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2013年8月

2013年8月31日 (土)

EVERYDAY ON ALERT!【管理人からのおしらせ】

明日9月1日は、1923年(大正12年)に発生した、いわゆる関東大震災から90周年に当たる「防災の日」です。メディアでも関連情報がたくさん流れますし、防災訓練も各地で行われますから、災害への意識を高めるひとつのきっかけにはなります。でも、記念日のようなものは人間の都合に過ぎませんから、「防災の日」だから何をしようなどとは、特に考える必要も無いかと思います。日付は、単なる通過点です。

もちろん、それはEVERYDAY ON ALERT、つまり日常生活に災害への警戒意識と行動を織り込んでいることが前提ではあります。もしまだ何も対策していないか不十分だとお感じの方は、具体的な行動を始めるきっかけにしていただきたいと思いますが、最も大切なことは「継続」です。記念日の前後一週間くらい盛り上がって終わりのようでは、実効性は期待できません。

例えば家族で災害対策の話をするのも、この日だけではイベントみたいなものです。それを普段から何度も繰り返し、家族全員が同じ意識と知識を完全に共有しているレベルにまで高めなければなりません。

さておき、関東大震災では火災による犠牲者が全体の8割を占める大惨事でした。それから90年。都市部の耐震性・耐火性は大きく上がりましたが、現在でも当時とあまり変わらないような条件の、木造家屋密集地帯(木密地帯)が少なくありません。そのような場所で大火災が発生する可能性が高いのはもちろん、例えばビル街でもビル風による火災旋風など、過去に経験したことのない現象が起きるかもしれません。現代でも、大都市における地震災害で、最も恐ろしい二次災害が火災であることには変わりないのです。

そこで「防災の日」を機に、当ブログで再掲載中の「首都圏直下型地震を生き残れ!」シリーズの掲載順序を変更し、当初はシリーズ最後のテーマであった「大火災編」を先にお送りします。このシリーズは、関東大震災、阪神・淡路大震災で発生した大火災の教訓から、都市における大火災からいかに「生き残る」かを、現実に即して具体的に考えるものです。

当初掲載時と記事番号が変わりますのでご注意ください。


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☆再掲載☆買い物編03【首都圏直下型地震を生き残れ!10/54】

■当記事は過去記事の再掲載です■


さて今回は、デパ地下で大地震に遭遇した場合の行動について考えます。これはもちろんデパ地下に限らず、似たような店内構成の店舗の多くに共通することです。特にデパートの上層階は、地下食品売場に比べて動線構成が単純で通路が比較的広く、見通しが効きやすいので、この方法を応用することで、より安全性を高められるケースも出てくるでしょう。

ではなぜ敢えてデパ地下を取り上げたかと言うと、地下であること、迷いやすいこと、ガラスなどの危険物が多いことから、非常にパニックを誘発しやすい環境だからです。基本的には、パニックに呑み込まれず、危険物からできるだけ距離をおくということがポイントです。

まず最初は、普段の意識から。常に「ここで大地震が来たらどうするか?」という視点で周囲を見て、それを頭の隅で意識しておくことです。前回記事のデパ地下の危険、思い出してください。そして、防災グッズのシリーズ記事で何度も取り上げている小型LEDライト、持ち歩いていますか?地下に限らず、ビルの中で停電になったら、真っ暗です。そこで視界が確保できるかどうかが、避難行動の成否を大きく左右します。


さて、あなたはお総菜を買ったあと、ガラスショーケースに囲まれた狭い通路を、ちょっとお菓子でも買おうかなと見て回っています。店内はとても混雑しています。そこで、ドーンという地鳴りと共に、突き上げるような強い揺れを感じました。さあ、どうしますか?

まず、揺れが最大になる前に、できるだけ広い通路や場所に移動すべきです。ここで、普段からの意識の有無の差が出ます。しかしデパ地下では、幅3m以上ある通路はあまり無いことが多いのです。そこで意識しておくべきことは、なるべく建物の隅、つまり壁に近い方向に近づくことです。

これは以前その危険を指摘した「吊り天井」に限らず、天井が落下する場合は建物の中心に近い場所や、壁や柱から離れた場所の可能性が比較的高いことと、壁際の通路は比較的まっすぐであり、その後の避難行動で方向が把握しやすいからです。さらに、壁際の通路は比較的広いのが普通です。

階段の近くにいたら、階段室の壁に張り付いて姿勢を低くし、パニックの人波に呑まれないようにしながら、強い揺れに備えます。激しい揺れが来るまでの短時間に一階に上り、屋外に出るのはまず不可能です。それに屋外では、ガラスや看板、ビルの外壁などが落ちてくる危険が大きいのです。ならば危険物がほとんど無い階段室の方がずっと安全です。照明器具や壁面材の落下は考えられますから、いつでも頭を保護することを忘れずに。


エスカレーターの近くにいたら、強い突き上げを感じてからは乗ってはいけません。停電で急停止して将棋倒しになる危険はもちろん、エスカレーター自体が落下することがあります。エスカレーターは、簡単に言えば上の階の床に引っ掛けてあるだけなので、東日本大震災では、かなりの数が落下しました。もしそこへ乗っていたら、重傷以上の可能性が大です。

それを教訓に、現在エスカレーターの落下対策工事が進んでいるはずですが、そのエスカレーターがどうなっているかわからない以上、リスクを犯すべきではありません。それに階段と同じく、一階に上がったからといって安全だとは限らないのです。もし一階(上層階)で何か大きな危険が発生した場合、階段やエスカレーターを駆け下りて来る人々と衝突することになります。危険極まりない状況です。


しかしあなたはそのようが行動がとっさに出来ず、揺れを感じた瞬間に足がすくんでしまいました。動き出せたあなたも、人波に阻まれて、ほとんど進めませんでした。いずれにしても、最大の揺れが来るまでの時間は、最短の場合3秒以下なのです。あまり長い距離を移動することはできません。

今いる通路は狭く混雑していて、スーパーのように「通路中央で姿勢を低く」しても、パニックを起こした人の波から逃れられるとは思えません。しかも周りはガラスだらけです。では、どうするか。他にパニックを避けられる場所は?

ここからは、管理人がデパ地下を歩き回って導き出した結論です。こんな事を言うのは、日本中で管理人だけでしょう。でも、それがベストとは言えないものの、ベターな方法だと思ったのです。


デパ地下には、実は「聖域」がたくさんあります。パニックから隔絶された場所です。おわかりでしょうか。それは「ショーケースの裏」、つまり店員がいる販売スペースです。普段は絶対に入ってはいけない「聖域」も、大地震で生命の危機に晒された場合の緊急避難場所としては、最も安全性が高いと気付きました(デパートのみなさんごめんなさい)

それ以来、管理人はいつもショーケースの切れ目、つまり店員の出入り口を意識するようになりました。その中ならば、通路で起こるパニックをほぼ完全に避けられるのです。そして、そのスペースでは多くの場合ショーケースは片面であり、つまりガラスの危険が半分になります。

さらに良く見ると、販売スペースは背後が壁だったり、太い柱を囲むように配置されていることが多いのです。つまり、天井の落下や建物の崩壊に対して非常に強い場所でもあります。しかし言うまでも無く、小さな地震を感じたからと言ってすぐに駆け込んで良い場所ではありません。これはあくまでも、最悪の事態における最後の手段であり、自己責任において取るべき行動です。

でも生命の危険がある状況だと判断したら、管理人は迷わずそのような行動を取ります。その結果いかなる不利益があろうとも、それは甘んじて受けましょう。それでも命を失ったり、重い傷を負ったりするよりは、そちらを選びます。付け加えれば、当面の危険を避けることが出来たら、管理人は店員と共に客の避難誘導や負傷者救護を可能な限り行う覚悟と準備があります。

今回は、その場所の条件と起こりうる状況だけから判断した、最も「生き残る」可能性が高い方法を考えました。ひとつの参考となさってください。これで、買い物編は終了します。

■このシリーズは、カテゴリ【地震・津波対策】をクリックしていただくと、まとめてご覧いただけます。

2013年8月30日 (金)

久しぶりの救命救急講習【管理人ひとりごと8/30】

管理人は昨日(8/29)、地元の消防本部で開催された、上級救急救命講習会に参加してきました。前回、日本赤十字社の講習に参加してから5年近く経ってしまい、そろそろブラッシュアップせねばな、と考えてのこと。医学や救急救命技術は日々進歩していますから、理想的には2年に一回くらいは受講して、知識と技術の更新をしておきたいものです。

過去に一通りやっていることとはいえ、改めてやってみると意外に上手く行かないこともありましたし、忘れている知識に気付いたりもしました。やはり、何事も復習と反復が大切です。今回は、今までやったことの無かった、幼児と乳児のダミーを使ってのAED、CPRトレーニングが受けられたのが一番のメリットでした。

どんな理屈より、まず身体を動かして実際にやってみること。それが、こと防災や救護の世界ではとても大切だと、改めて思いました。何せ災害の現場では、普段やっていないことばかりを一発で上手く決めることが求められるのです。訓練する方法があるなら、やっておく。中でも生命に直接関わることの経験の有無が、あなたとあなたの大切な人の運命を大きく左右するのです。何も資格のためや、見ず知らずの人を助けるためじゃなくてもいいんです。まずはあなたの大切な人を守るチカラをつけること。そのために、救命救急講習の受講をお勧めします。

前にも記事で書きましたけど、AEDは魔法の小箱じゃありません。音声ガイダンスに従えば大丈夫だなんてたわ言を言う輩もおりますが、そんなのは自分でやったことが無いから言えること。AEDは、CPR(胸骨圧迫、人工呼吸)を併用して、初めて効果を発揮するものです。そしてその技術は、実際のトレーニングでしか身につきません。テキスト読んだだけでできると思っている方がいましたら、すぐに考えを改めていただきたいものです。命守るのは、そんな簡単じゃありませんよ。


ところで、今回の講習でとても嬉しかったのは、タイミングもあったのでしょうが、受講者がみな真剣だったということ。当たり前じゃないかと言われそうですが、さにあらず。管理人が過去に参加した講習では、はっきり書いちゃいますが、リタイヤした方々がお誘いあわせの上みたいなのがたくさんいたりして、講義は理解してないわ、実習は何度も失敗するわ、できなくてもヘラヘラしたり言い訳はするわと、全く真剣さと緊張感に欠けるようなのばかりでした。あの人たちには、本当の救命は絶対無理と断言できますね。

今回は参加年齢層もかなり若く(管理人が最年長くらいだったかも)、とにかく緊張感がある。設定されたシナリオに沿って実習しながら、気持ちはほとんど、今まで数多く経験した実際の事故現場に近いものでした。他の人が実習する姿を見ている時も、トレーニング用のダミーが、目の前に横たわっていた本当の負傷者の姿と重なってくるくらいなものです。管理人はかつて、長年に渡りオートバイ乗りでしたので、数え切れない程の事故現場に遭遇し、実際の救護の場数はやたらと踏んでいるのです。中には手の施しようの無いこともあって、そんな時の悔しさとやりきれなさが、今こういうことをやっているモチベーションのひとつなのは確かです。

さておき、管理人の話などはかなり特殊な世界ではあります。でも、大災害時にはそれが、いやそれ以上の状況がどこでも、いくらでも現出するのです。大怪我して出血したり変形したりしている身体に触るだけでも、とんでもない勇気が必要なんですよ。ましてや今ここでの処置で生死が分かれるような場合は。でもそんな時に後押しするのが「なんとかしてあげたい」という気持ちと、正しい知識と技術です。この場合はこうすれば良いという事がわかっていなかったら、ほとんどの人は一歩踏み出すことをしないでしょう。

これは想像ではなく、管理人が遭遇したほぼすべての事故現場で実際にそうでした。みんな負傷者を遠巻きにして、ただ見ているだけ。誰かが手を出そうとすると、ただ反射的に「動かすな」と横ヤリを入れる。そんなのには何度もウンザリさせられましたけど、そのうち開き直りましたね。他人は関係ない。自分ができることをやろうと。

見ず知らずの人が死にそうでも、別に関わる義務はありません。知らん顔しても全く問題無い。でも、そうはしたくない、なにか出来ることはないかと思うあなた、まずは救命救急講習を受けてください。それはまずなにより、あなた自身とあなたの大切な人を守るチカラになります。

各自治体、消防主催のものと、日本赤十字社主催のものが主です。まずはネットで検索を。


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2013年8月29日 (木)

『特別警報講演会』に出席してきました【前編】

管理人は、昨日(8/28)に気象庁講堂で開催された『特別警報講演会〜命を守るために知って欲しい〜』に出席して来ました。この「特別警報」制度は、明日8月30日から運用が開始されます。
Photo
これから何回かに渡り、講演会の内容についての記事をアップします。記事カテゴリは【気象災害】です。

ところで、当講演会に出席された方はいらっしゃいますか?最初の講演で「特別警報が警報を飛ばして最初から発表されることはあるか?」と質問したのが管理人でございます。なお、答えは「ある」ということでした。


管理人は日頃から、一部の「防災専門家」のコメント等になにかとツッコミを入れているわけですが、この講演会に出席して、ほっとしました。当然ながら、商売絡みではない本物の「専門家」の方々は、避難行動等に関して至極当たり前の合理的な見解をお持ちであり、それは管理人が自ら導き出した見解とも完全に重なるものでしたから、かなり意を強くしたものです。メディアも、本物の「専門家」が出す情報だけを、バイアスをかけずに紹介していただきたいものですね。

そのような情報があまねく広まれば、災害の犠牲を確実に少なくできるなとは思いつつ、現実はそうもいかないという限界も感じるのも事実ではあります。要は、このような制度の問題ではなく、最終的には情報を受け取る個人の問題というわけです。

さておき、特別警報は、
■大雨
■暴風
■暴風雪
■高潮
■波浪
■大雪
の6種類が発表されます。地震、津波、火山噴火に関しても特別警報は設定されますが、従来の制度が危険度によって段階化されているので、今後も発表の形態は変わりません。地震は緊急地震速報、津波は大津波警報、噴火は警戒レベル5が特別警報に相当するわけです。

この特別警報がどんな時に発表されるかというと、概念的には「記憶に残る大災害になるような気象」で、「重大な災害のおそれが著しく大きい時」ということになります。過去の例では、古いところでは昭和34年、死者・行方不明者約5000人の大災害となった伊勢湾台風、平成23年、紀伊半島に年間降雨量の約5割となる2000mmの豪雨で激甚災害をもたらした台風12号、平成24年、九州北部にほぼ7月一ヶ月の平均降雨量が約6時間で降った、九州北部豪雨のような状況になることが予想される場合です。

今年(平成25年)7月末と8月の山口・島根豪雨、東北豪雨も短時間雨量では特別警報のレベルに達していますが、あのような雨がもっと長時間続くような場合とのことです。つまり、特別警報が発表された場合、気象災害に対する脆弱性が存在する場所では、大災害が切迫しているか、場合によっては既に発生しはじめているような状況となります。


ここで注意しなければならないのは、特別警報が発表された時点では、既に豪雨、暴風、豪雪や洪水などで避難行動が困難な状況になっている可能性が高いので、「特別警報が出たら避難せよ」と捉えてはならないということです。特別警報発表時にまだ避難していないのならば、ただちに「命を守る行動をせよ」という最後の一押し、ある意味で「最後通牒」(この表現は講演では使われていませんが)とも言える重大な意味を持つのです

ですから、基本的にはその前段階、「警報」の時点で自分の周囲の状況を判断し、避難行動が必要と判断されれば動き出していなければなりません。特別警報を聞いてからでは、手遅れかもしれないと考えるべきです。警報はあくまでも情報であり、避難の判断するのはあなた自身ということに変わりはありません。

