2019年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

« 疑問だらけなんですが・その1【日経新聞防災記事に寄せて】 | トップページ | なぜ「福島」? »

2013年3月 4日 (月)

疑問だらけなんですが・その2【日経新聞防災記事に寄せて】

前回に続いて、3月2日(土)の日本経済新聞「NIKKEIプラス1」に掲載された防災特集記事について、管理人の考えを記させていただきます。今回は、記事内における「専門家」のコメントなどについて。

ところで、この記事の大見出しは『私の防災 ここを補強』となっています。前回引用させていただいたネットでのアンケート結果を踏まえ、「専門家」が補強ポイントを指導するという形と考えて良いでしょう。記事には三人の「専門家」の「補強内容」がコメントとイラストで掲載されていますが、その内容と優先順位が、これまた疑問だらけと言わざるを得ません。

まず『震災の経験に学ぶ』と題して、家族などが居所不明の場合、避難所に情報を求めるメモが貼り出されたことが紹介されています。そして、『そんな時に重宝したのが顔写真』として、家族などの顔写真を用意しておくことを勧めています。確かに文字情報より注目度は高いものの、写真があったおかげでスムーズに再会できたという話も、管理人は聞いたことがありません。

もちろんそういう例もあったでしょうが、写真のおかげで発見率が劇的に上がったという話も聞きません。被災者の声として、不明者の写真が欲しかったという声も実際にあったのでしょうが、、これがアンケート結果を受けて筆頭に挙がるべき内容でしょうか?管理人には枝葉末節の「防災トリビア」の類にしか見えません。


『水分補給しずらい状況では、乾パンよりものどに通りやすいゼリー状の食品やようかんなどが体力の消耗を防いでくれる』というのも、間違いではありません。水無しで乾パンをたくさん食べるのはキツいという話は、阪神・淡路大震災の時から言われていたことではあります(それでも、いまだに非常食と言えば乾パン、みたいな信仰が…というのはまた別の話)

しかし管理人は、ようかんはともかく、ゼリー食品は非常食の主力としてはお勧めしません。一般的なアルミパック入りゼリー食品は重量が200グラムほどありますが、補給できるカロリーは180キロカロリーほどです。そこで管理人がお勧めするのは、大塚食品の「カロリーメイト」です。(大塚さんとは何のしがらみもありませんよ)

もちろん水なしでは食べにくいのですが、90グラムで400キロカロリーを補給できますから、携帯や備蓄する非常食の主力として最もお勧めできるものです。食事が十分に取れないときは、できるだけ多くカロリーを補給することが最優先と考えます。食べやすくても、行動するためのカロリーが得られなければ問題外です。
これについては過去記事で詳しく触れていますので、併せてご覧ください。
■関連記事「普段持ち歩く防災グッズ【3】」はこちらから
■関連記事「カロリーメイトトライアル」はこちらから

『水道復旧までに便利なのは携帯トイレ』というのも、間違いではありません。しかし、一般に大地震後には上下水道の復旧が最も時間がかかります。被害が甚大ならば一ヶ月以上かかることもあり、その間を持ちこたえるためには、携帯トイレよりも、十分な量の便処理剤と大量のビニール袋こそが必要です。目安として、最低でも家族の50回分は用意しておきたいものです。さらにゴミ収集が再開されるまでは、便は各戸で保管しなければなりませんから、そのための容器も含めて備蓄しておかないと大変なことになります。この点についても過去記事をどうぞ。
■関連記事「家に備える防災グッズ【15】」はこちらから


『直下型大地震などが起きたときに同じ行動をとったら、危険きわまりない』。これは東日本大震災後の首都圏で、多くの人がすぐに帰宅行動を始めたことに対するコメントです。もちろん間違いではありません。でも、直下型大地震に限ったことでもありません。大被害が出るような地震後すぐに帰宅する場合のリスクとは、大火災、津波、余震による落下物、倒壊、道路障害や、群衆のパニック、治安の悪化などですから、どんな種類の地震でも一緒です。

