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2013年9月

2013年9月30日 (月)

台風20号接近時の観天望気

去る9月26日、台風20号が関東の東海上を北上し、関東地方にも多少の影響をもたらしました。このとき、管理人はいつも通り埼玉県南部をあちこち移動していたのですが、非常に興味深い現象を見ることができました。当日リアルタイムでアップしたかったのですが、すいません今頃になってしまいました。

当日、東日本の太平洋沿岸は、非常に「大気が不安定」な状態でした。しかし、これは先の9月16日に関東付近に襲来した台風18号の時とは、かなり異なっていたのです。

台風18号の時は高層に大陸からの乾冷気、低層に台風がもたらした暖湿気が流れ込むという状態でした。これに対し、台風20号の時の関東地方は、低層に比較的暖かく湿った空気が入っており、その東側を台風が北上したために、台風に向かって吹き込む北風が乾冷気を低層にまで引っ張り込むという、暖気と冷気が低層でぐちゃぐちゃに混ざり合う状態だったのです。

このため低層から非常に不安定な状態になり、局地的な上昇気流と下降気流がぶつかり合って、乱れた雲が多く見られました。
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ただ、台風18号の時ほど低層の空気が暖かくなく、北からの乾冷気との温度差がそれほど大きくなかったために、ご覧のように雲底が比較的高く、真っ黒に見えるほどの雲というわけではありません。つまり、強い上昇気流によって、地上からは真っ黒に見えるほどの強力な積乱雲が、たくさん発生するほどの状態ではなかったのです。

しかし、不安定さで言えば台風18号の時をはるかに超えています。なにせ全く温度が違う空気を無理やり混ぜ合わせた状態ですから、あちこちで局地的で強い上昇気流や下降気流が発生しているのがわかります。下の連続写真の、画面中央付近に注目してください。
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経過時間はほんの15秒ほどですが、その間に急速に雲が現れました。ここにごく小さい、しかし強い下降気流が発生して渦を巻き、乱れた雲が発生したのです。

でも、そのような現象はそれほど珍しいことではありません。別に、下記ような現象が見られました。

管理人の居場所の北方、風上側の雲が見る間に黒くなり、雲底が下がって行きました。つまり、その上空では急速に入道雲もしくは積乱雲が発達したのです。そして、風が急に冷たく、激しくなりました。その時見られたのがこれ。
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ちょっとピントが甘くなってしまいましたが、上写真が北方の遠景、下がほんの500mほど離れたの画像です。下画像で、黒い雲の縁から、カーテン状の雲が垂れ下がっているのがわかりますでしょうか。この時、雨は全く降っていません。あくまで雲です。

これは、積乱雲からの強く冷たい下降気流が地表近くの比較的暖かく湿った空気の中を吹き降り、カーテン状の雲を形成したのです。つまり、積乱雲からの強い下降気流「ダウンバースト」の発生が、視覚的に捉えられたわけです。これだけの狭い範囲ならば、「マイクロバースト」と言って良いかもしれません。ダウンバースト自体は珍しく無いのですが、このようにはっきりと「見える」のは、比較的珍しいかと思います。

この時は、積乱雲がそれほど強力ではなかったために雨も降らず、被害を生むような風となはりませんでしたが、さらに強力だった場合、暴風被害が出るほどにもなりますし、この風が渦を巻けば、竜巻に発展することもあるわけです。ある意味で、竜巻の卵と言って良いかもしれません。

この日は、定常的には台風に向かって吹き込む北寄りの風が吹いており、そしてダウンバーストはたまたま観測点の北方で発生したので北風が強くなるように感じましたが、ダウンバーストは地面にぶつかって四方に拡散しますので、例えば観測点の南側で発生していれば、いきなり強い南風に変わったでしょう。そのように、局地的に風向風速が激変(航空用語では「ウインドシア」と呼ばれます)するので、特に低空、低速で離着陸中の航空機にとっては危険な現象であり、実際に事故に繋がった例も少なくありません。

この先もしばらく、台風や低気圧によってこのような気象状態になることが考えられますので、「大気が不安定」な時には、引き続き竜巻や突風への警戒が必要です。

最後に念のため付け加えますが、上画像の撮影時、管理人は危険なレベルの風ではないと判断していましたし、仮に危険になった場合でも、すぐに頑丈な場所に逃げ込める算段をした上で撮影しています。皆様におかれましても、くれぐれも無理な「スクープ」を狙われたりされませんように。

■■10/1追記■■
上記本文中に、誤解を招く表現がありましたので、補足させていただきます。
積乱雲からの下降気流に関して、《この風が渦を巻けば、竜巻に発展することもあるわけです。ある意味で、竜巻の卵と言って良いかもしれません。》と書きましたが、竜巻とは、上昇気流が渦を渦を巻いたものです。積乱雲からの強い下降気流には、必ず対応する強い上昇気流が発生しているので、そちらが「竜巻の卵」となる可能性があります。下降気流の渦が竜巻となるわけではありません。


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2013年9月28日 (土)

☆再掲載☆大火災編13【首都圏直下型地震を生き残れ!23/54】

■当記事は過去記事の再掲載です■


今回は、火災避難時の三要素、「距離」「遮蔽」「冷却」に関連することについてまとめます。


まず「距離」とは、火点からできるだけ距離を取り、輻射熱から身体を守ることと、迫ってくる火災から離れるために避難することです。

これを実現するために必要なのが、「情報の収集」と「素早い判断」です。大火災の延焼中は、火災の場所、風向き、火災の延焼方向などの情報を常時できるだけ把握し、必要と判断したらタイミングを逃さずに避難行動に移らなければなりません。その要素は、「釜石の奇跡」と呼ばれる津波避難行動事例に凝縮されています。この場合、特に集団行動の際に注意すべきことは、原則的には「正しい情報が得られなければ動くな」ということです。

行き当たりばったりや、曖昧な情報を元に行動を始めてしまっては、それが誤りだった場合には致命的な結果となります。小人数ならともかく、様々な人がいる集団行動で素早い転進は困難です。ですから、大火災から「生き残る」ために最も大切な「距離」を取る行動は、正しい情報が得られるかどうかにかかっています。もし自分の居場所から周辺の情報が得られない場合は、早い段階から各方面に「偵察」を出して、安全なルートを探すなどの対策が必須です。火が迫って来てからはでは遅いのです。

そして、得られる情報量が少なかったり不確かな時ほど、安全マージンを大きく取る必要があります。具体的には、より早い段階で避難行動を始めるのです。そこで大切なことは、「無駄足を恐れるな」ということです。「生き残ってから」のことばかり考えて、「生き残る」チャンスを失うことなどありませんように。大災害は、小さな判断ミスも見逃してくれません。

でも、「正しい情報が無ければ動くな」と「不確かな情報では安全マージンを大きく取って動け」というのは、明らかに矛盾する話です。しかし、どちらかが要求されるのが現実なのです。ここでの目的はただひとつ、「逃げ遅れないこと」。そのために、手に入れられた情報を吟味し、その上でどちらかの行動を選択しなければなりません。正しい情報を待っているうちに、逃げ遅れたらそこまでです。


次に「遮蔽」です。これは火の輻射熱を物理的に防ぐことであり、猛火を目の前にした時に、最も必要な行動です。具体的な方法は前述の通りですが、そこで大切なことは、ぎりぎりの状況下では「使えるものはなんでも使う」という意識です。

外国の映画などで、犯人を追跡する刑事が、たまたま通りかかった車に無理矢理乗り込んで追跡するようなシーンがありますが、そんな行動に法律的な根拠はありません。犯罪捜査中の刑事だからと言って、他人の財産を接収する権利など無いのです。

でも、それが目的のための唯一の手段ならそうする。あとで始末書の山になることがわかっていても、そうするのです。もちろん映画の話は極端な例ですが、少なくとも命がかかった状況では、「目的のためには手段を選ばない」行動が、運命を分けることもあるのです。


誰でも、無理な行動によって引き起こされる問題や混乱は、容易に想像できます。しかし、自分や大切な人の「死」など、リアルに想像できませんし、想像したくありません。ですからつい、普段の生活の延長線上の判断をしてしまいがちになるのは、ある意味で仕方ありません。

それでも、ぎりぎりの状況下では「できることはなんでもやる」という覚悟と発想の転換が必要だと、管理人は考えます。それを避けるのもひとつの選択肢ではありますが、その判断が、命と引き換えになることもあるという覚悟は必要でしょう。なんだか「遮蔽」と全然関係ない話ですが、普通は避難行動中に猛火を効果的に遮蔽できるものなど持ち合わせていないものですから、それを調達できるかどうかで、結果は大きく変わってくるのです。