もちろん、特別警報が発表されるような段階では、危険地帯においては市町村から避難勧告・指示が出されているはずです。しかし、それは市町村単位で出されることが多いので、自分の居場所と状況において避難が必要か、または避難が可能かどうかも、すべて自己判断が必要です。

もしそこで安全な避難が不可能と判断したら、そこでできる限りの「命を守る行動」をしなければなりません。それは、豪雨・洪水・土砂災害に関しては、当ブログでも何度も述べている通り、「二階以上に上がる」、「崖から離れた部屋に移動する」、「土石流の予想流域から離れる」などの行動となります。

次回に続きます。

■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

2013年8月28日 (水)

これから気象庁に行きます

今日の都内は空気が程よく乾燥して、ちょっと秋めいた感じです。猛暑もやっと峠を越えたようですね。

管理人はこれから、気象庁で開催される《特別警報》講演会に出席してきます。内容等は後日アップしますね。

しかし、50年に一度レベルの気象災害を想定した《特別警報》の開始直前に、それを超える状況が起きてしまっているとは、なんとも皮肉な現実ではあります。

これから秋の長雨の季節、引き続き警戒が必要です。

2013年8月26日 (月)

☆再掲載☆買い物編02【首都圏直下型地震を生き残れ!9/54】

■当記事は過去記事の再掲載です■


今回は、管理人が日常の買い物の中で危険度が高い場所と判断するもうひとつの場所、「デパ地下」について考えます。条件としては、ビルの地下にある食品売場ということです。

のっけから逆の話なのですが、ビルの地下は、地震に対してはかなり安全な場所です。地下は地面と一体になって揺れるので「共振現象」による構造破壊が起きず、揺れ自体も上層階より小さくなります。もし仮に地上部分が大きく崩壊しても、地下の生存空間が大きく失われる可能性は小さいのです。つまり、地上への脱出経路さえ残っていれば、それほど慌てなくて良い場所なのです。では、何が危険なのでしょうか。その要素は4つ。「混雑」、「食品」、「通路」と、「地下」であるということです。


皆様も、デパ地下の様子を思い起こしてみてください。まず「混雑」。人気のデパ地下は、狭い通路にたくさんの人が溢れていることが多いものです。それだけで防災的には厳しい要素となるのはおわかりいただけるでしょう。

次に「食品」。とはいえ、食品が問題なのではありません。問題は、ショーケースです。生鮮品、菓子類が多い売場ですから、ガラスショーケースが密集していることが危険要素となります。

では次の「通路」とは。デパ地下は、一般に小さなテナント店舗の集合で構成されています。そのため、通路が「回遊性」を考慮した、防災的にはあまり望ましくない形になっていることが多いのです。皆様も、デパ地下で「道に迷った」経験はありませんか?目当ての店や出口を探しているうちに、「あれ、この店の前さっき通ったよ」というような。実は、それは意図的な通路設定によることもあるのです。

つまり、できる限り多くの店舗の前にまんべんなく客を導いて商品を見てもらうために、ちょっと乱暴に言えば「迷いやすい」動線構成になっています。デパート側としては、表現は悪いのですが、客をマグロのように店内をぐるぐる「回遊」させて、目的外の「獲物」も見てもらい、それに食いついてもらおうことなのです。

念のため申し添えますと、通路が望ましくない形というのは、あくまで理想的な避難動線ではないということであり、消防法で規定された安全のための要件は満たしているはずですので、その点は誤解のなきように。

そして、もうひとつは「地下」であるということ。最初に安全性が高いと言ったじゃないかと突っ込まれそうですが、それは建物のこと。危険なのは「人」、さらに言えば、「人の心理」です。人は地下に入る時に、無意識のうちに圧迫感、閉塞感を感じていることが多いものです。地下鉄に乗る時、地上の電車より、なんとなく不安になったりすることは無いでしょうか。あまり自覚していなくても、深層心理では、「地下=逃げ場が無い」と思いやすいのです。

それら4つの要素が、大地震の発生時には、負の相互作用をすることが考えられます。

デパ地下にいて、例の「ドン!」を感じたとしましょう。その瞬間の多くの人の心理は、「大地震だ!すぐに地上に出なければ!」となりやすい。階段は、エスカレーターはどっちだ?周りを見回しても、すぐにはわからない。

とりあえず、多分こっちだと思う方に走り始める。でも、逆方向だと思う人も多く、狭い通路で人の波がぶつかる。思うように進めず、さらに焦る。そこへ大きな揺れが来て、あちこちから悲鳴が上がり、場合によっては照明が消える。すぐに非常灯がついても、薄暗い。恐怖感がMAXになる。

避難誘導訓練を受けた店員は、おそらく「大丈夫!頭を守る!その場を動かない!」のように叫ぶ。一部の人はそれに従うが、我を失った人々がそこへ突入する。薄暗く、激しい揺れの中で、狭い通路でパニックになった人々が衝突する。

どこからか、「こっちが出口だ!」と聞こえる。一旦止まった人々も、その声の方向に、我を忘れて走り始める。早く地上に出なければ。でも通路は狭く、曲がっている。他の通路と合流する場所で、人の波が衝突する。何人かが転び、後から殺到する人々がつまづき、次々にのしかかる。

そんな大混乱の周囲には、たくさんのガラスショーケースがある・・・

などと、書いていてなんだか胸が悪くなりますが、こんなのが最悪のシミュレーションなのです。多分、デパートなどに立場に配慮しなければならないプロの防災屋だったら、こんなことは書かないでしょう。あくまで内々の話にしておくでしょう。でも管理人は何のしがらみもない、アマチュアの防災ブロガーですから。でも、書いている内容には責任を持ちますが。

もし最悪中の最悪を考えたら、もっと酷いことになるかもしれないのですが、それは流動的な要素にもよりますので、とりあえず「基本的な最悪」という感じでしょうか。

「ではどうするか?」という話は、次回ということで。


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やっと変わりはじめた【管理人ひとりごと8/26】

管理人は、ここ数年はほとんどNHKテレビとケーブルテレビしか視ていないので、一般の民放のことは良くわからないのですが、この夏からの豪雨報道が、少し変わって来たように思います。

豪雨に際し、最近までは「豪雨に注意を」とか「土砂災害に警戒を」というような表現しか聞かれなかったのですが、今では「豪雨下の移動は危険なので早めの避難を」、「危険地帯に残る場合は二階以上へ」、「なるべく崖などから離れた部屋へ」という具体的なアドバイスが聞かれるようになりました。先日は、気象庁の災害対策担当官が「豪雨や夜間になると土砂崩れや洪水の兆候はわからないので、早めの避難を」と言っていました。今まで必ず聞かれた、土砂災害の「トリビア」の意義を根本から覆すものです。

そして、当ブログの読者の方はおわかりかと思いますが、それらは管理人がずっと前から提唱してきたことそのものなのです。でも、もちろん当ブログが報道を変えたなどと大風呂敷を広げるつもりもありませんし、「専門家」が当ブログの内容をパクったなどと決めつけるつもりもありません。もし本当にパクったのなら情けない限りですが(笑)ところで、管理人が言う「専門家」というのは、大半が商売絡みやメディアに登場するのを生業にしているような人たちですよ。念のため。

もちろん言うまでも無く、そのような考え方は決して管理人オリジナルの発想というわけではなく、状況を正しく判断すれば、誰もが同じ結論にたどり着くはずのものです。考えりゃ誰でもわかる、ということです。考えなくても、例えば一度でも豪雨の中に実際に身をおけば、周囲の情報などほとんど覚知できないことはすぐにわかるはずですし。今までそんなことを知らなかった、考えていなかった「専門家」がいたら、すぐに看板を下ろすべきですね。

そんなことより、問題はこの期に及ぶまでに、そういった「現実的な」警告やアドバイスが、何故ないがしろにされて来たのかということです。今まで、ただ二階にいれば助かった人が、どれだけ犠牲になったのか。

長きにわたり、豪雨の土砂災害対策と言えば、まずは例の「土砂崩れの兆候」みたいなのばかりでしたよね。おまけに、長靴履くなとかどうでもいいことばかりで。そんな情報ばかりに触れ続けた結果、現実にはとにか早く逃げるしかないのに、あたかも危険が迫るタイミングをいつでも覚知できるような、トリビアを知っていれば安全に避難できるような錯覚を刷り込まれていたのではないでしょうか?

ともかくも、現実的な情報がメディアに乗るようになったのは良いことです。遅きに失した感もありますが。


でも管理人に言わせれば、まだ不十分です。例えば時間雨量数十mmという雨の中を移動しようと思えば、傘などほとんど役に立ちません。さらに冠水の中では、手に荷物を持って歩くなど危険極まりありません。雨に濡らさず、水中に落とさないように抱えていたりすれば、簡単にバランスを崩して転倒するでしょう。

そんな場合は、まずはレインウェアやポンチョが必須で、荷物は防水性のあるリュックに入れ、両手を空けておかないとなりません。さらに、夜間ならば防水性能のある強力なライトが必要です。そして水中の障害物、水の逆流で開いたマンホール、側溝などを探知するために棒状のもので足下を確かめながら移動するのです。傘はたたんで、そのために使えるくらいでしょう。これが台風の豪雨ならば、さらに強風が加わるのです。

地震避難のための持ち出しグッズ情報はいくらでもありますが、地域によっては豪雨時の避難にも転用できる装備が必要です。しかし、そのようなアドバイスは滅多に見かけません。十分な装備が無ければ避難行動をためらいがちになり、避難のタイミングを失するという悪循環にも陥りかねませんから、上記のような細かい情報の啓蒙も必要なのです。

もっとも、そんなことがある程度安全にできるのは、体力のある大人です。お年寄りや子供には危険過ぎます。つまるところ、状況が穏やかなうちに安全な場所に移動するしかない、ということになります。このようなレベルまでの情報までを、限られた放送時間や誌面の中で、詳細に提供・解説することは、事実上不可能でしょう。しかし、知らなければそれなりの結果を招くことでもあります。


さらに、そんな知識や装備をいくら備えていても、判断能力が低ければ悪い結果になりかねません。現実には避難勧告や指示が出なくても危険な場合もあれば、勧告や指示があっても安全な場合もあります。最も大切なことは、今自分の身に迫る危険は何かを正確に判断できる知識と判断力を持つことであり、それらを涵養するための方法にも言及されなければなりません。

幸いなことに、最近はいろいろなメディアでリアルタイムに近い情報が得られます。正しい情報は正しい判断の必要条件ですから、各種メディアを活用するのは当然ですが、同時に「情報弱者と災害弱者」の存在も考えなければなりません。特にお年寄りです。この夏の豪雨でも、犠牲になっているのは多くがお年寄りです。それも、ほとんどが「回避できる」事例なのです。

そんな人たちが近くにいれば、早いうちにちょっと一声かけて状況を確かめておくだけでも、その後の対応が格段にスムーズになります。何も現場にいなくても、遠隔地のお年寄りには電話で「二階に上がれ」、「雨が弱いうちに避難所に行け」、「ひとりで出歩くな」などと伝えておくだけでも、状況は大きく変わります。せっかく連絡しても「大丈夫?」だけでは意味がありません。

というような事も含めて、さらにテレビ等のメディアが啓蒙に力を入れて欲しいと思っています。この夏のような厳しい気象状況は、この先間違いなく増えて行くはずなのですから。「こんなことになるとは思ってもいなかった」なんて報道は、もうたくさんです。


・・・などといろいろ書きましたが、とりあえずはもっとも認知度高いと思われるテレビの情報が変わりはじめたことは歓迎したいと思います。それに加えて、本稿で書いたようなことを、皆様ご自身で考えておいていただきたいと思います。場所や状況に応じて、ベストの方法はそれぞれ違うのです。

しかし、ほとんどは「考えればわかる」ことだと思います。いまあなたが置かれた状況で何が必要なのか、何をしなければならないかを、考えてください。まずそれができなければ、「専門家」のアドバイスもトリビアも無意味です。さらに、テレビなどのメディアで微細にまで渡る情報を提供することは困難で、提供された情報がすべてではありませんから、必ず不足があると考えて、その不足部分をあなた自身が考えて補ってください。行政やメディア任せにしていては、生き残れないこともあるのです。

当ブログの情報がお手伝いできれば幸いです。でも、あくまで「お手伝い」です。主役は、あなたです。


最後に。災害はこちらの都合など全く関係なく襲って来ますが、こと気象災害は迎え撃つ時間的余裕がありますし、起こり得ることは事前にほとんどわかります。しかしこの先、この考えだけは捨ててください。

「これまで何もなかったから、大丈夫だ」


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2013年8月24日 (土)

【豪雨災害】犠牲の原因と結果、そして対策

8月23日から、7月末に続いて山陰地方が再び豪雨に見舞われています。山陰地方に限らず、この夏の豪雨では北陸、東北など各地で多くの犠牲者が出てしまっていますが、その原因を考えてみましょう。


土砂崩れによる死者は、すべて建物の一階部分に流入した土砂に呑まれています。例外は新潟県長岡市寺泊で発生した土砂崩れで、家の背後の切り立った崖が崩れたことで、家が真上から押しつぶされました。

土石流による死者・行方不明者は、家ごと押し流されています。土石流はその名の通り泥土、岩石、さらに大量の倒木を巻き込んだ高速の水流のため、大抵の木造家屋を一気に崩壊させ、押し流します。鉄筋コンクリート造りでも、耐え切れるとは決して言い切れません。

屋外にいた死者・行方不明者は、すべて豪雨の中か、道路等の冠水が始まっている中を行動中でした。直接の原因がわからない例が多いのですが、多くの場合、深い水中への転落か、強い水流に流されたものと考えられます。

このような報道が増えるにつれ、管理人は非常に悔しい思いを積み重ねています。すべての事例は「回避可能」だったからです。「こういうことが起こる」、「こうすれば避けられる」ということがわかっていることが、そのまま起きてしまっているだけのことなのです。

一方で、本日(8/24)も続いている島根県江津市付近を中心とした豪雨によって、すでに何件もの土砂崩れが起き、巻き込まれた家屋の崩壊も複数発生しているとのことです。しかし本稿執筆時点では、土砂崩れによる死者・行方不明者・負傷者は出ていません。その理由は、崩壊した家はすべて「避難済み」だったからです。7月末の豪雨の教訓が生かされたということでしょう。


これらの事例から導き出されることは、確実に「生き残る」ためには、家財をあきらめてでも、本格的な豪雨になる前に「早めの避難」をするしかないということです。そしてそのためには、まず自分の居場所にどんな危険があるかを知らなければなりません。土砂災害や洪水、土石流に関しては、ハザードマップを見れば危険地帯がひと目でわかります。そして同じ危険地帯でも、木造の一軒家とマンションの上層階では、当然ながら取るべき行動が違います。

共通するのは、冠水したら自動車が水没するというくらいでしょうが、それだけでも早めに危険地帯を離れる意味があります。何も地域の避難所へ行かなくても、安全な場所ならどこでも良いのですから、「動けるうちに迷わず動く」ことが必要です。避難のタイミングを逃すと、道路が冠水や土砂崩れで寸断されることもありますし、時間雨量30~40mmを超えるような豪雨になると、自動車の運転自体が困難になります。特に夜間は大きな危険を伴いますから、記録的豪雨が予想される際には、とにかく豪雨になる前に「早めに動く」しかありません。


そのような状況で被害を受けやすいのは、どうしてもお年寄りということになりますが、危険地帯では、近所のお年寄りに声をかけて二階に上がらせたり、平屋だったら避難所へ連れて行ったり、丈夫な家の二階以上に呼んだりすることも必要です。

実際にそうやっている方々も多いはずなのですが、そういう「準備万端」の様子は、まずメディアに乗りません。メディアは常に「着の身着のまま」で「不安な一夜を過ごし」、「こんなことになるとは思わなかった」と答えるような、防災的には全く無意味の映像しか採り上げませんから。報道に迫力を添える、しかし見飽きて何の実感も無いネタでしかありません。

でもその裏には、準備万端で能動的に危険を避けている人々が必ずいるのです。メディアのカメラが意識して避けるような、そういうことができる人になろうではありませんか。何より、あなたとあなたの大切な人が「生き残る」ためです。


「過去に経験の無いような」豪雨に見舞われ、そのたびに犠牲者が増えて行くような現実を目前にして、メディアも「専門家」も、実際には察知できもしない「土砂崩れの兆候」とか「避難時に長靴を履くな」とか、そんなトリビアごっこをやっている場合ですか?最近メディアでも良く聞く「命を守る行動」って、どうすることなんですか?学校で教えてくれましたか?

