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2013年4月

2013年4月30日 (火)

サラバ愛しき(?)ブログ村よ!【管理人ひとりごと4/30】

昨日、GW明けまでお休みと言った舌の根も乾かないうちに、ちょっとお気楽な記事など。今回は文字通り管理人ひとりごとで、何も役に立ちませんので、防災関連記事をお求めの方は、どうぞスルーしてください。

しかしまあ、書かないと言った途端に書きたくなる奴ではあります。認めたく無いものだな。自分自身のアマノジャク故の行動というものを(笑)・・・という方面にピンと来た方、管理人も大好きです。

そして、タイトルにピンと来た方、そちら方面も大好きです。昨年の8月、当ブログで「超満員のスタジアムで防災を考える」という記事をアップしましたが、あのスタジアムとは西武ドームだったとカミングアウトしておきましょう。先日も、また西武ドームに防災を考えに行ってきました(笑)来月は横浜アリーナへも・・・(←もういい)
意味わからない方、すいません。

さておき、本日をもちまして、タイトル通り「にほんブログ村」のブログランキングへの参加を終了いたします。理由については、当ブログでもfacebookの方でもさんざん書きましたのでもう触れませんが、気持ち良い終わり方とは言えません。つい「継続は力なり」という言葉を思ってしまうわけです。

困難でも、気に食わなくても、続けていれば何か新しい展開もあるでしょう。でも、やめてしまったらそこで終わり。その一方で、「スクラップ&ビルド」や「選択と集中」という考え方も必要かとも思います。まあ、そんなに大げさなものでも無いですけど、とりあえず今回は、「選択と集中」という方法を選びました。

昨年1月の当ブログ開始以来、ブログランキングへの参加は、当ブログの認知度アップのために、とても大きな効果があったと感じています。ひとつのシステムに過ぎないとは言え、やはり感謝の念はあります。だからこそ、できることなら続けて行きたいとは思ったのですが、世の中の状況は移り変わりますし、基本的に自由な場であるからこその、性善説だけでは割り切れない現実もあります。

にほんブログ村さんへ向けては、全参加者が気持ち良く過ごせるようなシステムと運営へ向けて、今後より一層ブラッシュアップしていただきたいということを、去る者のメッセージとさせていただきます。

たかがランキング、されどランキングです。発信者、特にアクティブに活動しているブログ管理者には、みな特別な思い入れがありますからね。

そんなことを言いつつ、GW明けまでしばしお休みを・・・いや、完全休業する自信がありません(笑)

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2013年4月29日 (月)

これからのこと

一昨日、当ブログのこれからの予定についての記事をアップしたつもりだったのですが、何のトラブルか公開されていませんでしたので、改めて。

ゴールデンウィーク中は、記事の更新を原則としてお休みさせていただきますが、何かお伝えしたいことがありましたら、随時記事をアップします。なお、管理人は静岡、愛知、富山、長野と、またもやあちこちを移動しています(笑)

静岡、愛知では南海トラフ地震、富山では能登半島地震、長野では北部、南部での地震に遭遇する可能性があるわけですが、行く必要があるならば、そのリスクを知った上で迷わず行きます。GWに限らず、地震を恐れて自ら行動を制限することはしません。そして、できる限りの備えと、行く先々での、常に「その時」を意識した行動は忘れません。

しかし地震よりも現実的なリスクは、風疹の流行拡大です。現時点では関東中心ですが、多くの人が移動するGWで、他の地域に飛び火する可能性が高いのです。皆様も、まずは十分な手洗いをこまめに励行し、感染のリスクを減らしてください。人込みでの、飛沫感染を防ぐためには、マスクの着用が効果的です。

ブログランキングについては、先に宣言した通り、明日4月30日をもって「にほんブログ村」のランキングを登録解除します。今までの多数のご支援に、改めて感謝いたします。以後は、「人気ブログランキング」への参加を継続しますので、引き続きご支援よろしくお願いいたします。

このところ、レギュラーシリーズである「対災害アクションマニュアル」記事の更新が滞ってしまっていますが、決して自然消滅ではありません。ただ、当初考えていたスタイルから、幾分変更しなければならないかと考えています。今後どのような形で継続して行くかを熟考した上で再開したいと思っておりますので、「対災害アクションマニュアル」については、もうしばらくお休みさせていただきます。


今後管理人としては、ブログ以外にも新しい展開をして行こうと考えております。基本的には「フィールド」により多く出て行こうかと。別に今まで引きこもっていたわけではありませんが(笑)

では、GW明けまで、(多分)しばしお休みをいただきます。再開しましたら、またよろしくお願いいたします。とか言いながら、時間ができたら何か書きそうな予感が(笑)


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2013年4月24日 (水)

【一周年記念企画】小説・生き残れ。【あとがきと解説】

22回に渡って連載させていただいた「小説・生き残れ。」いかがだったでしょうか。当初は仮タイトルでスタートしたのですが、まあこれでいいやと、途中で(仮)が取れました(笑)

この作品は、マニュアル的な意味も持たせたフィクションです。カテゴリを「ディザスター・エンタテインメント」とした通り、あくまで大災害を題材にした「娯楽作品」というスタンスで書きました。岩城衛と三崎玲奈が大地震に見舞われた地下鉄の中で出会い、それから半年とちょっとのうちに、なんと計4回も大地震に遭遇するという、あり得ない設定ではあります。一度の災害を描くだけでは遭遇する状況が限られますので、そこはフィクションであることを最大限に利用しました。

主人公の岩城衛、お気づきの方もいると思いますが、岩手の岩、宮城の城をつなげ、読みは福島県浜通りの旧名「磐城」と同じという姓にしました。ならば名前は「まもる」だろうなという、ある意味安易な命名ですが、管理人なりの、震災被災地への思いを込めました。

三崎玲奈には、特に意味は持たせていません、語感で決めました。SKE48の松井玲奈とも、NHK朝ドラの能年玲奈とも関係ありません。偶然です。読みは「れいな」です。

ちなみに、ふたりともいわゆる「アラサー」の独身ですが、管理人がこの作品のターゲットとして想定したのが、その辺りの年齢層なのです。様々な仕事の前線にいて、身軽にあちこちに出かけ、繁華街などに出ることも多い、つまり最も多くの「状況」に遭遇しやすい層と考えて、そのような方に役立つ内容にしようと考えました。

構成的に管理人が狙ったのは、いわゆる災害小説とSFチックなライトノベルの中間辺りの線。あまり重苦しくならないように、状況のリアルさや詳細さにはあまりこだわらず、あくまでも大地震に遭遇したいち個人の心理や行動にフォーカスした構成です。犠牲者の描写も、意識的に避けました。

しかし、地震発生時の状況や、その時に取る行動、玲奈が語る災害の知識などに関しては、現実に即してリアルに描いています。お読みいただいた方が同じような状況に遭遇した時に、彼女たちの言葉や行動を思い出し、それを真似ていただければという思いがあります。


玲奈をはじめ、衛以外の主な登場人物はすべて元自衛隊員ということに違和感を感じられた方も多いかもしれません。管理人は元自衛官というわけではありませんが、自称「自衛隊サポーター」で、現職や予備自衛官とも交流させていただいていることもあり、さらにはご想像の通り結構ミリヲタでもありますので、そちら方面が得意という理由もあります。

要は、訓練された人間が取る的確で敏速な行動と、気持ちは熱いものの、能天気で知識不足の衛ができることとの対比をしたかったことと、的確な判断や行動無くして、非常時に自分を守ること、ましてや他を救うことがいかに困難なことかを描きたかったために、そのような設定にしました。

なお、自衛隊に関する専門的な記述や描写の部分は、あくまで管理人の知識だけで書きましたので、実際と異なる部分もあるかと思います。お詳しい方、その辺は大目に見てください(笑)


最終章では、ふたりはついに「東海地震」に遭遇してしまいます。管理人がかつて通った中学校の修学旅行は、静岡方面が恒例でした。しかし当時、東海地震の危険が大きく叫ばれ始めために、東北方面に変更された経験があります(これだけでかなり歳がバレますね)

そんな原体験もある関東在住の管理人としては、大騒ぎしたのにあれからずっと起きない「東海地震」に、ある意味で特別な思いがあります。東京大地震や富士山噴火を描いた方が一般受けするのでしょうが、当初から「東海地震」をメインの題材にすることを考えて、玲奈の出身地を静岡に設定しました。

しかし今にして思えば、管理人が中学生当時も宮城沖地震などが起きていましたし、東日本大震災級が起きてもおかしくない状況もあったわけです。地質学的時間軸では、数十年など一瞬に過ぎません。そう考えると、どこで何に遭うかは本当に運次第であり、それを意識的に避けることなど、少なくとも今の人間には不可能なのだという思いを強くします。我々ができることは、大災害に遭うという前提の意識と備えだけなのです。


管理人の究極の思いは、津波避難所で玲奈の前に立ちはだかる老夫婦の言葉に凝縮されています。なお、空襲からの避難中に背負った赤ちゃんを落としてしまったという話は、当時実際に少なからず起きた実話を元にしています。そのような、命がいとも簡単に消えて行く極限の状況を体験した老人の
「人間の気持ちや力だけではどうにもならないこともあるんじゃよ。無駄に死んではいかん」
という言葉が現実です。いくら備えていても、大災害への対策に絶対は無いのです。

つまり最後には、可能性の問題です。どうにもならない状況に陥る可能性を減らし、どうにもならなくなる前に危険から離れ、どうにもならないと思える状況の中で、一縷の希望を見いだす可能性を大きくすること。それは普段からの正しい意識、正しい知識と正しい行動のみによって実現されるということであり、その象徴として、十分に訓練された元自衛隊員を登場させたわけです。


ラストシーンで、衛は新しい自分と生活に向かうことを決意して、玲奈にプロポーズします。傷つき、生活の糧を失った恵子と須田も元気に立ち上がり、声を合わせて、新しい状況に向かって一歩を踏み出します。「状況開始、状況終了」とは、自衛隊で演習などの開始と終了時に、司令官が発令する用語です。

大災害に打ちのめされた中から立ち上がる人間の強さと、「次」へ繋がる希望を感じさせて終わりにしたかったので、あのようなエンディングになりました。

改めまして、お読みいただいてありがとうございました。


よろしければ、この作品のご感想、ご意見などをコメントかメールでお寄せください。もしかしたらこの四人が、またどこかの「状況」で活躍する時が来るかもしれません。


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2013年4月23日 (火)

【一周年記念企画】小説・生き残れ。【22・最終回】

地震の発生から6時間ほどが過ぎ、大津波警報が解除された。既に夏の太陽は大きく西に傾き、一見すると穏やかさを取り戻した海を、茜色に輝かせている。しかし沿岸の街は、それまでに3回に渡って押し寄せた津波によって、ほとんど破壊し尽くされていた。

高台の津波避難所に避難していた観光客や地元住民は、少しずつ街へ、いや街だった場所へ戻り始めた。海岸近くの、水に漬かったままのビルの上空で、紺色に塗られた航空自衛隊のヘリコプターがホバリングして、屋上から避難者を吊り上げているのが、遠くに見える。

陽はさらに西に傾き、空が夕焼けに染まり始めた。
「これから、どうしようか…」
呟く衛に、隣で破壊されつくした街を見つめていた玲奈が答えた。
「とりあえず、ここの避難所に行くしかないわね…」
「いつ東京に戻れるかな」
「そうね、早くても3日か4日…もっと長くかかるかも…」
ラジオで聞いた情報によると、東京や横浜も震度5強から5弱の揺れに見舞われ、かなりの被害が出ているらしい。交通機関の復旧の目途も立っていない。この辺りの震度は、6強だったという。

「それまで避難所で、ただ待つしかないのか」
衛が言うと、玲奈は衛の方を向いて、口元に少しだけ笑みを浮かべながら言った。
「大丈夫。十分忙しいから。助けが必要な人が、たくさんいるわ」
衛は、なんだかこんなのはすごく久しぶりだと思いながら、敢えて軽口を返した。
「玲奈の“ひとり災害派遣”は続く、か」
「バカ。わたしたちはひとりじゃないわ」
玲奈は広場の奥にいる、須田と恵子を振り返りながら言った。
「それにもちろん、あなたもいるし」
恵子はもうすっかり元気を取り戻し、起き上がって須田と何やら話している。恵子の左の太ももに巻かれた、白い包帯が痛々しい。衛もふたりの姿を振り返りながら、思った。
《いろんな意味で、でかい夫婦だ…》
身体の大きさはもとより、鍛え上げられた身体と精神、仲間への信頼、そしてなによりお互いを思いやる、大きく深い愛情。

衛は、あまりにも目まぐるしく過ぎたこの数時間の内に、自分の中にひとつの決意が芽生えたことを感じていた。須田夫婦が見せた極限の姿も、その決意に大きく影響しているのは間違い無い。恐らく玲奈や恵子、もちろん須田ほどには無理だろうけど、もっと強くなりたい、人のために役立てるようになりたい、そして、大切な人を守り抜きたいという決意だった。そして衛には、それを実現するために、今ここでやらなければならないことがあった。

太陽が山の陰に落ち、空が茜色に染まっている。辺りが薄暗くなり始めた。玲奈が言う。
「そろそろ行きましょうか。恵子も大丈夫そうだし」
衛は慌てた。せりふ覚えが十分でないままに、いきなり本番の舞台に送り出された役者のような気がする。でも、今しかない。衛は、腹を決めた。

変わり果てた街を見下ろす崖の上で、衛は隣に立つ玲奈に向き直ると、言った。
「れ、玲奈」
声がうまく出ない。玲奈は少し怪訝そうに、衛を見た。
「なあに?」
「おれ、もっと強くなりたいんだ…」
「衛は十分に強いわ」
「いや、ぜんぜんだめだ。もっと、もっとだ」
「どうしたよの、急に」
玲奈はきょとんとしている。

「おれに、もっといろいろ教えてくれ。鍛えてくれ」
玲奈は、なあんだというように笑顔になって言った。
「ええ、いいわ。でもわたし、厳しいわよぉ」
最後はおどけて、少し眉間に皺を寄せて衛を睨むようにした。
「頼む。ただし…」
「ただし…?」
衛は一呼吸置いた。自分の心臓の音が、頭のなかにがんがんと響き渡るようだ。

衛は大きく息を吸い込んでから、続けた。
「これから、ずっとだ」
「え?」
「これから一生、ずっとだ!」
「一生…」
玲奈は目を大きく見開いて、衛を見る。視線が、重なる。
「わからないのか」
「…わからないわけないじゃない…」

玲奈はいきなり、衛の胸に飛び込んで来た。その勢いに衛は2~3歩後ずさりしたが、それでもしっかりと玲奈の身体を受け止め、力を込めて抱きしめた。玲奈は、乾いた泥がこびりついた衛のTシャツに顔をうずめながら、搾り出す様に言った。
「…こんなときに…いきなり…バカ…バカっ…」
「ゴメン…でも、今、伝えたかった」
玲奈は何も答えず、衛の身体に回した腕に力を込めてきた。衛は玲奈の埃まみれの髪を撫でながら、頭の隅で、思った。
《この先、何回バカって言われるのかなぁ…》
いいさ。玲奈にだったら、何千回、何万回だって言われてもいいさ…。

