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2013年8月19日 (月)

まだこんなこと言ってる

たまたまなんですけど、ネットでこんな記事を見つけました。語っているのは、当ブログでも何度もツッコませていただいている、テレビにも良く出る防災の「専門家」Y氏です。女性誌の記事のようです。

豪雨災害について述べているんですけどね。まず、このコメントを一部要約の上、引用させていただきます。

(以下引用)
『1時間あたり20mm以上の降雨量の場合、車のワイパーの効果がなくなる上、冠水した道路を走るとブレーキがきかなくなる恐れがある。低地の立体交差道路などに入って、そこが冠水して身動きが取れなくなるケースも多く、集中豪雨のときに車で避難するのは非常に危険です』
(引用終了)

時間降雨量20mmでワイパーの効果が無くなるとは、何か実験データでもあるんでしょうか。いいえ、それくらいでは全然平気です。管理人は実験データなど持ち合わせていませんが、実地の経験は山ほどあります。というか、この人はその程度の雨の中も車で走った事が無いんでしょう。現に、もっと凄い豪雨の中を車が走っている映像、ニュースで普通に流れてますけどね(笑)

さらに、ブレーキが効かなくなると。管理人、これ見て本気で笑いました。この方、確か60代以上だと思いますが、30年くらい前で時間が止まっていらっしゃるようで。

今の車が装備しているディスクブレーキは、水の中を走っても効かなくなることはまずありません。水中や水から上がった直後では、踏み込んだ最初の効きが甘くなることが多いですが、深く踏めばきちんと止まります。冠水の中を走って効かなくなることがあったのは、フロントブレーキとしては30年以上前に事実上絶滅した「ドラムブレーキ」の話。

現在でも、リアブレーキにドラム式を採用している車は少なくないですが、フロントのディスクブレーキが効きますから、ほとんど問題ありません。ドラム式は、密閉性の高いドラム内部に水が入ると排出されず、摩擦を発生させるブレーキライニングとドラム内部の間の水が潤滑剤の働きをして、ブレーキ力が極端に落ちることがあるのです。

ちなみに、かつてオフロードライダーだった管理人は、ドラムブレーキ時代のバイクで川の中などを走り、この現象は何度も経験しています。その後ディスクブレーキ時代になって、皆無となりました。もちろん車でも同じことです。

しかしまあ、こんなのはとっくに「死語」の類だと思っていましたが、今更また出会えるとは(笑)でもこれが「専門家」の発言なんだから、笑い事じゃないですよ。もっとも、車やバイクの専門家は、今は絶対こんなこと言わないですけど。うろ覚えの古い知識しかなくても仕事できるんですね、この世界は。


「低地の立体交差に入って、そこが冠水して・・・」ってのもおかしな話です。立体交差、いわゆるアンダーパスでの水没事故は、ほぼすべて冠水に気付かず、または大丈夫だと思って進入した結果、水没しているのです。ですからこんな結果論ではなく、専門家がアドバイスすべきは「豪雨の中で、見通しの効かないアンダーパスや冠水している部分には絶対に入ってはいけない」ということのはずですが。

それに、当ブログでも何度も述べていますが、冠水しそうな時には自動車の避難も大切です。こんなピントのずれたアドバイスだけを真に受けて、何十万円や何百万円の財産をみすみす潰す人、いたらかわいそうすぎる。もちろん程度問題ではありますが、20mmの雨量であきらめる必要は絶対にありませんよ。実際、時間雨量20mm程度の雨では、大雨洪水警報だって滅多に出やしません。


次に、またもや登場のこれ。豪雨避難時の靴の話。

(以下引用)
『(避難の際は)長靴は避けましょう。水や泥が入ると動きづらくなるので、紐をきつく縛ることができる運動靴で逃げましょう』
(引用終了)

長靴の浸水対策は当ブログでも過去にやっています。でもそれができなくても、管理人は長靴を履くなとは言いません。確かに、水や泥が入れば動きづらいし脱げ易い。でも、長靴にはそれ以上のメリットがあります。

上記コメントの中の大きな間違い、皆様お気付きですか?上記のコメントでは「運動靴」と言ってます。確かに、紐をきつく縛れば脱げづらくはなるでしょう。でも、ローカットの靴ならば、深い泥にはまったら簡単に脱げますけどね。それはさておき、もっと大きな問題は、「底」、つまりソールです。いわゆる「運動靴」、つまりスニーカーやランニングシューズの底は、基本的に舗装や平坦地に対応していますから、あまり深い溝がありません。そんな靴で泥の中を歩いたら、すぐに泥が詰まってツルツルになってしまいます。

ですから、実際には紐で縛れる靴というだけでなく、くるぶし以上の高さがあるハイカット型で、ソールが登山靴、トレッキングシューズ、コンバットブーツのようなブロックパターン底の靴でなければ、水や泥の中を安全に歩くことはできません。ゴム長靴のソールは、そういう場所を安全に歩くのに非常に適したパターンなわけです。泥や水の中で使うための靴ですから当然なんですが。

「水が入る前に入った後のこと考える奴がいるかよ!」ってな話です(笑)それに、入らないようにする手段はありますし。それより、まず足元の悪路を確実にグリップできる性能を管理人は選びますね。