「防災」の世界では、野球を見たことも無い人に野球をやれと言い、野球教本を読んだだけの人に試合に出ろというのと何ら変わらないことが普通にまかり通っている。そして、実は野球がヘタクソな監督がピント外れのこと言って威張っているだけだったりする、とにかく異常な状況です。しかも「試合」は一発勝負で、負けたら死ぬんですよ。

まあ、なにをかをいわんやです。確かなことは、この先「正しい意識・知識・装備」を持ち、正しい行動ができる人とそうでない人との間には、災害から「生き残る」力に、どんどん大きな差が開いて行く状況だと言うことです。

当ブログでは、カテゴリ「気象災害」に関連記事をまとめてありますので、併せてご利用ください。


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2013年8月22日 (木)

☆再掲載☆買い物編01【首都圏直下型地震を生き残れ!8/54】

■■当記事は過去記事の再掲載です■■

今回から、買い物中に大地震に遭遇した場合の対処を考えます。

一般に防災の話というと、どうしても「男性目線」になりがちなもので、自宅やその近所にいる時間の長い、主に主婦の皆様にとっては、あまりリアリティがなかったりします。今回は、男性も含めてハウスキーピングをしている皆様が遭遇する危険のうち、買い物に出ている最中に大地震に遭遇した場合を考えてみます。なお管理人は男性ですが、頻繁に日常の買い物に出ていまして、その経験と検証によって導き出された内容でお送りします。当ブログにアップする内容は、机上の空論ではありません。


日常の買い物において危険度が大きいと思われる場所は、スーパーマーケット(コンビニ、ディスカウントストア等も含む)と、いわゆる「デパ地下」やそれに似た場所です。まずはスーパーマーケット(以下スーパー)から考えてみましょう。

スーパーで大地震に遭遇した場合、考えられる大きな危険は、展示商品の崩落と天井の落下です。一般的なスーパーでは、基本的にはレジ以外に店員が配置されていないため、少なくとも揺れている最中に店員による避難指示、誘導はあまり期待できませんから、自らの判断と行動で危険を避けなければなりません。

一般に、広い店舗内で大地震に遭った場合、まず通路の中央で頭を守りながら姿勢を低くして、揺れが収まるのを待てと言われます。しかし幅が3m以上ある通路(これは避難動線として設定されています)ならともかく、棚の間の狭い通路やワゴンが並んでいる場所では、商品の崩落を完全に避けるのは難しいのです。

できることなら、最初のたて揺れ、例の「ドン!」や大きな「ガタガタ」を感じたらすぐに、できるだけ安全な場所へ移動したいものです。特に離れなければならない場所は、酒類、食器などガラスや陶器が多い場所、精肉、鮮魚コーナーなどガラスケースのある場所、家電品など重量物が多い場所です。

もし強い揺れが始まってしまっても、過去の地震における監視カメラ映像を見ると、崩れて来る商品が通路中央を直撃する可能性は比較的小さいので、とにかくスーパーやデパートなど陳列棚が多い場所ででは「通路中央へ」、できれば通路が交わる場所へ、これが基本です。スーパーやコンビニの陳列棚は、底部が幅広くて重心が低い構造のため、激しい地震でも、棚ごと転倒することはあまり無いと考えて良いでしょう。阪神・淡路大震災の直下型の震度7でも、建物が大きく傾いたような場合を除き、陳列棚ごと転倒した例は無いはずです。

ですから、まず揺れが大きくなる前に危険な商品がある場所をできるだけ離れ、床の上を激しく動く陳列棚にはじき飛ばされないように、通路の中央で姿勢を低く保つのです。陳列棚が存在することで、もし天井が広範囲に落下してきた場合でも、生存空間が残る可能性が大きくなるというメリットもあります。

そこで良く言われるのが、頭を守るために「買い物カゴを頭にかぶる」という方法ですが、管理人に言わせれば、これも机上の空論。確かにスーパーの買い物カゴは強度と耐衝撃性に優れているので、落下物から頭を守るためには効果的ではあります。でも多くの場合、買い物カゴにはすでに商品が入っているわけです。強い地震を感じた瞬間、その中身を床にぶちまけて頭にかぶれるかというと、なかなかそうは行かないのではないですか?そうしろと口で言うのは簡単ですが、それは防災ヲタ(笑)の管理人でも難しい。

ですからまだ買い物前か、手近に空のカゴがある場合以外は、その方法は現実的では無いのです。さらに、カゴをカートに乗せていることも多いはずです。ならば、そのカートを利用しない手はありません。

ところで、姿勢を低くする方法ですが、どんな体勢を想像されていますか?ニュースで見られるデパートなどの避難訓練では、バッグなどで頭を守りながら、通路にしゃがんでいる姿が見られます。しかし大きな被害が出るような地震の場合、しゃがんだだけでは確実に転び、床の上を転がり回ることになります。せっかく離れた陳列棚の近くに飛ばされ、商品の直撃を受けるかもしれません。特にハイヒールをはいている場合には、簡単に転んでしまいます。

姿勢を低くするとは、最低でも片膝、できれば両膝を床について、がっちりと踏ん張ることです。女性は、スカートの裾の乱れもストッキングの伝線も、イザとなったら無視するだけの心構えをしておきましょう。命がかかっているのです。実際には、四つん這いならなければ身体を確保できない、さらにそれさえ困難な揺れになることもあります。

そんな場合、重い商品を載せたカートが床の上を走り回り、身体にぶつかって来るでしょう。そのダメージもかなりなものになるはずです。そこで、姿勢を低くしながら、カートの脚をがっちりと捕まえるのです。キャスター付きのカートは、強い揺れの中では激しく動き回ろうとします。それをがっちりと捕まえ、全身に力を込めて押さえつけるのです。

その際に、管理人が考える理想的な体勢は、カートの下段に上半身を入れてしまい、床についた両膝を踏ん張り、カートの脚をしっかりと両手でつかむ形です。激しい揺れの中では容易ではありませんが、その体勢は、棚からの商品の落下、天井の落下、他のカートの衝突から身体を守る面積が一番大きくなります。特に一撃で命に関わる頭、首と上半身を、何がなんでも守らなければなりません。これはカートだけでなく、下部が開いたタイプの商品ワゴンでも可能です。

小さなお子さんが一緒だったら、カートの下段に押し込んでから、上段よりも姿勢を低くしてカートの脚をつかみ、思い切り踏ん張って暴れないようにします。親御さんの気持ちとしては、自分の身体でお子さんを守りたくなりますが、その他の方法があるうちは、ギリギリまで「一緒に生き残る」方法を採るべきです。自分の身体だけで守るのは、最後の手段です。


次に、天井の落下について。普通の天井があまり高くないビルならば、石膏ボードなどの天井材が落ちて来ても、それほど大きな衝撃にはならないと思われます。これに対し、ホールのような天井が高い建物の場合に多い「吊り天井」というタイプは、高い場所から天井材と固定金具がまとめて落ちてくることがあるので、非常に危険度が高いのです。

東日本大震災で、茨城空港ビルの「吊り天井」が落下した瞬間の映像をご覧になった方も多いと思います。できたての最新工法のビルでも、残念ながら地震で「吊り天井」の落下が起こるということの証明です。あの直下にいたとしたら、少なくとも頭と上半身を十分守っていなければ、致命的な結果になったでしょう。2005年の宮城県沖地震では、屋内プールの「吊り天井」が広範囲に落下して、泳いでいた人の多くが負傷しています。

天井の落下に関しては、この「吊り天井」が最も危険と考えられますから、普段良く行く場所に関しては、「吊り天井」かどうかを確認しておくことをお勧めします。建物の構造を見慣れれば、ひと目で判断することもできるようになるでしょう。ひとつの目安として、大型スーパー、空港や駅のホール、劇場や映画館、体育館など、柱の少ない、天井の高い建物に使われることが多いタイプで、その空間が広いほど落下の危険性が大きくなり、天井が高いほど落下の衝撃が大きくなります。

Googleで「吊り天井 地震 被害」をキーワードに画像検索すると、過去の被害例や典型的な構造の画像がたくさんヒットしますので、ご覧になってみてください。

また、スーパーやコンビニの店舗構造では、表側や出入り口付近に大きなガラス壁と電動の自動ドアがある例がほとんどだと思います。激しい揺れの最中に、無理に出口から脱出しようとすると、停電で開かなくなった自動ドアへの衝突、逃げ出そうと殺到する客のパニックやカラス壁の崩壊に巻き込まれる可能性が大きいのです。

さらに、屋外でも建物近く(目安として10m程度以内)では落下するガラス、壁面材、看板等の直撃を受ける可能性もあります。ですから、揺れを感じてから数秒以内に屋外の駐車場などに駆け出せる場合を除き、基本的には店内で揺れを「迎え撃つ」態勢を取ることになります。

ここに挙げた例に限らず、普段良く行く店などでは、常に安全性の高い場所や避難経路を意識し、「その時どうするか」というシミュレーションをしておく事が、「生き残る力」を最大限に上げる方法なのです。

次回は、「デパ地下」について考えます。


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ご愛読者の皆様へ

日頃より『生き残れ。Annex』をご愛読いただきまして、ありがとうございます。今回は、管理人からのメッセージをです。


管理人は時々、アクセスしていただいた皆様のリモートホストをチェックしておりまして、「co.jp」、「ac.jp」、「go.jp」のドメインから、ブックマーク経由で定期的にアクセスしていただいている皆様を認識しております。

中にはほぼ毎日アクセスしていただいている方(特定の個人の方かどうかはわかりませんが)もいらっしゃり、感謝に堪えません。何らかの形で当ブログがお役に立てていれば幸いです。

そこで、上記ドメインからアクセスしていただいている皆様に、メッセージをお送らせていただきます。

管理人は、防災関連の資格はNPO法人日本防災士会認証の「防災士」及び、公的資格の「防火管理者」を持つだけの、市井のいち防災研究者です。主宰する「SMC防災研究所」としても、現時点では特段の活動をしておりませんし、公的な実績もありません。

しかし、長年に渡る災害対策関連の情報収集及び研究実績、かつて大型イベント運営業務に関わっていたことによる危機管理や群衆管理等に関する豊富な経験、東日本大震災後に福島県を中心とした被災地でのボランティア活動に従事した経験を有しております。それらを当ブログ『生き残れ。Annex』の内容に反映させておりますが、ブログで表現しきれない部分が非常に多いのも事実です。

目指すところは、机上の空論や無意味なトリビアなどを徹底的に排した、「本当に役に立つ」個人レベルの災害対策の実現であり、話題性やインパクト優先で、しかも間違いだらけの「防災情報」の氾濫に、強い危機感を抱いております。

そのような管理人のプロフィール及び知識、経験等が皆様の業務や研究のお役に立てる部分がありましたら、直接ご連絡をいただければ、ご相談の上、協力もしくは業務請負させていただく意思があります(SMC防災研究所として個人事業登録をしております)。

もちろん一切の秘密は厳守いたしますので、下記アドレスまでメールにてご連絡いただければ幸いです。PC・スマートホンからは、トップページの「メール送信」からでも結構です。

上記ドメイン以外の皆様も、何かお役に立てるご用がありましたら、お気軽にご連絡ください。どうぞよろしくお願い申し上げます。


『生き残れ。Annex』管理人 てば拝

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2013年8月21日 (水)

避難ってなに?【露店爆発事故について】

先日、京都府福知山市の花火大会会場で露天の爆発事故によって三人の命が失われ、多くの方々が重傷を負われました。楽しい花火大会を地獄のように変えた事故の原因は、論評の価値も無いほどのくだらない過失でしたが、そんな「想定外」の危険も、身の回りにはいつでも存在するということでもあります。

さて、今回管理人がこの事故を採り上げるのは、事故原因についてではありません。事故直後に撮影された映像に、非常に気になる点があったからです。

まず、野次馬が近すぎる。映像からは、火点から20mくらいしか離れていないように見えます。今回の火元は発電機用のガソリンでしたが、露店にはプロパンガスボンベもあります。そこが猛火に包まれているのに、あの程度の距離しか取らないなど、自殺行為に近いのです。

たまたま二次爆発があの程度の規模だったというだけですが、あの規模でも条件によっては特定の方向に火炎が伸びたり、破片が飛散したりすることも考えられます。ガソリンの量がもっと多ければ、火のついたガソリンが周囲に降り注いだでしょう。プロパンガスボンベに火が入ればバルブから火炎放射器のように火を噴きますし、爆発すれば破片の飛散と共に、ボンベ自体がミサイルのように高速で吹っ飛び、100m以上飛ぶこともあります。もしあの距離でそれが起こったら、野次馬にも重大な被害が出たでしょう。

これは「自己責任」とかの話ではなく、知識不足と現場の興奮から災害をナメてかかっているだけのことで、今回はたまたまあれで済んだ、というだけの話です。被害者を助けたいと考えていても、何もできないならば、すぐに現場から十分な距離を取らなければなりません。


実は、それ以上に気になったが、会場の放送です。ひたすら「現場から避難してください」と繰り返しているのが聞こえます。しかし、それでも野次馬はほとんど動いていないのですが。

ああいう現場に自ら近づいて動画とか撮ろうとする馬鹿はともかく、どうして良いかわからずに立ちすくんでいる人も少なく無かったと思います。その人たちに対して、ただ「避難してください」と繰り返しても、あまり効果はありません。危険を感じた人たちは、すでに避難した後なのです。残っている人は混乱しているか、危険度を軽く考えている人です。

そこで呼びかけられた「避難」とは、一体どうすることなのでしょうか?これは「大雨に注意してください」とか「土砂災害を警戒してください」のように、とりあえず言っとけくらいのものでしかありません。呼びかける方がいくら必死でも、結果的にその程度のものです。


ではどうすべきかというと、そこに具体的な内容の指示が含まれなければなりません。もし管理人があの場面でマイクを握ったら、こう言います。

『火元から100m以上離れてください!まだ爆発の危険があります。100m以上離れてください!爆発で破片が飛び散ります!』

それでも動きが無ければ、『ただちに火元から離れろ!100m以上離れろ!』と命令口調で言うでしょう。そこで命令の権限があるの無いのとか気にするようでは、危機管理能力の欠如としか言えません。何故100mかというと、指示に従う人でも、実際には100mも離れやしないという事を織り込んでのことです。でも、50mも離れれば、二次被害の可能性は大きく下がります。

これはひとつの参考ですが、米国の消防士が着るTシャツの背中には、伝統的とも言えるこの言葉がプリントされていることが多いのです(下画像)
Keepback200ft
「Keep back 200feet」、つまり、消防士が活動する姿を見たら200フィート(約60m)以上退がれというのが、米国での「常識」になっており、至って現実的な指示です。それ以上近寄れば二次被害の危険が大きいし、消防活動の邪魔だぞ、というメッセージなわけです。米国ではこれが社会的コンセンサスを得ていますから、そのまま200フィートという指示で良いわけですが、それが無い場所では、かなり大袈裟でないと現実的な安全距離を保てない可能性が大きいのです。


このように、災害直後の恐慌状態の群衆をコントロールするには、具体的な内容の指示を、はっきりと自信に満ちた口調で伝えなければなりません。群衆に対し、その指示に従えば状況が好転するという希望を与えることができなければ、より不安を煽り、混乱を拡大することにもなりかねないのです。