少し離れた場所で、ひとつのシルエットになったふたりの様子を見ていた恵子と須田は、ふたりの声こそあまり聞こえなかったが、すっかりと“状況”を理解していた。須田が半ばあきれ顔で言う。
「あーあ、衛くん、ここでキメるかなぁ」
「なんだか、私たちの時と少し似てるかも」
「そうか?」
「演習の真っ最中に、泥まみれの時にプロポーズされた私の身にもなってよ」
「いけなかったか?」
恵子は、笑いながら言う。
「ああいうのは服務規程違反にはならないんですかね?
「泥だらけのプロポーズ、俺たちらしくていいじゃないか」
「衛さんも、これで仲間ね」
「でも大変だぞ、小さな巨人、玲奈班長の旦那になるのは」
「そうかもね」
ふたりは声を殺して少しだけ、笑った。

「さてと!」
しばらくして、須田がわざとらしい大声で言う。衛と玲奈は、びくっとして身体を離した。
「そろそろ移動するぞっ!」
恵子が、ふたりに声をかける。
「玲奈さん、お幸せにっ!衛さん、玲奈さんを泣かせたら、私が承知しませんからね!」
そうは言いながら、恵子には衛が玲奈の厳しさに泣かされているシーンしか想像できない。あたふたした衛が、決まり悪そうに言った。
「お、お手やわらかに…」
玲奈は、少し泣き腫らした目でそんな衛の様子を見ながら、晴れやかな笑顔だ。

手早く荷物をまとめて、近くの中学校に開設されているはずの避難所へ移動する準備が整った。須田が恵子に肩を貸して、立ち上がらせる。生活の糧をすべて津波に流されてしまった須田と恵子には、これから長いこと過酷な日々が続くだろう。それでも、あのふたりならぐいぐい力強く乗り越えて行ける、衛はそう確信していた。そしておれと玲奈もこれから、―ちょっと大変そうだけど―新しい生活を築き上げて行くんだ。

衛は、三人の顔を見回しながら、言った。
「自衛隊ではこういうとき、あれ、言うんですよね」
「…?…ああ、覚えたのね」
玲奈が笑っている。
すぐに衛の考えを理解した恵子が提案する。
「じゃあ、みんなで発令しますか!」
須田も笑顔でうなずく。

玲奈が音頭を取った。
「では、せーのっ!」
「状況ーっ、開始っ!」

少しずれた四人の声が、暮れかけた夏の空に吸い込まれて行った。


【完】


当ブログ開設一周年記念企画「小説・生き残れ。」は今回で終了です。お読みいただき、ありがとうございました。後ほど、あとがき的な解説をアップしたいと思っております。また、ご感想、ご意見、ご質問などお寄せいただければ幸いです。


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2013年4月22日 (月)

【防災の話ではありません】管理人ひとりごと【4/22】

通算501本目の今回は、防災の話とかではありませんのでご勘弁を。当ブログの運営についてのことです。しかしまあ、我ながらあざといタイトルです(笑)

このところ、おかげさまで非常に多数のアクセスをいただいております。特に過去ログを閲覧していただける方が非常に増えておりまして、ありがたい限りです。

PCやスマホでアクセスいただいた場合に表示されるアクセスカウンターも30万を超えました。そこにカウントされていない携帯電話からのPV数を合計すると、当記事執筆時点で、合計374269PVとなります。改めて、皆様のご愛読に感謝いたします。


当ブログは開設以来、「にほんブログ村」と「人気ブログランキング」というふたつのブログランキングに参加しており、ずっと上位をキープさせていただいておりますが、そのうちのひとつ、「にほんブログ村」のランキングへの参加を、4月末日をもって一旦終了することにしました。一旦というのは、下記のような状況に変化がありましたら、また復活する可能性も無いとは言えない、ということです。


その状況とはまず、窓口としての効果が小さくなったこと。例えば、当ブログの昨日4月21日のPV数は約1700PVですが、そのうち「にほんブログ村」経由のPV数は、僅かに7PVでした。このように、最近は一日10PV以下というのが普通です。当ブログをご覧いただく方の大半はブックマーク、キーワード検索、新着記事まとめサイト経由なのです。

そして、他の参加ブログへの疑問が大きくなったこと。現在「地震・災害」というカテゴリーに参加していますが、上位のほとんどがオカルト、エセ科学、商売絡み(本来、商業目的の参加は禁止なんですけどね)のブログです。当初は、そんな中に「科学的思考」のクサビを打ち込んでいるくらいの気持ちもあったのですが、そのようなブログとランキングを争うことに意義を感じなくなりました。

さらに、ランキング運営への疑問。ランキングをずっと見ていれば、どんな記事やブログ注目を集めるかは自ずからわかってきます。例えばこの記事のタイトル、こんなのが(内容はともかく)閲覧が増えるのです。しかし、現在はタイトルや内容が平凡な記事が「注目記事」として上位に居続ける、閲覧が少ないブログのランキングポイントが急増するといった、不自然な動きが顕著です。つまり、組織票が強く疑われます。

運営事務局もそれらに対して無策のようで、改善が見られません。やりたい放題です。そんな根本的なジャンル違いとか、アンフェアな連中とランキング争うことは、全くもってエネルギーの無駄遣いだと思うようになりました。やはり、順位が付く場所では上へ行きたいものですが、まともに勝負できるリングでは無いのです。

そうは言いながら、今までランキングタグをクリックし続けていただき、上位に押し上げていただいた皆様に申し訳ないという気持ちもあり、かなり悩みました。でもやはり、大したプラス効果が見込めない場所に拘り続ける意味は無いという結論に至りました。

とはいえ、ランキング全てを否定する訳ではありません。当面、「人気ブログランキング」への参加は継続しますし、他になにか面白いランキングなどを見つけたら、そちらに参加することがあるかもしれません。当ブログを少しでも多くの方に見ていただけるために役立つのならば、なんでもやります(笑)

そんなわけで、当ブログの内容にご満足いただけましたら、是非とも皆様の関係先でご紹介ください。それが管理人の何よりの喜びです。当ブログはリンクフリーですので、リンクに当たって特にご連絡を頂く必要はありませんが、「ここで紹介したい」とか、「こんなところで紹介されていた」とか、ちょっと教えていたけると、管理人は単純に嬉しいので、もしできればよろしくお願いいたします。

「にほんブログ村」ランキング参加終了は、4月末日を考えております。それまでに、よろしければ、ランキングタグのクリックを、一日一回お願いいたします(同一IPからのカウントは一日一回のみです)。最後に、派手に花火を打ち上げて終わりにできればと。でもこれ、閉店商法みたいですね(笑)


2013年4月20日 (土)

【中国・四川省でM7.0】地震関連情報【4/20通算500号】

この記事は、2012年1月12日の当ブログスタート以来、通算500本目となります。何か記念記事でも書こうと思っていたのですが、「また」大地震の記事を書くことになってしまいました。


日本時間の4月20日、午前9時02分頃、中国、四川省中部、深さ13kmを震源とするマグニチュード7.0(気象庁の発表は6.9)の地震が発生しました。この震源は、2008年5月12日に発生した、「四川大震災」(マグニチュード8.0、震源深さ19km)の震源から約100km程南方です。

20日夜の時点では、まだ被害の全体像は把握されていませんが、被災人口は150万人と言われることから、今後相当な規模の被害が明らかになって行くと思われます。

地震のタイプは、いわゆる内陸直下型地震で、阪神・淡路大震災に近いものです。震源深さが13kmと浅いために、地上では周期の短い、非常に強い揺れとなったと思われ、建物に大きな破壊力をもたらしたはずです。

震度は、報道による建物の破壊状況からして、我が国の基準で震度6強以上の揺れだったと思われます。2008年の四川大震災では、震度6弱程度だったとされていますが、「2008年より揺れが強かった」という現地の声が報道されていることからも、それが裏付けられます。


4月だけでも、世界各地で大規模地震が相次いでいます。
■4月6日 ニューギニア島付近 M7.2
■4月16日 イラン・パキスタン国境付近 M7.8
■4月19日 千島列島・ウルップ島付近 M7.0
■4月20日 中国・四川省中部 M7.0
そして、我が国では
■4月13日 淡路島中部 M6.3
■4月17日 三宅島沖 M6.2

これだけ集中して発生していることは、もはや偶然で片づけられるものではありません。我が国においては、東日本大震災の影響が大きいのは明らかですが、その他にも全地球的に共通する、何らかの理由も存在するということです。しかし、素人がその理由を詮索してもあまり意味がありません。

こういう言い方はあまりしたくないのですが、このような状況を見るにつけ、本気で「いよいよ来るぞ」という意識を強く持たなければならないと考えます。危機意識は、大袈裟なくらいが良いのです。いや、決して大袈裟ではないと、管理人は考えています。


地震の発生には、ふたつの要素があります。まず、断層を動かすひずみエネルギーが蓄積されていること、そして、それが解放される、つまり地震を引き起こす「引き金」(トリガー)の存在です。大前提として、ひずみエネルギーが蓄積されている断層は世界中にいくらでもあり、それ自体はごく普通のことです。

通常ならば、ひずみエネルギーが岩盤の弾性限界を超えた時、つまり大きな力が加わった岩盤が、耐え切れなくなってバキっと割れることで地震が起こりますから、あまり集中せずに、散発的に発生するわけです。そのタイミングは、あくまで「岩盤がいつまで持つか」ということにかかっています。

しかし、このように集中するということは、岩盤の弾性限界に達していなくても、それに近いひずみエネルギーが溜まった岩盤を破壊に導く「引き金」(トリガー)となる、何らかの力が作用していると考えることができます。その力は、現時点では科学的に説明できないものですが、存在を否定することもできません。


2004年12月のスマトラ沖地震(M9.1)は、1960年5月のチリ地震(M9.5)から44年の空白を経て発生した、マグニチュード9クラスの巨大地震です。そしてその時から、全地球的に巨大地震多発期に入ったと言われています。その後、世界各地でマグニチュード7以上の、大きな被害が出るレベルの地震が確かに多発しているのです。チリでも、50年の時を経て、2010年2月ににマグニチュード8.8が発生しています。そして2011年に東日本大震災(M9.0)が発生し、統計的により明確になりました。

そんな中で、今年の4月に入ってこの集中具合ですから、警戒レベル高度に引き上げるべき時だと考えなければなりません。「その時」は今日、明日かもしれないのです。

なんだか気が重くなるので、敢えて軽く表現しましょう。
大規模地震に対して「覚悟」を決め、必要な備えを整えるのは、

『今でしょ!』


・・・通算500号は、もっと気楽な記事にしたかったのですが(笑)

管理人追記:20世紀最後のマグニチュード9クラスは1964年のアラスカ地震(M9.2)ですが、被害が僅少だったため、大被害が出た地震として、ここではチリ地震をピックアップしました。アラスカ地震からスマトラ沖地震までの空白期間は、ちょうど40年となります。なお、20世紀におけるマグニチュード9クラスの地震は、すべてが1946年から1964年の、わずか18年間に集中しており、それが前回の多発期と考えられます。


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2013年4月19日 (金)

【一周年記念企画】小説・生き残れ。【21】

駿河湾沖を震源とするマグニチュード8.2の地震によって引き起こされた津波は、静岡県の太平洋沿岸部で、高いところで10メートルの波高を記録したらしい。ラジオから次々に各地の被害状況が流れる。玲奈がいるこの街でも津波は高さ6メートルに達し、海沿いの街はほとんど壊滅した。

高台の津波避難所から見下ろす水が引いた後の街は、古い木造家屋のほとんどが土台から引きちぎられるかその場で半壊していて、所々に濁流と瓦礫の衝突に耐えた頑丈な建物が、いくつか残っているだけだ。そして、あちこちの瓦礫の山の上に漁船や自動車が引っかかっている、およそ現実とは思えない光景だった。

水が引いてから30分近く過ぎたが、まだ大津波警報は解除されていない。引き波で海水面が大きく下がり、遠浅の砂浜が海岸から200m以上も露出している。その沖には、陸地から引き波で流された大量の瓦礫が漂い、その中から幾筋かの黒い煙が立ち上っている。海上でも、燃え続けているのだ。

玲奈と須田は、高台の広場に集まった観光客と地元住民二百人ほどに対して、警報が解除されるまで絶対に低地に降りないように伝えて回っていた。津波は、何回にも渡って押し寄せるのだ。容態が落ち着いた恵子と彼女が助けた少年には、看護師の経験があると申し出た地元の中年女性が寄り添って、怪我の手当てをしている。津波が引いた街の惨状を目の当たりにした人々は、最初はろくに言葉が出ず、泣き崩れる人も少なく無かった。でも今は変わり果てた街を眺めながら、周りの人とあれこれ言い合っている。それは想像もしていなかった凄惨な光景を、なんとか現実のものとして受け容れるための、苦痛に満ちた作業でもあった。

衛は崖際の手すりにもたれて、ぼんやりと瓦礫の街を眺めていた。まだローンが残っている自分の車を失ったことも悔しいが、それよりもあまりに凄まじい自然の力と、その中で繰り広げられた、鍛えられ、強い意思を持った人間たちの極限のドラマを目の前で見せ付けられ、自分があまりに何も知らず、何もできない事に腹が立っていた。
玲奈は
『衛が助けてくれなかったら、ダメだったよ』
とねぎらってくれたが、自分の行動は玲奈の勢いに引きずられたようなものだと思っていたから、ほとんど慰めにもならなかった。何より、玲奈が恵子を濁流の中から引っ張り上げようとしているその時、衛は足がすくんで動けなかったのだ。それが、深い自己嫌悪の念に繋がっていた。

《人を守るって、簡単にできる事じゃないんだな…》
そう思いながらふと瓦礫の街に目をやると、海岸の近く ―すっかり見通しが良くなってしまっていた― に、いくつかの人影が見えた。何人か固まって、どう見ても楽しげな雰囲気だ。手に持ったビデオカメラや携帯電話を、瓦礫の山に向けているようだ。さらに目を凝らすと、津波に耐えた鉄筋コンクリート造りの建物から人影が出てきては、瓦礫の上に打ち上げられた漁船を指差して大騒ぎしている。そしてついには、その前に並んで記念写真を撮りだす者も現れた。

《なんだよ、あいつら…》
衛は恵子の横で様子を見ている玲奈を振り返ると、叫んだ。
「玲奈!あれを見てくれ!」
玲奈はすぐに衛の所に駆け寄って来た。そして遠くで騒いでいる人影を認めると、目を剥いた。
「何やってるのよ!まだ津波が来るのに!」
人影は次第に数が増え、みな海岸へ向かって行く。ここから叫んでも、声が届く距離ではない。

その時だった。海を見ていた若者が叫ぶ。
「第二波、来るっ!」
水平線が再びむくむくと盛り上がり、白い波頭が沸き上がった。何人かの女が悲鳴を上げる。また、あの悪夢を見せ付けられるのか。高台にいる皆には、既にわかっていた。水平線に津波が現れたら、3分もしないうちに海岸に押し寄せる。そして今、海岸にいたら逃げ場はほとんど、無い。

もちろん玲奈にもわかっていた。しかし、言った。
「呼び戻しに行かなくちゃ!」
「ダメだ、間に合わない!」
「あのビルになら、間に合う!」
玲奈は衛がつかんだ腕を振りほどくと、崖の下り口へ向かって駆け出した。
「玲奈ダメだっ、行っちゃダメだぁっ!」
衛は玲奈を追った。行かせたら、終わりだ。しかし、全力で走る玲奈に、追いつかない。
「だれかっ!玲奈を止めてくれぇっ!」