ここで「遮蔽」編で書き忘れたことをここでひとつ追記しますが、火の熱を遮蔽するために、材質、大きさともにお勧めなのは、天ぷら鍋に火が入った時に、鍋にかけて消火するシートです。あれは消防服と同じ耐熱性、難燃性の材質ですから、入手しやすく、持ち運べびやすいものとしては理想的でしょう。


最後に「冷却」です。水の冷却効果でやけどのリスクを減らし、服などの発火を抑えることですが、これはもうとにかく、できるだけ大量に水分をまとうことに尽きます。しかし実際には、猛火を前にして十分な水を確保できることは少ないでしょう。本文では泥を使う方法を述べましたが、これは軍隊で教育されている方法であり、一般の「防災マニュアル」にはまず載っていないはずです。大量の泥が無くても、顔や手足に塗るくらいならば、ペットボトルの水と植木鉢の土くらいでも可能です。そしてその効果は絶大ですから、これは是非覚えておいてください。


ここまで、大火災からの避難に必要な三つの要素について述べてきましたが、このうち「距離」は絶対の安全を保証しますが、「遮蔽」や「冷却」は、猛火を目の前にしてからの「対症療法」であり、必ずしも「生き残れる」状況とは言えません。ですから、とにかく早い段階で正確な情報を入手し、タイミングを逸さずに、「無駄足を恐れずに」避難行動に移ることが、何よりも大切なのです。特に、多人数が集まっている場所では、より素早い判断が求められます。


大正12年の関東大震災では、約11万人の犠牲者のうち、約8万人が火災による犠牲でした。本所区(当時)の陸軍被服廠跡地、ここは約250m四方の広場でしたが、そこだけで約4万人が火災旋風のために焼死しました。現在は当時と状況は異なるとはいえ、大火災の恐ろしさは何ら変わっていないのです。

まず、あなたの居場所周辺の火災リスクと、避難経路、避難場所の状況を知ることから始めてください。それは街を歩いてみればわかりますし、火災危険度を表示したハザードマップや、それがなければ自治体の「防災課」や消防署に問い合わせればわかります。まず、大火災が発生したら、何が起きるかを知ってください。

それが素早い判断をするための、最も基礎となる情報であり、それなくしては情報の価値も半減してしまうのです。まずは、そこからです。

次回からは、大都市圏における大火災リスクについて考えます。


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2013年9月25日 (水)

☆再掲載☆大火災編12【首都圏直下型地震を生き残れ!22/54】

■当記事は過去記事の再掲載です■


今回は、「冷却」について考えます。

時代劇で、燃える家の中に飛び込む時に、辻に置いてある防火用水の水を頭からかぶって行くシーン、たまに見ますよね。「冷却」とは、要はあれです。水で濡らすということは、その物体の温度を下げる、つまり「冷却」することです。

物が燃えるためには、三つの要素が必要です。それは「燃焼の三要素」と呼ばれ、「酸素」「可燃物」「温度」の三つです。どれが欠けても、燃焼はしません。つまり、そのうちの温度を低く保ち、物の「発火点」以下にまで冷却しておけば、火はつかないというわけです。

さらに、身体や服を濡らすことで、水分が蒸発する時に奪われる気化熱で体表の温度を下げ、火の輻射熱から服や肌を守る効果があります。火がつかなくても、当然ながら熱だけで化学繊維は溶けますし、肌は焼けるのです。ですから、水が豊富に手に入るなら、できるだけ全身びしょびしょになるまで水を浴びてから、ここまで述べて来た方法を併用しながら火点を突破すれば、致命的なやけどや服の発火までの「時間稼ぎ」をすることができます。

もしそこに川や池などがあれば、迷わず飛び込んで、全身くまなく濡れネズミになるのです。水分は多ければ多いほど良いのは、言うまでもありません。どんなに悪臭を放つ汚い水だろうと、ためらってはいけません。前の記事で述べた遮熱用の毛布や布団も、できるだけ水びたしにすることで、より効果がアップします。火にはとにかく、水です。しかし、都市部ではなかなかそうは行きませんよね。

では、あなたが持っている水が、例えば2リットルのペットボトル1本だとしたら、どうしますか?それを頭からかぶりますか?もちろんそれでも効果は見込めます。しかし、それでは60点というところでしょうか。頭から水をかぶっても、一部は服に吸収されますが、大半は流れてしまいます。ここでは、一滴の水も無駄にしたくありません。それに、水が染み込みにくい素材の表面を濡らしただけでは、猛烈な熱で一瞬で蒸発してしまいます。ならばどうするか。

水を「服の中」に注ぐのです。襟元、袖口、ウエストから水を注ぎ、服の内側から水を吸収させます。そうすれば、ほとんど無駄になりませんし、外から熱を受けても蒸発するまでにより時間がかかり、服の外側を濡らした場合より、長い時間に渡って致命的なやけどから守られます。上着に火がついても、それを脱ぎ捨てられるくらいの余裕も生まれるでしょう。化学繊維製が多い下着を濡らせば、それが溶けるのを遅らせる効果もあります。

以前の記事で、天然繊維のシャツなどを重ね着すると遮熱効果がアップすると述べましたが、そうしてあれば保水量も多くなり、より長い時間の熱に耐えられるという効果もあります。しかし夏場で肌の露出が多く、保水量が少ない服装だったり、スカートの場合はどうでしょうか。肌についた程度の水は、一瞬で蒸発してしまいます。なんとかして、保水量を増やさなければなりません。

まず考えられるのは、天然繊維のタオルやシーツなどに水を含ませ、露出している肌を覆うことです。しかしそれができなかったとしたら?まだ方法があります。

それは「泥」。都市部でも、特に大火災の危険が大きな住宅街には、庭の花壇や植木鉢、プランターなどに、意外と土があるものです。その土に水を混ぜた泥を、まず露出した肌に、余裕があれば服もに塗るのです。頭を守るものが無ければ、髪の毛にもどろどろになるまでまぶします。

水を含んだ泥の断熱効果は非常に大きく、水分が完全に蒸発しきるまでに時間がかかり、その間は冷却効果が持続しますし、水分が無くなっても、肌を覆った土自体に断熱効果もあります。都市部ではあまり現実的ではありませんが、もし水を張った水田や泥地があれば、その中をごろごろ転がって泥をまぶし、全身泥人形になるのが理想的です。

側溝にたまった汚泥でも、ためらわないで顔や全身に塗り付けることです。どんなに臭くても辛くても、火に焼かれるよりはマシと考えれば。「生き残る」ためには、取り澄ました日常を自ら捨てなければならないこともあるのです。日頃から、「生き残るためには、できることはなんでもやる」という意識と覚悟をしておくことが必要です。

次回は、ここまで述べた「距離」「遮蔽」「冷却」の三要素についてまとめます。


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2013年9月24日 (火)

【EDCグッズ15】自動車に備えるEDCグッズ 03

■EDCとはEvery Day Carryの頭文字。毎日持ち歩く装備を意味します。

今回は、管理人の自動車用EDC「A装備」の内容を解説します。
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画像をご覧いただいておわかりになると思いますが、「水分」、「カロリー」、「防水・防寒」、「安全・衛生」に加えて「救護」を重視した内容になっています。

まず「水分」としてペットボトル水を4リットル。それを保冷バッグに入れて、さらにリュックに入れています。これはもちろん保冷のためではなく、車から持ち出す際に余裕があればリュックから出して、手提げとして使うためです。そして、空いたスペースに後で紹介する「B装備」、「C装備」を入れて運ぶことを想定しています。その余裕が無ければ、とりあえず「A装備」だけ持ち出そうということです。

次は「カロリー」。缶入り高カロリービスケット(1缶約1000キロカロリー)を二個。敢えて缶入りなのは、空き缶がいろいろ使えるからです。加えて、画面中央の銀色の真空パックは米国製の非常食料(3500キロカロリー)で、合計で約5500キロカロリーを補給できます。

次は「防水・防寒」用として、四畳半サイズのブルーシート1枚。グラウンドシート、防水シート、簡易テント、シュラフ代わりなど、幅広い用途に使えます。さらに、車(ミニバン)のリアゲートを開いてかぶせたり、車の横にさしかけたりすれば、居住空間を大きく広げることができます。

次は「安全・衛生」と「救護」です。ビスケット缶の左にあるのは「防煙フード」。これは、トンネル内での火災を想定しています。有毒な煙の中を脱出するために必須のものです。その左にはおなじみの「レスキューシート」。左下には、簡易トイレもあります。災害時はもとより、大渋滞でトイレに行けない時の最後の砦でもあります。

ブルーシートの上にあるのは厚手の革手袋とゴム手袋。革手袋は耐熱、耐切削性に優れていますから、緊急時には常時はめていたいものです。ゴム手袋は防水性に優れていますから、雪や冬の雨の中では必須です。車に積もった雪を払う時や、タイヤチェーンをつける時など、平常時でも重宝します。さらに、泥や汚物を扱う際にも必要となります。

