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2013年4月24日 (水)

【一周年記念企画】小説・生き残れ。【あとがきと解説】

22回に渡って連載させていただいた「小説・生き残れ。」いかがだったでしょうか。当初は仮タイトルでスタートしたのですが、まあこれでいいやと、途中で(仮)が取れました(笑)

この作品は、マニュアル的な意味も持たせたフィクションです。カテゴリを「ディザスター・エンタテインメント」とした通り、あくまで大災害を題材にした「娯楽作品」というスタンスで書きました。岩城衛と三崎玲奈が大地震に見舞われた地下鉄の中で出会い、それから半年とちょっとのうちに、なんと計4回も大地震に遭遇するという、あり得ない設定ではあります。一度の災害を描くだけでは遭遇する状況が限られますので、そこはフィクションであることを最大限に利用しました。

主人公の岩城衛、お気づきの方もいると思いますが、岩手の岩、宮城の城をつなげ、読みは福島県浜通りの旧名「磐城」と同じという姓にしました。ならば名前は「まもる」だろうなという、ある意味安易な命名ですが、管理人なりの、震災被災地への思いを込めました。

三崎玲奈には、特に意味は持たせていません、語感で決めました。SKE48の松井玲奈とも、NHK朝ドラの能年玲奈とも関係ありません。偶然です。読みは「れいな」です。

ちなみに、ふたりともいわゆる「アラサー」の独身ですが、管理人がこの作品のターゲットとして想定したのが、その辺りの年齢層なのです。様々な仕事の前線にいて、身軽にあちこちに出かけ、繁華街などに出ることも多い、つまり最も多くの「状況」に遭遇しやすい層と考えて、そのような方に役立つ内容にしようと考えました。

構成的に管理人が狙ったのは、いわゆる災害小説とSFチックなライトノベルの中間辺りの線。あまり重苦しくならないように、状況のリアルさや詳細さにはあまりこだわらず、あくまでも大地震に遭遇したいち個人の心理や行動にフォーカスした構成です。犠牲者の描写も、意識的に避けました。

しかし、地震発生時の状況や、その時に取る行動、玲奈が語る災害の知識などに関しては、現実に即してリアルに描いています。お読みいただいた方が同じような状況に遭遇した時に、彼女たちの言葉や行動を思い出し、それを真似ていただければという思いがあります。


玲奈をはじめ、衛以外の主な登場人物はすべて元自衛隊員ということに違和感を感じられた方も多いかもしれません。管理人は元自衛官というわけではありませんが、自称「自衛隊サポーター」で、現職や予備自衛官とも交流させていただいていることもあり、さらにはご想像の通り結構ミリヲタでもありますので、そちら方面が得意という理由もあります。

要は、訓練された人間が取る的確で敏速な行動と、気持ちは熱いものの、能天気で知識不足の衛ができることとの対比をしたかったことと、的確な判断や行動無くして、非常時に自分を守ること、ましてや他を救うことがいかに困難なことかを描きたかったために、そのような設定にしました。

なお、自衛隊に関する専門的な記述や描写の部分は、あくまで管理人の知識だけで書きましたので、実際と異なる部分もあるかと思います。お詳しい方、その辺は大目に見てください(笑)


最終章では、ふたりはついに「東海地震」に遭遇してしまいます。管理人がかつて通った中学校の修学旅行は、静岡方面が恒例でした。しかし当時、東海地震の危険が大きく叫ばれ始めために、東北方面に変更された経験があります(これだけでかなり歳がバレますね)

そんな原体験もある関東在住の管理人としては、大騒ぎしたのにあれからずっと起きない「東海地震」に、ある意味で特別な思いがあります。東京大地震や富士山噴火を描いた方が一般受けするのでしょうが、当初から「東海地震」をメインの題材にすることを考えて、玲奈の出身地を静岡に設定しました。

しかし今にして思えば、管理人が中学生当時も宮城沖地震などが起きていましたし、東日本大震災級が起きてもおかしくない状況もあったわけです。地質学的時間軸では、数十年など一瞬に過ぎません。そう考えると、どこで何に遭うかは本当に運次第であり、それを意識的に避けることなど、少なくとも今の人間には不可能なのだという思いを強くします。我々ができることは、大災害に遭うという前提の意識と備えだけなのです。