玲奈が崖の下り口に達しようとしたとき、その前にふたつの人影が立ちはだかった。しわがれた大音声が響く。
「行ってはいかぁんっ!」
あの、老夫婦だった。玲奈はふたりの前で、足を滑らせながら止まった。衛が追いついて、後ろから玲奈の両肩を掴む。

老人は顔を真っ赤にして、先ほどまでの穏やかな表情からは想像もできない、まるで仁王のような形相で、それでも感情を押し殺して、静かな口調で言った。
「いいか、聞きなさい。わしはこう見えても、今年八十八になる。昭和二十年の空襲で、わしらの子供も仲間も、みんな失ったんじゃよ。あんたのような勇敢な若い人を、もう死なせるわけにはいかん」
玲奈は身体を硬直させて、目を見開いている。老人は続けた。

「わしは理系の学生じゃったから、兵隊には取られんかった。早くにこいつと一緒になったんじゃが、静岡で空襲に遭ってな、逃げる途中でわしの背中から赤ん坊を落としてしまったんじゃ」
老人の眉間に、苦悩の皺が刻まれた。70年近く前の、しかし未だ癒えない悔恨がにじむ。

「赤ん坊がいない事に気がついた時には周りはもう火の海で、とても戻ることは出来んかった。そうしたら、近所のせがれが、探しに戻ると言うんじゃ。そいつはな、身体が弱くて兵隊に丙種でも受からんかった。今の人にはわからんだろうが、兵隊に行けんということは、それはもう肩身が狭いものでな、そいつは常日頃から、何とかしてお国のために役に立ちたいと言っておった」

老人の言葉に、衛の脳裏に写真で見た空襲後の焼け野原が蘇る。そういえばこの津波跡は、焼け野原にもそっくりじゃないか…。老人は続ける。
「わしらは必死で止めたが、そいつは『任せてください』と言って、戻って行ってしまったんじゃ。そしてそのまま、戻って来んかった…」
老人の表情から険しさが抜け落ち、目に涙が光った。さらに言葉を続ける。
「人間の気持ちや力だけでは、どうにもならん事もあるんじゃよ。それに、あんたのような人が生き残らんかったら、だれが子供たちやわしらのような老いぼれを守ってくれると言うんじゃ・・・」

老人は一旦言葉を切り、硬直したまま聞いている玲奈の目をまっすぐに見つめてから、続けた。
「だから、わかってくれるな。無駄に死んではいかん。この老いぼれからのお願いじゃ」
玲奈の身体が小刻みに震え始めるのが、衛の腕に伝わって来た。すると、それまで黙っていた老人の妻が、穏やかな表情で、孫を諭すように言った。
「あなたはもう十分にやりましたよ。十分すぎるくらいに。それに、あなたにもご家族があるでしょ。そんなに素敵な彼氏さんもいるし。そんな人たちを悲しませてはいけませんよ。あなたは本当に、ええ本当に立派にやりましたよ」

玲奈の身体の震えが大きくなり、見開いたままの目からは、大粒の涙が溢れ出した。そして玲奈の身体から力が抜け、衛の腕をすり抜けて、その場に崩れ落ちるように、ぺたんと座り込んだ。衛は立ったまま、玲奈の震える背中を見つめている。いつもより、ずっと小さく見える。白いTシャツが、泥だらけだ。今、玲奈にかける言葉は何も、思いつかない。

「…わたし…わたし…」
震える声が、唇から漏れる。玲奈は両手で顔を覆うと、声を上げて泣いた。今までずっと張り詰めていた気持ちが途切れ、抑えていた感情が一気に噴き出した。背中を丸めて、苦しそうにしゃくりあげる。衛は玲奈の横にひざまずき、震える玲奈の肩を優しく抱いた。それしか出来なかった。そして、穏やかな表情で見つめる老夫婦に向かって、深く頭を下げた。

その時、津波の第二波が海岸に到達し、第一波より大きな飛沫を空に吹き上げた。数秒後、辺りの空気を震わす轟音が崖を駆け上がって来て、玲奈の苦しげな嗚咽をかき消した。


☆☆ここまで21回に渡って連載して参りました「小説・生き残れ。」、次回はいよいよ最終回です。

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【千島列島でM7.0】地震関連情報【4/19】

本日午後12時06分頃、千島列島のウルップ(得無)島北東の沿岸部海底、深さ10kmでマグニチュード7.0の地震が発生し、北海道根室市などで最大震度4を記録した他、東日本全域で揺れを感じました。ウルップ島は択捉島の北東側に隣接する島です。

千島列島は、過去に何度も大規模地震が発生している「地震の巣」で、近いところでは2006年11月にマグニチュード8.3、続いて2007年1月にマグニチュード8.1が発生しています。それらの震央は、今回の震央より100km以上も東の海底でしたので、直接の関連はあまり考えられません。

なお、2006年の地震は震源深さ30kmの逆断層型のプレート境界型地震(東日本大震災と同じタイプ)、2008年の地震は、2006年の地震によって約3ヶ月後に誘発された、震源深さ10kmの正断層型アウターライズ地震とされています。

本日の地震は、千島列島のロシア側で発生した訳ですが、震源はウルップ島沿岸部の浅い海底ですから、島にはどれだけの人口があるかわからないものの、かなりの被害が出ているのではないかと思われます。我が国の震度基準で言えば、島では恐らく最大震度6強以上の揺れだったはずです。


千島列島の南側海底には、ほぼ並行する形で千島海溝が走っています。ここは東日本大震災震源域と同じく、大陸側のユーラシアプレートと海側の太平洋プレートの接点であり、プレート境界型(海溝型)地震の巣となっています。海溝沿い各地で、過去に何度もマグニチュード7以上の大規模地震が発生してきましたが、近年の研究により、海溝沿いの震源域が連鎖して動く、東日本大震災と同じタイプの巨大地震が起きる可能性が指摘されています。

その場合、最大マグニチュードは9クラスになると予想する説もあります。現に、ずっと北方の、構造的に似た条件のアリューシャン列島では、マグニチュード9クラスの地震が複数回発生していて、さらに南側の東北沖でも発生しました。今度はその間の千島列島で起きたとしても、全くおかしくありません。

千島列島でマグニチュード9クラスが発生した場合、特に北海道のオホーツク海、太平洋沿岸部で強い揺れとなるのはもちろん、同地域を中心に、かなり広い範囲に大津波が到達することになるでしょう。2006年の千島列島沖地震(M8.3)では、伊豆諸島の三宅島で84cm、さらに和歌山県や四国の沿岸にまで小規模な津波が到達していますから、マグニチュード9クラスになれば、東日本から西日本の太平洋岸全域に大きな津波が到達する恐れがあります。

千島列島は、このような「爆弾」を抱えている場所であり、東日本大震災による地殻変動の影響も受けているはずですから、ここもやはり「いつ起きてもおかしくない」場所と言えるでしょう。本日の地震が、さらに大きな地震の「前震」では無いとは、誰にも言えません。特に北海道のオホーツク海沿岸及び太平洋沿岸部では、大津波からの避難方法などを、具体的に、すぐに考えてください。

千島列島に関しても、今後の推移を注意深く見守りたいと思います。


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【三宅島その後など】地震関連情報【4/19】

三宅島の、その後の状況をまとめてみます。

4月17日の震度5強の後、震度3~1の余震が多数発生していましたが、18日には震度1が5回と、有感地震に関しては収束傾向が明らかであり、群発地震にはならないようです。しかし、一週間程度は大きめの余震に警戒が必要です。なお、気象庁発表によれば、人体に感じない無感地震の頻度はあまり落ちていないとのことですので、当面は活動の推移を見守りたいと思います。

火山活動に関しては、その後も特段の変化は見られていません。マグマの動きがあれば、通常の地震とは明らかに異なる波形の火山性微動や、山体膨張、噴気の変化などが見られますが、いずれも観測されていません。

なお、三宅島でマグニチュード6クラスの地震が発生したのは2000年以来13年ぶりだそうですが、2000年は噴火に関係した火山性の地震でしたので、今回の地震の性質とは異なります。つまり、伊豆諸島においてこのように強い地震はさらに長い間発生していなかったわけで、今回の地震は、広義において東日本大震災による地殻変動の影響と考えるべきかと思います。


ところで、18日には三宅島沖の震央とは反対側の海域で海面変色が見つかったという報道がありましたが、管理人は、これは誤認によるものではないかと考えています。

まず、「変色」を発見したのが警察のヘリ乗員であること。つまり、火山に関する専門知識持っていない可能性が高い。報道によれば「海面が100mほどエメラルドグリーンに変色していた」との報告があったそうですが、海底からの噴気で海面が変色するならば、100mという小規模で済むとは考えにくく、エメラルドグリーンという色の表現が、海底火山による海面変色とは違うようにも思えます。このような場合、一般的には緑色の入浴剤を流したような不透明な黄緑色になることが多いようで、しかもかなり広範囲に変色するはずです。

さらに、連絡を受けた海上保安庁の航空機が現場を調査しても、変色域は発見できなかったということかららしても、誤認の可能性が高いと考えられます。恐らく、海底の浅瀬や岩礁などが光線の関係で透けて見えたのを変色と誤認したのではないかと、管理人は考えています。その場合、鮮やかなエメラルドグリーンに見えるはずです。

他の可能性ととしては、水難事故の際に、漂流者が航空機に自分の位置を示すための海面染色剤(シーダイマーカー)にも鮮やかな緑色のものがありますが、もしそうだったら、漂流者は地震のせいで見捨てられたことになりますね(笑)まあ、その可能性は無いでしょうが。

この例に限らず、地震直後のような緊張感が高まっている時期には、例の「確証バイアス」による誤認が多発するのです。この例が誤認だとしたら、こんな感じでしょう。

大きな地震があった→火山が噴火するかもしれない→何か兆候が見つかるかも→海の色が一部違う→火山の影響に違いない

という感じで。もっとも、警察ヘリからの報告が「海面変色を発見」だったとは限らず、「確認はできないがその可能性があるので、念のため報告」くらいだったかもしれません。その結果、詳細に調査して誤認とわかれば、それは全く正しい行動ではあります。

問題は、例えば発見したのが一般人だとたら、裏づけも取らずに「三宅島沖で海面変色を発見、海底火山か」とネットに書いたりする。そんなのは「報道されない現地からの生情報」として珍重され、海底火山が危ないという事実として拡散される。一方で、報道されていないから、行政やマスコミは本当の危険を隠蔽しているとかで、陰謀論者も喜ばせる。そしていつの間にか、「一週間以内にまた大噴火と大地震が起こる」とかいう尾ひれがつき、さらに加速度的に拡散されるのです。このように、デマの大元には「確証バイアス」による誤認や思い込みが多いわけです。

よく、大地震が起きた後に、地震前に「動物がいつもと違う様子だった」、「空が違っていた」、「携帯の電源が落ちた」などの「宏観現象」が報告されますが、そんなのも「前兆があったはずだ」という前提で記憶をたどることで、珍しくもない現象を、前兆として思い込むことから始まるのです。大地震の直後に言われる、「あんなのを見たのは初めてだった」という話の半分は、実は日常的に起きていることだと言っても過言ではありません。さらに、「地震雲」や「体感」とかいうエセ科学やオカルトなどは、この「確証バイアス」が前提であることは、言うまでも無いことです。

そこで笑ってるあなた。今、あなたが「三宅島沖で海面変色、噴火近し」というツイートを見たら、本当にリツイートとかしないですか?予備情報がなければ、いや、あっても緊張感が高まっている状況では、大抵の人が拡散するでしょうね。


などと、全く関係の無い話になってしまいました。すいません。最後に、石垣・与那国島近辺の活動について。4月17日に9回連続発生しましたが、18日は震度1が2回のみと、終息方向に向かうようです。しかし、震度1といってもマグニチュードは4.6と5.9と、実はかなり大きな地震が起きています。これが島の直下の浅い場所で起きたら、震度5クラスになります。今後もこのような多発は続くと思われますし、すぐ近くの台湾でもマグニチュード7クラスが発生していますから、当分は警戒が必要な地域のひとつです。


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2013年4月17日 (水)

【三宅島近海で震度5強など】地震関連情報【4/17】

本日午後5時17分頃、東京都の三宅島近海の海底、深さ20kmを震源とするマグニチュード6.2の地震が発生し、三宅島で最大震度5強を記録しました。この地震の前に、本日午前10時15分の震度3を最初に、震度3~1の地震が多発していました。

この地震は火山性ではなく、現在のところ三宅島の火山活動に特段の変化は見られていないということですが、今後の推移を注意深く見守る必要があります。

4月10日の記事で触れた通り、三宅島の火山活動に関しては、東日本大震災の前後でも特に変化は観測されていないこという見解が、防災科学技術研究所からリリースされています。
■関連記事はこちらから
しかし、三宅島は震災震源域の「近隣」と言える場所ですので、地殻変動によって噴火が誘発される可能性は十分にあります。

地震活動に関しては、管理人のモニターによれば、昨年末くらいから伊豆諸島、特に伊豆大島近海での小規模地震が少し増える傾向があったものの、あくまで散発的な発生でした。

管理人は、本日午前中の段階で三宅島近海の多発状況を確認しており、短時間で非常に多くの地震が発生していることから、かなり警戒感を持ってはいたのですが、マグニチュード6.2という規模が発生するとは、正直なところ考えていませんでした。これがマグニチュード6台後半から7クラスになると、津波の発生が懸念されます。

伊豆諸島は、震災前から地震の発生が比較的多い場所でした。そして、位置的には震災震源域の近隣と呼べる場所です。震災後、今までは顕著な動きは無かったのですが、これから新たな影響が出て来ないとは言い切れません。地震活動に関しても、慎重に推移を見守る必要があります。

ところで、今回の発生パターンは伊豆半島東岸で時々発生する群発地震と似ていると、管理人は考えています。伊豆半島の地震はごく浅い震源で発生するのでメカニズム的には異なるものですが、小規模地震が短時間内に多発しながら時々震度5クラスが発生し、さらに余震とは別の小規模地震が多発しながら、数日~二週間程度で終息するというパターンです。もし、明日以降も地震回数が減らないようならば、同様のパターンとなるかもしれません。その場合、再び強い地震が発生する可能性も考えられます。

一方で、本日午後3時18分以降、はるか西の沖縄県石垣島、与那国島近海での小規模地震が9回連続発生しています。このような多発は震災後に何度も見られており、過去には大きな地震には繋がっていませんが、今回はより短時間内に集中しているようなので、警戒を強めるべきかと思います。


という記事を書いている最中の午後9時03分、宮城県牡鹿半島東方沖の深さ60kmを震源とするマグニチュード5.8の地震が発生し、石巻市などで最大震度5弱を記録しました。埼玉南部でも、震度2程度のゆっくりとした揺れを長い時間感じました。この地震は、震災1年後辺りから多発し続けている、宮城県沖から沿岸部の深さ40~60kmで発生する「スラブ内地震」です。この震源域での小規模地震の発生自体は毎日のように続いていて、2~3ヶ月に1回くらいの頻度で、このように震度4~5クラスが発生しています。

いつも通りの発生パターンならばさらに大規模化することなく小規模地震の連続に戻るのですが、それも絶対とはいい切れません。地下の状態は刻々と変化していますし、未知の事象である可能性も捨てられませんから、安易に予断すべきではありません。