『家庭の事情で帰宅を急ぐときはグループで帰るのが望ましい』。これもその通りです。しかし、非常時に同じタイミングでずっと同じ方向に徒歩で帰る社員などがどれだけいるでしょうか。現実には、いればラッキーくらいでしょう。一般的でないことをアドバイスすべきでは無いと思いますが。

東日本大震災時には、会社側は社員の帰宅を押しとどめたのに、どうしても帰るという人の安全のために同行者をつけたら、それが他の社員の帰宅行動を誘発して、なしくずし的に全員帰ってしまったという実例もあります。もっとも、これは最終的には個人の責任に帰結する問題ではありますが、社員の安全を確保して事業継続を支障しないようにしなければならない、会社側のBCPとしては大問題です。

災害時に統一行動を取るためには、社員間における普段からのコンセンサス醸成が不可欠の問題と言えます。普段からそのような体制を組んでおかなければ、その時になって上司や総務課がいきなり言っても機能しません。その「下準備」こそが何より大切なことです。
■関連記事「首都圏直下型地震を生き残れ!【53】☆大火災編」はこちらから


最後のコメントは、『留守宅の家族が安全でいられるように、事前に自宅の対策を徹底しておきたい』というもの。全くその通です。この記事は昼間に家を空けているビジネスマン層を主ターゲットとしているのでこのような表現なのだと理解しますが、問題はこれが「補強」の筆頭に上がっていないことなのです。これは編集側の問題なのかもしれませんが。

前記事で掲載したネットアンケート結果では、掲載された15位までに自宅建物や家具などの地震対策が入っていませんでした。本来ならば、「専門家」はその点を最も強く指摘しなければならないはずだと管理人は信じます。自宅とは、就寝中という災害に対して最も無防備な時間を過ごす場所なのです。


それにしても、阪神・淡路大震災から18年、東日本大震災から2年。それだけ経って、マスコミも専門家も、いまだにこの程度なのですか?あまりにも多くの犠牲の上に立った「本当に大切な」教訓は、一体どこへ行ってしまったのですか?スポーツ紙とかではなくて、日本経済新聞がこの程度の内容を出すとは。災害対策とは、言葉遊びでもトリビア披露の場でも無いんですよ。

もちろん、限られた記事の中で多くの情報を盛り込むことは困難ですし、短くカットされたコメントでは、発言者の真意と異なるニュアンスになることもあるでしょう。さらに、「プロ」には様々なしがらみもあると思います。しかし、一旦記事や放送などの体裁になってしまったら、その内容が「プロの指導」として一人歩きを始めます。正しい情報を持たない人に、誤った優先順位やポイントのズレた情報が拡散されてしまい、それはすなわち「生き残る」確率の低下をもたらすのです。

「専門家」の方々に伺いたい。こんな記事の内容に、満足されているのですか?これが「本当に役に立つ防災記事」だとお考えなのですか?管理人としては、むしろ否定していただきたいのですが、まあ「プロ」にはそれも出来ない相談なのでしょうが。

本当は記事に対してまだまだ言いたいことは山ほどあるのですが、枝葉末節をつついている場合では無いので、これで終わりにします。3月11日を目前にして、あの記事は一体何を意図して作成されたのか、全く理解に苦しみます。


■■当ブログがお役にたてましたら、ブログトップまたは下の各ランキングタグへご支援のクリックをよろしくお願いいたします。

☆にほんブログ村 ブログランキング
にほんブログ村 その他生活ブログ 地震・災害へ

☆人気ブログランキング


« 疑問だらけなんですが・その1【日経新聞防災記事に寄せて】 | トップページ | なぜ「福島」? »

日記・コラム」カテゴリの記事

コメント

くずさん、はじめまして、こんにちわ♪
いつも興味深く読ませていただいております。

私にはまだ歩くこともおぼつかない乳児がいるのですが、歩けるようになるまで(親の言葉が理解できるようになるまで)にその日が来たら・・・と毎日不安です。

赤ちゃんがいる場合のシュミレーションなども書いていただけるととても助かるのですが・・・素人ながらにくずさんのサイトを参考にいろいろ準備はしていますが、私は子どもを
「生き残らせたい」のです。

是非、いずれかの機会にお願いします!