中央下には、薄手のゴム手袋と防護ゴーグル。ゴム手袋は主に負傷者救護用で、血液感染防護のためです。これは実際の交通事故現場で使ったこともあります。ゴーグルは通気性があるものなので、煙などを完全に遮断はできませんが、あると無いでは大違いです。もちろん、災害後の猛烈なほこりの中では絶大な効果を発揮します。加えて、大出血している負傷者救護の際に、血液の飛沫から目を守る感染防護用途も想定しています。

左側に並んでいるのが、主に「救護」用品です。内訳は下記の通り。
■止血パッド
■包帯
■ガーゼ
■テープ
■液体傷薬
■はさみ
以上のものを、上記のレスキューシート、ゴム手袋、ゴーグルと一緒にポーチにまとめて、負傷者救護の際にはそのポーチだけを持ち出せば良い形にしています。そして最後は、何にでも使えるガムテープ。一般的な用途だけでなく、止血のための圧迫や、雑誌や板などと合わせてギプスも作れるなど、応用範囲は非常に広いのです。

緊急時にすぐ取り出したい手袋類と防煙フードは、リュックの外側のポケットに入れてあります。そこまで考えていないと、本当の緊急時には意外と使えないものなのです。また、画像ではスペースの都合で全部並べていませんが、防煙シート、レスキューシート、簡易トイレは家族の人数分用意してあります。


以上が、管理人が自動車に装備している最優先装備「A装備」です。皆様が自動車用EDCを組む際に、参考にしてみてください。とりあえず「これだけあれば、なんとかなるだろ」という感じの装備です。皆様の装備やお考えもお聞かせいただければ幸いです。

なお、ここに挙げた品物は、米国製非常食料を除いて、すべてホームセンターとドラッグストアで比較的安価で入手できるものばかりですから、どなたでも簡単に揃えることができます。防災グッズを揃える際は、何も専用品にこだわる必要はありませんし、専用品が必ずしも高性能だとは限りません。なるべくお金をかけず、どこでも入手できるものを利用するという「取得性の高さ」も、とても重要なポイントなのです。

ところで、管理人がいつもやたらとこだわる「視界」グッズ、LEDライトが登場しておりませんが、これは「C装備」の段階でまとめて紹介します。「A装備」に入っていないのは、普段から必ず複数のLEDライトを身につけているからなのです。

次回は、「B装備」を紹介します。

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2013年9月23日 (月)

☆再掲載☆大火災編11【首都圏直下型地震を生き残れ!21/54】

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前回は、身体から溶けやすい化学繊維の服を取り除き、髪や露出している肌をできるだけ天然繊維で覆という耐熱策を行いました。もしその他の手段が何も残されていないのなら、その状態のまま「息を止めて」、火の脇を一気に駆け抜けるしかありません。高温の煙や空気を吸い込むと、肺に重大なダメージを受けるからです。

しか、前回想定したような状況下では、仮に火点を通り抜けられても、無事ではいられないでしょう。致命的な結果になることも考えられます。確実に「生き残る」ためには、さらに対策が必要です。それは「遮熱板」を使う方法です。できるだけ燃えにくい板や大きな布を持ち、それを火の方向にかざして、その陰に隠れて駆け抜けるのです。

純毛の毛布や、真綿の布団があれば効果的でしょう。大火災現場付近は、猛烈な熱によって空気が異常に乾燥していることもあり、表面はすぐに火がつくものの一気に燃え上がることは無く、効果的に熱を遮蔽できます。その他、純毛製のジャケットやコート、木製や鉄製の雨戸、ガラス戸、トラックの幌のようなキャンバス地のシートなど、なるべく燃えづらく、身体を隠せるものを探します。

化学繊維の毛布や布団でも、短時間なら遮熱効果が期待できます。すぐに着火して溶け始めますが、全体が溶けるまでに駆け抜け、すぐに投げ捨てるのです。ポイントは身体に巻かずに、火の方向に腕を伸ばしてかざすことです。前回記事で触れた、厚手の化学繊維製ジャケットやコートも、このような使い方ができます。溶けるまでの数秒間だけでも熱を遮蔽できれば、結果はかなり違って来ます。

毛布などを持つ手は、化学繊維が溶け始めたりしない限り、途中で絶対に離してはいけません。厚手の革手袋をしていれば理想的で、軍手もかなりの断熱効果があります。合成皮革の手袋は、すぐに溶けて手に重大なやけどを引き起こしますから、むしろ素手で、タオルなどを巻く方が良いでしょう。

ところで、避難行動中に毛布や布団は持っていないでしょうし、雨戸やガラス戸なども、普通は調達できません。どうしたら良いのでしょうか。

その答えは皆様ご想像の通りです。近隣の家から借りるのです。もちろん、家の中に入らなければなりません。鍵がかかっていたら、ガラスを割ってでも家に入り、毛布や布団、テーブル、戸板などを使わせてもらうのです。もちろん、これは「そうしなければ生命の危険がある」状況における、最後の手段です。このような場合、法律的には「緊急避難」が成立する可能性が高く、そうであれば不法侵入、器物損壊や窃盗の罪に問われることはありません。

もちろん道義的には非常に心苦しいものがありますが、管理人ならば、火に焼かれるよりは、その方法を選びます。もちろん、生き残れたらそれなりの補償をするつもりで。なにしろ、命あっての物種です。

ところで、近隣の家に入れるのなら、無理に猛火の中を突破するより、裏口などから別方向に脱出する方法を探すべきではあります。最初からその手段が取れれば、当然その方が良いのです。しかし、ここではあくまで猛火の中を突破するという前提で、対策を考えて行きます。


熱に強い服装とは、何度も述べているように、天然繊維製のものです。木綿や絹のシャツやスカーフ、ジーンズ、純毛や麻のジャケットやコート、純毛のニットキャップなどです。革のコートやジャンパーがあれば、特に効果的です。火災からの避難開始前に余裕があれば、できるだけ天然繊維の服に着替えておくべきです。それも、動きを阻害しない程度に重ね着をすれば、より効果的です。

下着類、特に女性用は化学繊維製が多いのですが、そこまで熱が通るのは、正直言って最後の状況です。なるべく天然繊維製に替えるべきではありますが、余裕があれば、というくらいでしょうか。

オートバイ用や自動車レース用のヘルメットは、保護面積が広く断熱効果も高いのでお勧めです。火災に対しては、フルフェイス型が理想的でしょう。しかし、透明なシールド部分は比較的溶けやすいので、溶けた樹脂が顔や身体に付着しないように注意が必要です。断熱効果が高いだけに、表面の帽体が溶け出しても気が付きにくいので、その点も注意が必要です。

防災用のヘルメットをかぶる際は、下にタオルや木綿のスカーフ、Tシャツなどをかぶっておけば遮熱効果が高まり、冬場は防寒にもなります。木綿のTシャツは、頭巾、覆面、包帯、三角布代わりなど非常に応用範囲が広いので、避難時は多めに持って出ると良いでしょう。なお、表面にインクを乗せてプリントしたもの(プリント部分がごわごわしているもの)は、インクが溶けたり発火したりしやすいので、遮熱用としては避けた方が良いでしょう。


最後に、これは全く余談ながら、あくまでマニアックに考えた、火災避難の際の理想的な服装について。消防士の装備を別にすれば、自動車レース用のレーシングスーツや、戦闘機パイロット用のスーツです。これはノーメックスという耐火繊維製で、同じ素材の下着やフェイスマスク、ヘルメットと併用すれば、800℃の炎に包まれても、1分間程度は致命的なやけどから身体を守ります。

上記のようなものは現実的ではありませんが、ノーメックス製のジャケットは、最低でも5万円くらいと高価ですが市販されています。また、作業用のノーメックスツナギなら、7〜8千円から見つかります。この繊維は、強い炎に晒されても焦げるだけで、炎上したりすぐに穴が空いたりせず、、その状態が長時間続きます。比較的安価なノーメックス製の耐火フェイスマスク(米軍放出品なら2500円前後)や、耐火グラブ(米軍新品で4500円前後)くらいならば、用意しておくのも良いかもしれません。ご参考までに。興味のある方は、それぞれのアイテム名で調べてみてください。


次回は、「冷却」について考えます。

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2013年9月22日 (日)

【竜巻 マンション】ご要望にお答えします

今年は、各地で竜巻被害が発生しています。そのたびに当ブログにはたくさんのアクセスを頂戴しておりますが、検索キーワードの中に、いつも非常に目立つ言葉があります。それが、タイトルの【竜巻 マンション】なのです。今回はそんな皆様のご要望にお答えし、マンションの竜巻対策についてまとめてみたいと思います。

鉄筋コンクリート造りのマンションは、一般に竜巻に対しては非常に頑強です。建物自体が崩壊したり大きく損傷する可能性は、まずありません。米国中西部などで発生する藤田スケールF5クラスの超巨大竜巻になると、鉄筋コンクリート構造物を破壊することもあるそうですが、わが国ではそのクラスが発生する可能性は無いと言って良いでしょう。