東日本大震災前は、地震とは「たまに起きるもの」でした。しかし、震災後はこのように、日常の一部となってしまいました。我々はその状況にすっかり慣れてしまっていますが、小規模地震の発生回数にほぼ比例して、大規模地震の発生回数が増えるという統計的事実があります。

大規模地震の発生はすぐそこに迫っている。これは脅しではなく、科学的にも正当な事実として捉え、できる備えを急いで進めなければなりません。


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2013年4月16日 (火)

【一周年記念企画】小説・生き残れ。【20】

恵子と須田が取り付いた屋根が、ゆっくりと崖に近付いて来る。しかし、崖にぶつかって渦を巻く水流に翻弄されて、回転している。どのタイミングが屋根に取り付いたふたりと崖の距離が最短になるのか、衛は難しい判断を迫られた。屋根がさらに近付いて来る。まだ少し遠いか。しかしこのまま待っていたら、屋根の回転のせいでふたりの位置が崖と反対側になってしまう。衛は腹を決めた。
「玲奈!あと少し!」

衛を振り仰いでいた玲奈は、屋根の方角に向き直ると、叫んだ。
「須田さん!離脱準備っ!」
この距離なら、玲奈の声は確実に届いているはずだ。
数秒後、衛が叫んだ。
「今だ!」
玲奈がすかさず叫ぶ。
「離脱っ!いまーっ!」
須田は恵子の身体を水に引き込み、仰向けに浮かせた。そして顎の下に手をかけると、恵子を引っ張りながら泳ぎ始めた。玲奈は方向を示すために、叫び続けた。
「須田さん、こっちです、こっちです!恵子、がんばれ!こっちだ!」

漂う瓦礫の影からふたりの頭が現れるのを、玲奈は見た
「須田さん!恵子!がんばれっ!あと5メートル!」
須田は必死の形相で泳ぐが、崖近くの渦に阻まれて、なかなか近付かない。ふと、ふたりの姿が、渦の中に消えた。玲奈は息を呑む。嫌だ…ここまで来て、嫌だ…

数秒後、須田の頭が渦の中から飛び出した。だが恵子の姿が見えない。その時、苦痛に歪む須田の口から、野太い、地の底から湧き上がるような叫びが轟いた。
「レンジャァぁぁぁーっ!」

レンジャー教育課程で叩き込まれる叫び。地獄のような状況の中で、苦しい時、怖い時、気持ちが折れそうになった時に、叫べ。叫んで、気合を入れろ。選ばれし者だけが名乗る事を許される、名誉と栄光の称号、レンジャー。おれはレンジャーだ。だから、負けない。須田は目の前の瓦礫を押しのけ、最後の力を振り絞り、水中に沈んだ恵子を引っ張って、ついに崖に取り付いた。

気がつくと、玲奈の周りには衛と数人の若者がいた。衛が連れて下りて来たのだ。すぐに全員で力を合わせて、須田の巨体を斜面に引っ張り上げた。すぐに恵子の頭が水面に現れる。須田の左腕は、しっかりと恵子の腕に絡み付けられている。しかし恵子は、意識が無い。

「恵子っ、わかる!?」
玲奈は恵子の頬を軽く平手で打つが、反応が無い。
「とにかく上へ!」
水から引き上げられて斜面に寝かされた須田は、数秒間激しく咳き込んだものの、すぐに立ち上がった。意識の無い恵子を担ごうとする。玲奈が止めるが、
「大丈夫だ」
の一言で撥ねつけた。鍛え上げられた戦士が、自らの命をかけて他を、それも自分の妻を守り抜こうとする鋼のような意思が溢れている。そしてその意志が、限界を超えさせた…。

恵子を背負った須田を皆で囲むようにして、広場へ上って行く。日陰には、誰かが気を回して、タオルを敷いた寝床が作られていた。須田は恵子をその上に寝かせると、すぐに呼吸と心拍を確認する。顔は真っ白で脈はほとんど触れず、呼吸が止まっている。

須田は玲奈を振り返り、
「CPRを実行する。玲奈、頼む」
と、無表情のままぶっきらぼうにも聞こえる調子で言った。玲奈は恵子の胸の横に膝をつき、大きなタオルを胸の上にかけてから、恵子のブラジャーを外した。そして膝をついて心臓マッサージの体勢を取る。須田は恵子の顎を持ち上げて気道を確保し、マウスツーマウス人口呼吸を準備した。
「現在十二時四十五分 CPR開始」
腕にはめたダイバーウオッチを見ながら、須田は静かに言った。

玲奈は全身の力を込めて、恵子の胸骨の辺りをリズミカルに圧迫する。
「イチ、ニー、サン、シー、ゴー…」
玲奈の額から汗がしたたる。何度も訓練を繰り返した技術だが、本当に生死の境をさまよう人間に対して行うのは初めてだった。しかも恵子は大切な仲間だ。そして、その仲間を失うかどうかは、今自分がやっていることにかかっている。後は無い。玲奈は一押しごとに、生への願いを込めた。
《恵子、負けないで…!》

圧迫が30回をカウントし、玲奈は手を止めた。すぐさま須田が恵子の鼻をつまみ、唇を重ねて肺に息を吹き込む。須田が二回目の息を一杯吹き込んだ時、突然恵子は激しくむせ返りながら、身体を海老のように丸めた。口と鼻から白く濁った大量の水を吐き出す。なおも激しくむせ返りながら水を吐き出す恵子の身体を、須田と玲奈が横向きにして押さえ、回復姿勢をとらせた。

「もう大丈夫だ」
しばらくして、須田は恵子の首筋に指を当てて脈拍を取りながら、玲奈の目を見つめて言った。
「本当に、ありがとう。玲奈のおかげで助か…」
最後は声にならない。須田の目から、涙が溢れ出した。固まり始めた血がべっとりとこびりついた“和製ランボー”須田の顔は、それでも穏やかな、妻の生還を心の底から喜ぶ、ひとりの夫のものだった。須田はまだ朦朧とした意識の底を漂う恵子の手をしっかりと握りながら、歯を食いしばって、泣いた。

どんなに鍛え上げられた人間でも、自分の死に直面して怖くないわけが無い。大切な人の命の危機に直面して、心が乱れないわけが無い。しかしそれを乗り越える唯一の力は、“絶対に生き残る、絶対に助ける”という、愚直なまでの強い意志なのだと、玲奈は改めて思った。涙が、止まらない。ふと顔を上げると、衛と目が合った。衛の目も、真っ赤に泣き腫れていた。

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2013年4月14日 (日)

【淡路島で震度6弱】地震関連情報【4/14】

ちょっとバタついておりまして、地震関連記事のアップが遅くなりました。

昨日4月13日の午前5時33分、淡路島中部、深さ15kmを震源とするマグニチュード6.3の地震が発生し、兵庫県淡路市で最大震度6弱を記録しました。当初はマグニチュード6.0、震源深さ10kmと発表されましたが、気象庁からの第2報により、暫定値として上記のように訂正されています。

この地震の震源は、1995年に阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)を引き起こした野島断層帯の南端部付近に当たりますが、阪神・淡路大震災が横ずれ型断層で発生したのに対し、今回の地震は東西方向の圧縮力による逆断層型とのことで、発震機構が異なります。つまり全く別物の地震であり、阪神・淡路大震災と直接の関連は不明とされています。

ただ、今回の震源は未知の断層らしいということ、震災後の調査によると、淡路島中部付近で、人体に感じない無感地震が多発していたということから、広義において阪神・淡路大震災の余震とする見解も出ています。いずれにしても、この付近の断層には大きなひずみを溜める複雑な力が働いているということは確かなようで、今後も警戒を要する場所と言えそうです。

管理人は、東日本大震災後の、全国の地震発生状況を連日モニターしていますが、記憶によれば震災後に野島断層帯周辺を震源とする有感地震はごく少数で、小規模地震が数回というレベルです。特に今回の震源、淡路島中部西岸での発生は初めてと認識していましたが、それは上記の「未知の断層」という見解とも一致します。

震災後、西日本全域で小規模地震が増加しており(和歌山県北部など、震度5クラスも少数あり)、その後ゆるやかな増減を繰り返す中で、昨年10月頃から多発する傾向がかなり鮮明になって、現在に至っています。関東以西はユーラシアプレート、フィリピン海プレート、太平洋プレートの動きの影響を受けている地域であり、東日本よりもより複雑な力が働いていると思われますが、今回の地震はそれを象徴するようでもあります。


この地震により、家屋の完全倒壊というような被害までは出ていないものの、ニュースで流れた映像に、家の中がめちゃめちゃになったものもありました。震度6弱以上、それも直下型で震動周期が短い地震ともなれば、対策をしていない家具類はほとんど倒れるのです。その下に人がいれば確実に負傷、場合によっては死亡しますし、発生が都市部ならば、その機会は数十、数百倍になるわけです。

今回は、阪神・淡路大震災と同じような早朝の強い地震ということで、あの時の記憶が蘇った方も多いかと思います。東日本大震災後、日本列島は確実に地震の発生が増えていて、即ち大規模地震の発生確率も上がっています。そして、全地球的に巨大地震の多発期に入っていることも確かと言える状況です。

もう、いつ起きるかということを気にする段階ではありません。すべては「起きたらどうするか」だけを意識して対策を進めなければなりません。それが、あなたの「生き残る」可能性を決めるのです。


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2013年4月12日 (金)

【一周年記念企画】小説・生き残れ。【19】

男は土砂崩れの斜面もまるで平地のように駆け抜けると、ふたりの元にたどり着いた。
「玲奈、ありがとう!後は任せろ。早く上へ!」
恵子には、
「宿で負傷者が出て、遅くなった。すまん」
と声をかけるが、再び意識が朦朧とした恵子は、須田の方を見て少し微笑んだだけだった。

玲奈は、こんな場面でも思わず挙手の敬礼をしそうになった自分に驚きながら、
「恵子をお願いしますっ!」
とだけ言って、恵子を須田に託した。全力で恵子を支え続けた腕にうまく力が入らないが、四つんばいになってなんとか斜面を登る。上の広場の手すりから皆が乗り出して、大声でふたりに励ましの言葉を叫んでいたことに、今になって気付いた。

玲奈は斜面を登りきり、広場に上がった。衛が駆け寄って来る。玲奈はこのまま衛の胸の中に飛び込んで行きたかったが、その気持ちをぐっと堪えて崖を振り返ると、手すりから身を乗り出した。状況は、まだ、まだ終わってはいない。

須田は恵子のぐったりとした身体を水から引き上げ、うつ伏せにして左肩の上に担ぎ上げた。そして右腕で恵子の身体を押さえ、左腕を崩れた斜面についてバランスを取りながら、慎重に足を踏み出した。2メートルほど登った時、先程まで玲奈が踏ん張っていた石段が、押し寄せる強い水流に一気に飲み込まれて見えなくなった。あのまま須田が来なかったら、恐らく今が、玲奈と恵子の最後の瞬間となったに違いない。

しかし須田は確実に、恵子を担いで崩れた斜面を登ってくる。もう大丈夫だ。恵子の怪我が心配だが、レンジャー資格者は優秀な“衛生兵”でもある。須田が適切な手当てをしてくれるだろう。それに恵子が海の家から背負って来た陸自迷彩色の非常持ち出しリュックには、恵子がアレンジした衛生キットが入っているはずだ。

つい先ほどまでの、八方塞がりとも言えるような状況が嘘のようだ。芝居でもこうはいくまいと思えるくらいの、死の恐怖から生の希望への、鮮やかな場面転換だった。広場に張り詰めた先程までの緊張が幾分ほぐれて、笑顔で声援を送る者もいる。
「がんばれ!」
「もう少しだ!」

しかし、ほぐれかけた空気は再び一瞬で凍りついた。恵子を背負った須田の足が次の一歩を踏み出した瞬間、足元の斜面が小さな崩落を起こした。足を取られた須田は、恵子を背負ったままずるずると斜面をずり落ちて行った。須田はすぐに身体全体を斜面に投げ出し、両手足でブレーキをかけようとするが、ふたりの身体は、そのまま渦巻く真っ黒な水の中に飲み込まれて行った。

あっという間の出来事に、誰も言葉が出ない。数瞬して、玲奈の振り絞るような叫びが空気を引き裂いた。
「いやあぁぁぁーっ!」
玲奈の身体が、がたがたと震え始める。
「うそ…うそ…」
目の前で起きた現実を全く受け容れられずに、玲奈はふたりが消えた渦巻く水を震えながら見つめている。玲奈の横で、衛はこんな理不尽な現実に、無性に腹が立った。そして、手すりから身を乗り出して、渦巻く水に向かって目を剥いて怒鳴った。
「ふざけるなよ!なんだよ!ふざけるなよ!」
自然の猛威の前に、人間の力などこんなものだと言うのか。

少し離れた場所で、叫び声が上がった。
「あそこにいる!」
声の主が指差す方に、皆の視線が一斉に注がれるが、渦巻く瓦礫しか見えない。
「あそこだ!あの緑の屋根のとこ!」
流されて来た家の屋根の端に、恵子がしがみついている。ぐったりとしていて、屋根の端に両腕をかけているのがやっとの様に見える。しかし須田の姿は見えない。
「恵子っ!」
玲奈が叫んだ時、恵子のすぐ後ろに、頭がぽっかりと浮かび上がった。須田だ。ぐったりとした恵子を、濁流の中から屋根に押し上げたのだ。そうだった。濁流に呑まれても、それで諦めるはずは無かったんだ。恵子も須田も、最後の瞬間まで諦めるはずがない。

しかし須田も負傷しているようだった。水面に現れた頭からすぐに血が噴き出し、顔が真っ赤に染まって行く。須田は恵子を瓦礫からかばうように身体を寄せながら、辺りを不自然に見回している。その様子から、玲奈は須田の意図と状態を悟った。

須田は、つかまっている屋根が崖に近付くタイミングを計っている。そして崖に近付いたら恵子を抱えて屋根を離れ、崖に取り付くつもりなのだ。しかしおそらく、負傷のせいで目が良く見えないに違いない。水面下の両腕は、恵子の身体を支えることで精一杯で、顔に流れる血をぬぐうことも出来ないのだ。

ふたりが取り付いた屋根は、渦のなかでゆっくりと回転しながら崖に近付いて来る。おそらく、チャンスは一回だ。引き波が始まったら確実に、成す術も無く、海へ向かって流される。そうなったら生き残れる可能性は、ほとんど無い。

玲奈は、須田に向かって叫んだ。
「須田さんっ!離脱時期を指示します!そのまま待機っ!」
玲奈の声は須田に届いた。須田はこちらを振り向いて大きく頷いたが、顔の向きが微妙に違う。やはり目が良く見えていない。玲奈は息を呑んで見つめる周囲の人たちに向かって叫んだ。
「しばらく声を出さないでください!お願いします!」
状況を理解した皆は、強張った表情で黙って頷いた。

玲奈は踵を返すと、崖を滑り降りて行った。既に水かさの増加は止まっている。水深は、おそらく4メートルくらいだ。しかし水際まで降りた玲奈は、そこで自分が判断ミスをした事に気付いた。そこからでは、ふたりが取り付いた屋根が見えないのだ。玲奈は、崖の上にいる衛を振り返った。懇願するような目つきだった。衛にはすぐに、玲奈の思いが電流のように伝わった。

おれが、ふたりの運命を握るのか。おれに出来るのか。いや、やるしかない!衛は声を出さずに、思わず右腕をあげて、親指を突きたてた。玲奈の唇が、《おねがい…》と言うように動くのが見えた。


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2013年4月10日 (水)

【ニュース解析】富士山は噴火するのか?