>はるママさん

コメントありがとうございます。ママさんにとって、小さなお子さんを守ることが何よりですよね。私にも、もうだいぶ大きいですが子供がいます。子供が小さな頃は共働きで、私も子育てのかなりの部分を負担しました。最近ならイクメンと言われる以上のことはやっていたと思います。人工乳でしたので、夜中のミルクなんかも普通にやってました。

その経験からも言えることは、幼稚園に上がる前くらいまでの乳幼児を地震から守ることは、基本的にはとても単純だということです。常に保護者の近くにいますから、家の耐震性が確保され、家の中の地震対策がきちんとできていれば、基本的には大丈夫です。つまり、保護者が生き残れば子供も大抵生き残れるのです。外出時も、保護者が自分を守る行動が、ほとんど子供を守る行動になるということです。

でもその反面、乳幼児ならではのシチュエーション別の細かい問題も多く、マニュアル化するのはとても難しいとも感じています。実は、自分自身の経験からも「子供を守る」テーマ記事を書こうと思ったこともあるのですが、地震の第一撃から乳幼児を守るための特別な方法って、あまり無いんですよ。とにかく基本的な地震対策が出来ていること、これが何よりなんです。

細かいことを言えば、緊急避難時はできるだけカートは使わず、ひとりだったらおんぶではなくだっこ用のハーネスの方が良いとかはあるのですが、基本はやはりママさん自身を守ることとほとんど共通だと思います。生き残った後、避難所生活などでのノウハウは山ほどあるわけですが、当ブログのテーマからは少し外れますし。

実は、「災害シミュレーション」のカテゴリで、書いたけれどアップしていないシミュレーションがあるんです(mixiでは公開していますが)、幼稚園前の幼児と小学校低学年の子供がいる家庭の場合をシミュレートしているのですが、最終的に二人とも助からないという話なので、書いた本人もどうにも後味が悪すぎて。しかも、阪神・淡路大震災時の実話がベースになっているんです。

でもあのシリーズは、そこから教訓を見出して、実際の災害対策に生かすことがテーマですから、そうなるのは必然の流れです。せっかくのご要望がありましたので、この際アップしましょうかね。悲惨な話ですけど、実際に起きたことでもあり、同じことを繰り返さないためにも、現実を直視しなければなりませんから。近いうちに「災害シミュレーション」カテゴリでアップします。

ところで、私は「くず」じゃなくて「てば」でございます(笑)今後ともよろしくお願いします。

お返事ありがとうございます。

すみません・・・ちょうど書いた前に懐かしのくずの話題で盛り上がったので、間違えてしまいました。実は一度メールで聞きたいことを書いていたのですが、あまりの多さに端的なコメントにしたんです・・・メールでは「てばさんへ」って書いてあるのに・・・本当にごめんなさい。

てばさんのお話は本当に考えさせられるんです。こちらのサイトにたどり着くまでは、大多数の方と同じパニックを起こし、同じ行動をしていたと思います。でも、最悪のパターンを冷静に文字で読んでおくと、実際になにかあったとき、おそらく一旦立ち止まっていろいろ考えることができると思います。人間(次になにが起こるかわからない)からパニックになるのであって、(なにが起こりうるか)考えられる人はパニックにはならないでしょうから。

あ~、文章下手なのに、書き始めると止まらないのです。

アップ楽しみにしています。最悪な状況からいろいろ考えてみたいと思います。

PS てばさんはイクメンなのですね!奥様がうらやましい限りです♪
我が家は共働きで乳児も保育園、お兄ちゃんは今年から小学校で、会社から保育園まで歩いても40分、そこから小学校までやはり1時間弱かかります。(ちなみに会社も保育園も小学校も江東デルタで、自宅と小学校は荒川沿いという・・・・TT)
うちの主人も比較的協力的なのですが、防災に関しては息が合わず、ちょっと不満を感じてる今日この頃です・・・(愚痴っちゃいました)