それを実現するためには、大人数が集まるイベントや施設運営者は普段からあらゆる危険を想定し、それぞれに具体的にどのように対応するかを決めて、それを共有していなければなりません。スタッフだれもが同じ対応をできなければならないのです。通り一遍の「避難してください」など、実際の混乱の中ではBGMくらいの効果しか無いと考えなければなりません。

詳しくは触れませんが、このような考え方は、東日本大震災で津波避難を呼びかける放送においても実証されたことだということを、改めて思い出していただきたいと思います。


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☆再掲載☆オフィス編04【首都圏直下型地震を生き残れ!7/54】

■■当記事は過去記事の再掲載です■■


今回は「プレート境界型(海溝型)地震」の特徴についてです。なんだかオフィスに限らない話になって来ていますが、これはすべてのケースに共通することですので、このまま続けます。

ひとつ注釈しておきますと、内陸直下でもプレート境界型地震は発生します。例えば、懸念される南関東直下型地震もプレート境界型となる可能性がありますが、ここではプレート境界型のうち、海底のプレート境界である海溝付近で発生する、いわゆる「海溝型」地震について考えます。

「内陸直下型地震」の典型例は阪神・淡路大震災や新潟中越地震、東日本大震災翌日の、長野県栄村地震などです。これに対し、「プレート境界型(海溝型)地震」は、東日本大震災や、想定される東海・東南海・南海地震など、いわゆる南海トラフ地震が該当します。「内陸直下型地震」との違いは、震源が海底で、ある程度陸地からの距離があり、津波が発生する可能性が高いということです。

震源と陸地の距離が開いていると、いきなり「ドン!」と突き上げられるのでは無く、最初のたて揺れ「初期微動」はガタガタ、ビリビリという感じになりやすくなります。これは東日本大震災で実際に感じられた方も多いことでしょう。

そして震源と陸地との距離が長くなるほど、速度の違う「初期微動」(P波)と次に来る横揺れ「主要動」(S波)が観測点に到達する時間差が大きくなり、一旦おさまりかけた後、大きなよこ揺れが来るように感じることもあります。もちろん、震源が陸地により近ければ、たて揺れからよこ揺れへ途切れなく続くこともありますが、「内陸直下型地震」のように、たてよこが混ざった激しい揺れに、いきなり襲われる可能性は小さいのです。つまり、我々が「緊急モード」に転換し、避難行動を取る時間的余裕が多少は大きいといえます。

ところで、かつてはこんな地震標語がありました。
「1分過ぎたらもう大丈夫」
確かに、ほとんどの場合はそうなのです。地震が「単発」ならば、大きな揺れが1分以上も続くことはまれです。ところが、東日本大震災で経験したように、複数の震源が連鎖した場合は、さらに長い時間に渡って揺れが続きますし、本震が収まらないうちに、大きな余震がいくつも発生することもあります。

しかもその場合、連鎖のパターンにもよりますが、しばらく小さな揺れが続いた後、突然大きな揺れが来ることもあります。東日本大震災はこのパターンであり、多くの皆様の記憶にも新しいところでしょう。ですから、最初の揺れが大したこと無いと感じたからといって、すぐに警戒を解いてはいけません。複数震源域が連鎖した場合、例えば震度4くらいから、震度6~7クラスに発展することもあり得るということです。

震災後、東日本を中心に連日のように地震が続いているせいもあり、すぐに「この程度なら大したことは無い」と判断してしまいがちですが、やはりいま一度、あの震災の体験を思い起こすべきでしょう。もし東海・東南海・南海地震が短時間で連鎖した場合は、今度は関東から九州までの地域の方が、「あれ」を体験することになるのです。


「内陸直下型地震」の場合は、複数震源が短時間で連鎖する可能性はあまり無いと考えられます。これに対して「海溝型地震」の場合は、海溝に沿って「地震の巣」が並んでいるわけですし、ある程度の期間内における連鎖は、過去何度も起きていることがわかっています。でも東日本大震災のような激烈な規模とごく短時間での連鎖は、具体的にはあまり想定されていませんでした。

しかしとにかくあの震災が実際に起き、大規模な地殻変動の影響によって、日本列島全体が震災前より地震が起きやすい状態になっているのは間違いないのです。

本題からだいぶ離れてしまいましたが、最後にまとめを。

最も危険な揺れが発生する、大きな「内陸直下型地震」の場合は、震源の近くでは「ドン!」や「ドドドッ!」という突き上げを感じることが多く、その場合はすぐ直後に強い揺れが襲って来るので、最短時間で身の安全を確保する行動をしなければなりません。一刻の猶予もありませんから、「ここで地震が来たらどうするか」という視点で、普段から取るべき行動を考えておくことです。

一方、大きな「海溝型地震」の場合は、最初のたて揺れは「内陸直下型地震」ほど激しく無い「ガタガタ」、「ビリビリ」という感じになりやすいのですが、そこで地震の規模を安易に判断せず、すぐに避難行動に移る必要があるのは変わりありません。そして複数震源が短時間で連鎖した場合には、比較的小さな揺れから突然大きな揺れに変わることもありますので、常にその可能性を考えて、危険が完全に去ったと判断できるまで、避難行動や身を守る行動を続けなければなりません。

震災後、震度5弱程度の地震は珍しくなくなりましたし、東日本を中心に多くの方がその規模を体験されています。でも事実上、その程度の震度では大きな被害が出るほどではありません。しかし、過去に広範な被害が出るような地震を体験されていない方も、それ以上、つまりご自分が体験された最大の地震より「大きい」と感じられたら、様子を見たりせず、迷わず避難行動に移ってください。そして、最も安全で効果的な避難行動のために、普段から「その時、その場所ではどうするか」を具体的に考え、必要なものを揃え、できるだけ実際に動いてみてください。それが「生き残る力」を確実に強くします。


・・・などと言う内容は、シリーズ最初に書くべきでしたね。それではこれから、オフィスに続いて都市生活のいろいろな場面における避難行動について、具体的に考えて行きます。

正直なところ、この辺まではそれほど珍しく無い内容ではありますが、この先は管理人独自の、妙にうがった目線(笑)でお送りします。


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2013年8月19日 (月)

まだこんなこと言ってる

たまたまなんですけど、ネットでこんな記事を見つけました。語っているのは、当ブログでも何度もツッコませていただいている、テレビにも良く出る防災の「専門家」Y氏です。女性誌の記事のようです。

豪雨災害について述べているんですけどね。まず、このコメントを一部要約の上、引用させていただきます。

(以下引用)
『1時間あたり20mm以上の降雨量の場合、車のワイパーの効果がなくなる上、冠水した道路を走るとブレーキがきかなくなる恐れがある。低地の立体交差道路などに入って、そこが冠水して身動きが取れなくなるケースも多く、集中豪雨のときに車で避難するのは非常に危険です』
(引用終了)

時間降雨量20mmでワイパーの効果が無くなるとは、何か実験データでもあるんでしょうか。いいえ、それくらいでは全然平気です。管理人は実験データなど持ち合わせていませんが、実地の経験は山ほどあります。というか、この人はその程度の雨の中も車で走った事が無いんでしょう。現に、もっと凄い豪雨の中を車が走っている映像、ニュースで普通に流れてますけどね(笑)

さらに、ブレーキが効かなくなると。管理人、これ見て本気で笑いました。この方、確か60代以上だと思いますが、30年くらい前で時間が止まっていらっしゃるようで。

今の車が装備しているディスクブレーキは、水の中を走っても効かなくなることはまずありません。水中や水から上がった直後では、踏み込んだ最初の効きが甘くなることが多いですが、深く踏めばきちんと止まります。冠水の中を走って効かなくなることがあったのは、フロントブレーキとしては30年以上前に事実上絶滅した「ドラムブレーキ」の話。

現在でも、リアブレーキにドラム式を採用している車は少なくないですが、フロントのディスクブレーキが効きますから、ほとんど問題ありません。ドラム式は、密閉性の高いドラム内部に水が入ると排出されず、摩擦を発生させるブレーキライニングとドラム内部の間の水が潤滑剤の働きをして、ブレーキ力が極端に落ちることがあるのです。

ちなみに、かつてオフロードライダーだった管理人は、ドラムブレーキ時代のバイクで川の中などを走り、この現象は何度も経験しています。その後ディスクブレーキ時代になって、皆無となりました。もちろん車でも同じことです。

しかしまあ、こんなのはとっくに「死語」の類だと思っていましたが、今更また出会えるとは(笑)でもこれが「専門家」の発言なんだから、笑い事じゃないですよ。もっとも、車やバイクの専門家は、今は絶対こんなこと言わないですけど。うろ覚えの古い知識しかなくても仕事できるんですね、この世界は。


「低地の立体交差に入って、そこが冠水して・・・」ってのもおかしな話です。立体交差、いわゆるアンダーパスでの水没事故は、ほぼすべて冠水に気付かず、または大丈夫だと思って進入した結果、水没しているのです。ですからこんな結果論ではなく、専門家がアドバイスすべきは「豪雨の中で、見通しの効かないアンダーパスや冠水している部分には絶対に入ってはいけない」ということのはずですが。

それに、当ブログでも何度も述べていますが、冠水しそうな時には自動車の避難も大切です。こんなピントのずれたアドバイスだけを真に受けて、何十万円や何百万円の財産をみすみす潰す人、いたらかわいそうすぎる。もちろん程度問題ではありますが、20mmの雨量であきらめる必要は絶対にありませんよ。実際、時間雨量20mm程度の雨では、大雨洪水警報だって滅多に出やしません。


次に、またもや登場のこれ。豪雨避難時の靴の話。

(以下引用)
『(避難の際は)長靴は避けましょう。水や泥が入ると動きづらくなるので、紐をきつく縛ることができる運動靴で逃げましょう』
(引用終了)

長靴の浸水対策は当ブログでも過去にやっています。でもそれができなくても、管理人は長靴を履くなとは言いません。確かに、水や泥が入れば動きづらいし脱げ易い。でも、長靴にはそれ以上のメリットがあります。

上記コメントの中の大きな間違い、皆様お気付きですか?上記のコメントでは「運動靴」と言ってます。確かに、紐をきつく縛れば脱げづらくはなるでしょう。でも、ローカットの靴ならば、深い泥にはまったら簡単に脱げますけどね。それはさておき、もっと大きな問題は、「底」、つまりソールです。いわゆる「運動靴」、つまりスニーカーやランニングシューズの底は、基本的に舗装や平坦地に対応していますから、あまり深い溝がありません。そんな靴で泥の中を歩いたら、すぐに泥が詰まってツルツルになってしまいます。

ですから、実際には紐で縛れる靴というだけでなく、くるぶし以上の高さがあるハイカット型で、ソールが登山靴、トレッキングシューズ、コンバットブーツのようなブロックパターン底の靴でなければ、水や泥の中を安全に歩くことはできません。ゴム長靴のソールは、そういう場所を安全に歩くのに非常に適したパターンなわけです。泥や水の中で使うための靴ですから当然なんですが。

「水が入る前に入った後のこと考える奴がいるかよ!」ってな話です(笑)それに、入らないようにする手段はありますし。それより、まず足元の悪路を確実にグリップできる性能を管理人は選びますね。

この「避難時に長靴を履くな」という話も、随分と前から言われているのですが、こんなものは自分で泥や水の中など歩いたことも無い人間が頭で考えただけの、机上の空論に過ぎません。こんなのがいまだに大手を振って、トリビアごっこをやっているのが、この「防災」って世界なんですよね。

とにかく、「専門家」に対してこんな低レベルのツッコミをしなければならないことに、管理人は腹立たしさを通り越して、いつも悲しくなってしまうのです。人の命がかかっていることが、この程度で許されるのかと。異論反論がありましたら、どなたからでも是非伺いたいものです。


■長靴の浸水対策についての過去記事はこちらから


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【EDCグッズ13】自動車に備えるEDCグッズ 01

■EDCとはEvery Day Carryの頭文字。毎日持ち歩く装備を意味します。

今回から数回にわたり、自動車の中に備える防災EDCグッズについて考えます。

もっとも、自動車を日常的に使わない方も多いとは思いますが、自動車は非常時のシェルターになり、状況によっては避難にも使えますから、その中にある程度の防災グッズを装備しておくことはとても有効です。ですから、自動車内の防災装備もEDCグッズの範疇として考えます。なお、ここでは主に自家用車について考えますが、事情が許せば、事業用車の中にもある程度の装備は欲しいところです。事業主や車両管理者の皆様、仕事中の社員の安全のために、是非お考えいただければと思います。

さて、まずは自動車自体を「防災グッズ」のひとつとして考えてみましょう。その能力は、移動できること、多くのモノを運べること、そして、車内に安全に長時間滞留できることです。すなわち、自動車は災害時に「移動式シェルター」となるわけです。その一方で、移動中に様々な場所で様々な災害に遭遇する危険性もありますから、自動車に備えるEDCグッズを考える時は、そのような要素に対応するものでなければなりません。


そこで、まず何より大切な、すべての自動車に共通する「EDC装備品」があります。なんだと思いますか?

特殊なものではありません。答えは「燃料」です。しかし、予備燃料タンクを常時積んでおくのは、あまり一般的ではありませんね。では、皆様は普段、どのタイミングで給油しますか?燃料計がEを指すくらいまで給油しない方も多いのではないでしょうか。もしその時何らかの災害に遭遇し、インフラが途絶したら。

東日本大震災の後、しばらくの間は広範囲で燃料の供給が滞ってガソリンスタンドは長蛇の列となり、あっと言う間に品切れで休業してしまいました。その経験から、給油のタイミングを早めるようになった方は多いと聞きますが、あれから約二年半が経ち、今でも実行されている方は、かなり少なくなっているのではないでしょうか。

最近は災害対応ガソリンスタンドもありますが、決して数は多くありませんし、都市部では確実に長蛇の列になります。特に大地震の際は、長期間にわたって燃料の輸送に支障が出る可能性が高く、発災後しばらくは、十分な量が供給されることはまず無いのです。そして災害時には自動車を「避難所」に使う例も多いわけで、移動する必要が無くてもエアコンを作動させたい時もありますから、燃料の余裕は必須です。さらに、居場所に危険が迫ったとしても、燃料が無ければ自動車を放棄するしかありません。それ以前に、燃料が無ければ燃料を入れに行くこともできないのです。


その対策は、特に解説の必要も無いでしょう。早めの給油、これに尽きます。一般的な乗用車の燃料タンク容量は50リットルくらいのものが多いので、目安としては、燃料が半分になったら、すかさず満タンにしておくくらいでしょうか。管理人はできるだけ「常時半タン以上」を維持するようにし、残量が絶対に20リットルを下回らないように気をつけています。

非常に大雑把に言ってしまえば、アイドリング1時間で約1リットルの燃料を消費するくらいですから、タンク半分あれば20時間くらいはエアコンが使えるし、移動するなら最低でも約100km程度、燃費の良い自動車ならば200km以上、車種や条件によっては300km以上移動できるわけです。

問題としては、まず最近の低燃費車は、燃料タンクの容量が少ないものがあるということです。特に軽自動車は、20〜30リットル容量のものが出てきています。走行時の燃費が良くても、停止してエアコンをかけている状態では、燃料消費量は通常車とそれほど変わらないか、条件によっては多くなることもありますから、まずはご自分の車の燃料タンク容量を把握し、その上で給油のタイミングを考えてみてください。

そしてもうひとつの問題は、電気自動車です。電気自動車は、停電時に電気を供給できる蓄電池としての機能もあり、フル充電状態の中型電気自動車ならば一般家庭の数日分と言われる容量があります。それが機能すれば災害時には強い見方ですし、節約して使えばさらに伸ばすこともできるでしょうが、それができるのは専用の充電・放電設備がある一戸建て住宅に限られます。