いつもの【ニュース解説】ではなく、今回は【ニュース解析】です。

管理人がつい最近になって知ったことで、すっかり旬を過ぎてしまった話で恐縮です。3月上旬に富士五湖のひとつ、河口湖で異常な水位低下があり、それがまた富士山の噴火と絡めて、結構な騒ぎになっていたようですね。例によってメディアでもネットでもいろいろな煽りが飛び交って、そんなのしか見ていないと、すぐにでも富士山が噴くのではないかと思えて来ます(笑)

大前提として、富士山は活火山ですから、いつ噴火活動が始まってもおかしくなく、周囲に被害を及ぼすような噴火をするポテンシャルは常にあるわけです。でもそれは富士山だけでなく、すべての活火山に言えることですが。

しかし、富士山を取り巻く観測網は、噴火へ繋がる兆候を全くとらえていません。それでも、いろいろな事が言われています。以下に、いくつかピックアップしてみました。
■雪の量が減っている→山体の温度上昇?
■山腹で蒸気が上がった→マグマ上昇による地下水加熱?
■箱根で火山性地震、山体膨張発生→富士山と同系のマグマが動いた影響?
■関東大震災、新潟中越地震前にも河口湖で渇水発生→確認された事実?地震の影響なのか?
■富士山麓各地で異常湧水や渇水が発生
これらいずれの現象も、噴火の兆候として確認されたものはありません。あくまで「関係あるのではないか?」と考えられているというレベルにすぎません。

でも、そんな中でまた河口湖の水位が下がったことで、「いよいよか」とばかりに、ネット上やメディアが騒いだようです。でも、あまり盛り上がりませんでしたね。何故なら、皆が「期待」したような異常な水位低下は、実は起きていないのです。

この騒ぎの発端は、ウェブで公表されている河口湖の水位データに、基準水位からマイナス7mという異常値が出たことなのです。それまでも例年よりかなり水位は低下しており、湖の中の小島にあるお堂まで歩いていけるような「異常な」状態だったのは確かですが、地元の方の話によると、冬の渇水期には時々起こるレベルの水位低下だそうです。

そこへ、マイナス7mという異常水位のデータです。報道だけを見た人の多くが、「7m下がったからお堂まで歩いていけるようになった」と認識し、火山活動で河口湖の底が裂けて水が流出したとか、ほとんど思いつきレベルの風説が、まことしやかに語られたりしています。

でも、それは全くの間違い。まず、水位は7mも下がっていません。実は、そのデータは交換したばかりの計器の不調による異常値であることが確認されています。

実際の水位低下は基準値からマイナス3mで、例年よりも低いものの極端な異常ではなく、その状態でお堂まで歩いて行けたのです。そして、数日後に水位は平年並みに回復しています。例年より水位が下がった理由はっきりしていませんが、それが富士山噴火と関連するという根拠も全くありません。

ただ、富士山周辺で前記のような「異常」が起きている中でまた新たな「異常」が起きた。騒ぐにはそれだけで十分ということですね。騒ぎたい人と、それに乗って「数字」を取りたい側の思惑が一致した結果ということですね。

過去にはこんな例もあります。2012年1月28日に、富士五湖直下、深さ18kmを震源とするマグニチュード5.4の地震が発生し、最大震度5弱を記録しました。その地震の後、一部の火山学者は、「あの場所であのクラスの地震が起きて、富士山に何も起きないはずは無い」と断言していましたが、調べて見ればほとんど同じ震源で1931年にマグニチュード6.3、1983年にはマグニチュード6.0が発生していて、その後周辺の火山活動が活発化することはありませんでした。現に、昨年の地震の後にも何も変化はありませんし。

今回も同じとは言い切れないものの、明らかな調査不足や、メディアの煽りに乗ったような「専門家」の発言は、不快極まりないものです。でも、そういう「おいしい」事を言ってくれる専門家は、何かあったらきっとまたメディアに登場しますよ。煽りメディアが欲しいのは真実ではなく、専門家の「怖い」発言なのですから。


富士山噴火に関してやたらと取り沙汰される1707年の宝永噴火は、49日前に発生した駿河湾地震(想定される東海地震に相当)の後、連日の地鳴りと、余震とは異なる内陸の強い地震が繰り返された後に噴火したと、当時の文書に記録されています。しかし、そんなわかりやすい前兆は、ほとんど無かったことにされていますね。何の前兆もなく、いきなり大噴火するというイメージの方が「数字」になるからでしょうか(笑)

いずれにしろ、富士山が南海トラフ地震と連鎖して噴火する可能性があることは、そのことからもわかります。しかし、東日本大震災震源域を中心とする地殻変動の影響をどれだけ受けるのかは全くの未知数であり、その後も目立った動きはありません。ただ、震災直後に富士山直下で、強い「誘発地震」が発生したというだけです。とはいえ、この先に活動が活発化しないとも言い切れません。我々にできることは、正しいデータを正しく理解し、危険が存在するなら、速やかに避難などの対応する。それだけです。

それ以前に、東日本大震災震源域に近い火山の方が、より強い影響を受ける可能性があることは間違いありません。そして、世界のマグニチュード8.5~9クラスの地震の後には、少なくとも記録史上において例外なく近隣の火山が噴火しているのですが、まだそれがおきていないのも事実です。

では、現在日本列島の火山はどうなっているのでしょうか。最後に、全国の火山に関する防災科学技術研究所の、2012年12月時点での公式見解を転載させていただきます。これは、管理人も出席した、2月25日の「成果発表会」にて公表されたものです。

■震災後に、地震活動や火山活動がほとんど変化しなかった火山
三宅島、那須岳、有珠山

■震災後に地震活動は高まったが、正常レベルに回復した火山
【上記のうち、火山活動に変化が認められない火山】
岩手山、浅間山、伊豆大島、富士山(但し震災直後の誘発地震の余震は継続している)
【上記のうち、火山活動に変化があった火山】
阿蘇山(但し、東日本大震災に誘発された火山活動とは考え難い)

■地震活動が低下したが、一時的に火山活動が高まった火山
硫黄島(但し、地震活動等は2010年頃から顕著な変化があった)

■噴火活動を継続した火山
霧島山《管理人註:新燃岳のこと》(2011年12月頃からマグマの供給が停止)

このように、昨年末時点で危険と思われる火山は無く、それは現在も変わっていません。これは「専門家」の見解ではなく、観測を続けた結果の、ある意味で冷徹とも言えるデータの集積による結果なのです。


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2013年4月 9日 (火)

【鳥インフルよりも・・・】風疹アウトブレイク!

先の緊急特集で、鳥インフルエンザ対策についてまとめましたが、我が国では今のところ現実的な脅威にはなっていません。その一方で、すぐに生命に関わるものでは無いものの、現実的な脅威が拡散中です。これはもはや、焦眉の急と言っても良い事態です。

関東地方を中心に、風疹の感染が一気に拡大しています。4月9日現在、昨年同時期比の患者数が25倍という異常事態で、直近一週間の患者数は300人を超えてさらに増加中です。

通常、風疹の流行は6〜7月頃がピークになるそうですので、今後、関東地方以外にも感染が拡大する危険性が高いと指摘されています。

風疹にかかると、40℃を超える熱と共に、身体に発疹が出ます。管理人も昔かかりましたが、高熱でフラフラ、顔中が発疹でボコボコになり、一週間近く寝込みました。それはともかく、最も危惧されるのは、妊婦の感染です。妊娠中に感染すると、胎児に障害が出る可能性があるのです。

風疹の予防には予防接種が効果的ですが、既に妊娠している場合は接種できませんから、とにかく感染を防がなければなりません。最も可能性の高い感染経路は、飛沫感染です。感染者のくしゃみなどで飛散した唾液を吸い込む場合です。また、感染者の体液がついた場所を手で触って、それが食物に移って体内に入る経口感染もあります。どちらの場合も、人込みや交通機関が特に危険と言えます。

なお、風疹は風疹ウイルスが引き起こす病気ですから、その防護方法は同じくウイルス性であるインフルエンザと同じです。過去記事「鳥インフルエンザの恐怖【1】〜【3】」を参照してください。


これから妊娠を考えている方は、妊娠を希望する時期の4週間前までに、予防接種を済ませることが推奨されています。それ以下の期間だと、十分な抗体ができない可能性があります。これはもちろん女性だけではなく、パートナーの男性も、妊婦に接触する可能性のある家族など全員が接種すべきです。

このように感染が急拡大している理由のひとつに、風疹の予防接種率が年々低下しているということもあるそうです。比較的若い人にとっては、風疹がそれほど恐るべき対象にはなっていないという感じもしますが、とにかく妊婦の感染に関しては、非常にリスクが高いのです。妊娠を考えている方とその周りの方は、すぐに予防接種をお勧めします。

もちろん、小さなお子さんやお年寄りにとっては、生命に関わることもある危険な病気です。若い人でも、高熱と発疹、体力の消耗で、軽く一週間は寝込むことになります。管理人の経験からすると、風疹の症状は普通のインフルエンザよりもはるかに強烈でした。甘く見ないことです。

現在、関東地方南部を中心に加速度的に感染リスクが高まっていますし、今後、他地域へ飛び火するのは間違いないでしょう。人込みに出る時にはマスクをつけてウイルスを含んだ飛沫を吸い込まないこと、十分な手洗いをこまめに励行すること、体調を維持して免疫力を高めることが大切です。


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【一周年記念企画】小説・生き残れ【18】

倒壊したブロック塀に挟まれ、激しく出血している恵子の左足は、ほとんど体重をかけることができない。よたよたと、今にも倒れそうに、それでも歯を食いしばって足を前に踏み出す。“鬼神の形相”だと、息をのんで見つめている衛は思った。自分の身体など省みず、小さな命を救うために死力を振り絞る、正義の鬼神の姿だ。

崖下まであと50メートル。ついに玲奈が駆け出し、崖を滑り下りた。衛もつられて後に続く。津波がすぐ目前に迫っていることは、もう頭に無い。なんとしてもふたりを助ける、それしか考えていなかった。恵子まであと10mほどに駆け寄ったその時、恵子が進んできた路地の奥に、白い軽自動車が現れた。しかしそれは走って来たのではなく、津波の奔流に押し流されて来たのだという事に、衛はすぐに気付いた。

見る間に路地に瓦礫が押し寄せ、真っ黒な水が一気に水深を増しながら、近づいてくる。真っ黒な水はそれ自体にまるで意思があるかのように、獲物を前にして舌なめずりするかのように、近づいてくる。残された時間は、あと十数秒。

最後の力を振り絞って、恵子はほんの数歩だけ、よたよたと走った。そして駆け寄る玲奈と衛に向かって、手負いの獣が最後の咆哮を上げるように叫んだ。
「うけとれえぇぇっ!」
そして少年をふたりの方に投げ出しながら、そのままうつ伏せに倒れこんだ。

宙を舞った少年の身体を、衛が受け止めた。その場に尻餅をつきそうになったが、なんとか踏ん張った。
「衛、早く上へっ!」
玲奈に言われ、衛は片腕で少年を抱えて階段を、そして崩れた崖を這い登った。
「恵子っ!」
玲奈は倒れた恵子に駆け寄ると、恵子の腕を自分に肩に回して立たせようと
する。しかし力が抜け切った恵子の大きな身体を持ち上げる事ができない。視線の隅に、濁流が迫る。

玲奈は恵子の腕を肩にかけ、空いた右腕でショートパンツのウエストを掴むと、中腰のまま恵子の身体を引きずり始めた。そして石段にたどり着くと、恵子の身体を仰向けに石段にもたせかけ、自分は恵子の頭の上に腰を下すようにした。そして両脇の下に腕を差し込むと、石段に両足を踏ん張って、恵子の身体を一段ずつ引っ張り上げ始めた。

いくら今でも鍛えているとはいえ、体重差が30キロ近くある恵子の身体を引き上げながら、玲奈の身体は軋んだ。しかし、休んでいる時間は全く無い。2メートルほど引き上げた時、真っ黒な水が瓦礫と共に階段の下に押し寄せた。見る間に水かさが増し、恵子の下半身が飲み込まれる。水は山にぶつかって渦を巻き、恵子を押し流そうとする。玲奈がどんなに力を振り絞っても、それ以上引き上げられない。水かさはさらに増して行く。

その時、朦朧としていた意識が戻り、状況を認識した恵子が叫んだ。
「…班長っ、手を離してくださいっ!」
玲奈にもわかっていた。このままここにいたら、せりあがって来る水と瓦礫に飲み込まれる。そうなれば、ふたりとも助かる道は無い。そして自分が助かるためには、恵子を離すしかないと。それでも玲奈は叫んだ。
「バカっ!一緒に帰るんだよっ!」
水かさはさらに増し、玲奈の両腕の力も限界になろうとしていた。一瞬でも力を緩めれば、恵子は瓦礫に飲み込まれる。玲奈は歯を食いしばって、力を込め続けた。


『限界は、超えられる。それを可能にするのは、気持ちの力だ。』
玲奈がまだ陸自に入隊したての頃、教育隊の基礎訓練で音を上げた玲奈に対して、訓練教官の三曹が言った言葉が甦ってくる。

…私はそれを信じて、今までいろいろな苦しい時を乗り超えてきた。1年あとから後輩の恵子も陸自に入隊し、私と同じ隊に配属になってからは、今度は玲奈がその言葉を恵子にかけながら、一緒にがんばったんだ。だから、ここで負けるわけにはいかない…

しかしどんなに気力を振り絞っても、恵子の身体はそれ以上は上がらなかった。水かさはさらに上がり、石段を踏ん張る玲奈の足にまで届き始めた。このままなら、あと1分も持たない。それ以前にも、流されて来る大きな瓦礫に直撃されたら、終わりだ。仰向けになった恵子の胸の上にまで、水が上がってきた。もう、どうしようも無いのか。


その時、玲奈の視界の片隅で、何かが動いた。人影の様だった。それは何か叫びながら、高台の避難所に続く低い木が生い茂った足場の悪い斜面をトラバースしながら、信じられないスピードでこちらに向かってくる。

身長が190センチに迫ろうかという大男だった。身長だけでなく、広い肩幅に分厚い胸、丸太のような腕というプロレスラーのような身体を、黒いランニングシャツとグリーンのバミューダパンツからあふれ出させている。しかしその体躯に似合わず、急斜面の低い木を飛び越え、岩を左右にかわしながら、猿のような軽快さで駆け抜けて来る。玲奈はその男の発する叫び声をはっきり聞き取った時、すべてを理解した。その男は、
「ケイコ!負けるな!」
と叫んでいた。
玲奈は、葉を食いしばって恵子の身体を支えながら、心の中で叫んだ。
《須田一尉!》
恵子の夫で、ふたりの元訓練教官。その後富士教導団のレンジャー課程教官を経て退官した、『和製ランボー』こと須田元一等陸尉が映画のようなタイミングで、とにかく現れた。この場面で、これ以上頼れる人はいない。

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2013年4月 8日 (月)