ですから、マンションは竜巻に対して比較的安全です。しかしマンションならではの危険も存在しますから、決して何もしなくても安心という訳ではありません。最大の危険要素は、その「高さ」です。上層階になるほど強い風が直接当たり、飛来物が衝突する可能性も高くなるのです。

一戸建て家屋の場合、強い竜巻で屋根や壁が吹き飛ばされる危険が一番高くなりますが、マンションの場合は上記の理由により、窓ガラスが吹き飛ばされる可能性が高いのです。マンションのガラスは、火災時の延焼遅延を目的としたワイヤ入りガラスだったり、飛散防止フィルムなどで対策されていることも多いと思いますが、それでも飛来物の突入に関しての効果は限定的です。

さらに、F3クラス以上の竜巻になると、場合によっては自動車や大木のようなものが衝突、突入して来る可能性も出てきますので、そのような最悪のケースを想定して、避難行動をしなければなりません。

そこで、一般的な間取りのマンションを想定し、竜巻の際の危険度を色分けしてみました。
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比較的安全度が高い場所が緑色で、黄色から赤になるにつれて危険度が上がります。水色で表したのはガラスです。

屋外であるバルコニーと外廊下が最も危険な場所であることは、言うまでもありません。そんな場所にいたらあらゆる飛来物の直撃を受け、身体が吹き飛ばされたり吸い上げられたりするかもしれません。次に危険なのは、窓際の部屋のガラス近くです。

上図では、窓の近くを特に赤く表現していますが、部屋の奥ならば安全という意味ではありません。窓から飛び込んだ物やガラスの破片は、暴風と一緒に部屋の奥まで突入するでしょう。あくまで「窓には絶対に近づくな」という意味です。そんな場所で接近する竜巻を眺めたり撮影したりすることは、自殺行為に等しいと考えなければなりません。

部屋の奥にある押入れやクロゼットの中も、決して安全とは言えません。むき出しよりも多少はマシでしょうが、それらの扉には重量物の衝突に対する防護効果はほとんど無く、最大の問題は、危険な方向にしか脱出できないということです。飛来物で脱出口が塞がれるかもしれません。

一方、緑色で表したのは浴室、洗面所、トイレ、廊下です。窓際ではなく、ガラス窓も無いために、飛来物や破片が突入して来る可能性が非常に低い場所です。できれば、建物の躯体(くたい=鉄筋コンクリート構造の壁)そのものに囲まれた場所が、より安全です。

これは壁を叩いてみれば、すぐわかります。コンコン、ドンドンと音が響く壁は、石膏ボード製などの中空の壁です。叩くとコツコツと硬い音がして音が響かない壁が躯体壁ですから、できればその裏側に入ります。一般的なマンションでは、浴室はユニット式のことが多いのですが、その周囲は躯体壁になっているのが普通です。ですから、もし管理人が上図のようなマンションにいたら、迷わず浴室に入ります。

その場合、壁が吹き飛ばされる可能性はありませんから、浴槽の中に入る必要は無いでしょう。それは、屋根や壁が吹き飛ばされる可能性がある、一戸建ての場合の対策です。トイレも避難場所としては悪くは無いのですが、必ずしも躯体壁で囲まれているとは限りませんから、次善の策ということになります。

なお、一応廊下も緑色で表しましたが、ご覧のように部屋との仕切りドアにガラスが使われている例が多いはずです。窓が破られれば、次にドアのガラスや、場合によってはドアごと吹き飛ばされる可能性も無いとは言えませんので、より安全な場所に逃げ込める場合は、迷わずそうするべきです。

大きな被害が出るような竜巻の場合、部屋の奥まった場所にいても、接近してくればゴーっという轟音が聞こえて来るはずです。そんな音が静まるまで、じっと待機するしかありません。竜巻の直撃を受けると停電する可能性が高いので、避難する際にはLEDライトなどの明かりを忘れずに。


最後に、マンションの話では無いのですが、竜巻に関する「机上の空論」など。

竜巻対策マニュアルのようなものに、一戸建ての場合、竜巻が接近してきたら風上側のドアや窓を閉め、風下側を開けろ、みたいなのを見たことはありませんか?そうすれば気圧の関係で、屋根が飛びにくいとか言う話です。

管理人は、そんなことを「指導」する輩に言いたい。「自分でやれるものならやってみろ」と。

理論的には正しいのでしょうが、竜巻が多発する米国中西部でさえ、危機的状況でそんなことをやれた人などいないのです。屋根が飛ばなかった家を調べてみたら、結果的にそのような状態だったという話が、「トリビア」として伝わっているに過ぎません。

何より、竜巻接近時の風向はどんどん変わって行きます。それをギリギリまで見極め、最接近時に風下側のドアや窓を開けろなど、はっきり言って死ねというようなもの。よくもまあ、そんな無責任なことが言えるものです。でもその程度の輩が、堂々と「防災の専門家」を名乗っているのですから許しがたい。

一戸建てにいて竜巻に遭遇した場合でも、そんなこと絶対に考えないでください。家よりも家財よりも、まず命を守らなければなりません。


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2013年9月20日 (金)

☆再掲載☆大火災編10【首都圏直下型地震を生き残れ!20/54】

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今回から、いよいよ大火災から「生き残る」ための、具体的な方法を考えます。

なお、管理人は「防火管理者」資格を持っています。しかしそれ以前から、火災に関しても個人的に興味を持って多少研究しており、当ブログで述べている内容は、教本の丸写しではありません。必要な要素はもちろん共通ですが、方法論に関しては、一般的な防災マニュアルにはまず載っていない、管理人独自の実践的なアレンジを加えています。


最初に、火災の危険要素から考えてみましょう。それは「熱」、「煙」、「有毒ガス」の三つです。このうち、屋外の避難行動においては、とりあえず「煙」と「有毒ガス」の脅威はかなり小さくなります。ですから、とにかく「熱」の脅威から身を守らなければなりません。では、「熱」を最も効果的に避ける方法とはなんでしょうか。これは皆様すぐにおわかりになるでしょう。そうです。火から「距離」を取ることです。

しかし、距離が取れなかった場合は?その場合は、熱を「遮蔽」または「冷却」するのです。大火災の猛烈な熱から身を守るために必要な要素は、「距離」、「遮蔽」、「冷却」の三つを組み合わせた行動になります。そのうち、安全な「距離」を確保する方法はただひとつ。それは素早い避難であり、ここまで述べて来た行動によって実現できます。要は、安全が確保されるまで周囲の情報を「常に」集め続け、それに基づいて、タイミングを逸さずに、正しい避難行動を始めることに尽きます。

その他の要素である「遮蔽」と「冷却」が必要になるのは、事実上十分な「距離」を取る行動に失敗した場合であり、状況はより厳しくなります。ここでは、避難行動中に、行く手に火災を発見した状況をシミュレーションします。


状況を設定しましょう。場所は木造家屋密集地域。進むべき道路の幅は6m。車がすれ違うのがちょっと難しいくらいの道です。既に後方には火が迫り、戻ることはできません。他に迂回できる道路や路地もありません。道路片側の木造家屋が火災の最盛期になり、家全体が火に包まれています。風は火点から道路側に向かって吹いていて、炎が道路幅の半分以上まで吹き出しています。危険な熱に晒される距離は、約20m。道路上の温度はすでに数百℃に達し、無防備のまま突破しようとしたら、化学繊維の服は溶け、髪が燃え上がり、肌も焼かれるでしょう。しかしその地点を突破しなければ、逃げ場はありません。非常に厳しい状況です。

ここでやらなければいけないことは、熱の「遮蔽」です。これは、身体と火の間になるべく燃えにくいものを挟むことで、火の輻射熱から身体を守ることです。まずは上記にもある通り、身体の表面にある、特に薄手の化学繊維を取り除くことです。特に、肌に密着しているナイロンストッキングは最も危険です。一瞬で溶けて数百℃ののまま肌に貼り付き、重いやけどを引き起こします。

しかし、実際にはその場で脱ぐというのは、時間的にも精神的にも現実的ではありません。その場合は、スカートの膝下など熱に直接さらされる部分を、引き裂いてでも取り除くのです。できれば、避難行動開始前に脱いでおくべきでしょう。ズボンの下に履いている場合は、ズボンが木綿や毛などの天然繊維ならば、溶けるまでに多少は時間が稼げますが、一旦溶けたらより危険になります。なお、化学繊維でも防寒ジャケットなどの厚手のものならば使いようがあります。その方法はあとで述べます。