管理人の究極の思いは、津波避難所で玲奈の前に立ちはだかる老夫婦の言葉に凝縮されています。なお、空襲からの避難中に背負った赤ちゃんを落としてしまったという話は、当時実際に少なからず起きた実話を元にしています。そのような、命がいとも簡単に消えて行く極限の状況を体験した老人の
「人間の気持ちや力だけではどうにもならないこともあるんじゃよ。無駄に死んではいかん」
という言葉が現実です。いくら備えていても、大災害への対策に絶対は無いのです。

つまり最後には、可能性の問題です。どうにもならない状況に陥る可能性を減らし、どうにもならなくなる前に危険から離れ、どうにもならないと思える状況の中で、一縷の希望を見いだす可能性を大きくすること。それは普段からの正しい意識、正しい知識と正しい行動のみによって実現されるということであり、その象徴として、十分に訓練された元自衛隊員を登場させたわけです。


ラストシーンで、衛は新しい自分と生活に向かうことを決意して、玲奈にプロポーズします。傷つき、生活の糧を失った恵子と須田も元気に立ち上がり、声を合わせて、新しい状況に向かって一歩を踏み出します。「状況開始、状況終了」とは、自衛隊で演習などの開始と終了時に、司令官が発令する用語です。

大災害に打ちのめされた中から立ち上がる人間の強さと、「次」へ繋がる希望を感じさせて終わりにしたかったので、あのようなエンディングになりました。

改めまして、お読みいただいてありがとうございました。


よろしければ、この作品のご感想、ご意見などをコメントかメールでお寄せください。もしかしたらこの四人が、またどこかの「状況」で活躍する時が来るかもしれません。


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コメント

面白かった!ハラハラの連続で手に汗握る展開に筆力の高さを感じました。ご老人の体験談のように表に出てこない悲劇はたくさんあると思います。震災の直後にも、奥さんや子供と一緒に津波から逃げる際に手が放れてしまったので、振り返ったらもうそこにはいなかった、と限界を超えた雰囲気のお父さんがお話しされていました。考えるだけで暗澹たる気持ちになりますが、注意してても理不尽な事態になりうることは肝に銘じておこうと思います。

無理のないペースでこれからも今後もよろしくお願いします(今更止まらないと思いますがw)

面白かったです。腕立て伏せ始めました。
いつも有意義な情報を、有難うございます。

てばさん、興味深く読ませていただきました。毎回、次はどうなるんだろうと、アクセス回数が増えてしまいました^^;ありがとうございました。

てばさんのおかげで防災対策に興味を持ち始めた我が家ですが、私はもともと警察官を希望しておりました(病気のため夢はついえたのですが・・・)そこには元自衛隊員の親友の話も影響しており、「人を助ける」ことをしたい、でも私の能力の中で出来ることはなんだろうか?と考えた結果、自衛官ではなく警察官を希望した次第でした。(当時は災害よりも少年心理学を学んでいたという結果です)

訓練を受け、誰かを守る・・・という仕事にはつけませんでしたが、てばさんのブログで私の中の何かがもやもやと・・・ちょうど消防団に誘われたこともあり^^;

これからも楽しみ(という言い方が正しいかわかりませんが)にしています。

こんにちは。

全部読み返してみました。
読み物のエンターテイメント性と防災意識の醸成・喚起の視点を意識しながら書くのは大変だったと思います。

通して改めて思ったことは…
正しい知識を得る。
常に災害があったあることを想定して動く。
有事の際には自分の立ち位置(安全)を確認して行動する。
ことが必要だと再認識しました。

後は私の勝手な希望ですが、
もう少し消防隊の活躍があるとうれしいな~なんて思います。
関係者でも何でもないですが。
実際には渋滞や倒壊した建物なんかが邪魔して広範囲に活躍を期待しにくいでしょうし、自衛隊に比べ大規模災害時には万能性に欠けるところはあるとは思いますけれど。