この「避難時に長靴を履くな」という話も、随分と前から言われているのですが、こんなものは自分で泥や水の中など歩いたことも無い人間が頭で考えただけの、机上の空論に過ぎません。こんなのがいまだに大手を振って、トリビアごっこをやっているのが、この「防災」って世界なんですよね。

とにかく、「専門家」に対してこんな低レベルのツッコミをしなければならないことに、管理人は腹立たしさを通り越して、いつも悲しくなってしまうのです。人の命がかかっていることが、この程度で許されるのかと。異論反論がありましたら、どなたからでも是非伺いたいものです。


■長靴の浸水対策についての過去記事はこちらから


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日記・コラム」カテゴリの記事

コメント

こんにちわ。昨日は家に帰る道が冠水するほどのすごい大雨でびっくりしました。雨に備えて長靴で来ていたのですが、広い道路が冠水しているところに入ったら、だんだん深くなって、長靴の上から水が入りそうになって、歩けそうなところを探してやっと脱出できました。本当に避難が必要な時は長靴ではきびしそうです。

もしかして、「長靴は水が入ると動きにくい」ではなくて「(必ず)水が入ってしまうから避ける」じゃないかと思います。だから、対策もそうならないように、せめてできるだけ長い長靴を用意するとか(昨日も短い長靴では役に立たない状態でした)、仰るようにカッパズボンの中に入れて防水するとかが必要でしょうし、避難する時は色々考える余裕もないとすると、履き慣れた運動靴というのも一理あるのかなと思いました。訓練も、長靴に水が入ったらどうなるか体験しておくというのも、もしからしたら必要かもしれないと思います。

>ひとりごとさん

未対策の長靴で深い水に入れば、必ず水が入って歩きずらく、脱げ易くなります。それは全くの正解で、ハイカットの紐で縛れる靴では、その問題はありません。それ自体は間違いじゃないんです。

問題は、実際にやったことも無い「指導者」が、一般ウケしやすいトリビアを前面に出して、本当に大切なことをないがしろにしていることなんですね。普通の運動靴で泥の中歩いてみてくだい。脱げないかもしれませんが、恐ろしく滑りますよ。泥の中で本当に安全な靴は、記事にあるようにごく限られます。

長靴はソールのグリップ力に優れていて、後々の防水、防寒、防汚にとても効果がありますから、できれば避難時に履いて行きたいわけです。避難中、ドロドロビショビショの靴しか無いって、辛いですよね。冬場だったらどうします?

だから、何も考えずに否定するのじゃなく、総合的に考えてベターな方法を探す、それが現実的な指導だということです。とりあえずのトリビアでお茶濁している「防災指導」が多すぎるので、その象徴として「長靴は履くな」という話を否定しているという部分はありますね。

気象災害からの避難は、比較的時間の余裕があるわけですから、とりあえずガムテープぐるぐる巻きすることくらいはできるはずです。

てばさん、ここを見つけたとたんに大雨に会い、いきなりのコメントになってしまいましたが、お返事ありがとうございます。いろいろな情報、とても役に立ちます。

長靴の浸水対策が大切なのですね。でも、昨日、降り出してから1時間で避難準備情報が出て、わたしも表に出て初めて冠水していると知ったので、あまり考えないで避難できることが必要、だったら履き慣れた靴が良いと言うことなのかも知れないと思いました。これまでは長靴ってだいたいホームセンターとかで適当に買ったもので、脱げ易く、歩きにくいものでしたから...

最近、雨の日に長靴を履く方、使いこなしている方が増えているので、災害の時にもうまく活用することを考えようという流れなのかなと思いました。物も確かに良くなっていて、別ページに書いておられましたが、長時間、長距離歩いても快適な長靴も見つけられると思います。

>ひとりごとさん

当ブログの情報がお役に立てていれば幸いです。

おっしゃる通り、避難行動中に限れば、履き慣れていて、滑らず、脱げない靴があればそれが一番なわけです。ただ、その後しばらくの間避難生活を送り、冠水した家の後片付けなどもすることを考えた時に、長靴の有用性は捨てがたい。だから、できることならば履いて行きたいと考えるわけです。

それに、長距離歩行に適した長靴もあります。ご覧になっていただいているようですが、例の「日本野鳥の会オリジナル長靴」は、ドロドロの水辺や山中で使うようにできていますから、長距離歩行でもかなり使えますし、他にもそのようなものがあるでしょう。

要は、モノは使いようなのです。そして災害の状況は千差万別ですから、一概にこうしろという内容で割り切れるものではなく、それぞれの場面に応じて個々人が考えて工夫しなければ、いざとなったら使えない、というケースも出てきます。

当ブログのスタンスは、上から「こうしろ」と指導するのではなく、この情報を参考に、それぞれの状況にあわせてご自分で考え、アレンジしていただきたいというものです。

ご自分で考えていただいていれば、例えば災害の状況にあわせて、普段の靴を履いていくか、長靴にするかを選べます。そして長靴を履いて行くなら、水や泥対策をしないと脱げ易くなる、という事を知っていることが大切なのです。一概に「避難時に履いてはダメ」と単純に割り切れるものではありません。そんなのは、ただの机上の空論です。

ですから、当ブログでは肯定でも否定でも、必ずその理由を示しています。それを理解していただいた上で、それぞれがセレクトしていただければと思います。絶対的な正解は存在しないのですから。

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