電気自動車はエアコン、つまり冷房も暖房も当然ながらすべて電気で作動させますが、電動エアコンは非常に電気を食います。特に暖房は、エンジンの廃熱が無いために「電熱ヒーター」を作動させますから、これが下手をすると冷房以上に電気を食うわけです。残念ながら、管理人はフル充電の停止状態でのエアコン作動可能時間を示すデータは持ち合わせていませんが、やはり乗車後は常時フル充電を心がけておくしか無いようです。

今回は、まずは自動車と燃料というハード面から考えて見ました。燃料は、主にエアコンを作動させるために使うことを想定していますが、車内に防災EDCグッズを装備しておくことにより、エアコンの作動をより少なくし、燃料を節約することもできます。

次回からは、それも含めて、車内に装備しておきたいEDCグッズを考えて行きます。


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2013年8月16日 (金)

☆再掲載☆オフィス編03【首都圏直下型地震を生き残れ!6/54】

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ここまで、大地震におけるオフィス内の危険と、それを避ける方法について述べて来ましたが、その内容が多岐に渡るので「全部覚えられないよ」と思われた方も多いと思います。でも長々と書いた割には、実は大した事は言っていません。要は、下記の二点に過ぎないのです。

◎モノから身体を守れる場所に行け
◎ガラスには近づくな

ただこれだけのことを、オフィスのいろいろな状況に当てはめただけであり、それがオフィスに限らず、地震の第一撃から生き残るために必要な行動なのです。ですから、この二点だけを念頭に、皆様の居場所での行動を考えてみてください。

さて、今回は、どのような状況になったら「平常モード」から「緊急モード」に転換し、避難行動を始めるべきかを考えます。ただしこれはあくまでも目安です。できることなら、震度3程度の「大したことない」と感じる地震でも、意識して行動するか、少なくとも「どのように行動すべきか」考えることを習慣にすることで、「本番」での行動が確実に変わり、貴重な「命の一秒」を稼ぐことができるはずです。小さな地震は、抜き打ち予行演習の機会と考えましょう。

では「本番」では何が起きるのでしょうか。まずは最も危険な揺れとなる「内陸直下型地震」の場合です。

「内陸直下型地震」の際に、震源の直上または近くにいると、地震の最初のたて揺れ「初期微動」(P波)が到達した時に、下から「ドン!」と突き上げられるような揺れを感じます。この「ドン!」を感じたら、まず内陸直下型の震度4以上を覚悟しなければなりません。すぐに「緊急モード」に転換です。

さらに「ドーン!」、「ドドドドドッ!」、「ゴーッ!」というような地鳴りを伴う場合は、さらに大きな地震と考えて間違い無いでしょう。ましてや、突き上げによってデスク上の物が飛び上がったりしたら、これはほぼ間違いなく巨大地震です。大きな地震の場合、「ドン!」は大抵一発ではなく、続けて「ドン!ドン!ドン!」または「ドドドドド!」と来ることが多いはずです。そうなったら、一刻を争います。

地震の最初のたて揺れである「初期微動」(P波)は、その後に到達するよこ揺れ「主要動」(S波)より地中を伝わる速度が速いので最初に感じるわけですが、建物などに対する破壊力はあまり大きくありません。ここでいきなり耐震性の高い建物が倒壊することありませんし、立っていられないほどの揺れになることも、まずありません。

問題は、その後です。P波よりはるかに強大な破壊力を持つよこ揺れ、「主要動」(S波)が、すぐその後を追いかけて来ているのです。P波が地中を伝わる速度は秒速5~7km、S波は3~4kmです。つまり、深さ10kmの震源直上にいる場合、P波を感じてから3秒以内に、激しい横揺れが襲って来るのです。余談ながら、Pはプライマリ(=一次)、Sはセカンダリ(=二次)の頭文字です。

前出の、阪神・淡路大震災でのNHK神戸放送局内のYoutube映像をもう一度視てみてください。仮眠していた人が、「ドン!」を感じて身体を起こしてからほぼ3秒後に、猛烈なよこ揺れが襲って来ています。阪神・淡路大震災の震源深さは約10kmですから、あれが直下型の震源直上付近における典型的な状態です。

なお緊急地震速報のシステムは、最初のP波を震源近くのセンサーで感知してS波の到達を予告するものですから、震源直上または直近では、揺れの方が先に来るか、良くても揺れと同時くらいになる可能性が大きくなります。緊急地震速報の発報は、震源近くでP波を感知してから5秒後くらいなのです。

そう考えると、最初の「ドン!」を感じた瞬間に行動を起こすことの大切さがおわかりいただけるでしょう。事実上、その瞬間にいる場所からあまり離れられないまま、激しい揺れに襲われるのです。ですから、普段から「この場所にいたらどうするか」という視点で、「本番」で取るべき最短時間での行動をシミュレーションしておかなければなりません。もちろんこれはオフィスに限らず、すべての場合に共通することです。

次回は、「プレート境界型(海溝型)地震」の場合について考えます。でも、地震のタイプなどその瞬間にはわかりません。今回の記事で覚えておいていただきたいことは、「ドン!」が来たら、最も危険で、最も時間的余裕が無い地震だ、ということです。


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2013年8月15日 (木)

☆再掲載☆オフィス編02【首都圏直下型地震を生き残れ!5/54】

■■当記事は過去記事の再掲載です■■

今回は、多くの場合で地震対策を済ませた一般家庭よりも危険要素の多いオフィス内で生き残るために、どのような判断をし、どのような行動をするべきなのかを考えます。

大地震から生き残るために、すべての建物内で共通する要素とは、「生存空間の確保」と「飛散物からの防護」です。さらに「火災からの避難」がありますが、それは別稿でまとめます。

まず、何より「生存空間の確保」です。わかりやすく言えば、転倒物、落下物がぶつからない場所に、身体全体を入れることです。その点、オフィスには頑丈なデスクがあるのが普通ですから、それは大きなメリットです。事務用デスクは、建物が倒壊した場合でも、高い確率で生存空間を確保できる頑丈さがあります。

ところで、皆様はご自分が使っているデスクの下に、実際にもぐってみたことがありますか?いざやってみると、これが意外に難しいはずです。特に身体が大きな人は、一番守らなければならない頭部を入れると、背中や足がはみ出してしまったりしませんか?そこに物が落ちて来たら、大きなダメージを負ってしまいます。

ましてや、デスクの下に段ボール箱やPC関係機器があったりすると、さらに困難になります。ですから、まずはご自分のデスクに実際にもぐってみて、邪魔になるものをできる限り排除しておかねばなりません。揺れが激しい場合は、もぐったデスクごと激しく振り回されますから、デスク脚などをつかんでがっちりと身体を確保していないと、デスクの下からはじき出されてしまうかもしれませんので、そのような体勢を取れる状態にしておくことです。自分のデスクは、あなた専用の最も身近で有効な地震シェルターなのです。

でも、どうにも潜り込めない場合や、自分のデスクについていない時もあります。そんな場合に、普段からの「観察」がモノを言います。

まずはご自分のオフィス内で、普段から倒れそうなキャビネットや棚などの場所と倒れる方向や、激しい揺れで暴れやすいキャスター付きのコピー機などの場所を把握しておき、揺れを感じた瞬間にその場所から離れるのです。これは普段から意識していれば、ほとんどの場合2~3秒もあれば可能な行動です。重要なことは、最大の揺れが始まる前に危険の少ない場所に移動し、揺れを「迎え撃つ」体勢を整えることです。

そんな動きを実際に何度も繰り返しておけば、その瞬間に足がすくんで動けなくなる可能性も小さくなります。大きめの地震に遭った時に動けなくなった経験のある方は、特に「訓練」を繰り返しておくべきです。

さらに、オフィス内で「生存空間」ができる場所を普段から見つけておくことです。たとえば、デスクの間の通路に伏せれば、大抵の転倒物や天井の落下から身を守れます。デスクのすぐ後ろにキャビネットなどがある場合は、デスクに身を寄せて伏せれば、キャビネットが倒れても、三角形の生存空間が残ります。この場合は、ガラス扉のついたキャビネットや、載せたものが落ちてくるオープン棚は避けなければなりません。

窓側の通路も基本的には避けるべきでしょう。最近は飛散対策を施したガラス窓も多いのですが、その効果が絶対だとは言い切れませんし、対策を施していない場合は致命的な結果になる可能性が大きくなります。

デスクと壁の間の、目安として2m以下の間に入るのは危険です。激しい揺れの中では、滑り止めを施していないデスクは床の上を大きく動き回るので、壁との間に挟まれる可能性があります。

パーティションや内装材ではない、建物の躯体(くたい)、つまり建物そのものの頑丈な壁や柱が近くにあれば、それに身を寄せて姿勢を低く保つのも良いでしょう。その場合は、周囲からの転倒、飛散物から距離を置けることが必要です。

そのような行動の際には、いずれの場合も頭部を守らなければなりません。手近にあるファイル、バインダー、書類の束、膝掛け、座布団など何でも使えます。そして、特に後頭部から首の後ろ側を守ります。何も無い場合は両腕で頭を抱えるだけでもかなりの効果があります。腕を負傷しても、頭や首を傷つけるよりはマシというものです。

これが訪問先の他社オフィスになると、ごく限られた情報で判断しなければなりません。応接室やパーティションで区切られた商談スペースなど、自分の居場所でもっとも効果的な行動は何かを、頭の隅ででも意識しておくべきです。

建物に入る以前には、まず建物の周辺にどのような危険があるか、避難場所はあるか、旧耐震基準の古い建物ではないか、非常階段の位置はどこか、オフィス内が見えるならば、倒れそうなもの、倒れる方向、それを避けられるデスクの間や、倒れても三角形の空間ができる場所、コピー機の位置などを探す「防災の目」で見ておくことです。これは慣れれば1~2秒もあればさりげなく行えるはずです。あまりキョロキョロして不審がられませんように(笑)

ちなみに、もし管理人が応接室に通されたら、まずはありがちなガラス扉付きのキャビネットや展示棚、ガラス入りの額に入った絵画や窓の位置を確認し、逃げるべき方向を考えます。そしてもし大地震が来たら、バッグで頭を守りながらソファに身を寄せて伏せ、生存空間を確保するでしょう。その時まず自分の身を守るのを優先するか、取引先の人をかばうのかは、皆様ご自身の判断で。

でも、もし取引先の人が固まってしまっていたら、管理人なら大声で「床に伏せる!頭を守る!」と命令口調で言いながら、突き飛ばしてでも伏せさせると思います。それがベストと判断できるなら、ためらわないことです。ちなみに管理人、かつては二十年以上に渡って営業マンでした。

ところで、この「頭を守りながら伏せる」という行動は、普段からかなり意識や訓練をしていないと、なかなかとっさにはできないものです。特にオンタイムである仕事中は、服を汚したく無いという意識や「きっと大丈夫だろう」という意識が強く働きやすいものです。

これは「正常化バイアス」と呼ばれる心理状態です。人は日常が破壊されることを望みませんから、危険な状態を認識しても、それを自ら積極的に否定または過小評価(=正常化)しようとしてしまうという、だれもが陥りやすい心理なのです。それは管理人も含め、普段から防災を意識している人とて例外ではありません。つまるところ、最短時間で効果的な避難行動を取るためには、この「正常化バイアス」を超えられるかどうかにかかっていると言っても過言では無いのです。

そのためには、まず人は自分に迫った危険を過小評価しがちになるという事を自ら認め、その上で正しい知識をもって、できるだけ正確な脅威評価をしなければならないのです。とは言え、それは口で言うほど簡単なことではありません。

そこで次回は、どのような場合に緊急避難行動に移るべきかという目安について、考えてみたいと思います。


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2013年8月13日 (火)

超超満員のコミケで防災を考えたら・・・

先日、管理人は東京ビッグサイトで開催されたコミックマーケット(通称コミケ)に初参加してきました。いろいろヲタ趣味の多い管理人ではありますが、アニメやゲーム方面へはあまり行っておらず、今まで参加したことは無かったのです。でも今回、知人がコスプレイヤーとして参加するので(アニメ系じゃないですが)、応援がてら行って来ました。

ところで管理人は、かつてイベント業に関わっていて、主に使っていたのがビッグサイトでした。ですから表も裏も業務レベルで熟知していまして、そこで開催される最大のイベントであるコミケのオペレーションがどんなものか、業界人目線でも気にはなっていたのです。実地で見て思いました。いや、参加者も運営も実に見事なものですね。

現場の運営はボランティアスタッフが主ですが、各員がやるべきことをきちんと把握して、無駄なく行っているのを感じます。ビッグイベントだと、そうでも無いこと多いんですよ。管理の手際良さに加え、ボランティアならではの意識の高さもありますね。そして参加者や来場者も、コミケの「流儀」を良く理解している人が多いようで、「日本最高の」混雑の割りには、混乱に繋がるような要素はあまり見られませんでした。もしここで大地震とか来ても、かなり統制の取れた避難行動が出来るんじゃないかとも思いました。

それでも、三日間で約58万人(過去最高だそうで)+出展者+スタッフが集まる会場は、いずこも大混雑です。
ホール内は、出展スペースと来場者でびっしり。
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ホール間通路は、常時この混雑。
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エントランスの広場はこの通り。
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管理人は三日間で10万人くらいが来場するイベントに関わってましたけど、全くレベルが違います。それでも、見る限り実にスムースに運営が行われているのは、経験の蓄積もあるでしょうが、やはり運営、参加者、来場者すべての意識がかなり高い、稀有なイベントだという印象を受けました。

さておき、会場はどこも大混雑、外は炎天で舗装上の温度は楽に40℃以上、さらには雷雨が予想されるとあっては穏やかではありません。開催初日にはいつもより倍増させた救護スペースから熱中症患者が溢れたとか。建物内に休憩スペースは特に設けられず、コスプレエリアも屋外です。特にコスプレイヤーは、ビジュアル重視で通気性無視のような衣装で長時間に渡って撮影に応じていたりで、過酷そのものです。その極端な一例(笑)
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管理人は、こんな場所に行くときこそ個人レベルのEDC装備が重要だなと、改めて痛感したものです。まず、個人レベルで水分確保、塩分などの電解質補給対策、帽子や日除けなどの日射対策、豪雨対策は必須です。さらにここで大地震が来たら、建物の倒壊などの危険は比較的少ないものの、備品やガラス類の落下、群衆のパニックの危険は大きく、海沿いの埋立地ですから、液状化と津波の危険もあります。

ビッグサイトの場合、想定される津波に対して安全なのは、ホール内二階部分の通路と広場、そして建物の二階以上の部分ですが、そこに常時10万人近くが滞留していると思われる参加者、来場者が短時間ですべて移動するのは困難と思われ、それができても立錐の余地もないような状況になるでしょう。停電で空調も水道も止まりって強い日射や高温に晒され、周囲は津波の危険と液状化で身動きが取れず、さらにそこへ雷雨が来たら。

そんな状況では、個人のEDC装備と自分の意思で動ける知識の有無で、極端な差が生じるわけです。ですから知識の涵養はもとより、平日だけでなく休日でもそれなりの装備をして行動しなければなりません。普段防災EDC装備をされている皆様、休日でも同様の装備をされていますか?複数のEDCセットを用意するのも良いですが、管理人は敢えて毎回、平日用バッグから休日用に入れ替えをしています。そして、その都度装備の内容や状態を確認しつつ、行き先によってアレンジを加えます。バッグに入れっぱなしだと、災害の混乱下では持っている事を忘れてしまったり、いつの間にか使えない状態になっていることもありますから、定期的な確認は大切です。

今回、事実上日本最大のイベントであるコミケに初参加してみて、その運営の手際良さにはとても感心させられたのですが、一方でやはり数万人レベル以上のイベントに行く際には、個人レベルの知識と装備がとても重要になることを再認識しました。さらに、同じ場所でも状況は全く異なることもあるということも。やはり、現場に立ってみて初めてわかることも多いのです。