【シミュレーション解説編】地震・一戸建て住宅【3】

【2】前回から続きます。

シミュレーション本文では、倒壊した家から出た火を近隣の住民が消そうと試みますが、ほとんど効果がありませんでした。実は、これも阪神・淡路大震災で多発した状況です。

家が倒壊していなくても、屋内から出た火を外から消すことはかなり困難です。それが倒壊した家からだったら、外から火点に近づくのがより困難になり、折り重なった瓦礫は通常よりはるかに燃えやすい状態になりますから、仮に断水していなくても、水道水の放水や消火器程度ではほとんど効果がないのです。そして、特に都市部では、大地震の後には消防がすぐに来てくれる可能性はほとんどありません。

阪神・淡路大震災における負の教訓として、こんなものがあります。地震後に電話や水道が使えた地域では、火災を見つけて119番通報した後、消防がいつも通りに来ると思いこんだために、自力で消せる小さな火災でも放置された例が少なくありませんでした。しかし、消防は同時多発的に発生した火災すべてに対応することは不可能で、さらに道路の渋滞や障害によって消防車が間に合うことはほとんどなく、結果的に多くの場所で大火災に発展してしまったのです。


ですから、まずできるだけ火を出さないこと。火が出たら、小さなうちに可能な限り自力で消火を試みること。そのために必要なことは、地震の第一撃から身を守る方法と密接に関わっています。まず、自分が無事でなければ消火はできませんし、消火のための機材も揃っていなければならないのです。

そのために管理人が備えておくことを強くお勧めするのは、これです。
Photo
エアゾール式の小型消火器です。これは消化液を20秒間程度噴射できるもので、一本でてんぷら油に火が入ったり、出火したての台所周りの火くらいなら、高い確率で消火できます。しかし、必ずしも一本で消せるとは言い切れないため、必ず複数用意しておくことをお勧めします。特に石油ストーブなどから出火した場合、一本では不安です。もちろん、大型の消火器を屋内に用意しておければ理想的ではあります。

消火器は、マンションの廊下や町内に共用のものが備えられていることも多いのですが、それを取りに行っている時間にも、火はどんどん燃え広がります。さらに、家具の倒壊などで取りに行けないことも、取りに行けても、他の人が既に持って行ってしまった後ということもあるかもしれません。火が出た場合は、何より最短時間で消火を始めなければなりません。エアゾール式である程度火を制圧してから、大型の消火器を取りに行くということも可能なのです。

なお、地震に限らず、火災が自力で消せるのは、消防の指導によると、「天井に火が回るまで」と言われます。天井が燃え始めたら、消火器ではまず消火は不可能で、消火栓からの放水でも簡単ではありません。そこで無理に屋内に留まって消火を続けた場合、煙や有毒ガスに巻かれて倒れる恐れも大きいので、天井まで火が回ったら、消火をあきらめて速やかに脱出しなければなりません。


大災害が起きても、何が何でも子供を守りたい。たとえ自分の命と引き替えであっても。それが親の気持ちでしょう。でも、気持ちだけではどうにもなりません。そこに正しい知識、正しい行動、正しい装備、そして絶対に生き残る、絶対に助けるという強靱な意志。それらが揃って、初めて地獄のような中にも一縷の望みを見いだし、それを掴むことができるのです。恐れているだけでは、何も変わりません。

まずは実際に起きた、自分たちの身に降りかかるかもしれない現実から目を逸らさず、まっすぐに見つめてください。そして「怖い」とか「かわいそう」で終わらず、そこから教訓を見いだし、同じことが起きないように、具体的な行動を、すぐに始めてください。

災害対策に絶対はありません。大災害は、あまりに理不尽です。でも、手の打ちようが全く無いモンスターでもありません。進めた対策の分だけ、命は守られるのです。あなたにも、まだできることはたくさんあるはずです。

最後に、敢えてはっきり書きましょう。あなたは、お子さんの墓標を前に、「あの時ああしていれば良かった」と後悔することがあっても良いのですか?

【シミュレーション解説編 おわり】


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2013年4月 6日 (土)

【緊急特集】鳥インフルエンザの恐怖【3・最終回】

【2】から続きます。

4月6日現在の報道によると、今回中国で流行している鳥インフルエンザウイルスに関しては、現時点での「ヒト-ヒト感染」の可能性は無いと、米国のCDC(疾病予防管理センター)が発表したとのことです。CDCの発表ならば信頼できますが、今後、突然変異する可能性も無いとは言えませんから、引き続き関連情報に注意しておきましょう。

それでは本文に入ります。今回は、緊急特集最終回として、インフルエンザウイルスを「消毒」する方法などです。

消毒というと、まずアルコールが思い浮かびますが、当ブログでも過去何度も触れた通り、ウイルスに対してはアルコール消毒の効果はほとんどありません。アルコールが効果的なのは、細菌に対してです。アルコールを使って手やモノなどをふき取れば、付着したウイルスを除去する効果はある程度見込めますが、それは水でふき取る効果とあまり変わりません。アルコールでウイルスを死滅させることはできないのです。

ウイルスを死滅させるのに効果的なのは、「次亜塩素酸ナトリウム」です。これは台所用漂白剤(商品名「キッチンハイター」や「ブリーチ」等)の主成分であり、そのような商品は、安いものなら600ccボトルが90円程度で入手できます。

これは本来の使い方である、まな板やふきんなど調理器具の消毒に絶大な効果を発揮するのはもちろんですが、管理人は別の使い方も提唱しています。ただし、これは商品本来の使い方ではなく、成分を利用した応用的な使い方ですし、若干の危険性も伴いますので、あくまで参考として紹介します。もし実施される場合には、自己責任にてお願いします。

その方法とは、「キッチンハイター」などの希釈液を、ウイルスが付着している可能性のある場所に噴霧したりして「消毒」する方法です。この方法は、下記の理由により基本的に自宅内に限定してください。

管理人の方法は、スプレーボトルの水1リットルにキャップ1杯の液を入れて希釈し、それを噴霧します。問題は、「次亜塩素酸ナトリウム」が気化すると、いわゆる「プールの臭い」がすることです。「次亜塩素酸ナトリウム」は、実はプールの消毒剤でもあります。この臭いは有毒な塩素ガスのものなので、長時間、大量に吸い込むと、頭痛や気分の悪化が起きることがありますので、使用の際には換気を十分にしてください。

また、「次亜塩素酸ナトリウム」は、鉄やステンレスを腐食させる効果があります。この程度の希釈液ではほとんど影響は無いでしょうが、場合によっては鉄部分の変色などが起きることも無いとは言えませんので、心配な場合は噴霧した後に、きれいな布や紙でふき取っておくと良いでしょう。それでも心配な部分には、使用しないことです。

皮膚についた場合は、希釈液でも放置すると炎症や皮膚荒れが起こる可能性がありますので、すぐに流水で洗い流してください。調理器具を消毒した場合は、使用前に流水で良く洗い流しますが、これは本来の使い方です。

上記の方法は、以前のノロウイルスの感染者が続出した時に、当ブログにアップしたものです。
■その記事はこちらから
インフルエンザウイルスは、ノロウイルスに比べてはるかに感染力が弱い、つまりかなりの量が体内に入らないと、普通は感染まで至りませんので(ノロウイルスは数十個で感染すると言われます)、ここまで気にするまでも無いとは思いますが、もし「ヒト-ヒト感染」するような、危険な新型ウイルスが国内で流行するような事態になった場合には、非常に心強い防護手段となるでしょう。


もっとも、インフルエンザ対策で一番大切なことは、健康を保つということです。体調が良ければ、人体の免疫システムも活発に働きます。現実世界での「水際阻止」は不可能でも、体内では可能なのです。同じ場所や条件で感染しても発病する人としない人がいるのは、まさに免疫システムの働きが違うことによるものなのです。

そして、少しでも「かかったかな?」と思ったら、すぐに病院で診断を受けてください。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、発熱などの症状を自覚した場合は、【1】の記事で述べた通り、侵入したウイルスに対して、免疫システムが「主戦力」である白血球を投入し、それ以上の侵攻を阻止するための最終決戦を挑み始めたということなのです。人体がこの戦いに敗れると、ウイルスは体内で爆発的に増殖を始め、全身に広がって重症化するだけでなく、体外への排出も始まって、感染を広げるのです。

ですから「最終決戦」が始まった早い段階で、タミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬を「援軍」として投入すれば、重症化する前にウイルスを殲滅して回復できる可能性が高まりますし、他の人に感染を広げることも減るわけです。言うまでも無く、自分の感染が疑われる場合には、まずマスクをして自分唾液の飛散を防ぎ、体液のついた手であちこちを触ることはなるべく控えてください。そんな場合にも、前記のような消毒方法を知っていれば、罹患者本人もかなり安心できるというわけです。

とりあえず、今回の鳥インフルエンザ流行は、過去のSARSや豚由来の「新型」ほどの規模や危険度にはならないような流れにも見えますが、今後どう変化するかは全く未知数です。しばらくの間は関連情報に注意し、もし危険が出てきたら、早い段階で対策することをお勧めします。


【緊急特集】鳥インフルエンザの恐怖【おわり】


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【緊急特集】鳥インフルエンザの恐怖【2】

今回は、インフルエンザウイルス感染を防ぐ、具体的な対策です。

最大の予防法は、体内にウイルスをできるだけ入れないことです。インフルエンザウイルスの主な感染経路は、感染者の体液の飛沫を吸入した場合(飛沫感染)と、手などに付着したウイルスが食品に移ったり、食品自体がウイルスに汚染されていた場合(経口感染)です。

まず、感染者が近くにいた場合、咳やくしゃみなどで飛散した唾液を吸い込む危険があります。それを防ぐためにはマスクが効果的ではありますが、それだけの効果しかないとも言えます。つまり、ウイルスを含んだ唾液の飛沫をブロックすることはできますが、浮遊するウイルス自体をブロックすることはできないのです。ウイルスは非常に小さいため、一般的なマスクは通過してしまいます。

ただ、浮遊するウイルス単体を吸い込むことによる感染(空気感染)を起こすような強力なウイルスはごく一部であり、インフルエンザウイルスの場合は、一般にそこまで感染力が強くありません。ですから、普段から「N95規格」のような、高性能の抗ウイルスマスクをする必要はありません。これは濃厚なウイルス環境におかれやすい、医療従事者などに必要なものです。

なお、一般的な形状の不織布マスクでも、抗ウイルス成分を浸透させてあるマスクなら、より高いブロック効果が期待できます。下画像は、管理人が備蓄している抗ウイルスマスクの一例です。
Survive_008
価格はかなり高くなりますが、気になる方は用意しておくのも良いでしょう。ネットで「抗ウイルスマスク」で検索すれば、販売サイトがヒットします。今後、もし日本国内で感染者が見つかったりしたら、確実に品薄になるでしょう。


ところで、イメージ的には飛沫感染の可能性が高いように思われますが、実は、飛沫感染よりも「経口感染」する可能性の方が大きいのです。ウイルスが付着した場所を触り、手についたウイルスが口から体内に入る場合です。特に電車のつり革、ドアノブ、共用パソコンのキーボードなど不特定多数が触る場所には、どこにウイルスが付着しているかわかりません。付着したウイルスは、条件にもよりますが、数時間以上も生き続けることもあります。しかし、それらを触るのをためらうのは過敏に過ぎるというものです。要は、ウイルスが体内に入らなければ良いのです。

そのための対策は、こまめな手洗い、これに尽きます。特に何かを食べる前や料理をする前には流水で良く手を洗い、食物にウイルスが付着しないようにします。石鹸があればなお良いのですが、薬用石鹸である必要はありません。薬用石鹸が効果を発揮するのは、細菌に対してです。手を洗う際には、爪の間や指の又など、洗いにくい場所を特に意識してください。また、家族などに感染の疑いがある場合には、手拭きタオルは必ず別にしなければなりません。

一方、ウイルスに汚染された食品を食べた場合の経口感染についてですが、インフルエンザウイルスに関しては、過度に恐れることはありません。インフルエンザウイルスは、十分に加熱すれば死滅します。今回の鳥インフルエンザ流行においては、ウイルスに汚染された食品が我が国に入ってくる可能性はまずありませんが、それでも心配ならば、特に肉類は生食を避けて十分に加熱調理してください。過剰な心配をするべきではありませんが、一般的で簡単な方法で安心できるならば、それに越したことはありません。

ネット上などの一部で、鳥インフルエンザ対策として、鶏肉を始めとする肉類を食べるなと騒がれているそうですが、インフルエンザウイルスに関しては、十分に加熱すれば大丈夫なのです。過度に恐れる必要は無いのです。

それよりも、料理をする人が、外から持ち込んだウイルスを食材に付着させてしまう事の方が余程危惧されます。それを防ぐためには、前記の通りこまめな手洗いが最も効果的です。

次回に続きます。


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2013年4月 5日 (金)

【緊急特集】鳥インフルエンザの恐怖【1】

中国・上海周辺の長江下流域で、鳥インフルエンザによる死者が相次いでいます。罹患者の死亡率は現時点で35%と、非常に危険なウイルスのようです。

報道によれば、このウイルスは3種類の鳥インフルエンザウイルスの遺伝子が混じってできた新種とのことで、従来のワクチンや抗ウイルス薬が効かない可能性がああるものの、実験室レベルでは、タミフルやリレンザに効果が認められているとのことです。

問題は、今回の流行が都市部を中心としていることと、現時点では「ヒト-ヒト感染」の可能性を排除できないことです。罹患者が野生の鳥に濃厚に接触したり、ニワトリなどの飼育をしている人ではないことから、食用の鳥肉からの感染や、最悪の場合ヒト同士間の感染も、現段階では疑うべきです。

そして、新型ウイルスは今後我が国にも流入するという前提で考えなければなりません。かつてのSARSや豚由来の「新型インフルエンザ」流行の騒動からもわかるように、これだけの人的交流がある現代では、「水際阻止」など事実上不可能なのです。いつ、どこで感染の危険があるかわかりません。決して「対岸の火事」では無いのです。

では、どのように対策したら良いのでしょうか。そこに行く前に、ウイルス感染のメカニズムについて、簡単にまとめておきます。


人間は、ウイルスに感染してもすぐに発病するわけではありません。発病に至るには、ウイルスが体内で増殖し、大量に複製されなければならないのです。

何らかの経路で体内に入り、最初の免疫システムをかいくぐった一部のウイルスは、細胞に取り付きます。そして特殊なタンパク質で細胞に有用な物質であると誤認させて、細胞内に自らのDNAを送り込みます。そして、細胞核を「ウイルス生産工場」としてしまい、細胞内で自らのコピーを大量に複製するのです。

しかし生物の免疫システムは何重にもなっており、この段階で免疫システムがウイルスを圧倒すれば、増殖を阻止できます。このような戦いが行われている間が「潜伏期間」であり、自覚症状はありません。まさに「人知れず」、体内で壮絶な戦いが繰り広げられているのです。

その後ウイルス側が優勢になり、「ウイルス生産工場」化した細胞が増えて来ると、細胞からの警報を受けた人体は、免疫システムの主力を「戦場」に送り込みます。白血球です。

白血球が集まり、「ウイルス生産工場」化した細胞や放出されたウイルスを破壊、補食しはじめると、粘膜の充血や腫れ、つまり炎症が起こります。それが初期症状であるくしゃみ、鼻水、鼻づまり、発熱などを発症させ、我々はその段階で初めて感染を自覚するのです。

