えます。
ところで、お気付きの方もあると思いますが、ここまで運転者ひとりの場合の対処方法を述べて来ました。でも、実際には同乗者がいることもあります。
その場合の理想的な対処方法は、同乗者それぞれが自ら脱出行動を行うことです。とは言え、現実にはお年寄り、チャイルドシートの乳幼児、泳げない人、恐怖で動けない人など単独で脱出できない人が同乗していることもあります。仮に単独で動けても、最良の対処方法を知っている人の方が少ないでしょう。
それ以前に、運転者自身が最良の行動ができるとも限りません。これは知識だけではどうにもならず、ここで言うような行動が本当にできるのか、管理人も含めてその時になってみなければわからないのです。
しかし、最短時間で脱出するという意識を持ち、必要な装備を備え、チャンスを逃さないという考えがあるだけでも、最良で無くても何らかの行動を起こせる可能性が出て来ます。そのために普段から正しい知識を習得し、「こうなったらこうする」というシミュレーションを自分自身で繰り返しておくことで、その時に動ける可能性を高めることはできます。
中でも、最も大切なのがシミュレーションです。文章や伝聞の知識だけで満足してはいけません。少なくとも、ご自分の車の中で、実際に身体を動かしてみることです。
視界ゼロを想定し、目をつぶってシートベルトを外し、ドアロックを解除し、レスキューハンマーを取り出し、必要ならばシートベルトを切断できるか。自分ができたら、運転席から同乗者のために何ができるかもやってみます。チャイルドシートは外せるか、どの席のシートベルトを外せるか、子供は車内をどのように移動できるか、同乗者には何と声をかけ、どんな指示をするかなどを、実際にやってみてください。
そうすれば意外に簡単にできることも、とても困難なことも自分の感覚で理解し、身につけることができます。そんな備えが、極限状況での「命の一秒」を稼ぎ出すことにつながるのです。
しかし、やはり車が水中に落ちた場合、確実に全員が「生き残る」方法はありません。ここでは主に静かな水面での脱出を考えていますが、洪水や津波など水の流れが速く、流木や瓦礫が流れて来る中では、車から脱出した後に何が起きるかは、正直なところ考えたくありません。でも、車に乗ったまま沈んだり流されていたら、その結果どうなるかは、過酷な現実が証明しているのです。
車から脱出とは異なりますが、こんなシミュレーション方法もあります。普段の街中で渋滞にはまっている時、ちょっと考えてみてください。「今、私は津波から車で避難している」と。渋滞は動きません。車間は詰まり、Uターンもできません。そこへ、突然目の前の路地から濁流があふれだし、車が真っ黒な飛沫に覆われます。ワイパーを動かしても何も見えません。そして車が流されだし、周りの車や家に衝突する・・・。
それが、現実に起きたことです。
そこまで自分の感覚で理解できれば、「津波の危険がある時は車で避難するな」という言葉の意味が、より重いものとして感じられるのではないでしょうか。
避難するつもりがなくても、大規模地震の直後などは、特に都市部の多くで大渋滞となります。例えば、東日本大震災での石巻市内中心部では、車が全方向に全く動かなくなる、グリッドロックと呼ばれる「超渋滞」状態になり、そのまま多くの車が津波に呑まれました。
その原因のひとつとなったのが、地震の後に大型ショッピングセンターの駐車場から一斉に出てきた大量の車だそうです。そのままショッピングセンターに留まっていれば助かった人も、すぐに帰宅しようとしたばかりに渋滞にはまり、多くの人が犠牲になってしまいました。
震災後は、だれかを救い出すために車で移動するという行為も多くみられましたが、それが成功したのは、渋滞などの状況が悪化する前の、一部の人だけです。むしろ、その行動が仇となったケースも少なくありません。
ならばそうならないように、危険が想定される場面では車の中にいないようにすることです。洪水に対しては、気象情報や交通情報をよく確認し、危険が予想される場所では車に乗らないことです。停めてある車を放棄する決断をしなければならないこともあるでしょう。また、津波が予想される大規模地震後の沿岸部、特に都市部では、車で避難しようとするのは自殺行為だということは、現実が証明しています。
車からの脱出の話からはだいぶ逸れてしまいましたが、私たちが車で水中に落ちるようなケースは、良く考えてみれば、ほとんど洪水か津波しかありません。そして洪水も津波も、事前に予想もできれば警報も出ますから、自分の意思と事前の備えで、その危険の大半を回避できるわけです。
洪水や津波が予想されるときには車に乗らない。乗っていたら、車を放棄してでも、速やかに安全な場所へ避難する。そして、それができる備えを普段からやっておく。それが車で水に巻かれるという事態を避けて「生き残る」ために、最も確実な方法だと言うことができます。
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