次回の開催は寒さや降雪も予想される年末ですが、また行ってみようと思います。


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2013年8月12日 (月)

☆再掲載☆オフィス編01【首都圏直下型地震を生き残れ!4/54】

■■当記事は過去記事の再掲載です■■

まず最初のテーマとして、オフィス内で大地震に遭遇した場合について考えます。オフィスとは勤務先はもちろん、訪問先の他社オフィスなども含みます。建物の形態としては、平屋から超高層ビルまでいろいろありますが、まずはオフィス内の危険要素から明らかにして行きましょう。

一般家庭では家具備品類の固定や転倒対策をしている場合も多いでしょうが、オフィスではそのような対策が不十分なことが多いのが現実です。さらに室内の配置は仕事のしやすさが優先され、避難場所、避難動線などが優先的に考慮されている例は少ないでしょう。そして、ガラス扉がついた、主に金属製の重いキャビネットや備品類が詰まった棚、キャスター付きのコピー機、室内を仕切るパーティション、多数のパソコンやモニタなどがあり、さらにガラス窓も、一般家庭よりは大きな面積であることが多いのです。

つまりオフィス勤務の方は、地震対策を行った一般家庭よりもはるかに多くの危険要素に囲まれながら、おそらく一日で一番長い時間を過ごしていることになります。それは即ち、オフィスにいる時に大地震に遭遇する確率が一番高いということでもあります。皆様のオフィスでは、いかがでしょうか。仮に対策がしっかりできているオフィスにお勤めでも、他社を訪問したりすることもありますよね。


ところで、大きな地震が来ると必ず放送局オフィス内の映像がテレビで流れますが、そこで何が起きていたかを思い出してみてください。東日本大震災では、大きな揺れが続く中でも備品類の転倒、飛散などはそれほど起きていませんでしたが、これは地震動のタイプによるものです。震度6強や震度7であれが普通だと思ってはいけません。

そんな映像の中で、激しく揺れる棚やモニタなどが倒れないように押さえているのが映ることありますが、あれはまだ「立っていられる」程度の揺れだからこそできるのであり、最大級の揺れでは不可能どころか、自分がその下敷きになる可能性が大きいのです。東日本大震災は、陸地から離れた海底が震源のプレート境界型地震であり、震源域が非常に広かったことによって震動周期が比較的長かったために、振り回すような激しい地震動があまり無かっただけです。では、最も危険なのは、どんな場合でしょうか。

阪神・淡路大震災後に繰り返し流された、NHK神戸支局内で地震の瞬間を捉えた有名な映像があります。Youtubeにアップされていますが、勝手にリンクできませんので、是非皆様ご自身でご覧になってみてください。「阪神・淡路大震災、NHK神戸」で検索するとヒットします。何度もご覧になっている方も、是非ここでもう一度。

阪神・淡路大震災は、内陸直下型地震で、最大震度7を史上初めて記録しました。その映像でわかる通り、最大級の直下型地震に襲われた場合、固定していないキャビネット類は一瞬で転倒し、人は無茶苦茶に振り回されて、文字通り「なす術が無い」のです。このような内陸直下型地震が、多くの場合最も危険な地震です。揺れはじめから激しい揺れが始まるまでのごくわずかの間の行動が、その後の運命を左右します。

近頃取り沙汰されている「南関東直下型地震」、最大震度が7に達すると新たに評価された地震が最大級で起きた場合、関東の震源直上の地域では阪神・淡路大震災と同等、もしくはそれ以上の揺れに襲われることになります。もちろん、関東以外の地域でも内陸直下型地震の可能性は常にあります。

前述の通り内陸直下型地震が多くの場合最も危険な地震動となりますが(超高層ビルと免振ビルは例外であり、それについては後述します)、それは周期1~2秒の、「キラーパルス」と通称される振り回すような速い揺れに襲われる可能性が大きいからです。そのような揺れの中では四つん這いになることも困難ですし、建物や備品類に最も大きな破壊力をもたらします。

仕事中とは、ある意味で「取り澄ました」顔でいる時間です。できることなら狼狽する姿など職場で晒したくないものですから、場合によってはそんな思いがその瞬間の行動をためらわせ、生き残るための貴重な時間を失うことにもなりかねません。そうならないためには、地震の規模を正確に判断し、最小限の動きで最大限の安全を確保する行動を、最短の時間で行えるだけの備えをしておかなければならないのです。

次回は、そのための具体的な判断方法と行動を考えます。


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2013年8月10日 (土)

☆再掲載☆首都圏直下型地震を生き残れ!【3/54】 

■■当記事は、過去記事の再掲載です■■

【2】から続きます。

ところで、人はなぜ地震が来ると屋外に出たくなるのでしょうか。

これはもう理屈ではなく、本能的な行動と言えるでしょう。倒壊する建物の中で押しつぶされる恐怖、火に囲まれて逃げ場を失う恐怖。倒れるビルと一緒に地面に叩きつけられる恐怖。米国の911テロの記憶も、それに拍車をかけます。逃げ遅れて手遅れになる前に、とにかく「地に足を付けたい」と。

もちろんそれは間違いでは無いのですが、こと災害時における問題は「脱出した先が安全か?」、「すぐに次の避難行動に移れるか?」ということです。

先日、NHKの震災関連特集で、3/11に都内で起きたエピソードを集めた番組を視たのですが、その中で、エステサロンで施術中に震災に遭った女性の証言がありました。

それは、ほとんど全裸の状態だったものの、大きな揺れが収まったらすぐにガウンだけを羽織り、店員の誘導でそのまま屋外に避難したというものでした。そのサロンでは店員にそのような教育をしていたと思われ、それがきちんと機能したことはすばらしいことです。しかし恥ずかしいとかみっともないとかはさておき、あの場合、果たしてそれは正しかったのでしょうか。

震災の日、都内では震度5弱から5強の揺れになりました。しかし建物の大きな損傷はほとんど発生せず、停電もしていません。少なくとも、耐震性の高いビルの中は「安全」だったのです。そこで想定される危険は、下層階での火災により、脱出経路を失うということです。

でも、ある程度服装を整え、荷物を持つ時間が無かった訳ではありません。そのエステは新宿の繁華街だったと思いますが、あのケースでは明らかに屋外の危険の方が大きかったのです。建物の構造が大きく損傷しなくても、繁華街では周辺の建物からガラスや看板、外壁の落下、群衆のパニックなどに巻き込まれる可能性がありました。

もし揺れがさらに大きければ、それが現実のものになっていたかもしれません。仮に、もしそこが海岸や河口近くの低地だったら、大きな揺れが収まったと同時に、津波を想定した避難行動を始めなければなりませんから、裸のままという訳には行かないでしょう。

管理人はたまたま視たテレビ番組を例に取っているだけで、そのエステサロンの対応を批判しているわけではありません。言わんとすることは、大きな地震が来たらとりあえず屋外へという考えだけでは、被害をより大きくしたり、その後の行動の障害になってしまう可能性があるということです。

大切なことは、「その時最も安全なのはどこか?」ということを正しく判断することです。それは様々な条件に左右されるわけですが、事前に自分の周囲の情報を集めておくことで、かなり正確に判断することができます。

具体的には、自分のいる場所の耐震性はどの程度か、周囲の状況はどうか、火災の危険がある場所か、津波が到達する場所か、がけ崩れや土石流が発生する場所か、避難経路はいくつあるかなど、そこにある危険要素は何かということを、少なくとも自宅と職場や学校、良く行く場所の周辺については把握しておかなければなりません。

さらに、初めて行く先でも常にそのような視点で周辺を確認し、どう動くかを考えることを習慣にしておくことで、その瞬間の行動が変わります。でも、実際に大地震に遭遇したら足がすくみ、頭が真っ白になってしまうかもしれません。それでも、何かひとつを思い出せるだけでも、生き残れる確率は確実に上がるのです。しかし「その時」にひとつの情報を思い出すためには、普段から十分な量の的確な情報を取得しておくことが必要なのです。

そのような意識と行動が、管理人がここ数年提唱している考え方である「災害対策はオーダーメイドでなければならない」ということです。通り一遍の、ましてや机上の空論じみた対策だけでは生き残れないという現実を、私たちはたった一年前(管理人註:初掲載当時。東日本大震災のこと)に目の当たりにしたばかりなのです。

もちろん「オーダーメイド」と言っても、服に基本の形があるように、災害対策にも必ず押さえるべき共通のポイントがあります。まずそれを知り、さらに自分の置かれた状況に合わせたアレンジを加えることで、より確実な災害対策へと進化させることができます。しかし残念なことに、どんな対策も巨大災害の前には力を為せないこともあるのも現実です。でもいかなる状況になっても絶対に生き残りたい、生き残って大切な人やものを守りたいという強い意志に、正しい行動が伴えば必ず道は開ける、そう信じます。

このシリーズでは、そのような考え方を基本に、これから都市生活における現実的な対策を、様々なシチュエーション別に考えていきます。

次回は、オフィスの防災について考えます。


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2013年8月 9日 (金)

超満員のスタジアムで防災を考える2【2013・夏】

管理人は先日、横浜市の日産スタジアムで行われた、6万人規模のライブコンサートに行ってきました。昨年8月には西武ドームでのライブに行き、「超満員のスタジアムで防災を考える」をアップしましたが、これはその続編と言えば続編です。(前回記事は文末にリンク貼ります)

昨年の記事では、主に超満員のスタジアムでの地震対策について考えましたが、今回の直接的な問題は、高温と雷雨でした。幸いなことに少し曇り気味でしたので日射はそれほどでも無かったものの、アスファルト上での気温は優に35℃を超え、夕方には雷雨も予想されました。

そのため、管理人は通常のEDC装備に加えて大型のポンチョ、荷物の防水用に大型ビニール袋、1リットル水筒、塩分補給タブレットを持参しました。広い会場内や周辺では、売店や自販機がどこにでもあるわけではなく、あっても長蛇の列や売り切れのことも多いですから、水道があったらどこでも水を補給できるように、水筒も持参したわけです。昨年持参したハイドレーションバッグ(軍用の給水バッグ)は、今回使用したリュックにフィットしないためにお休みです。

水筒は軽量のアルミ製軍用水筒を愛用していますが、こんな時は巻き取り式ウォータージャグがあると、コンパクトでいいかなとも思います。まあ、カラのペットボトルでもいいのですが、炎天下で行動するときには、何らかの水容器は必須かと思います。ちなみに、管理人は浄水ストロー「MIZUーQ」または中空糸膜浄水器「スーパーデリオス」をEDCしていますので、いざとなったら雨水でも川の水でも飲んでしまいます。

ところで、最近は熱中症対策として、「喉が乾く前に」こまめに水分を補給することは、かなり浸透しているかと思います。でも、塩分などの電解質の補給は、まだそれほど浸透していないのかなと。メディアでも「こまめに水分補給」としか言われないことも多いですし。

問題は、激しい発汗で体内の電解質が不足すると、水を飲んでも十分に吸収されないこともあります。つまり、水を飲んでいても熱中症になることもあるのです。最近は塩分補給用の食品も多いので、夏場は是非常備してください。これは外出時に限らず、少しづつ汗をかいている屋内でも必要です。

ただ、ひとつ文句言わせてもらえれば、市販されているのは飴類が多いんですよね。炎天で持ち歩くのに、飴だとベトベトに溶けてしまうわけで、その辺をもう少し考えて欲しいなと常々思っています。

一番簡単な方法は、食塩の小瓶を持ち歩くこと。これが一番強烈に効きます。炎天下で少しボーっとしてきたり、軽い頭痛を感じたりしたら、熱中症や脱水症の初期症状ですから、そんな時は水と一緒に塩を少量なめてみてください。びっくりするくらいシャキっとしますよ。塩分を制限している方は摂取量に注意が必要ですが、脱水時に応急的に塩分を補給することは効果的です。心配な方は、かかりつけの医師に相談してみてください。

あと気になったのは、売店でも結構緑茶が売れているということ。緑茶や紅茶、コーヒーには利尿効果、つまり体内の水分を尿として排出する効果があるカフェインが含まれていますので、水分補給用としては逆効果になりかねません。お茶ならば麦茶やほうじ茶がお勧めです。

あと、危険なのがアルコール。これにも強い利尿効果がありますので、暑いからと言ってビールがぶ飲みなど、危険極まりありません。炎天の海岸やバーベキューでビールだけ飲んで熱中症や脱水症になる人、意外に多いのです。炎天でアルコール類を飲むならば、別に水分を補給しなければなりません。

スポーツドリンクには塩分などの電解質が含まれていますので基本的にはお勧めですが、激しく発汗する状況では、必ずしも十分ではないこともありますから、意識して塩分を補給することも必要です。大汗をかくと、服や帽子に白く塩がつくことがありますよね。汗と一緒に、あんなに大量に塩分が失われているわけですから、補給しないと大変なわけです。


さて、ライブ会場に戻ります。その日は幸いなことに雷雨は来なかったのですが、ちょっと感心したことがありました。ライブ中の夕方、空には雲があまりないのに、ほんの一瞬だけパラパラと雨が落ちてきました。その途端、前の席にいた高校生くらいの女子ふたり組が、すかさずビニール袋とビニールカッパを取り出して、ビニール袋で自分の荷物をくるんだのです。それは見事なほどの素早さでした。

管理人は「これぞ予防安全」と感心したのですが、きっと屋外ライブ慣れしているか、過去に雨でひどい目に遭ったことがあるのかもしれません。でも、それこそが「過去の教訓を活かし、想定される危険に早い段階で備える」という、災害対策の基本なのです。結果的に雨はそれだけでしたので、彼女たちの行動は「無駄」ではありましたが、いつ豪雨が来てもカッパを着るだけで対策完了という安心感は、まさにプライスレス。豪雨が来てから慌てふためく人達の中で、涼しい顔をしていられるというものです。

ちなみに管理人は、上空の雲を読む「観天望気」に加えて携帯で気象レーダー画像をチェックしており、強い雨は無いと余裕をくれておりました。情報戦の勝利といえましょう(笑)なお、管理人が今回使用したリュックにはかなりの防水性能があるので、雨でもあまり慌てる必要は無いのです。もちろん、雷雨を想定してセレクトした装備です。


激しく盛り上がったライブの帰り道、駅の近くの歩道で、ファングッズに身を包んだ男性が倒れていて、救急車が来ていました。ほとんど意識不明の状態で、おそらく熱中症か脱水症でしょう。せっかくの楽しい時間にそんなことになってしまっては悲惨だなあと、改めて対策の大切さを痛感した次第です。

立秋を過ぎましたが、まだまだ猛暑が続きます。夏の疲れもたまって来る頃です。睡眠不足や疲労、もちろん二日酔いも熱中症や脱水症の大きな危険要素ですので、健康管理には十分にご配慮を。

最後に、全くの余談ではありますが、管理人はスポーツの練習中に「水を飲むな」と言われた世代です。今にして思えば、真夏になんであれに耐えられたのか不思議でなりません(笑)

■過去記事「超満員のスタジアムで防災を考える。」はこちらから


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誤報でびっくり!【管理人ひとりごと8/9】

昨日(8/8)の緊急地震速報には驚かされましたね。埼玉南部の管理人のところでは、まずケーブルテレビの緊急地震速報が震度4を発報(ケーブルテレビ経由の速報システムは震度予報が出ます)、間髪入れずに携帯とテレビが発報するという警報の三重奏(笑)

携帯を開けばまさかの奈良県、それで埼玉で震度4なら、現地では震度7確実!焦りました。すぐにテレビをNHKに変えたら、しかし甲子園では特に何事もないようで。

この時点で、何か誤りが含まれることは想像できました。緊急地震速報では、発震地域が少しズレることや、震度が大きめに出ることは少なくありません。それでもある程度の地震は起きたのだろうと思ったら、ニュース速報では和歌山県北部でマグニチュード2.3だと。一体何が起きたんだ?