こんにちは。

いつも読ませてもらってます。
こういったブログは書き始めるまでがお尻が重くて大変だとは思いますが続けてくださいね。

思うことは防災という言葉が良くないのかなとは思います。
予防することと生存・延命すること災害後快適に過ごすことを一色単にしてしまうことがそもそも危険だと考えています。

予防すること…タンスなどにつっぱりをする
生存・延命すること…ヘルメットなどを用意や救急救護活動すること
快適に過ごすこと…美味しいものを食べること

それぞれ準備する意味合いがそれぞれ違うことを適当に焦点をあてて理論を展開していることを混同してあさっての方向に誘導しているような感じを受けますね。
当然シチュエーションによっても変わりますし、3つのポイントが重なってくる部分もあると考えられますので正解はないのでしょうが…

>はるママ さん

「くず」って、ぐっさんがやってた奴ですよね。私は結構ぐっさん好きですよ(笑)

おっしゃる通り、人は想定していない状況に直面すると、パニックに陥りやすいものですから、それを事前に知っておくだけで、冷静に考える余裕が出てくる可能性が大きくなります。

災害におけるあらゆる悲惨な状況も決して作り話ではなく、実際に起きたことなのですが、メディアでは「悲惨すぎる現実」を避ける傾向があり、本当に怖れなければならない大切な情報が少ないんですよ。だから私はあのようなシミュレーションもやっているのです。

防災の世界にいると、奥様とだんな様の防災に関する意見が合わないという話も良く聞きます。奥様が真剣なのに、だんな様が「気にしすぎだ」というような。ちなみに我が家は逆ですが(笑)とりあえず、奥様だけでもかなりのことができますので、できるだけ進めておきましょう。やはり水や食品、ミルクやおむつなどの備蓄も大切ですし。

メールでのお問い合わせも歓迎しますよ。表に書けないような細かいこともどうぞ。災害対策は「オーダーメイド」でなければなりませんので、それぞれの状況に最適化した方法が必要ですし。

>whokiさん

いつもありがとうございます。この先も、どんな形にしろこのブログは続けて行くつもりです。今後どんな活動をやるにしろ、ブログという形が一番私の考えをお伝えしやすいので、これをやめたら骨抜きになりそうで(笑)

確かに、「防災」という言葉は広範すぎて、漠然としています。実際には災害被害を完全に防げるわけも無いので、関係者の間では「減災」という言葉や概念が主流になりつつあります。

私もmixiコミュやこのブログをやる際にどうしようかなと考えたのですが、とりあえず今は、一般的な「防災」という言葉を使っています。

そんな中で、滅多に配らない(笑)私の名刺には、「災害サバイバルアドバイザー」という肩書きを入れています。まずはとにかく「生き残る」こと。そのために何を知り、何をして、何を用意するかが私のテーマです。

例の「楽観バイアス」に浸っている人には、生き残った後のトリビアみたいなのがウケますので、商業メディアはそちらばかりを重視しちゃうんですよね。数字になるから。でもそこから勇気を持って一歩踏み出し、自分や大切な人の生死をまっすぐ見つめられた人だけが、本当に必要な「生き残る」ための手段を得られるのだと思っています。

当ブログは、そんな方のお役に立ちたいと思ってやっています。世間ではアテのない予知みたいなのが一番流行ってますが、実際には使えない情報に目を向けている時点で、既に現実から逃げているということに、特に若い人には気づいていただきたいのですが。

仮にどこかの「良く当たる」予知サイトが「明日、大地震が来る」と言ったって、仕事とかほっぽって逃げ出す人なんていませんよね。そんな情報は無いのと一緒です。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 疑問だらけなんですが・その2【日経新聞防災記事に寄せて】:

« 疑問だらけなんですが・その1【日経新聞防災記事に寄せて】 | トップページ | なぜ「福島」? »