でも、まだ戦いは終わりません。この段階で、白血球を主力とする免疫システムが「ウイルス生産工場」を一掃できれば、自然治癒します。ウイルスは細菌と異なり、「宿主」に感染して、その細胞を利用して増殖しなければ、単独では長期間生存できないのです。

しかしこの段階で免疫システムが敗北すると、「ウイルス生産工場」が爆発的に増え、複製、放出されたウイルスが血流に乗って全身に拡がり、より重篤な症状に発展して行きます。

一般に「免疫がない」と言われる状態は、体内に入った「知らない」ウイルスを免疫システムが異物と認識しなかったり、ウイルスが未知の方法によって感染細胞から発せられる警報を攪乱して、免疫システムの発動を妨害する場合です。その場合は、まさにウイルスの「やりたい放題」になりやすいわけで、それが「新型」の恐怖なのです。

ここまでわかれば、対策も見えてきます。まず、できるだけウイルスを体内に入れないこと。そして入ってしまったら、早い段階で攻撃、排除しなければなりません。

具体的な対策は、次回へ続きます。


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2013年4月 4日 (木)

【一周年記念企画】小説・生き残れ。【17】

「自分が行きます!」
叫んだのは恵子だった。皆が恵子を見たとき、すでに恵子は崖に向かって駆け出していた。そして濛々を土煙を上げて崖を滑り下り、細い路地を子供に向かって駆けて行く。速い。

高台から皆が、声の限りに叫び出す。
「急げ!」
「がんばれ!」
「早く!」
しかし玲奈は、衛の隣で落ち着いた表情のまま黙っている。
「…間に合うのか?」
衛が言うと、玲奈はちらっと衛を見ただけで、言った。
「彼女なら大丈夫。津波は、あの辺なら時速100キロ、速くても150キロで、これからだんだん遅くなる。海岸に着くまでにあと2分はあるわ。恵子なら、大丈夫」
「ならいいんだけど…なんでそんな事知ってるんだ?」
「自衛隊は災害派遣も仕事です。ちゃんと勉強するのよ」
少しだけ得意気に言った玲奈は、視線は駆けていく恵子に向けたまま、何故か少しおかしそうに微笑みながら続けた。
「彼女、昔なんて呼ばれてたと思う?」
「なんて?」
「女レンジャー」

陸上自衛隊の”レンジャー”とは、能力の高い隊員の中から選抜され、サバイバル技術などの厳しい訓練課程を修了した者だけに与えられるエリートの称号だが、女性隊員にはその門戸は開かれていないという。しかし恵子は隊内でレンジャー並みと評される高い能力を示したというのだ。だから敬意を込めて、“女レンジャー”。
衛は玲奈の表情につられて、つい軽口が出た。
「女ランボーじゃないのか」
「そう呼ぶ人もいたのは確かね」
大当たりだ。

見る間に恵子は少年にたどり着き、その脇にしゃがんで一声かけると、一動作で肩に担ぎ上げた。そしてすぐに今来た路地を駆け戻り始める。少年を担いでも、そのスピードは全く落ちない。高台の上から見下ろすだれもが、これなら十分に間に合いそうだと息を抜いた時、山全体がズシンと震え、背後の崖から小石がぱらぱらと落ちてきた。玲奈はすぐに反応して皆の方を振り返ると、
「余震です!崖から離れて!」
と、叫びながら駆け出した。

玲奈は背後の斜面を少し登った所で恐怖で固まっているカップルに駆け寄ると、ふたりの手を取って広場に下ろした。そしてすぐに老夫婦に駆け寄り、いたわるように背中を押しながら、広場の真ん中へ促した。そうするうちにも揺れはどんどん大きくなり、山がゴーっとうなりを上げた。皆は広場の真ん中に集まってしゃがみ込み、女が悲鳴を上げる。今までで最大の余震だ…周囲をすばやく警戒しながら、玲奈は思った。山が崩れなければいいが…しばらくして、揺れが収まり始めた。もう大丈夫だ…

…恵子!
玲奈は崖に駆け寄って下を見下ろし、息を呑んだ。恵子は路地を塞ぐように倒壊したブロック塀に、下半身を挟まれて倒れていた。子供を守るために、判断がわずかに遅れたのか。横に座り込んだ少年の泣き声が、海からの弱い風に乗ってかすかに聞こえて来る。津波避難所の崖下までの距離は、約150メートル。玲奈はすばやくそう判断した。

その瞬間、海岸に到達した津波の第一波が消波ブロックにぶつかり、高さ10メートルにも達しようかという巨大な飛沫を空中に吹き上げた。数秒遅れて、ドーンという腹に響く大音響が空気を震わせる。今から崖を下りて行っても、津波がここまで押し寄せるまでの間に重傷の恵子と少年をかついで戻る時間はおそらく、無い。

「けいこおぉぉぉーっ! 立てぇぇーっ!」
玲奈は声の限りに叫んだ。怪我を気遣ったり、状況を確認している暇は無い。そう、わたしたちはいつもこうやって、苦しい訓練を一緒に乗り越えて来た。訓練ではどんなに苦しくても、多少ケガをしていても、恵子はいつも大声で『平気っす!』と言い放って立ち上がった…お願い、立って…。

海からの逆風を突いて、玲奈の声が恵子に届いたのかどうかはわからない。しかし恵子は、動き始めた。頭を上げると、こちらに顔を向けて、何か言うように口が動いた。声は聞こえなかったが、玲奈にはわかった。“平気っす”恵子は、いつもの大声では無いが、確かにそう言った。

恵子は両腕で匍匐するようにして、崩れたブロックの下から這い出し始める。歯を食いしばり、表情が歪んでいるのがここからでもわかる。そのままなんとか身体を引っ張り出す事に成功したものの、すぐには立ち上がれない。ごろんと仰向けに転がると、ゆっくりと上体を起こした。
玲奈が叫ぶ。
「津波が到達ーっ!時間が無いっ!」
すると恵子はこちらに背を向けたまま右腕を真上に上げると、空に向かって親指を突きたてた。玲奈の声は届いていた。そして恵子は“大丈夫”とサインを送ってきた。

その時、砂浜を駆け上がった津波が、海岸の家並みを呑み込み始めた。土台から引きちぎられた家が波に押し上げられ、こちらに向かって押し寄せて来る。津波が家並みを引き裂く大音響が聞こえたのか、恵子の動きが少し早くなった。それでも、少しだ。かなりダメージを受けている。玲奈が叫ぶ。
「けぇいこぉぉー、がんばれぇっ!」
それには答えず、恵子は両手を地面につきながら、よろよろと立ち上がった。左足の太ももから、激しく出血している。

津波は陸に到達してその速度を落としたものの、時速数十キロで家を押し流しながら、近づいてくる。恵子は座り込んで泣いている少年によろよろと近づくと、腕を引っ張って立ち上がらせた。そして自分の胸に抱え上げると、こちらへ向かって歩き始めた。


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【シミュレーション解説編】地震・一戸建て住宅【2】

前回から続きます。

ここまで述べたように、大地震における家の中の大きな危険要素は三種類です。家具類の転倒、家の倒壊、そして火災です。物の落下やガラスの飛散などは、家具類の転倒と同列に考えます。

そこで、自分の判断で動けない小さなお子さんと一緒にいる場合、家自体と家の中の耐震性を高めることが、すなわちお子さんの命を守る最良の方法となるわけで、それは家族全員の命を守る方法そのものでもあります。まず、大地震の際に家の中にどのような危険が発生するかを見極め、ひとつひとつ細かく対策を進めていかなければなりません。

具体的な方法は、当ブログのカテゴリ【地震・津波対策】中の過去記事「家の中の地震対策」シリーズをご覧ください。


家自体の耐震性を高める補強工事がすぐにできない場合でも、家が倒壊した時に、どこに「生存空間」が残りやすいかを知っていれば、普段いる場所やとっさの避難時に迷わずに済みます。例えば、本文のような二階建て家屋が倒壊する場合、一階部分が押しつぶされるように倒れることが多く、二階部分の構造が大きく損傷することは少ないのです。ならば、お子さんは二階にいた方が安全性が高まります。赤ちゃんの場合でも、赤ちゃんモニターなどを活用することで、目を届かせておくこともできます。

一階部分でも、一般に比較的狭い範囲に柱と壁が集まっている玄関付近は、倒壊しても完全にぺしゃんこになる可能性が比較的低い、つまり「生存空間」が残りやすいので、家からすぐに脱出できない場合に、まず移動すべき場所と言えます。

トイレや風呂場も同様の理由で比較的強度が高い場所ですが、倒壊後の脱出経路を考えれば、やはり出口に近い玄関部分がより良いと考えられます。そして、玄関に「非常持ち出し」のリュックなどが置いてあれば、仮に脱出できなくなっても、水や食料、照明などが手近にあるわけです。


ところで、小さなお子さんと一緒の時に大地震が来たら、イメージ的にはすぐにお子さんのもとに駆けつけて一緒に家を脱出するか、それができなくても、自分の身体でお子さんをかばったりしたいものですね。しかし、特に本文のような直下型地震の場合、その時間的余裕はまず無いのです。ですから、家の中の耐震性を高めることはもとより、自分の判断で行動できるお子さんには、その時どのように身を守るか、例えばすぐに頑丈なテーブルの下に入るなどを教えて実際に訓練しておき、もっと小さなお子さんは、普段から家の中のなるべく安全な居場所においておくことが、現実的に最も安全性が高まる方法と言えるでしょう。

シミュレーション本文の例でも、居間の家具が転倒しなければ、家が倒壊した段階でも、弟は致命傷を負っていない可能性が高かったはずです。小さな子供が必要とする生存空間は、とても小さくて済むのです。


次に、火の問題。地震の際の出火原因には、コンロや暖房器具から、電気製品の破壊、屋内電気配線の損傷などが考えられますが、やはり台所と火を使う暖房器具から出火する可能性が一番高くなります。それらをIHヒーターやエアコンにするだけでも、出火の可能性は格段に下がります。火を使う暖房器具でも、ファンヒーターのようなものならば、自動消火装置がかなり頼りになるでしょう。

そうでない場合には、とにかくできるだけ火種を無くさなければなりません。本文の母親にもコンロの火を消すチャンスが無かった訳ではないのです。それは、揺れが始まる直前に地鳴りを聞き、テレビから緊急地震速報のチャイムが聞こえて来た瞬間です。(地鳴りは必ず起きるものではありませんが、本文では感知できたと想定しています)。さらには、最初に「ズシン」と突き上げを感じた段階でも、まだ不可能ではありませんでした。

それら瞬間に行動できれば、ほんの三歩の距離を移動して、火を消す時間的余裕はありました。大地震でも、最初の突き上げるようなたて揺れ(初期微動)の破壊力はそれほど大きく無く、その段階で家が倒壊したり、家具が転倒するようなことはまずありません。それが起こるのは、その後に来る横揺れ(主要動)が始まってからです。

ですから、それまでの間に手近な火を消してコンロから離れ、近くの比較的安全な場所、例えばテーブルの下やキッチンカウンターに身を寄せて姿勢を低くするなどの行動をすることは可能です。しかし震度6級以上の横揺れ(主要動)が始まると、立っていることはおろか、四つん這いでいることも困難になる可能性が高いのです。

しかし直下型地震の場合、その時間的余裕は数秒以下でしかありません。震源直上付近では、1~2秒後に激しい揺れが始まります。その、ごく短い時間内に行動するために必要なことはただ一つ、普段からの意識と訓練です。普段から、緊急地震速報が出たり、少しでも揺れや地鳴りを感じたら間髪入れずに火を消し、避難行動準備態勢を取るなどの繰り返しが、「本番」ですぐに動けるようになるための必須条件です。

ちなみに、管理人もかなり料理をやるのですが、コンロの火をつけている場合は、絶対にコンロから二歩以内の場所から離れません。揺れを感じたり、緊急地震速報からから2秒以内に火を消せる態勢です。電話や来客があった場合は、必ず火を消してから離れます。さらに、ごく小さな揺れを感じたり、緊急地震速報が出た場合(管理人宅のケーブルテレビ回線による緊急地震速報システムは、予想震度3以上で発報します)も、必ず一旦火を消します。これは安全のためはもちろんですが、巨大地震に備えた「抜き打ち訓練」でもあります。

火を消す以外にも、大きな地震が来たら何をするかを決めておき、実際にやってみてください。前記のように、比較的頑丈な玄関へ行き、靴を履いて脱出に備える、頑丈なテーブルの下に入る、作り付けの倒れない家具やキッチンカウンターなどに身を寄せるなどの行動を、それぞれのお宅の条件の中で考えてみてください。これも、もちろんお子さんと一緒にです。

普段からこのようなシミュレーションをしていなかったら、地震が起きてからその場で考えることなどほとんど不可能です。本文の母親は、緊急地震速報を良く理解しておらず、さらに地鳴りを聞いて戸惑ってしまい、行動のタイミングを逸しました。それでも、あくまで火を消すことにこだわってしまったために熱湯を浴び、動けないままに落ちた梁の直撃を受けてしまったのです。

大地震の際には何が起きて、何が危険なのか。まずそれを知ることが大切です。地震のメカニズムや発生の確率などを知っていても、その瞬間に「生き残る力」をつけることはできません。

まずは自分の居場所で「いつ起きてもおかしくない」という前提で、その時何が起きるかを知り、その中どうしたら良いかを考え、行動を実際に訓練しておく。それが、最も効果的に「生き残る力」をつける方法なのです。


ここで、当ブログのテーマのひとつとも言える考え方を記します。
【あなたが生き残らなかったら、大切な人を救うことはできない】
もし母親が無事だったら、また別の結果になっていた可能性も出てきていたでしょう。

次回へ続きます。

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【三陸沖アウターライズ地震多発】地震関連情報【4/4】

書こうかどうか迷っていた記事ですが、やはり書いておくことにします。

三陸沖を震源とするアウターライズ地震と思われる地震が、4月2日中だけで6回連続して発生しました。地上の揺れは最大でも震度3でしたが、最大マグニチュードは5.6と、決して小さな地震ではありません。4月2日の午後12時21分の震度1を最後にその後は発生していませんが、しばらくの間は注意深く推移を見守る必要もあるかと思います。

震災後、三陸沖では震災震源域の沖側、深さ10km程度を震源とするアウターライズ地震が発生し続けていますが、12時間以内という非常に短い間に6回も連続して発生したのは、管理人の記憶では震災後初めてです。集中発生した回数が多いから、即ち大規模地震に繋がる可能性が高いということはできませんが、少なくともこの震源域で活発な地震活動が続いているということだけは確かだと言えます。

ここで、改めてアウターライズ地震についてまとめておきましょう。

アウターライズ地震とは、プレート境界の「沈み込み帯」にできる海溝状の窪みの外側(=アウター)に当たる、盛り上がり(=ライズ)部分で発生する地震です。下図の1の部分です。
Photo

発震機構は、引っ張り力による正断層型地震が多く、その場合は海洋プレートが大陸プレートの下に向かって潜り込む際の引っ張り力によって発生します。東日本大震災後は、地殻変動によって太平洋プレートが移動する速度が速まっているために、三陸沖のアウターライズにかかる引っ張り力が大きくなっており、小規模ながらアウターライズ地震が繰り返し発生しています。

なお、最大のアウターライズ地震は震災本震15分後に発生したマグニチュード7.5で、大きな津波の発生を伴いました。その後は50cm以下のごく小さな津波を伴うクラスが一回発生しただけで、危険な津波を伴うクラスは発生していません。