結局は報道の通り、三重県沖の海底地震計が和歌山北部の無感地震と同時に電気ノイズを発し、それをホストコンピューターが「マグニチュード7.8」と判定してしまったという誤報だったわけです。関西周辺では「震度6強〜7」が予報されたといいますから、えらいことです。

全く人騒がせな話ですが、ある意味で究極の抜き打ち訓練でもありました。速報が出た地域の皆様、あの瞬間、何ができましたか?何をしようとしましたか?

もしあれが本当ならば、関西周辺地域では速報とほぼ同時か、数秒以内に凄まじい揺れが襲って来たのです。あなたは、そこから身を守れたでしょうか。管理人の知人は、あの瞬間「バスタオルを頭からかぶった」そうです。反応は素早かったものの、残念ながら効果はほとんどありません。

せっかくの機会ですから、あの時、皆様がいた場所で大地震が来たらどんな危険があったか、あなたは身を守るために何をすべきだったか、そして、何ができて何ができなかったかを、ご自分で検証してみてください。

仕事場、家の中、街中、店の中、車の中、電車の中など、ありとあらゆる状況があり、それぞれ取るべき行動が異なります。さらに、あなたの「周囲3メートル」の状況で、さらに細かく異なるのです。例えばデパートの中だとしたら、服飾売場、家電売場、地下食品売場では危険の種類が異なり、有効な避難行動も違ってきます。

それを瞬間的に判断し、極度の緊張と恐怖の中で的確な行動を取ることがいかに難しいかを、できるだけリアルに想像してください。そして、本当に地震が来たらこんな行動をしようと、ご自分で考えて決めておいてください。事前に行動パターンを決めておかなければ、現場で瞬間的に考えて行動に移すなど、ほとんど不可能なのです。

こんなマニュアル的なブログを書いていてなんですが、文字で読んだだけの知識など、いざという時にはほとんど蘇りません。そのような知識をいかに「我が身のこと」と考えて咀嚼しているかが、とっさの行動を変えるのです。マニュアルの知識を、あなた自身の「意志」にまで昇華しておく必要があります。

実は、管理人がやたらと長文で記事を書き、しかも対策をほとんど箇条書きにしないのは、そういう理由もあります。箇条書きの知識など、とっさの行動にはまず結びつきません。記事をお読みいただきながら災害の状況をできるだけリアルに想像していただき、その中での行動を、その理由も含めて皆様ご自身の頭で考え、理解していただきたい。そして、皆様の「意志」の一部としていただきたい、そういう思いがあります。

言うなれば、「生き残れ。Annex」に書いてあったということなど忘れてしまい、その内容だけが皆様の「意志」の一部になっていて欲しい。そうでなければ、「最初の数秒」での役には立たないと、管理人は考えています。お子さんが近くにいて地震が来たら、まず反射的にお子さんを抱きよせるでしょう。理想的には、そいうレベルの行動ができるようになりたいということです。もちろんそれは、管理人自身も含めてなのですが。

そのための一助として、当ブログの内容をご利用いただければ幸いです。現在再掲載中の「首都圏直下型地震を生き残れ!」シリーズでは、シチュエーション別に「その時」取るべき行動とその理由ついてまとめていますので、是非ご覧ください。

なんだ誤報にかこつけた体の良い告知かよと思われそうですが(笑)、管理人としては、災害の危険から身を守れる方がひとりでも増えるのならば、このブログをやっている意味があるというものです。


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2013年8月 8日 (木)

☆再掲載☆首都圏直下型地震を生き残れ!【2/54】

■■当記事は、過去記事の再掲載です■■

お待たせいたしました。最初のテーマは、すべての状況に共通する「屋外に逃げるべきか、否か」についてです。

「避難」とは、読んで字の如く「難を避ける」ことです。地震の際にはどんな「難=危険」があるのかを、まず知らなければ、正しい行動はできません。

都市部における地震災害での主な危険とは、家具備品類の転倒や飛散、壁や建物の倒壊、ガラス、看板や外壁などの落下、そして火災です。それらに巻き込まれないためには、落下物、転倒物を避けられる場所にいるか、危険からできるだけ距離を取らなければなりません。ですから、揺れと同時に飛び出せて、そこに他の危険が存在しないのならすぐに屋外へ、つまり「大草原の小さな家」のような場所ならば、迷わず屋外に避難すべきでしょう。

しかし、現実にはそうは行かない様々な状況があります。まず、地震の激しい揺れ。震度6強クラス以上の揺れの中では、建物の中を安全に移動することは困難です。立っていることも、場合によっては四つん這いになることもできなくなります。

緊急地震速報を受信してすぐに屋外に出たり、地震の最初の比較的小さなたて揺れである「初期微動」のうちに屋外に出たりできずに、大きなよこ揺れである「主要動」が始まってしまってからでは、安全な脱出は難しくなります。しかも、最も激しく危険な揺れとなる直下型地震の場合は、緊急地震速報が揺れはじめに間に合わなかったり、「初期微動」と「主要動」がほぼ同時に襲って来る可能性が高いのです。

特に耐震性が低い建物の場合は、揺れはじめからごく短時間で倒壊する可能性があります。1995年の阪神・淡路大震災では、特に1971年(昭和46年)以前の建築、実際には築後40~50年経ったの木造家屋の多くが全壊しましたが、ほとんどが揺れはじめから10秒程度で倒壊しています。10秒の間に激しい揺れの中を脱出するのは、戸口のすぐ近くにいた場合などを除いて、かなり困難です。

そのような家の場合は、逃げるかどうかの判断以前の問題ですから、倒壊しても家の中で生存空間を確保できるような対策が必要です。具体的な方法は、当ブログの「家の中の地震対策」シリーズで述べていますので参照してください。

耐震性能が高い建物の場合は、震度7クラスでもそう簡単に全壊はしないでしょうし、地震の揺れ方によっては、激しい揺れの中でも移動できることもあります。東日本大震災では、比較的長い周期の揺れだったので建物に対する破壊力がそれほど大きく無く、なんとか歩けるような状況でもあったため、震度6強~7の地域でも、揺れている最中に脱出できた例も多かったのです。

しかし屋外に出たら出たで、都市部には大きな危険が存在します。住宅街で最も恐ろしいのは、石塀・ブロック塀や石灯籠などの倒壊です。
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鉄筋の入っていない、耐震性の低いブロック塀、石塀はこのように簡単に倒れてしまいます。1978年の宮城県沖地震では、28人の犠牲者のうち18人が、脱出後に塀の倒壊に巻き込まれたことによるものでした。瓦屋根の家では、脱出時に落ちてきた瓦の直撃を受ける可能性も高くなります。

これがビル街や繁華街になると、状況はさらに厳しくなります。とにかく何が落ちてくるかわかりません。窓ガラスの破片、看板類、ビルの外装タイルやモルタル、場合によってはコントロールを失った車が突っ込んで来ることもあります。ドライバーがすべて冷静だという保証は全くありません。

東日本大震災の都内の映像では、ビルから出てきた人が歩道にあふれ、まだ揺れているというのに、頭上や背後のビルに全く注意を払っていないというようなものがかなり見られます。そんな行動は、もっと揺れが大きかったら、自殺行為に他なりません。たまたま、そこまでの揺れでなかったというだけのことです。

管理人は、仙台や石巻で商業ビルの巨大で分厚いガラス壁が砕け散っている現場も実際に見てきました。そして、そのような建物はどこの繁華街にもたくさんあります。あのガラスの下に人がいたら、誰一人として生き残れなかったでしょう。耐震性の高い新しい建物でも、ことガラス壁や看板に関しては、破壊・落下の可能性が高いと言わざるを得ません。ちなみにガラス片が落下する際には、バランス的に必ず「尖った方を下にして」落ちて来ます。

阪神・淡路大震災における、ビルのガラスや外壁が落ちた様子をご覧ください。
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これで下に人がいたら、どうなるかは言うまでもありません。阪神・淡路大震災では、発生がたまたま早朝だったために、人がほとんどいなかっただけなのです。画像の建物は、1980年以前の旧耐震基準建物だったこともあり、かなり大きく損傷しています。新耐震基準建物はここまで破壊されないケースが多いでしょうが、ガラスや外壁が落下してくる可能性が高いのは間違いありありません。

特に、前述のような商業施設などでよく見られる大きなガラス壁は、揺れ方によっては一気に崩壊することが危惧されます。重量のある厚いガラスですし、破断面はカミソリの刃のような鋭さになりますから、都市部においては、管理人はそれを一番怖れています。

長くなりましたので、次回に続きます。

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2013年8月 7日 (水)

おすすめ書籍のごあんない【8/7後編】

今回は、本書「南海地震は予知できる」の内容が、次の南海地震予知に本当に役に立つのかについて考えます。

結論から先に述べてしまえば、仮に潮が引かなくても、本書にある何らかの異常現象の発生があれば、予知は可能でしょう。但しそのための絶対条件は、「ほぼ同じタイプの地震が再び発生するならば」となります。

「前回」の安政南海地震では、津波が沿岸の斜面を25mほど遡上した痕跡が確認されています。つまり非常に強い津波が押し寄せたわけで、それだけでも安政と昭和が異なるタイプであったことがわかります。安政は昭和に比べて断層の変位速度が速く、より激烈な地殻変動が起きたと考えられるわけです。このように同じ震源域で発生する地震でも、毎回同じタイプが発生するとは限らないのです。

さらに言えば、仮に同じタイプの地震でも、同様の前兆現象が発生するとは限りません。しかし、本書の証言やそれに似た異常現象に注意していれば、それが発生した時には速やかに警戒態勢を取ることができます。

問題は、本書に記されたような前兆現象は、現時点では公式に認められていませんので、仮に潮が異常に引いたりしても行政からの警報は出ませんし、公的な防災態勢は発動しないのです。ですからあくまで個人レベルで情報を取得し、個人レベルで警戒しなければなりません。そしてそれができるのは、事実上海岸近くにいる人に限られてしまいます。


ところで、前回記事(中編)をアップした後に、ちょっと驚いた事があります。昨晩(8/6)、NHKテレビで8月31日に放送予定の「MEGAQUAKE」新シリーズの告知を観たのですが、次回は南海トラフで観測された新事実をやるようです。それによれば、最新器機での観測により、今まで知られていなかった変動が検知されたとのこと。それを「スロークエイク」と言っていましたが、要は従来の観測器機では検知できない、非常にゆっくりとした揺れが発生しているということのようです。

管理人の想像通りであれば、手前味噌ながら「中編」で考察した昭和南海地震のタイプや、「前震」が観測されなかった理由が、どうやら的を得ているようではあります。そうなると、本書の内容が急に信憑性を帯びてきます。詳しくは番組の放映を待ちたいと思いますが、もしかしたら本書の内容を「専門家」も認めざるを得なくなるのかもしれません。新しい発見によって、「常識」は、変化して行きます。


最後に、本書において残念だったことも記しておきたいと思います。巻末において、著者は収集した情報のまとめと分析を行っているのですが、その中に「エセ科学」に類するような部分があるのです。

ひとつは、地震前に非常に暖かい日が続いた理由。「海底に生臭い堆積物が出ていた」、「津波が白く泡立っていた」ということから、高知県沖(はるか沖水深500~1000メートルくらいですが)に存在するメタンハイドレートが地殻変動によって気化し、温室効果が非常に高いメタンガスが付近に滞留したために、気温が上がったのではないかというもの。

断定こそしていませんが、全地球的な気候変動要素と局地の気象を一緒くたにしています。地震の後には普通に寒くなったのは、地震が起きて気化が止まったからということなのでしょうか。それに、メタンガスが開けた場所に滞留して温室効果を発揮するという根拠でもあるのでしょうか。これはあまりに非現実的な話であり、「メタン=温室効果=異常高温」という、エセ科学の発想で良くある、表面的な知識を繋げたパターンにしか見えません。

もうひとつは、地震直前に、海上で「ズバーン」という爆発音のようなものが聞こえた理由。爆発音のようだから、爆発と決めてかかってしまっています。そしてその理由が、プレート境界域の変動で、そこに「マントル熱」が浸透し、ガス爆発や水蒸気爆発が起きたと。しかしプレート境界域のような深い地下にはメタンハイドレートは存在しませんし、水蒸気爆発を起こすようなマグマもありません。そもそも「マントル熱」というのが意味不明。完全に「エセ科学」の類です。深い地下は地熱が高いから、くらいの感じでしょうか。

水中では、音波は空気中よりはるかに速く、秒速1500mほどで伝播します。さらに海中の密度、温度、塩分濃度変化、変温層、汽水境界などで屈折、反射を繰り返しますから、深海底の音がそのまま海上に伝わることはまずありません。本来は「バーン」という雷の音が、雲の中で屈折、反射を繰り返して、遠方では「ピシャーン、ゴロゴロ」と聞こえることの逆も起こるわけです。「ズバーン」や「ズルズル」が、断層が破壊される音が伝播したものである可能性は高いのですが、決して爆発では無いのです。

ちなみに、東日本大震災でも断層の破壊音は捉えられています。本来は人間の耳には聞こえない低周波なのですが、30倍速程度で再生すると、「ゴー」という地鳴りのような音として聞こえます。つまり、地震前の地鳴り自体が、本来の音ではないということです。

著者は専門家ではありませんから(管理人もです。念のため)、どのような考察をするのも自由なのかもしれませんが、このような内容があると作品全体のクオリティに響きますし、せっかくの生情報も、何かバイアスがかかっているのではないかと勘ぐられかねません。本書は、非常に真摯な姿勢で丹念に情報を集められた労作だと思いますので、敢えて苦言を呈させていただきました。


これで当シリーズを終了いたしますが、ここで採り上げた内容は本書のごく一部にすぎません。他にも、昭和21年12月に起きたと思われる「異変」が、たくさん掲載されていますし、終戦直後の混乱期に起きた大地震と津波の様子を、経験者の言葉で最もリアルに伝える本ではないかと思います。

さらに南海地震だけでなく、東南海地震、東海地震の震源域でも同様のことが起こる可能性もありますから、南海トラフ沿岸、つまり関東西部から九州南部に至る太平洋沿岸の、すべての皆様にお薦めします。もちろん、地震の前兆などについて研究されている方、興味がある方には必読の書かと思います。


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2013年8月 6日 (火)

おすすめ書籍のごあんない【8/6中編】

当初、このシリーズは「二回」と予告させていただいたのですが、とても二回では収まり切らない感じですので、三回連載として今回は「中編」とさせていただきます。

さて、本書「南海地震は予知できる」に収録された148の証言の中で、複数回登場する内容をまずは列挙してみます。しかし、それらがすべて大地震の前兆や関連する事象であるとは言い切れません。なお、文頭に□(中抜きの正方形)をつけたものは証言が多く、実際に起こった可能性が非常に高いと考えられるもの、■(塗りの正方形)をつけたものは、誤認や記憶違いとは言い切れないものの、証言数も少ないので、少し信頼度が落ちるのではないかと管理人が考えるものです。