もうひとつは、顔と髪の毛の断熱。髪の毛は最も燃えやすいのです。バスタオルなどのできるだけ厚い天然繊維で、頭全体を覆面するように、目の周りだけ最小限の面積が出るように覆います。プラスチックヘルメットは短時間なら断熱効果がありますが、ヘルメットから出ている肌や髪の毛は、天然繊維で防護しなければなりません。

防災頭巾があれば効果的ですが、顔の防護ができませんから、やはり顔には天然繊維を巻く必要があります。木綿や絹のTシャツで覆うだけでも、かなり効果があります。なお、タオルなどを巻く際は肌に密着させてきっちりと巻かず、すこし空間を持たせてゆったりと巻きます。タオルなどと顔の間の空気による断熱効果を期待するためと、火がついた際に、すぐに外せるようにするためです。

アルミレスキューシートは、熱を反射する効果は高いのですが、シートの素材はポリエチレンです。火に晒されるとすぐに溶けてしまいますから、この場合は使えません。このように、身体から燃えやすい、溶けやすいものを取り除いた上で、露出している肌をできるだけ木綿、毛、絹などの天然繊維で覆い、猛烈な輻射熱から身体を守ることが、まず何より必要なことです。


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【福島県浜通りで震度5強】地震関連情報【9/20】

本日9月20日、午前2時25分、福島県浜通りの深さ17kmを震源とするマグニチュード5.9(数値はいずれも気象庁暫定値)の地震が発生し、福島県いわき市で最大震度5強を観測しました。

この地震が発生した震源域は、東日本大震災後に集中的に誘発地震が発生している場所で、福島県浜通り南部から、茨城県北部にかかっている場所です。震災後、この震源域で発生した地震の震源深さはほとんど10km前後でしたが、今回は大きめの地震としては恐らく震災後初めてと言って良い、少し深めの17kmで発生しました。

去る7月23日には同震源域北辺付近の、今回の震央とごく近い場所でマグニチュード5.2、深さ10km、最大震度4の地震が発生し、その後約一週間の間に小規模余震が十数回連続するという現象が見られました。本震の規模の割には、余震の回数がかなり多めではありました。

7月23日の地震とその後の余震についての記事を、7月30日にアップしていますので、併せてご覧ください。
■7月30日の地震関連情報はこちらから

7月23日からの余震は時間の経過と共に次第に減って行き、その後はごく散発的に小規模地震が発生している状態でしたが、本日9月20日未明に震度5強の発震となりました。この地震の前には、小規模地震が増えるような傾向は特に見られていません。

今回の本震の後、約30分の間に震度1クラスの余震が5回、午前5時台に1回発生していますが、前回の例と同様ならば、今後しばらく間は群発地震のような状態が続く可能性もあります。

震災後、この震源域では、有感地震が毎日数回以上という極端な多発が見られていました。その多くは震度3以下でしたが、時々震度5弱から5強となるパターンを繰り返して来ました。その後時間の経過と共に地震規模も発生回数も漸減し、震災から約2年半となる現在では、数日~2週間くらいに一回程度と、かなり落ち着いて来ています。

それでも、今回のように震度5強クラスが発生するポテンシャルが未だにあることが証明されましたし、それ以上の規模にならないと断言することもできません。気になるのは、今回の地震が「いつもの深さ」よりかなり深い場所で大きめに発生していることで、これが何らかの新しい動きに繋がるのか、しばらくの間は注視すべきかと思います。

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2013年9月19日 (木)

【EDCグッズ14】自動車に備えるEDCグッズ 02

■EDCとはEvery Day Carryの頭文字。毎日持ち歩く装備を意味します。

しばらく滞っておりました【EDCグッズ】シリーズを再開します。念のため、前回記事をリンクしておきます。

■【EDCグッズ13】自動車に備えるEDCグッズ 01はこちからら

これから何回かに渡り、自動車内に常備するEDCグッズについて考えますが、基本的な考え方はふたつ。ひとつは、自動車は移動中に災害に遭遇することがあること、もうひとつは、災害時に「移動式シェルター」となるということです。ですから、それらに対応した装備が求められます。

優先順位としては、自動車の使い方にも左右されますが、管理人としては移動中に災害に遭遇する可能性を上位に考えています。つまり、補給が受けられない場所で立ち往生した際に、救援が来るまで持ちこたえるための装備です。具体的なイメージとしては、山の中、高速道路上などで動けなくなり、さらに悪天候に見舞われ、場合によっては自動車を放棄して移動しなければならないことを想定しています。

そのような場合に対応した装備を、ここでは「A装備」としましょう。満たすべき条件は、最重要の物資をカバーしつつ、できるだけ軽量コンパクトにまとめることと(重量は燃費に影響します)、緊急脱出時に持ち運びできることです。

管理人の「A装備」をご覧ください。なお、管理人の車はミニバンタイプで、すべての装備が三列目シートの後ろのラゲッジスペースに収まる容量で考えています。
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一枚目画像が「A装備」の外観、二枚目が内容です。緊急時にひっつかんで飛び出せるように、リュックにまとめています。ちなみにこのリュックは、1000円くらいの安物です。

ここで、管理人が「普段持ち歩く防災グッズ」シリーズで提唱した、防災グッズの6+1要素を思い出していただきたいと思います。
■水分
■カロリー
■視界
■防水・防寒
■安全・衛生
■情報
■救護
という6+1要素です。「救護」は「安全・衛生」と被る部分がありますので、6+1と表記しています。管理人が装備を考える時は、常にこの6+1要素を前提にしていますが、「A装備」には、リュックの容量や重量の関係もあって、すべてが含まれているわけではありません。後に紹介する他の装備に加え、徒歩で持ち歩いているEDC装備も合わせて各要素が完成するように考えているためですので、その前提でご覧ください。

各装備の解説は次回以降にお送りしますが、ここでの装備の分類について、先にまとめておきます。

ここではまず、上記のように緊急脱出時に持ち出すべき、最重要装備を「A装備」、次に、より幅広い状況に対応するための装備を「B装備」、そして、自動車内で長時間過ごすための装備を「C装備」とし、優先順位はABCの順となります。平たく言えば、「生き残る」ための装備がA、さらに持ちこたえるための装備がB、なるべく快適に過ごすための装備がCという感じでしょうか。

実は、管理人の車は車中泊仕様になっていまして、ボランティア活動時などに活用していますから、その経験も反映させた装備となっています。


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2013年9月18日 (水)

☆再掲載☆大火災編09【首都圏直下型地震を生き残れ!19/54】

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ところで、なぜ火災から避難しなければならないのでしょか。それは、言うまでも無く「火は熱いから」です。では、火はどれほど熱いのでしょうか。むかしは、あちこちで普通にたき火をしていたので、火の熱さを体験的に知ることができました。たき火に近づきすぎて髪や眉を焦がしたり、化学繊維の服を溶かしたりした経験のある方も多いと思います。

しかし最近は、そんな機会も減り、火の本当の恐怖を忘れがちです。火の温度は800℃とか数字で言われても、あまり実感はありません。でも、ここで火、特に火災の大きな火は、凄まじい威力を持っているということを、改めて認識しなければなりません。

管理人は以前、木造家屋の火災現場に遭遇したことがあります。開けた場所にある一戸建てで、火は建物全体、外壁にまで火が周り始め、窓からは大きな炎が吹き出しています。火災の専門用語で言うところの、「最盛期」です。そのような状態の建物に、人は無防備でどれほどの距離まで近づけると思いますか?まず、それは風向きに影響されます。風向きが自分と逆方向ならば、7~8mくらいでしょうか。それ以下では火の輻射熱で、むき出しの肌は熱いというより、鋭い「痛み」を感じます。その場にとどまることはできません。

そこで、風向きがこちら向きに変わりました。その瞬間、煙と共に目には見えない「熱の壁」が迫って来るような感じがしました。炎そのものからは距離があるのに、目の前で大きな火が燃えているような感覚です。肌はチリチリと刺すような痛みを感じ、そのままだったら数秒で髪の毛が縮れ、化学繊維の服は溶け始めるでしょう。すぐに退避が必要です。結局、30m近く離れなければ「熱の壁」から逃れることはできませんでした。それでも、風がこちら向きに強く吹いた瞬間などは、思わず顔を手で覆いたくなるほどの熱さを感じました。たった一軒の火災でも、それほどの威力なのです。

これがもし、あまり広くない道路脇の建物が軒並み火を吹いているような状況だったらと考えてみてください。もう、その道を進むことは事実上できません。「火に囲まれて逃げ場を失う」とは、そういう事です。もしあなたの進路が、下画像のような状態だったとしたら。
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このようなことが関東大震災でも、戦時中の空襲でも、阪神・淡路大震災でも、そしておそらく東日本大震災でも、実際に起きているのです。しかしその恐怖が、被災者の口から語られることはあまりありません。何故なら、そのような状態に陥った人は、ほとんどの場合「全滅」だったからです。

