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2013年8月21日 (水)

避難ってなに?【露店爆発事故について】

先日、京都府福知山市の花火大会会場で露天の爆発事故によって三人の命が失われ、多くの方々が重傷を負われました。楽しい花火大会を地獄のように変えた事故の原因は、論評の価値も無いほどのくだらない過失でしたが、そんな「想定外」の危険も、身の回りにはいつでも存在するということでもあります。

さて、今回管理人がこの事故を採り上げるのは、事故原因についてではありません。事故直後に撮影された映像に、非常に気になる点があったからです。

まず、野次馬が近すぎる。映像からは、火点から20mくらいしか離れていないように見えます。今回の火元は発電機用のガソリンでしたが、露店にはプロパンガスボンベもあります。そこが猛火に包まれているのに、あの程度の距離しか取らないなど、自殺行為に近いのです。

たまたま二次爆発があの程度の規模だったというだけですが、あの規模でも条件によっては特定の方向に火炎が伸びたり、破片が飛散したりすることも考えられます。ガソリンの量がもっと多ければ、火のついたガソリンが周囲に降り注いだでしょう。プロパンガスボンベに火が入ればバルブから火炎放射器のように火を噴きますし、爆発すれば破片の飛散と共に、ボンベ自体がミサイルのように高速で吹っ飛び、100m以上飛ぶこともあります。もしあの距離でそれが起こったら、野次馬にも重大な被害が出たでしょう。

これは「自己責任」とかの話ではなく、知識不足と現場の興奮から災害をナメてかかっているだけのことで、今回はたまたまあれで済んだ、というだけの話です。被害者を助けたいと考えていても、何もできないならば、すぐに現場から十分な距離を取らなければなりません。


実は、それ以上に気になったが、会場の放送です。ひたすら「現場から避難してください」と繰り返しているのが聞こえます。しかし、それでも野次馬はほとんど動いていないのですが。

ああいう現場に自ら近づいて動画とか撮ろうとする馬鹿はともかく、どうして良いかわからずに立ちすくんでいる人も少なく無かったと思います。その人たちに対して、ただ「避難してください」と繰り返しても、あまり効果はありません。危険を感じた人たちは、すでに避難した後なのです。残っている人は混乱しているか、危険度を軽く考えている人です。

そこで呼びかけられた「避難」とは、一体どうすることなのでしょうか?これは「大雨に注意してください」とか「土砂災害を警戒してください」のように、とりあえず言っとけくらいのものでしかありません。呼びかける方がいくら必死でも、結果的にその程度のものです。


ではどうすべきかというと、そこに具体的な内容の指示が含まれなければなりません。もし管理人があの場面でマイクを握ったら、こう言います。

『火元から100m以上離れてください!まだ爆発の危険があります。100m以上離れてください!爆発で破片が飛び散ります!』

それでも動きが無ければ、『ただちに火元から離れろ!100m以上離れろ!』と命令口調で言うでしょう。そこで命令の権限があるの無いのとか気にするようでは、危機管理能力の欠如としか言えません。何故100mかというと、指示に従う人でも、実際には100mも離れやしないという事を織り込んでのことです。でも、50mも離れれば、二次被害の可能性は大きく下がります。

これはひとつの参考ですが、米国の消防士が着るTシャツの背中には、伝統的とも言えるこの言葉がプリントされていることが多いのです(下画像)
Keepback200ft
「Keep back 200feet」、つまり、消防士が活動する姿を見たら200フィート(約60m)以上退がれというのが、米国での「常識」になっており、至って現実的な指示です。それ以上近寄れば二次被害の危険が大きいし、消防活動の邪魔だぞ、というメッセージなわけです。米国ではこれが社会的コンセンサスを得ていますから、そのまま200フィートという指示で良いわけですが、それが無い場所では、かなり大袈裟でないと現実的な安全距離を保てない可能性が大きいのです。


このように、災害直後の恐慌状態の群衆をコントロールするには、具体的な内容の指示を、はっきりと自信に満ちた口調で伝えなければなりません。群衆に対し、その指示に従えば状況が好転するという希望を与えることができなければ、より不安を煽り、混乱を拡大することにもなりかねないのです。

それを実現するためには、大人数が集まるイベントや施設運営者は普段からあらゆる危険を想定し、それぞれに具体的にどのように対応するかを決めて、それを共有していなければなりません。スタッフだれもが同じ対応をできなければならないのです。通り一遍の「避難してください」など、実際の混乱の中ではBGMくらいの効果しか無いと考えなければなりません。

詳しくは触れませんが、このような考え方は、東日本大震災で津波避難を呼びかける放送においても実証されたことだということを、改めて思い出していただきたいと思います。


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