□地震前しばらく、12月としては異常とも思える暖かい日が続いた。地震後は、普通に寒くなった。
□地震前しばらくの間、スルメイカが記録的豊漁だった。一方、サバなどは不漁だった。
□地震直前の明け方(地震発生は午前4時19分)、東の空が「口紅色に真っ赤」、「クレヨンで塗ったような黄色や桃色」に染まっていた。前日の夕焼けが「異常な茶色」に見えたという証言も、ひとつだけある。なお、空の変色は「南方」との証言もあるが、いずれにしろ12月21日の午前4時頃では、朝焼けが見られる時間ではない。
□地震数日前から、井戸水が枯れたり水位が下がったりした。地震後は元に戻った。
■地震発生日の月齢は新月に近かったが、「満月の晩のように」明るかった。
■地震前日、潮の流れが異常に速く、流れも普段と違っていた。
□地震前日くらいに、沖の海底に生臭い悪臭を放つヘドロ状の堆積物があり、船の碇やはえなわに絡みついた。
□地震発生直前、「ゴー」という地鳴りが聞こえた。沿岸の海上では「ズバーン」という爆発音のような大音響が連続した、「ズルズルズル」という大きな音が聞こえたという証言もある。
■地震発生時、空に稲光のようなものを見た。沖の船からは、陸地の方の海上に炎のような光を見た。
□地震は「ユラユラ」、「ユサユサ」という大きな揺れだった。「ガタガタ」という証言は無い。
□地震発生後、5分以内に津波の押し波が来た。津波は大波ではなく「ジャブジャブ」、「ダブダブ」、「チャプチャプ」と静かに、しかし一気に水位を増した。
□津波が押し寄せる時、海面が一面に白く泡立っていた。

そして、次のような証言が最も「問題」となるものです。以下の証言については、管理人は敢えて信頼度の判断をせずに、便宜的にすべて●をつけておきます。

●地震前日の午後5時頃(地震発生の約11時間前)、潮が異常に引いていた。水位が低くて漁船が船着き場に入れず、少し沖に係留して歩いて上陸した。
●地震直前、潮が異常に引いていて、100トンクラスの船が入れる水深がある漁港の海底が見えるくらいに、カラカラになっていた。
●地震発生直後に港に行くと、海底が見えるくらいに潮が引いていた。その後、津波の押し波が来た。時間的に考えて、地震前から潮が異常に引いていたと思われる。
●地震後、いつも見えていた岩礁が水没して見えなくなった(数メートル以上沈降したとされる)

以上の証言の中には、前編で述べたように記憶の混乱が含まれている可能性も高いのですが、異なる場所の複数が具体的に証言しているものは、かなりの信頼度があると考えて良いと思います。地震と関連をがありそうなものをまとめると、確実と言えるのは「スルメイカの記録的豊漁とサバなどの不漁、数日前から井戸水に異常、直前に地鳴りや海鳴り、ユラユラとした大きな揺れ、地震から5分以内に水位が一気増すような、白く泡立つ津波が陸地に到達」というものです。気温や空の異常は及び海底の堆積物は、仮にそれが事実だとしても、必ずしも地震と関連があるとは言えないと考えます。

これらの証言のうち、地震前後における魚類の豊漁や不漁、井戸水の異常、空の色の異常や発光現象などは、いわゆる「宏観現象」として他の大地震発生時にも良く語られているもので、発生を完全否定はできないものの、その理由については科学的に解明されてはいません。しかし、いくつかはそこで「本当に起こった」と考えて良いでしょう。なお、著者は空の色の異常を、阪神・淡路大震災前日の「異常に赤い(とされる)夕焼け」と関連づけていますが、観測された時間や内容からして、同類のものでは無いと管理人は考えています。阪神・淡路大震災前日の夕焼けは、平時でも観測されるレベルのものだからです。

なお、高知県の太平洋沿岸における津波の波高(遡上高さではない)は、場所によってかなり差があるものの、被害状況やその後の調査によると最大6m強程度で、数回押し寄せたうちの第二波が最大だったと思われます。ちなみに、「前回」の安政南海地震では、沿岸部の海抜25m程度まで津波が遡上した痕跡が確認されています。


さて、最も「問題」となる、地震前の潮流や潮位の変化についてです。「地震前から潮が異常に引いていた」という証言はかなり多いものの、一方で、ごく近い場所で「潮の変化は感じ無かった」という証言も多いのです。漁師の証言ですから、どちらも一方的に否定はできません。

潮流や潮位の変化が本当に起きたのならば、著者も指摘していますが、地震前から発生していた地殻変動によって影響を受けた可能性が考えられます。つまり、ある場所が隆起したことにより、海水が沖へ押し戻されて潮位低下が起きた可能性です。

昭和南海地震では津波が静かに押し寄せた、揺れはユラユラとした、つまり強いたて揺れ(初期微動)をほとんど感じない、震動周期の長い横揺れだったという証言からしても、プレート境界の固着域が一気に破壊されるのではなく、ゆっくりとずれる、いわゆる「ゆっくり滑り」、「ぬるぬる地震」というタイプだったと思われます。地震発生前にプレート境界が滑り始める、「プレスリップ」が大規模に起き始めていた可能性が高いのです。しかし、当時の高知気象台の記録では、「前震」と思われる有感地震は発生していません。もっとも、当時の地震計の精度では検知せずということですから、現代の高性能機器ならば、何か検知される可能性は残ります。

最大の問題は、「プレスリップ」による地殻変動で、地震前に何メートルもの潮位変動が起きるのかということです。地震後の観測では、たとえば室戸岬が60cm隆起したり、他の場所では数十cm沈降したなどの変動が実測されているものの、地震前十時間前くらいから有感地震や鳴動を伴わない、しかし急激で大規模な地殻変動が発生し、それが大きな潮位変化に繋がることが本当にあるのでしょうか。

その点が、本書における著者の主張を「専門家」が否定する最大の理由です。現代の科学では、そのような現象は「あり得ない」のです。その問題に、「潮の変化は感じなかった」という証言も少なくないことが拍車をかけます。果たして、地震前の異常な引き潮は事実だったのか。

過去の例では、例えば1975年に中国で発生した海城地震では、数日前から局地的な群発地震、地鳴り、地盤の激しい隆起や沈降が観測されたために、巨大地震の発生を予想した当局が住民を広場に避難させたところで、マグニチュード7.3の大規模地震が発生しました。このような「わかりやすい」実例はありますが、昭和南海地震においては、証言にあるような現象のみで、大地震の発生を直接的に予測させるような現象は観測されていないのです。果たして、数メートルの潮位変動を伴うような大規模な地殻変動が、これほど「静かに」進むものなのか。少なくとも現代の科学からは、その答えは導き出せません。「あり得ない」ことなのですが、人智を超える事態が、あの時本当に起きていたというのでしょうか。


仮に本書の証言内容がすべて事実であれば、地震から60年以上の時間を経ることによる記憶の混乱などの要素を差し引いても、そこで「何かが起こった」のは否定できないでしょう。しかし本書の内容からだけでは、そのすべてを事実と認定することもできませんし、証言にあるようなことが実際に起きた可能性は否定できないとはいえ、現代の科学的根拠を覆すほどの説得力もありません。その辺りが限界と感じます。

では、本書に収録された地元の古老たちの証言を、今後の災害対策に活かすことはできないのでしょうか。次回は、その点について考えたいと思います。


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2013年8月 5日 (月)

【宮城県で震度5強】地震関連情報【8/5】

昨日8月4日午後12時28分頃、宮城県の金華山沖海底、深さ58km(気象庁発表暫定値)を震源とするマグニチュード6.0の地震が発生し、宮城県石巻市で最大震度5強を記録した他、東日本全域で揺れを感じました。

この地震は、東日本大震災の半年後くらいから発生しはじめた、太平洋プレート岩盤内で発生する「スラブ内地震」で、宮城県沿岸部では現在も毎日のように発生しています。そして、数ヶ月に一度くらいの割合で震度4~5強クラスが発生しています。

下図をご覧ください。
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これは、東日本において震災以降に余震及び誘発地震が多発している地域を示しています。今回の地震は宮城県沿岸の、ピンク色で示した地域で多発しているタイプです。この地域では、現在もほぼ毎日と言える頻度で、同タイプの「スラブ内地震」が発生し続けています。

震災から1年くらいの間は、2~3ヶ月に一度以上の頻度で震度5弱~5強が発生していましたが、時間の経過と共に、大きめの地震の発生間隔が少しずつ長くなる傾向は見られていました。しかし、未だに震度5強クラスが発生する「環境」があるということです。

むしろ、ここ半年くらいの間は、上図のピンク色の地域で発生する小規模地震が若干増える傾向も見えています。メカニズム的に、このタイプの地震がマグニチュード7を超えるような巨大地震に発展することはあまり考えられませんが、マグニチュード6台、震度5強クラスはこの先も発生する可能性が低く無いのは間違いありません。

震災震源域近隣はもとより、日本列島全体が震災による地殻変動の真っ只中にあるのです。震災から約二年半という時間は、当初の激烈な変動がやっと収まりかけているという段階に過ぎず、震災の影響はこの先何十年も続くのです。その影響がどのような形で現れるのかを地域レベルで予想することは困難ですが、確かなことは、唯でさえ大規模地震が何度も発生し続けて来た地域に、歴史的にも滅多にないような大変動が加わっているわけで、影響が無い、または小さいと考えるのは全くのナンセンスです。

ジェンガというゲームがあります。積み上げた木片のタワーから、全体を崩さずに木片を抜いていくゲームです。あのゲームの途中で、タワーが不安定になり始めているときに、下のテーブルが傾いたとしたら。現在の日本列島は、そのような状態にあると考えなければなりません。


大災害の記憶は時間と共に薄れ、さらには誰もが日常の些事に追われ、確実に危機感は薄れて行きます。しかしそれは当然のことで、批判されるべきものではありません。自分が当事者になった災害などが「風化」するのは耐え難いものかもしれませんが、例えば、例えば間もなく28回忌を迎える、1985年に発生した日航機の御巣鷹山墜落事故を事あるごとに、せめて航空機に乗るたびに思い出している人はどれだけいるでしょうか。

それは自然災害ではないというのなら、1995年の阪神・淡路大震災の教訓を、あなたはどれだけ形にしているでしょうか。当ブログで何度も指摘している通り、巷に溢れる「防災情報」には、あまりにもピントがずれていることや机上の空論が目立ちます。つい二年半前の震災の記憶や教訓でさえ、決して十分に伝わっているとは言い難い。実際に苦しんだ人々の声があるのに、それが活かされていない。そして、声を発することができない犠牲者の「声なき声」は、さらに忘れられている。


でも、別に災害の詳細など忘れられてもいいのです。というか、記憶だけしていても意味はありません。そこから導き出される教訓を形にし、それを受け継いで行く。それが「風化させない」ということです。

あなたとあなたの大切な人を守るのは、行政でもメディアでも、ましてやエセ科学やオカルトでもありません。あなた自身の意思と行動だけです。再び大災害に見舞われた時に、どこで差が出るか。それは、悲劇の教訓を活かす具体的な行動と備えを、「個人レベルで」会得し、実行しているかいないか、それだけのことなのです。当ブログの情報が、その一助となることを管理人は願っております。


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2013年8月 3日 (土)

☆再掲載☆首都圏直下型地震を生き残れ!【1/54】

■■先日予告させていただいた通り、レギュラー記事と並行して、過去記事の再掲載を始めます。まずは『首都圏直下型地震を生き残れ!』シリーズ、全54回です。
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新シリーズを始めます(管理人註:再掲載です)

これまで当ブログでは、主に防災用備品や建物の地震対策について解説してきました。続いて、新シリーズで取り上げるのは「行動」です。大規模地震に遭遇した時にどのような行動をすれば「生き残る確率」が上がるかを、都市生活の様々なシチュエーション別に考えて行きます。

タイトルは敢えて「首都圏直下型地震・・・」としていますが、これは予告でも書いたような“あざとい”理由(笑)に加え、なにより首都圏直下型地震がもっとも大きな被害が想定され、被災する人の数も最も多くなるという理由からです。しかし内容的には、どこの都市部でも共通するものになります。

現実的な問題として、大地震に襲われる都市の規模が大きいほど、「生き残る」条件はよりシビアになって行くのです。世界一のモノとヒトの集積地である我が国の首都圏が大地震に襲われたら、そこにいる人々は世界最大の危険に晒されると言っても過言ではありません。

気休めは言いません。ひとつ間違えれば生き残れない、いや間違えなくても生き残れないことがあるのは、東日本大震災を始め、過去の大災害を見れば明らかです。運ひとつに左右されることも多々あります。そのようなシビアな状況の中で、いかにして「生き残る確率」を上げて行くかが、このシリーズのテーマです。

大災害時の都市は、普段の取り澄ました仮面を引き剥がされた、情け容赦無いサバイバルフィールドです。その中をいかにして安全圏まで脱出するか。語弊を怖れずに言えば、これは命懸けのゲームです。ゲームに勝つためには情報、アイテム、経験値、体力、戦闘力が必要であり、それらなくしては生き残れません。ゲームと違うのは、プレイヤーの予備はおらず、魔法や呪文は何一つ使えないということです。

怖れるばかりでは、何も変わりません。都市に生きる覚悟を決めて、「生き残る」方法を考えましょう。

次回は最初のテーマ、すべての状況に共通する「屋外に逃げるべきか、否か」について考えます。


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2013年8月 1日 (木)

おすすめ書籍のごあんない【8/1前編】

レギュラー記事の「おすすめ書籍のごあんない」ですが、今回はおすすめだけでなく、二回にわたって、ある本の内容についても考察する記事を書かせていただきます。

ところで、管理人は関東の人間でして、過去には仕事で札幌、名古屋、大阪などにいたことがあります。一時は博多周辺にも頻繁に行きました。震災後には福島と宮城に何度も行きましたし、新潟周辺も結構行っていますので、その辺りにはわりと土地勘があります。

でも大阪以西、下関までの間と四国および九州南部は、ちょっと行った場所があるくらいで、ほとんど土地勘がありません。そんなこともあって、当ブログでは南海地震に関する情報がどうしても薄くなってしまっているのですが、それを穴埋めする気持ちも込めて、この本を紹介します
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『南海地震は予知できる』 著者:中村不二夫 
発売元:㈱高知新聞企業  価格:1600円(税別)  

実は過日、この本の著者の活動についてNHKテレビで特集番組が放映され、それを観て早速購入したものです。かなり極端な言い方をさせていただければ、これは「問題作」と言えるかと思います。

内容的には、昭和21年12月21日早朝に発生した昭和南海地震の時の様子を、四国の太平洋沿岸各地の古老から丹念に聞き取ってまとめたものです。概要については後述しますが、終戦の約4ヶ月後という混乱期に発生し、公式な調査や研究が十分に為されていない地震の様子が、かなり鮮明に浮き彫りにされています。

その一方で、聞き取り時から60年以上前の記憶による話をまとめていること、著者は地震や災害の専門家ではなく民間の研究者であること(管理人もそうですけど)も絡んで、その内容や解釈に首をかしげざるを得ない部分も若干あります。しかしそれを差し引いても、丹念な情報の収集から浮かび上がって来る、否定できない「事実」が数多く含まれているのは間違いないと言えるでしょう。

先に「問題作」と表現したのは、古老の体験談(総数148)で何度も語られる現象のいくつかは、現代の地震学などの常識では「あり得ない」ことであり、専門家の多くが本書で語られた現象を否定しているのです。しかし、広範囲に渡る、互いに交流の無い多くの方々が同じ内容を詳細に語っているということは、偶然やうわさの拡散で説明できるものではありません。

60年以上という時間の経過の中で、他人から聞いた話を自分の記憶と混同してしまったり、何度も語られるうちに誇張されたり変化してしまっている部分は確実に含まれるとは思います。地震に限らず、大事件の口伝では往々にしてそういうことが起こりますし、本書の中でも、当時近所にいた複数の人が全く同じ表現と順序で「自分の」体験を語っているなど、証言の「台詞化」が見える部分もあります

ただ、聞き取りの対象はほとんどが漁師とその関係者であり、その方々が生活の場である海の変化について語っているのです。つまり、古い話とはいえ「プロ」の目線で具体的に語っていますから、その信憑性は「うわさ」のレベルとは比較になりません。

では、現代の科学では「あり得ない」けれど、あの時本当に起こったと思われるのはどんなことなのでしょうか。そして、それによって南海地震は本当に予知が可能なのかについて、次回は本書の内容について触れたいと思います。


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