しかし、アウターライズ地震には特別な危険があります。それは「津波地震」になりやすいことです。震源が陸地から遠いために、地震規模の割には地上の揺れは大きくなりません。でも発生する深さが10km以下と浅いために、断層の動きによって海底の変形を伴いやすく、こちらも規模の割には大きな津波を発生させる可能性が大きいのです。可能性としては、マグニチュード6台後半から津波が発生する可能性が出てきて、7クラス以上になると。高さ3m以上の大津波となることを警戒しなければなりません。つまり、陸地の揺れがあまり大きくないのに、思ったより大きな津波が来るということが起こりやすいのです。

場合によっては、地上の揺れが震度4以下、つまりほとんど誰も慌てない程度の地震の後に、数メートル以上の津波が押し寄せることもあるのです。1896年(明治29年)に発生した「明治三陸地震」では、発生メカニズムはいわゆるアウターライズ地震とは異なるものの(圧縮力による逆断層型と推定)、今回の多発震源域とほぼ同じ場所で発生した推定マグニチュード8.2~8.5の地震により、陸地の震度は現在の基準で2~3程度だったにも関わらず、最大遡上高さ38.2mを記録する大津波が三陸海岸を襲いました。

このような被害をもたらす可能性があるのが、アウターライズ部分で発生する地震なのです。震災後、アウターライズ地震による大津波の再発が強く警戒されましたが、幸いにして現在までに大規模なものは発生していません。しかし、1933年(昭和8年)に発生した「昭和三陸地震」と津波は、上記の「明治三陸津波」の影響によって、37年の時を経て発生したアウターライズ地震と考えられていることからも、今後非常に長い期間に渡って、東日本大震災震源域の沖側で発生するアウターライズ地震を警戒し続けなければならないのです。

ですから、特に震災被災地域では、小さな地震だからと言って軽く考えず、必ず津波警報の有無を確認してください。

過去何度も書いた内容の繰り返しになりますが、アウターライズ地震が多発したこの機会に改めて思い起こしていただきたく、この記事を記しました。


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2013年4月 3日 (水)

『春の嵐』襲来

「春の嵐」という言葉には、どこか雅やかなニュアンスを感じられたりもします。咲いたばかりの桜を散らす、意地の悪い風雨。「なんでここで来るかなぁ」という間の悪さや不運、ひいては人生の理不尽さをも感じさせる・・・というのは大げさかもしれませんが、なんとなく傍観者の立場でいられるような、長閑な雰囲気がありますね。

でも、今日の関東地方南部はそれどころではありません。完全に小型台風の襲来というレベルです。でも、接近しているのは「低気圧」であり、普段は「高気圧」と対をなして天気を悪くするだけの、おだやかなイメージの存在です。これがもし「熱帯低気圧」だったら、これほど風雨が強くなくても、もっと緊張感があったでしょう。なんたって台風の仲間ですから。

その違いは何かというと、発生した場所だけの話。フィリピン近海の熱帯域で発生した低気圧だから「熱帯低気圧」と呼ばれ、その中心付近での平均風速が毎秒15mを超えたら、台風と呼ばれるわけです。でも、低気圧はどれだけ風が強くても、名前は変わりません。

近年では、そんな「台風くずれ」の熱帯低気圧ではない、ごく普通の低気圧でも、日本列島の太平洋沿岸を北上しながら、台風並みの勢力にまで発達する低気圧が目立つようになりました。その原因は、海水温度の上昇、ジェット気流の流れの変化などいろいろ考えられますが、とにかく全地球的規模の大きな気候の変動が起きつつあるということだけは確かなようです。そしてこの先、この傾向はさらに極端になって行くのは間違い無いでしょう。

ですから、天気予報で言う「台風並みに発達した低気圧」は、すなわち「台風」であると認識して対策しなければなりません。でも、強い台風が接近している時は会社や学校が休みになったり早退できたりしますが、低気圧だとなかなかそういう対応はありませんね。普段通り外出しなければならないことが多い。

でもそのリスク自体は、台風とあまり変わらないのです。とにかくこのレベルになると、傘はほとんど役に立ちません。ビル街で傘をおちょこにしたり、強風でよろめいたり、ずぶ濡れになって歩く姿は、テレビニュースの格好の「餌食」です(笑)しかし笑い事ではなく、ずぶ濡れの服や靴が痛んだり、荷物が水でやられるのはもちろん、飛来物や竜巻など局地的な突風のリスクもはるかに増大しているのです。その中で最大のリスクは、風による飛来物や転倒物の直撃です。さらに豪雨による小河川の氾濫、低地や地下街の浸水も、確実に増えて行くでしょう。

とにかく「低気圧」だからと甘く見ると、生命に関わる事態に直面することも確実に増えます。ならば、セルフディフェンスしなければなりません。強力な低気圧だけでなく、ゲリラ豪雨、竜巻、落雷などのリスクも増大していますから、「自分の判断」で行動を考えるのです。

まず、傘を使わないで済む、ビニールカッパやレインコートなどの備えは必須。なんとか傘が使える状況ならば、一緒に使うことで効果は倍増です。仮に服を濡らしても、電子機器も多い荷物を水から守らないと大損害になります。さらに、勤務先などに防水性の高い靴を用意しておくのも良いでしょう。地震の際の帰宅困難に対応した、歩きやすい靴を用意しておけというのは定番ですが、防水性はあまり言われません。まあ、濡れても乾かせば済むからですが、どうせなら両方の機能を備えていたいもの。大地震と違い、豪雨や暴風雨には、必ず何度も遭遇するのです。しかも、暴風雨の中で大地震が起きないとは誰にも言い切れませんし。

昔から、台風・熱帯低気圧=警戒という意識は一般化していますが、これからは、強力な低気圧=台風と考えて、十分な警戒と対策をしておかなければ、思わぬ被害を受けることも増えるでしょう。天気予報での用語で先入観を持たずに、常に台風並み状況を想定するという意識改革を、管理人は強くお勧めしたいと思っています。

それにしても、今日の「春の嵐」は、本当に台風並みですね・・・。


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2013年4月 1日 (月)

【エイプリルフール版ウソニュース】陸自に新型救難機材配備

■■■エイプリルフールが終わりましたので、タイトルを一部変更しました(4/2追記)


期待度大のニュースが飛び込んできました。P-CASTニュースを引用させていただきます。

(以下引用)---------------------
【陸自に新世代救難機材】

防衛省広報局は1日、陸上自衛隊に新型救難機材を配備することを発表した。この機材は、13式自走救難機一型と呼ばれ、三菱重工と本田技研の共同開発によるもの。特徴は、ロボットの腕状のマニュピュレータ二基の先端に、人間の五本指とほぼ同じ形状と機能を持つグリスパー(把握装置)を持つことで、災害現場における救助活動や瓦礫の撤去などに、「従来の機材より柔軟かつ効率的に対応できる」(防衛省広報局)としている。

もうひとつの大きな特徴は、水陸両用であること。水深30メートルまでの潜水作業が可能で、フロートを装着すれば、ウォータージェット推進によって、最高速度8ノットでの水上浮航も可能だという。陸上や水中での作業及び移動時には、二足歩行形態となる。

機体の全長は18メートル、重量は45トンとかなり大型で、機体の頭部に当たる操縦席上部には、災害現場での作業時に障害となる電線類を切断するための大型ワイヤーカッターが装備されていることから、その姿はあたかも一本の大きな角が生えている様にも見える。また、救難専用機ということで機体全体が白色に塗られているため、防衛省内で愛称を募集したところ、「圧倒的多数で『ユニコーン』に決まった」(同)とのこと。

初号機が配備されるのは、駒門駐屯地(静岡県)の第一師団で、想定される東海地震が発生した際の救難活動に期待が寄せられている。

また、この機体に増加装甲を施し、ランドセル式パックに自動装填式120ミリ滑腔砲と35ミリ機関砲を各一門装備した、13式自走警戒機一型改も同時に配備されるとのこと。こちらの愛称は『ガンキャノン』で、配備先は現時点では公開されていないが、その水陸両用性能を生かして、島嶼警備などの任務に投入されるものと思われる。

なお、両機の試作零号機は、埼玉県朝霞市の陸上自衛隊広報センター(りっくんランド)に展示されるとのことで、「新世代の救難力と戦力を広く国民にアピールしたい」(同)としている。
(引用終了)-----------------------


…という夢を見ました…途中でもうおわかりですよね。全部ウソですよ!エイプリルフールに免じてご勘弁ください(笑)


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【ニュース解説】催眠術にかかってしまった…

笑いたいけど、笑い事ではないニュースです。東京大学地震研究所の教授が、活断層だと指摘されている立川断層帯の調査において、人工物の痕跡を断層のずれと誤認して発表してしまいました。J-CASTニュースから一部を引用させていただきます。

(以下引用)-------------------------
【東大地震研『催眠術にかかった』】
東大地震研究所が「新たな活断層を確認した」と発表していた根拠だったはずの石が、じつはコンクリートの塊だということが分かり、発表内容の一部撤回に追い込まれた。調査対象の立川断層帯は地震が起きた際は大きな被害が予測されているだけに、地域住民からは困惑の声も上がっている。

東大地震研の佐藤比呂志教授は、「完全に催眠術にかかっていた」と予断を持った判断が誤りにつながったことを悔いており、結果の公表を急いだことが影響したことも明かした。科学の世界でも、実はヒューマンエラーで大きな影響が出ることが改めて浮き彫りになった。
(引用終了)-------------------------

しかし、当ブログでは誤認が起きたこと自体を取り沙汰するものではありません。問題は、「なぜ誤認したか」ということなのです。考えられる大きな理由は下記のふたつです。
■教授に土木関係の知識・経験が不足していた。
■立川断層は活断層である可能性が高く、実地調査でずれが見つかるはずという先入観があった。

地震学の専門家が土木に詳しくなくてもおかしくはないですが、人工的に手を入れた場所ならば(調査地は日産自動車村山工場の跡地)、その痕跡が残っている可能性を考慮すべきではありました。

そして、こちらの方が問題なのですが、きっと活断層の痕跡が見つかるはずという先入観というより、それを超えた「見つかって欲しい、見つかるに違いない」くらいの期待があったのではないかということです。その期待感こそが「催眠術」であり、実際には「自己暗示」となって、誤った判断に結びついたことは疑いないでしょう。

世間では、どうしても「東大教授なのに」という論調が多くなっているようですが、この騒動は、トップレベルの学究の徒でも人間心理の落とし穴に捕らわれることもある、ということを物語っています。責任問題は逃れられませんが、ある意味でとても人間らしいミスだったのです。

では、その落とし穴とは。

当ブログでは、今までに「楽観バイアス」や「正常化バイアス」という心理状態について触れてきました。これらは、自らの不安や危険を積極的に過小評価してしまう、根拠なく「大したことはない」とか「自分だけは大丈夫」と考えてしまう心理状態です。この心理は、本来存在する危険をないがしろにするものであり、災害対策の大きな敵と言えるものです。

これに対し、今回のケースにおける心理の落とし穴は、「確証バイアス」と呼ばれます。これは、上記の通り「そうあって欲しい、そうに違いない」という先入観により、観察や実験の結果を自らの望む方向に歪曲してしまう心理です。さらに、付帯する状況の中から自説に都合の良いものだけをピックアップし、自説を補強する材料にしてしまうこともあります。そしてこれはまた別の面で、災害対策の大きな敵となるものなのです。

管理人が何を言いたいか、もうおわかりの方もいらっしゃるかもしれませんね。

単刀直入に言いましょう。地震雲があると信じていれば、ちょっと変わった雲はすべて地震雲に見える。夢で未来が見えると信じていたり、見えて欲しいと思っていれば、事実と多少違う夢でも、「これはあの事実を暗示していた」と無理やり関連づけ、さらには実際には見ていない夢のイメージまで構築してしまう。自分の体感で地震を予知できると信じていたり、そうありたいと願っていれば、ちょっとした体調不良もすべて兆候として捉え、その後に起きた地震は、世界のどこであろうと「当たった」と考える。大地震が大国の陰謀によって人工的に起こされていると信じていれば、科学的に動かしがたい事実までも平然と歪曲し、「~だろう」や「~に違いない」だけで虚構を構築するなど。

これらのようなものはすべて、「確証バイアス」のなせる業なのです。上記の他にも、オカルト、エセ科学系の拠り所とも言える心理です。もっとも、それを承知の上で確信犯的にやっていたり、商売のために虚構を撒き散らす手合いも少なくないのですが。

今回のような学術的な調査の誤りはともかく、上記のような「趣味の確証バイアス」における共通点は、自説を合理的に検証しないということです。例えば、地震雲は本当にあるのかと検証するのならば、まず雲の形状、高度はもとより、その時の温度、湿度、気圧配置などの諸条件を記録し、そこから一定時間、一定範囲内に起きた地震の震央、深さ、マグニチュード値、発震機構などをすべて記録して、そのデータの中から相関を見出して行かなければなりません。

しかし、少なくとも地震雲が実在すると信じる人々が、そのような調査をしたという話は聞きません。自分がたまたま変わった雲を見た後、近くで地震が起きたら「当たり」、というレベルでしかなく、さらには何も起きなかった場合は無視というか、記憶にも留めない。

なぜなら、このようにデータを蓄積して行けば行くほど、「夢の世界」は崩壊して行くからです。つまり、全然「当たらない」ことがはっきりして来る。そうなったら、自分の信じる、信じたい世界を自己否定しなければならなくなります。そうなれば、事実などどうでも良いのです。自説が正しくなければ、自分が気持ち良くない。そういうレベルの話になってしまい、異論反論に対して感情的に噛み付いたりする。

そんなのも、趣味の世界なら良いのですが、そういった何の根拠も無い情報をやたらと発信する人々がいて、そういうものを見たい人もたくさんいるわけで、それが無用な不安をばら撒き、本当に大切なことから目を逸らさせるのです。だから、災害対策の敵というわけです。メディアも、そういう「面白い話」を大袈裟にピックアップし、検証もせずに投げっぱなしにする。そんなのが凄く「数字」になりますから、やめられない。大昔から、「怖いもの見たさ」関係は無敵のコンテンツです。

東日本大震災後、近隣の火山が噴火する危険が言われていますが、メディアは富士山のことしか言いません。それもかなり大袈裟に。でも、震源により近い火山の方が、危険性が大きいのは間違いない訳です。というような事については、次の記事で触れたいと思います。

なにしろ、このような「確証バイアス」による思い込みによって、災害に関する不要な情報が世に溢れ、それで不安になって災害対策を進めればそれも良いのですが、今度は「楽観バイアス」や「正常化バイアス」に陥って、具体的な行動に移さないという、実に滑稽とも言える悪循環がはびこっているわけです。本当に、災害対策の敵なんですよ。

災害で実際に起こることを正しく認識するためには、手間も時間もそれなりにかかりますし、さらにそれを自分の身の上に落とし込んで考えて対策することは、かなりの勇気と行動力が必要です。基本的に、だれも自分が死ぬなんて考えたくありませんからね。でも、自分の心理の落とし穴に気付かずに、必要の無いことにかかずらわって、本当に必要なことから目を逸らしていたらどうなるか。

最後は敢えて、あの占い師の言葉で締めくくりましょう。

「このままじゃ、あんた死ぬわよ!」(笑)


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