平常時の火災ならば、それが大火災であっても、基本的には出火点から燃え広がるだけですから、火に囲まれることはあまり無いでしょう。しかし大地震後の火災は、「同時多発」です。唯一の避難路の先が安全である保証は、全くありません。特に木造家屋の密集地、通称「木密(もくみつ)地域」では、危険は極めて大きくなります。猛火に包まれる建物の脇の路地などは、全く通れなくなるでしょう。

そのような絶体絶命の状態に陥る前に、安全圏に脱出するために必要な要素はただひとつ、「スピード」です。それは移動速度のことでもありますが、それよりまず避難を始めるタイミングの早さです。巨大災害下では、チャンスは一度のみだと考えねばなりません。「なんとかなる」も「様子を見る」も、最悪の状況下ではまず通用しません。とにかく、「手遅れになる前に安全圏へ脱出する」ことが全てです。そして、その「スピード」を実現するために必要なのが、前回までに述べたような行動なのです。


ここで、災害時の人間心理についても考えておきましょう。人は、大きなショックを受けた後は、しばらく積極的な思考ができなくなりがちです。大地震の危機から一旦脱出し、状況が少し落ち着いて来た時には、多くの人がそのような状態になっているでしょう。そこでまた「すぐに避難せよ」と言われても、目の前に火が迫っているのでもなければ、つい「なんとかなる」や「様子を見る」と、危険を過小評価してしまう可能性があります。「ついさっきあんなひどい目に遭ったばかりなのに、もうごめんだ」とか「もう勘弁してほしい」などという気持ちが、判断を狂わせるのです。大火災の具体的な危険を知らなければ、なおさらでしょう。

しかし、現実の脅威は人間の気持ちなど全く省みずに、荒れ狂います。「生き残り」たければ、行動するしかありません。それも、正しく素早い行動を。状況は、待った無しです。そこで必要となるのが、皆に状況を説明し、再避難のために立ち上がらせるための、正しい知識と強力なリーダーシップなのです。


当テーマ「大火災編」では、ここまで大火災危険地帯からある程度離れた場所での行動というニュアンスで述べて来ましたが、言うまでも無く、大火災が想定される木造家屋密集地などでは、地震直後から大火災の危険に晒されることになります。そのような場所では、地震からの一次避難の最中から、避難経路の状況や、一時(いっとき)避難場所の危険度を判断し続けなければなりません。居場所に留まるにしても、大火災という「次の危険」は、すぐ目の前にあります。大混乱と精神的ショックの中でそれができるかどうかが、「生き残れる」かどうかの分かれ道になる確率がより高くなります。まずは、ご自分の居場所で想定される被害を知ってください。

繰り返しますが、必要なことは「正しい知識」と「正しい情報」、それに基づく「正しい判断」と「正しい行動」です。それは大火災に限らず、すべての災害から「生き残る」ために必須です。そのことがわかれば、災害を無闇に怖れるだけで、根拠の無い予知だの兆候だのに気を取られていたりする暇は無いと思うのですが。

なによりまず、あなたの目の前で起こるはずの現実を「能動的に」学んでください。それがあなたと、あなたの大切な人の命を守るのです。ただ受け身でいて目に入ってくる情報は、役に立たない不良情報だったり、具体的な行動を示唆しない、インパクトだけの「トリビア」や「煽り」が大半です。でも「能動的」と言っても、ネットでキーワード検索する程度では、状況は似たり寄ったりですが。

ここまでは、大火災に関する知識と、情報の集め方について述べて来ました。次回からはやっと、具体的な「正しい判断」と「正しい行動」に入ります。


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ありがとう!50万PV

本日、おかげさまで当ブログは、2012年1月12日の開設から数えて、通算50万PVに到達いたしました。皆様のご愛読に、改めて心より感謝いたします。今後も皆様のご期待に添えるよう、より「本当に役に立つ」防災情報をお届けして行きたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

なお、PC・スマホ画面に表示されるアクセスカウンターには、携帯電話からのPV数がカウントされていません。携帯電話の通算PV数、約85300PVを加算して、50万PV到達となります。


ここでPVの節目を振り返ってみます。開設は、上記の通り2012年1月12日。それから、約1年と8ヶ月の間、PVは下記のように推移して来ました。

■5000PV  2012年2月13日
■10000PV 2012年3月2日
■20000PV 2012年3月19日

一気に飛んで・・・

■10万PV  2012年8月29日
■20万PV  2012年12月11日
■30万PV  2013年3月19日
■40万PV  2013年5月24日
■50万PV  2013年9月18日

皆様のご支援のおかげさまを持ちまして、このように加速度的に多くのアクセスを頂戴して参りました。40万から50万の間に少し時間がかかっているのは、この間に更新ペースを若干落とさせていただいたためです。

当ブログの存在が、皆様が災害から「行き残る」力をアップさせることに繋がっておりましたら、それが管理人の無上の喜びであり、日々のモチベーションでもあります。

そこで、大きな節目となる50万PV到達を機に、いくつかの新しい活動を始めたいを考えております。内容については順次お伝えして行きますが、管理人及びSMC防災研究所の活動範囲をより拡げるさせていただくための施策となります。また、東日本大震災関連のチャリティー活動も始めますので、是非とも皆様のご協力をお願いいたします。詳細については、後日発表いたします。

今後とも「生き残れ。Annex」及びSMC防災研究所をよろしくお願いいたします。

管理人 てば拝

2013年9月17日 (火)

台風18号が残したもの

台風18号が西日本と東日本を縦断し、各地に大きな爪痕を残しました。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

今回の台風は、去る8月30日に制度施行されたばかりの「特別警報」のうち「大雨特別警報」が初めて発表されることとなった「雨台風」でした。「記憶に残るほどの大災害」が予想され、実際にかなりの被害が発生したことで、皮肉なことに「特別警報」がどのような場合に発表されるのかが、制度施行早々に周知される結果になってしまいました。

今回、豪雨以外に非常に特徴的だったのが、西日本から東北の各地で竜巻と思われる突風が多発したことです。報道されているだけでも四カ所と、過去に例を見ないほど集中的に発生しました。報道だけから判断すれば、竜巻の規模はF0(ゼロ)~F1クラス、ごく局地的にはF2クラスに達したかもしれません。

これは、台風前から日本列島上空の高層に大陸からの乾いた冷たい空気が入り、低層に南方海上からの湿った暖かい空気(暖湿流)が入るという、いわゆる「大気が不安定」な状態だったところへ、台風によってさらに大量の暖湿流がもたらされ、各地で強力な積乱雲が発生したことによります。

一般には、台風が竜巻をもたらすことは多くはないものの、今回のような条件が揃うと、その限りではないということを目の当たりにさせられました。そして、このような条件は今後さらに増えることが予想されます。近年、地球高温化の影響と思われる海水温の上昇が目立ち、特に今年の日本列島近海ではそれが顕著です。例えば南西諸島周辺では、海水温が理論値の上限にまで達しているのです。

海水温の上昇による大気中の水蒸気の増加は、台風の大型化、強力化や、雪も含めて降水量の増加をもたらします。さらに全地球的な熱分布の変化によるジェット気流や海流の変化が加わり、各地で「過去に経験の無いような」気象となることが確実に増えています。ですから、今年だけが「異常」なのだという考え方をすべきではありません。


注目すべきは、今回発生した竜巻の多くが、深夜に発生していることです。一般に、竜巻は日射によって暖められた空気によって上昇気流が発生し、強い積乱雲が発達しやすい晴天の午後に起きることが多いのですが、今回は高層の乾冷気と台風による低層の暖湿流と強風という条件によって、日射のない深夜に多発しました。

言うまでもなく、これは防災的には非常に厳しい条件となります。今後、気象条件によっては「就寝中の竜巻対策」という、今までにほとんど無かった発想も必要になったということです。


台風一過の日本列島は、空気が乾燥したさわやかな秋の晴天になっています。埼玉県南部では、台風通過後の9月16日、とても美しい秋の夕暮れになりました。
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台風がもたらした暖かく湿った空気が吹き払われ、低層まで大陸からの乾冷気に覆われたために低い雲が消え、、高層には薄い層状の「秋の雲」が夕日に輝いています。美しい秋の夕暮れを単純に愛でたいものではありますが、ここに南方海上からの強い暖湿流が流れ込むと再び大荒れの天候になるかと思うと、管理人は空を見上げながら、ちょっと複雑な気持ちではありました。

台風シーズンはまだ終わりではありませんし、秋雨前線もやってきます。海水温の上昇は、冬には豪雪の可能性も高めることになるでしょう。この先、被害をもたらすような気象災害への警戒、対策を、過去の事例にとらわれずに、より厳重に進めなければならない段階になったという現実を、台風18号は我々に突きつけたと言っても過言ではないのです。


被害に遭ってから「こんなことになるとは思ってもいなかった」などと言っても、あとの祭りです。もっとも、そんな言葉を言えるうちは、まだ幸せというものですが。

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☆再掲載☆大火災編08【首都圏直下型地震を生き残れ!18/54】

