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2013年8月 6日 (火)

おすすめ書籍のごあんない【8/6中編】

当初、このシリーズは「二回」と予告させていただいたのですが、とても二回では収まり切らない感じですので、三回連載として今回は「中編」とさせていただきます。

さて、本書「南海地震は予知できる」に収録された148の証言の中で、複数回登場する内容をまずは列挙してみます。しかし、それらがすべて大地震の前兆や関連する事象であるとは言い切れません。なお、文頭に□(中抜きの正方形)をつけたものは証言が多く、実際に起こった可能性が非常に高いと考えられるもの、■(塗りの正方形)をつけたものは、誤認や記憶違いとは言い切れないものの、証言数も少ないので、少し信頼度が落ちるのではないかと管理人が考えるものです。

□地震前しばらく、12月としては異常とも思える暖かい日が続いた。地震後は、普通に寒くなった。
□地震前しばらくの間、スルメイカが記録的豊漁だった。一方、サバなどは不漁だった。
□地震直前の明け方(地震発生は午前4時19分)、東の空が「口紅色に真っ赤」、「クレヨンで塗ったような黄色や桃色」に染まっていた。前日の夕焼けが「異常な茶色」に見えたという証言も、ひとつだけある。なお、空の変色は「南方」との証言もあるが、いずれにしろ12月21日の午前4時頃では、朝焼けが見られる時間ではない。
□地震数日前から、井戸水が枯れたり水位が下がったりした。地震後は元に戻った。
■地震発生日の月齢は新月に近かったが、「満月の晩のように」明るかった。
■地震前日、潮の流れが異常に速く、流れも普段と違っていた。
□地震前日くらいに、沖の海底に生臭い悪臭を放つヘドロ状の堆積物があり、船の碇やはえなわに絡みついた。
□地震発生直前、「ゴー」という地鳴りが聞こえた。沿岸の海上では「ズバーン」という爆発音のような大音響が連続した、「ズルズルズル」という大きな音が聞こえたという証言もある。
■地震発生時、空に稲光のようなものを見た。沖の船からは、陸地の方の海上に炎のような光を見た。
□地震は「ユラユラ」、「ユサユサ」という大きな揺れだった。「ガタガタ」という証言は無い。
□地震発生後、5分以内に津波の押し波が来た。津波は大波ではなく「ジャブジャブ」、「ダブダブ」、「チャプチャプ」と静かに、しかし一気に水位を増した。
□津波が押し寄せる時、海面が一面に白く泡立っていた。

そして、次のような証言が最も「問題」となるものです。以下の証言については、管理人は敢えて信頼度の判断をせずに、便宜的にすべて●をつけておきます。

●地震前日の午後5時頃(地震発生の約11時間前)、潮が異常に引いていた。水位が低くて漁船が船着き場に入れず、少し沖に係留して歩いて上陸した。
●地震直前、潮が異常に引いていて、100トンクラスの船が入れる水深がある漁港の海底が見えるくらいに、カラカラになっていた。
●地震発生直後に港に行くと、海底が見えるくらいに潮が引いていた。その後、津波の押し波が来た。時間的に考えて、地震前から潮が異常に引いていたと思われる。
●地震後、いつも見えていた岩礁が水没して見えなくなった(数メートル以上沈降したとされる)

以上の証言の中には、前編で述べたように記憶の混乱が含まれている可能性も高いのですが、異なる場所の複数が具体的に証言しているものは、かなりの信頼度があると考えて良いと思います。地震と関連をがありそうなものをまとめると、確実と言えるのは「スルメイカの記録的豊漁とサバなどの不漁、数日前から井戸水に異常、直前に地鳴りや海鳴り、ユラユラとした大きな揺れ、地震から5分以内に水位が一気増すような、白く泡立つ津波が陸地に到達」というものです。気温や空の異常は及び海底の堆積物は、仮にそれが事実だとしても、必ずしも地震と関連があるとは言えないと考えます。