これからも期待してます~

>tntさん

過分なお褒めの言葉をいただき、ありがとうございます。「面白かった」と言っていただけるのが、やはり一番嬉しいですね。マニュアルじゃなくて「娯楽作品」ですから。ラスト近くでは、危機また危機というハリウッド映画的な構成を意識しました。いわゆる災害小説は、読後感が重苦しすぎるので、もっと気楽に読んでいただきたいなと思っていますし。

過去の戦争や大災害の現実はあまりに重過ぎますからね。それを文章ですべて再現などできないし、正面から描いたら、とてもエンタテインメントではなくなりますし。

危険の種類と存在を普段から意識し、対策を考えているだけで、生き残る確率は倍から数倍とかになると思うんですよ。数値化はできませんが。それを超えるような、本当に最悪のケースは、実はそんなに多く無いと思うんです。

>ジャパンサンドさん

はじめまして。お褒めいただき、ありがとうございます。これからも、役に立つ情報をできるだけお送りして行きたいと思っています。

実は私もずっと筋トレは続けています。災害時は、やはり最後には体力がモノを言うことが多いと思いますし、特に、他を救おうと思ったら、体力は何にも増して必要ですからね。けが人を運ぶだけでも、鍛えていないと大変です。

自衛隊のレンジャーや空挺部隊のような、言い方は悪いですが「バケモノ」と言われるような体力を持った人たちには、やはり憧れがあります。いざというとき、そんな人たちの十分の一でも苦難に耐えられるようになりたい、なんて思っています。もう若く無いから余計に(笑)

>はるママさん

ワクワクドキドキしていただけたのなら、「娯楽作品」として最高のご感想です。ありがとうございます。テーマがテーマですから、深刻になりすぎず、そして途中で飽きないようにするかということには気を遣いました。

はるママさんは、警察官を目指されていたんですか。少年課や生活安全課方面ですね。私は、進路としては警察、消防、自衛隊などを考えたことは無かったのですが、実は結構警察・消防ヲタでもあり、心の隅には、いつも「いざという時に人を救いたい」という意識はずっと持っています。長年バイクに乗っていますが、交通事故に遭遇したりすると、真っ先に飛んでいくような奴です。そのために、救護はかなりの数の「実戦」を経験できました。

「防災士」の資格を取ったのも、知識面から「正しい防災」を啓蒙して災害犠牲者を減らしたい、そして災害発生時には、最前線で活動したいという思いからでもあります。公的資格ではありませんが、やはり指導的立場に肩書きは重要かと。もっとも、防災士の資格要件だけでは、あまり役に立ちませんけれどね。

消防団は、とても意義のある役割だと思います。でも、負担も結構大きいし、問題点も感じる部分もあります。まあ、多くの問題は男性団員の場合なんですけどね。最近は、団員自体は減少していますが、女性団員は増えているようですね・・・なんて、煽っているわけじゃありませんよ(笑)もしよろしければ、メールででも。

小説の方は、次回作の構想はある、とだけ申し上げておきます。

>whokiさん

わざわざ読み返していただいたんですか。ありがとうございます。そして、作品のエッセンスがしっかりお伝えできているようで、安心しました。つまるところ、スポーツとあまり変わらないんですよね。正しい知識と正しい動きを学んで、反復して身につける。競技中には、状況に応じて臨機応変に行動するというような。だからスポーツと同じように、どれだけ「練習」しているかのスキルの差が、結果の差になって現れるわけですし。でも一発勝負ですから、よりシビアです。

消防に関しては、実は私の得意分野のひとつでもあります。作品に反映させることは可能というか、むしろやりたいですね。災害においては、自衛隊はある意味で戦略的な勢力ですが、消防は地域密着で、本当の意味での最前線に出ますから、ドラマも多く生まれるはずです。広範囲をカバーしない代わりに、本当にひとりひとりの命とサシで向かい合うのが消防ですから、

特に災害後の現場を描こうと思ったら、消防を抜いて語るわけにはいきませんね。ハイパーレスキューから消防団まで、いろいろなシチュエーションが考えられます。次回作があるならば、必然的に登場することになると思います。その場合の一番あざといやり方は、美人女性消防官の登場でしょうか(笑)いつになるかわかりませんが、いずれは書きたいと思っています。

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