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ここで、前回までの内容を、釜石東中学校の事例と比較してみましょう。釜石東中学校では、普段からの教育と訓練によって「思考停止しない」、つまり状況に応じてオプションを選択する意識が共有されていました。そして、避難行動中でも「情報収集の継続」が行われ、最新の危険を察知した段階で、自らオプションに移行する判断を迅速に下しました。つまり、生徒皆が避難者であると同時に監視者であり、さらに行動を判断、統制するリーダーとしても機能したのです。

そして普段の訓練通り、近くの鵜住居小学校の児童を引率しながら、さらに避難行動を続けました。これは「災害時要援護者」の保護、支援行動に当たります。
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上画像は、最初の避難場所から次の避難場所に移動中のものですが、既に背後に津波が迫っている段階でも、小学生を支援しながら、きちんと統制の取れた行動をしています。もし落伍者が出てもすぐにわかり、迅速な支援が行える隊形です。そして教師や父兄と思われる大人が先頭、中間、そしておそらく最後尾にもついて、全体の監視を行いながら、落伍者の支援に備えているのもわかります。まさに、集団避難行動の理想的な形です。

もちろんこれは普段からの教育と訓練の成果であり、それなくしてすぐにできることでは無いでしょう。ですから、そのような訓練を受けていない集団が、ここまで述べたような行動を実現するためには、強力なリーダーシップが不可欠なのです。少なくとも、災害に対する正しい知識を、誰かが持っていることが必要です。根拠の曖昧な思いこみや誤った知識、ましてやデマ情報に踊らされて右往左往する集団には、相当な幸運に恵まれない限り、それなりの結果が待っているだけです。

ところで管理人は、ここで「災害に対する正しい知識」という表現を使いました。これは「災害の知識」とは別物だということに注意しなければなりません。

特に東日本大震災以降、数多くの災害関連情報が世に出ましたが、管理人に言わせれば、その多くが「災害の知識」に過ぎないのです。プレートがどうこうという地震のメカニズムや、首都圏に震度7が来るとか、東海・東南海・南海連鎖地震が来るとか、津波が最高34mになるとか、富士山が噴火するかもしれないとか。そして、そのとき「マクロ的に」どんな被害が出るかなど。

極論すれば、そんな事を知っていても、防災意識を高める入り口としての効果は大きいでしょうが、「生き残る」ためにはほとんど役に立ちません。大切なことは、そのような情報に接する際には、「自分のいる場所で何が起きるか?」というレベルにまで落とし込む、ということなのです。

例えば、首都圏に最大震度7が新たに想定されたという事は皆知っていても、震度7が想定される地域がどの辺りで、どのくらいの範囲に及ぶのかをご存じの方は、どれだけいるでしょうか。2013年時点における公式の想定によれば、それは海岸沿いの地盤が弱い地域と埋め立て地を中心に、イメージとしては「地図にまかれたゴマ粒のように」点在するだけなのです。あなたは、首都圏=震度7のインパクトだけで「思考停止」していませんか?

もちろん、だから心配いらないということではありません。最大震度想定が上がったということは、強い揺れが想定される範囲が増えたということでもありますから、要はそのような「マクロ情報」を、自分の生活、行動レベルの「ミクロ情報」にまで落とし込んでいなければ、それは「災害に対する知識」とは呼べず、あくまで「トリビア」の類です。知的好奇心は大切ですが、それだけで「生き残る」ことはできません。

想像してみてください。大地震後の混乱の中で、地震のメカニズムや他の場所の被害想定、過去の被害事例の数字などが、一体何の役に立つというのでしょうか。管理人も自腹でいろいろな「防災本」を見ていますが、コンビニなどで売っている派手な本ほど、内容は「トリビア」が8~9割というものばかりです。残りの情報も、大抵は圧縮されすぎていて、実際の行動レベルでのガイドとして有用なものは、ほとんど目につきません。

「釜石の奇跡」の事例にしても、「良かったね、訓練は大切だね」で終わっては意味がありません。そこから得られる教訓は何か、それを自分の生活で具体的にどう生かすかまで考えてこそ、初めて「災害に対する知識」となるのです。

今まで当ブログでも強調して来ましたが、大切なことは、たったふたつです。「そこで何が起きるか」と「そこでどうするか」、これだけです。ドラマのセリフではありませんが、「災害は教室で起きるのではない!」ということです。

今回の最後に、「釜石の奇跡」を実現した群馬大学の片田教授による、災害避難行動の三原則を載せておきます。
1・想定にとらわれるな
2・最善を尽くせ
3・率先避難者たれ

この三つの短い言葉に、全てが凝縮されています。

さて、話がだいぶそれてしまいましたが、引き続き大火災の中で「生き残る」方法について、考えて行きたいと思います。


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2013年9月15日 (日)

台風18号接近

台風18号が、本州に接近しています。詳しい情報は速報性に劣るブログで扱うべきものではありませんが、今回はどうやら「雨台風」となるようです。

気象庁の会見では、8月30日より施行されたばかりの「特別警報」のうち、今回は「大雨特別警報」が発表されるレベルの豪雨に見舞われる可能性があるとのこと。

「特別警報」とは何か、どのような状況で発表されるかについては、過日、管理人が気象庁の講演会に出向いて聞いてきましたので、それについての記事をご参照ください。

■過去記事「特別警報講演会に出席してきました【前編】」はこちらから
■過去記事「特別警報講演会に出席してきました【後編】」はこちらから

台風によって想定される危険は、暴風、豪雨、洪水、がけ崩れ、地すべり、土石流です。皆様それぞれの居場所に、どのような危険があるかをまず調べてください。注意すべきは、「特別警報」」とは、「記憶に残るような大災害」が起きる可能性がある気象状況で発表されるということです。つまり、何十年間も何も起きていないという場所でも、災害に繋がる脆弱性が存在する場所では、決して安心できないレベルということです。

そして、ご自分の居場所に気象災害への脆弱性があるならば、できることはただひとつです。「早めの避難行動」しかありません。なお「特別警報」が実際に発表される段階では、場合によってはすでに災害が発生しはじめているか、そうでなくても大荒れの天候で避難行動が困難な状況の可能性が高いのです。ですから、その前の「警報」の段階で、予防的な避難行動を始めておかなければ、逃げ遅れてしまうかもしれません。

しかし、どのレベルで、どのタイミングで避難行動を始めるかは、その状況の只中にいると、実際には正確に判断することは困難であることが多くなります。市町村から避難勧告や避難指示が出た場合でも、避難の必要が無い場所や条件もあるのです。ですから、あくまで「予防的」に、少しでも危険を感じたら、避難行動を始めるべきでしょう。


今までの感覚だと、「雨台風」というとあまり危険ではない、「雨を降らせるだけの台風」というイメージもあるかと思います。台風の危険度を、気圧(ヘクトパスカル値)と暴風域の大きさや最大風速で測られている方も多いのではないでしょうか。「雨台風」は、実際に雨が降り出すまで、どの程度のものか良くわかりませんし。

しかし、雨が一定量を超えたら、様々な災害が誘発されはじめます。そして、そのレベルの雨がどんどん「当たり前」になって行くのが、これからの我が国の気象状況です。「大雨特別警報」が発表されるのは、過去の感覚では「数十年に一度」というレベルの豪雨ですが、最近では局地的に見ても「数年に一度」、日本全体で見れば「数ヶ月に一度」の頻度と言っても過言ではないのです。

ですから、くれぐれも、判断を誤ることがありませんように。甘く見てはいけません。危険度が良くわからなければ、とりあえず避難を。それが結果的に無駄足であっても、確実に生命は守られるのです。こと気象災害においては、避難とは災害そのものだけを避けるためにするものではありません。災害の可能性をも避けるためにするのだと考えるべきです。

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2013年9月14日 (土)

☆再掲載☆大火災編07【首都圏直下型地震を生き残れ!17/54】

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今回は、管理人が特に強調したい内容です。

大火災が発生している最中や、津波の危険がある状況下では、一旦避難が完了しても「情報収集の継続」、つまり状況の変化を「見続ける」ことが必要です。しかし、この点は世間の「防災マニュアル」でもほとんど触れられていない部分でもあります。

特に避難所など大人数が集まる場所では、意識的に監視体制を構築しなければ、「結局だれも見ていなかった」という状態になるでしょう。ただでさえ発災直後はやるべきことが山ほどあるのですが、それだけにかまけていては、危険の接近を見逃すことになります。

ここで管理人が提唱したいのは、大火災の危険が完全に去るまでの間は、「24時間の監視体制」を構築すべきだということです。避難所でも、マンションや住宅街でも、監視要員を任命して、交代で周囲の監視に当たるのです。

