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2013年4月 1日 (月)

【ニュース解説】催眠術にかかってしまった…

笑いたいけど、笑い事ではないニュースです。東京大学地震研究所の教授が、活断層だと指摘されている立川断層帯の調査において、人工物の痕跡を断層のずれと誤認して発表してしまいました。J-CASTニュースから一部を引用させていただきます。

(以下引用)-------------------------
【東大地震研『催眠術にかかった』】
東大地震研究所が「新たな活断層を確認した」と発表していた根拠だったはずの石が、じつはコンクリートの塊だということが分かり、発表内容の一部撤回に追い込まれた。調査対象の立川断層帯は地震が起きた際は大きな被害が予測されているだけに、地域住民からは困惑の声も上がっている。

東大地震研の佐藤比呂志教授は、「完全に催眠術にかかっていた」と予断を持った判断が誤りにつながったことを悔いており、結果の公表を急いだことが影響したことも明かした。科学の世界でも、実はヒューマンエラーで大きな影響が出ることが改めて浮き彫りになった。
(引用終了)-------------------------

しかし、当ブログでは誤認が起きたこと自体を取り沙汰するものではありません。問題は、「なぜ誤認したか」ということなのです。考えられる大きな理由は下記のふたつです。
■教授に土木関係の知識・経験が不足していた。
■立川断層は活断層である可能性が高く、実地調査でずれが見つかるはずという先入観があった。

地震学の専門家が土木に詳しくなくてもおかしくはないですが、人工的に手を入れた場所ならば(調査地は日産自動車村山工場の跡地)、その痕跡が残っている可能性を考慮すべきではありました。

そして、こちらの方が問題なのですが、きっと活断層の痕跡が見つかるはずという先入観というより、それを超えた「見つかって欲しい、見つかるに違いない」くらいの期待があったのではないかということです。その期待感こそが「催眠術」であり、実際には「自己暗示」となって、誤った判断に結びついたことは疑いないでしょう。

世間では、どうしても「東大教授なのに」という論調が多くなっているようですが、この騒動は、トップレベルの学究の徒でも人間心理の落とし穴に捕らわれることもある、ということを物語っています。責任問題は逃れられませんが、ある意味でとても人間らしいミスだったのです。

では、その落とし穴とは。

当ブログでは、今までに「楽観バイアス」や「正常化バイアス」という心理状態について触れてきました。これらは、自らの不安や危険を積極的に過小評価してしまう、根拠なく「大したことはない」とか「自分だけは大丈夫」と考えてしまう心理状態です。この心理は、本来存在する危険をないがしろにするものであり、災害対策の大きな敵と言えるものです。

これに対し、今回のケースにおける心理の落とし穴は、「確証バイアス」と呼ばれます。これは、上記の通り「そうあって欲しい、そうに違いない」という先入観により、観察や実験の結果を自らの望む方向に歪曲してしまう心理です。さらに、付帯する状況の中から自説に都合の良いものだけをピックアップし、自説を補強する材料にしてしまうこともあります。そしてこれはまた別の面で、災害対策の大きな敵となるものなのです。

管理人が何を言いたいか、もうおわかりの方もいらっしゃるかもしれませんね。

単刀直入に言いましょう。地震雲があると信じていれば、ちょっと変わった雲はすべて地震雲に見える。夢で未来が見えると信じていたり、見えて欲しいと思っていれば、事実と多少違う夢でも、「これはあの事実を暗示していた」と無理やり関連づけ、さらには実際には見ていない夢のイメージまで構築してしまう。自分の体感で地震を予知できると信じていたり、そうありたいと願っていれば、ちょっとした体調不良もすべて兆候として捉え、その後に起きた地震は、世界のどこであろうと「当たった」と考える。大地震が大国の陰謀によって人工的に起こされていると信じていれば、科学的に動かしがたい事実までも平然と歪曲し、「~だろう」や「~に違いない」だけで虚構を構築するなど。

これらのようなものはすべて、「確証バイアス」のなせる業なのです。上記の他にも、オカルト、エセ科学系の拠り所とも言える心理です。もっとも、それを承知の上で確信犯的にやっていたり、商売のために虚構を撒き散らす手合いも少なくないのですが。

今回のような学術的な調査の誤りはともかく、上記のような「趣味の確証バイアス」における共通点は、自説を合理的に検証しないということです。例えば、地震雲は本当にあるのかと検証するのならば、まず雲の形状、高度はもとより、その時の温度、湿度、気圧配置などの諸条件を記録し、そこから一定時間、一定範囲内に起きた地震の震央、深さ、マグニチュード値、発震機構などをすべて記録して、そのデータの中から相関を見出して行かなければなりません。

しかし、少なくとも地震雲が実在すると信じる人々が、そのような調査をしたという話は聞きません。自分がたまたま変わった雲を見た後、近くで地震が起きたら「当たり」、というレベルでしかなく、さらには何も起きなかった場合は無視というか、記憶にも留めない。

なぜなら、このようにデータを蓄積して行けば行くほど、「夢の世界」は崩壊して行くからです。つまり、全然「当たらない」ことがはっきりして来る。そうなったら、自分の信じる、信じたい世界を自己否定しなければならなくなります。そうなれば、事実などどうでも良いのです。自説が正しくなければ、自分が気持ち良くない。そういうレベルの話になってしまい、異論反論に対して感情的に噛み付いたりする。

そんなのも、趣味の世界なら良いのですが、そういった何の根拠も無い情報をやたらと発信する人々がいて、そういうものを見たい人もたくさんいるわけで、それが無用な不安をばら撒き、本当に大切なことから目を逸らさせるのです。だから、災害対策の敵というわけです。メディアも、そういう「面白い話」を大袈裟にピックアップし、検証もせずに投げっぱなしにする。そんなのが凄く「数字」になりますから、やめられない。大昔から、「怖いもの見たさ」関係は無敵のコンテンツです。

東日本大震災後、近隣の火山が噴火する危険が言われていますが、メディアは富士山のことしか言いません。それもかなり大袈裟に。でも、震源により近い火山の方が、危険性が大きいのは間違いない訳です。というような事については、次の記事で触れたいと思います。

なにしろ、このような「確証バイアス」による思い込みによって、災害に関する不要な情報が世に溢れ、それで不安になって災害対策を進めればそれも良いのですが、今度は「楽観バイアス」や「正常化バイアス」に陥って、具体的な行動に移さないという、実に滑稽とも言える悪循環がはびこっているわけです。本当に、災害対策の敵なんですよ。

災害で実際に起こることを正しく認識するためには、手間も時間もそれなりにかかりますし、さらにそれを自分の身の上に落とし込んで考えて対策することは、かなりの勇気と行動力が必要です。基本的に、だれも自分が死ぬなんて考えたくありませんからね。でも、自分の心理の落とし穴に気付かずに、必要の無いことにかかずらわって、本当に必要なことから目を逸らしていたらどうなるか。

最後は敢えて、あの占い師の言葉で締めくくりましょう。

「このままじゃ、あんた死ぬわよ!」(笑)


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