【三陸沖アウターライズ地震多発】地震関連情報【4/4】
書こうかどうか迷っていた記事ですが、やはり書いておくことにします。
三陸沖を震源とするアウターライズ地震と思われる地震が、4月2日中だけで6回連続して発生しました。地上の揺れは最大でも震度3でしたが、最大マグニチュードは5.6と、決して小さな地震ではありません。4月2日の午後12時21分の震度1を最後にその後は発生していませんが、しばらくの間は注意深く推移を見守る必要もあるかと思います。
震災後、三陸沖では震災震源域の沖側、深さ10km程度を震源とするアウターライズ地震が発生し続けていますが、12時間以内という非常に短い間に6回も連続して発生したのは、管理人の記憶では震災後初めてです。集中発生した回数が多いから、即ち大規模地震に繋がる可能性が高いということはできませんが、少なくともこの震源域で活発な地震活動が続いているということだけは確かだと言えます。
ここで、改めてアウターライズ地震についてまとめておきましょう。
アウターライズ地震とは、プレート境界の「沈み込み帯」にできる海溝状の窪みの外側(=アウター)に当たる、盛り上がり(=ライズ)部分で発生する地震です。下図の1の部分です。
発震機構は、引っ張り力による正断層型地震が多く、その場合は海洋プレートが大陸プレートの下に向かって潜り込む際の引っ張り力によって発生します。東日本大震災後は、地殻変動によって太平洋プレートが移動する速度が速まっているために、三陸沖のアウターライズにかかる引っ張り力が大きくなっており、小規模ながらアウターライズ地震が繰り返し発生しています。
なお、最大のアウターライズ地震は震災本震15分後に発生したマグニチュード7.5で、大きな津波の発生を伴いました。その後は50cm以下のごく小さな津波を伴うクラスが一回発生しただけで、危険な津波を伴うクラスは発生していません。
しかし、アウターライズ地震には特別な危険があります。それは「津波地震」になりやすいことです。震源が陸地から遠いために、地震規模の割には地上の揺れは大きくなりません。でも発生する深さが10km以下と浅いために、断層の動きによって海底の変形を伴いやすく、こちらも規模の割には大きな津波を発生させる可能性が大きいのです。可能性としては、マグニチュード6台後半から津波が発生する可能性が出てきて、7クラス以上になると。高さ3m以上の大津波となることを警戒しなければなりません。つまり、陸地の揺れがあまり大きくないのに、思ったより大きな津波が来るということが起こりやすいのです。
場合によっては、地上の揺れが震度4以下、つまりほとんど誰も慌てない程度の地震の後に、数メートル以上の津波が押し寄せることもあるのです。1896年(明治29年)に発生した「明治三陸地震」では、発生メカニズムはいわゆるアウターライズ地震とは異なるものの(圧縮力による逆断層型と推定)、今回の多発震源域とほぼ同じ場所で発生した推定マグニチュード8.2~8.5の地震により、陸地の震度は現在の基準で2~3程度だったにも関わらず、最大遡上高さ38.2mを記録する大津波が三陸海岸を襲いました。
このような被害をもたらす可能性があるのが、アウターライズ部分で発生する地震なのです。震災後、アウターライズ地震による大津波の再発が強く警戒されましたが、幸いにして現在までに大規模なものは発生していません。しかし、1933年(昭和8年)に発生した「昭和三陸地震」と津波は、上記の「明治三陸津波」の影響によって、37年の時を経て発生したアウターライズ地震と考えられていることからも、今後非常に長い期間に渡って、東日本大震災震源域の沖側で発生するアウターライズ地震を警戒し続けなければならないのです。
ですから、特に震災被災地域では、小さな地震だからと言って軽く考えず、必ず津波警報の有無を確認してください。
過去何度も書いた内容の繰り返しになりますが、アウターライズ地震が多発したこの機会に改めて思い起こしていただきたく、この記事を記しました。
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