これらの証言のうち、地震前後における魚類の豊漁や不漁、井戸水の異常、空の色の異常や発光現象などは、いわゆる「宏観現象」として他の大地震発生時にも良く語られているもので、発生を完全否定はできないものの、その理由については科学的に解明されてはいません。しかし、いくつかはそこで「本当に起こった」と考えて良いでしょう。なお、著者は空の色の異常を、阪神・淡路大震災前日の「異常に赤い(とされる)夕焼け」と関連づけていますが、観測された時間や内容からして、同類のものでは無いと管理人は考えています。阪神・淡路大震災前日の夕焼けは、平時でも観測されるレベルのものだからです。

なお、高知県の太平洋沿岸における津波の波高(遡上高さではない)は、場所によってかなり差があるものの、被害状況やその後の調査によると最大6m強程度で、数回押し寄せたうちの第二波が最大だったと思われます。ちなみに、「前回」の安政南海地震では、沿岸部の海抜25m程度まで津波が遡上した痕跡が確認されています。


さて、最も「問題」となる、地震前の潮流や潮位の変化についてです。「地震前から潮が異常に引いていた」という証言はかなり多いものの、一方で、ごく近い場所で「潮の変化は感じ無かった」という証言も多いのです。漁師の証言ですから、どちらも一方的に否定はできません。

潮流や潮位の変化が本当に起きたのならば、著者も指摘していますが、地震前から発生していた地殻変動によって影響を受けた可能性が考えられます。つまり、ある場所が隆起したことにより、海水が沖へ押し戻されて潮位低下が起きた可能性です。

昭和南海地震では津波が静かに押し寄せた、揺れはユラユラとした、つまり強いたて揺れ(初期微動)をほとんど感じない、震動周期の長い横揺れだったという証言からしても、プレート境界の固着域が一気に破壊されるのではなく、ゆっくりとずれる、いわゆる「ゆっくり滑り」、「ぬるぬる地震」というタイプだったと思われます。地震発生前にプレート境界が滑り始める、「プレスリップ」が大規模に起き始めていた可能性が高いのです。しかし、当時の高知気象台の記録では、「前震」と思われる有感地震は発生していません。もっとも、当時の地震計の精度では検知せずということですから、現代の高性能機器ならば、何か検知される可能性は残ります。

最大の問題は、「プレスリップ」による地殻変動で、地震前に何メートルもの潮位変動が起きるのかということです。地震後の観測では、たとえば室戸岬が60cm隆起したり、他の場所では数十cm沈降したなどの変動が実測されているものの、地震前十時間前くらいから有感地震や鳴動を伴わない、しかし急激で大規模な地殻変動が発生し、それが大きな潮位変化に繋がることが本当にあるのでしょうか。

その点が、本書における著者の主張を「専門家」が否定する最大の理由です。現代の科学では、そのような現象は「あり得ない」のです。その問題に、「潮の変化は感じなかった」という証言も少なくないことが拍車をかけます。果たして、地震前の異常な引き潮は事実だったのか。

過去の例では、例えば1975年に中国で発生した海城地震では、数日前から局地的な群発地震、地鳴り、地盤の激しい隆起や沈降が観測されたために、巨大地震の発生を予想した当局が住民を広場に避難させたところで、マグニチュード7.3の大規模地震が発生しました。このような「わかりやすい」実例はありますが、昭和南海地震においては、証言にあるような現象のみで、大地震の発生を直接的に予測させるような現象は観測されていないのです。果たして、数メートルの潮位変動を伴うような大規模な地殻変動が、これほど「静かに」進むものなのか。少なくとも現代の科学からは、その答えは導き出せません。「あり得ない」ことなのですが、人智を超える事態が、あの時本当に起きていたというのでしょうか。


仮に本書の証言内容がすべて事実であれば、地震から60年以上の時間を経ることによる記憶の混乱などの要素を差し引いても、そこで「何かが起こった」のは否定できないでしょう。しかし本書の内容からだけでは、そのすべてを事実と認定することもできませんし、証言にあるようなことが実際に起きた可能性は否定できないとはいえ、現代の科学的根拠を覆すほどの説得力もありません。その辺りが限界と感じます。

では、本書に収録された地元の古老たちの証言を、今後の災害対策に活かすことはできないのでしょうか。次回は、その点について考えたいと思います。


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