具体的には、ビルや高台の上に監視要員をできるだけ複数配置して、火災の状況を監視するのです。複数にするのは、複数が見た情報を総合することで、より正確な状況が把握できるため、監視者の精神的な負担を少なくし、思い込みなどによる錯誤をできるだけ排除するため、ひとりが伝令や休憩に出ている間も監視を続けられるようにするため、さらに余震など緊急時に相互に支援できるようにするためです。

特に、夜間の監視体制を途切れさせないようにすることが重要です。夜間は、避難準備や移動に昼間よりはるかに時間がかかるからです。状況が許せば、できるだけ明るいうちにバイクや自転車で周辺を定期的に「偵察」し、オプションとなる避難場所、道路状況、その他状況の変化をできるだけ早く把握しておくべきです。この場合も、上記の理由から複数であることが望ましいでしょう。もし夜間に出る場合は、暗闇の中での事故や、火事場泥棒などに遭遇することも考えられます。

情報が集まったら、避難が必要かどうかを判断するのはリーダー、もしくは協議の上ですから、監視要員には、例えば「風向きがこちらに向いていて、火が○○(ビルなどランドマーク)まで迫ったら、またはどの方角でも火災旋風が見えたら、すぐに報告してください」というように、取得すべき情報の内容を具体的に指示しておくことで、判断時の混乱を少なくすることができます。具体的指示が無いと、監視者の能力、主観や思い込みによって情報の内容が左右される可能性が高いので、絶対に必要なことです。

そして最も重要なのが、「情報と意識の共有」です。もし避難場所に大火災が迫って来たら、そこにいる皆が一斉に避難を始めなければなりません。そのためには、再避難が必要になるかもしれないということを全員に認識させて、危険が完全に去るまでは荷物はなるべくほどかずに、できるだけ短時間で移動を始められる状態を維持するよう協力を求めておきます。そして、周囲の状況を定期的に全員に対してアナウンスし、その時点での危険度情報を共有しておくのです。

そして、再避難時の「合言葉」を共有します。例えば、リーダーが「避難準備!避難準備!避難準備!」と繰り返し言ったら、それを周囲の人に伝達しながら、すぐに荷物をまとめて避難体制に入るということを周知しておきます。なお、グループをまとめる際に、会社名、マンション名、町内会名など何か名前をつけておくと、他のグループの情報との混乱が防げますし、メンバーに帰属意識が生まれ、より強い協力体制が生まれるでしょう。こんな時、人はだれもひとりにはなりたくありません。自分がそのグループに帰属し、協力しあえる人の中にいるという、安心感がそうさせるのです。

負傷者、乳幼児、お年寄り、身体障害者、病人など「災害時要援護者」がいる場合には、事前に健常者に協力を求め、再避難時の支援担当者を決めておく必要があります。この場合も、要援護者ひとりに対して複数の担当を割り当てておかないと、負担が大きすぎて機能しない可能性があります。基本的には、そこにいる皆が協力しあうというコンセンサスを構築しておくことが必要です。


大人数で移動する際には、隊列の先頭にはリーダーと道案内できる人が付き、さらに途中での行き先変更などを後方に伝えるための「伝令」を置きます。基本的には、リーダー自らがいるべきポジション、この場合は先頭を動いてはいけません。行動中のリーダーの不在は、全体の混乱を招きます。列の中間と最後方にはなるべく体力のある人を配置し、リーダーからの情報の伝達と、脱落者の支援に当たらせます。

ところで、何度も「リーダー」が登場しますが、大人数が何か統一行動をしようと思ったら、どうしてもリーダーが必要です。それは個人の場合もグループの場合もありますが、それなくして効率的で迅速な行動は困難です。そしてリーダーに求められるのは二点。「迅速な判断」と、その前提となる「正しい情報と知識」、これだけです。

知識は、知っている人がフォローすることができますが、情報による判断だけはリーダーの仕事です。その判断が、グループ全体の命運を握ることもあります。特に大災害時の集団避難は、時間との戦いです。逡巡している暇はありません。あなたのグループにそんな人や機能が欠けていたら、危機が迫った時に「生き残る」確率は、確実に下がります。

もし、あなたの属する集団にそのような不安があるのなら、答えはひとつです。あなた自身が学ぶのです。だれもがリーダー格になれるものではないかもしれませんが、正しい知識を身につけ、正しい行動をすることは誰にでもできます。自分や大切な人の命がかかっている時に、信頼できない他人に運命を委ねて良いのですか?

次回に続きます。


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2013年9月13日 (金)

【通算600号】ニッポンの防災は変わるのか?【管理人ひとりごと9/13】

当記事は、2012年1月12日のブログスタート以来、おかげさまで通算600本目となります。皆様の日頃よりのご愛読に、心より感謝申し上げます。今回の記事を、思い上がりなどと捉えられる方もあるとは思いますが、これが管理人の忌憚ない意見であり、モチベーションのひとつでもあります。


当ブログの前身は、mixiで2007年10月に開設した防災情報コミュニティ「生き残れ。」です。その後、東日本大震災の発生を受け、より多くの方に「本当に役に立つ防災情報」をお伝えすべく、mixiコミュニティの別館という位置づけで、当ブログ「生き残れ。Annex」を開設いたしました。

mixiコミュ開設からは約6年、当ブログ開設からは約1年8ヶ月、エセ科学やオカルトは言うに及ばず、災害メカニズムやトリビア的な知識に偏っていたり、実際には無意味だったり実行不可能な机上の空論を徹底的に排し、過去の災害から得られた教訓を最大限に生かす、管理人が「本当に役に立つ」と信じる実践的情報をお届けしてきました。これからもそのような方針で運営して参りますので、引き続きご利用、ご支援の程、よろしくお願いいたします。


先の記事にも書いたのですが、ここ最近、メディア等で流れる防災情報が、より実践的に変わりつつあるように思います。例えば豪雨災害に関しては、かつては土砂災害の兆候のような話ばかりでしたが、実際には豪雨下や夜間には察知不可能なので、早い段階で避難せよとか、土砂災害危険地帯に留まる時は二階以上に上がれ、というような。

手前味噌を言わせていただければ、そのような実践的な考え方は、管理人がmixi時代からずっと提唱してきたものに近いのです。しかし、当ブログが世の中を動かしたなどと、大それたことは考えておりません。

ある読者の方に言われました。「そんな情報の権利を主張したらどうか?」と。いえ、とんでもない。管理人が提唱してきたのは、「誰でも考えればわかる」ことです。「小雨が降ったら傘があれば濡れない」ということの延長線上に過ぎません。過去の災害を詳細に検証し、限られた条件下でどうすれば被害を最小限にくい止められるのかを突き詰めれば、自ずから同じ結論にたどり着くはずです。決して、管理人独自の発想というわけではありません。

問題は、そのような実践的思考があまり行われて来なかったか、行われていても、それが主流となっていないことです。災害の恐怖を煽り、「生き残った後」の対処に偏り、耳目を惹きやすいトリビア知識ばかりの情報だけでは、「生き残る」ことはできないのです。東日本大震災において、いわゆる「釜石の奇跡」を実現した、群馬大学の片田教授の実践的指導のようなものが、主流でなければならないと考えます。

そのような考え方を持たず、ありきたりで断片的な情報やトリビアを流すだけのような「防災指導者」が、より実践的な考え方にシフトされますことを願わずにはいられません。何より、何らかの「権威」や「肩書き」を信用し、しかし「生き残るためには本当は役に立たない」情報しか与えられていない方々が実際に被災したら、悲惨なことにもなりかねませんし。

もっとも、どんな有用な情報も、見たり聞いたりだけではあまり役に立ちません。その情報を自らのおかれた状況に当てはめ、咀嚼し、自分には何ができて何ができないのかを具体的に突き詰め、さらには実際にやっみて、それを繰り返す。そうしなければ、極度の恐怖と緊張に晒され、その中で瞬間瞬間での判断を突きつけられる、本当の災害時には役に立たないこともあるでしょう。

しかも、特に大災害の発災直後には、「運」に左右される部分が大きいのが現実です。それでも、正しい知識と備えは確実に「生き残る」確率を高めますし、発災直後の混乱を乗り切れれば、正しい知識と備えの有無による差がさらにどんどん開いて行くことも、現実が証明しています。

当ブログも含め、情報は「きっかけ」に過ぎません。あなたとあなたの大切な人を守るのは、あなた自身の思考と行動なのです。

あなたはその対策で、生き残れますか?

おかげさまで、間もなく累計50万PVに到達します。これからも、「生き残れ。Annex」をよろしくお願いいたします。


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2013年9月11日 (水)

☆再掲載☆大火災編06【首都圏直下型地震を生き残れ!16/54】

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今回は、具体的な方法について考えます。「情報収集の継続」とは字面の通りの意味ですが、これは「思考停止しない」という意識があってこそできる行動でもあります。

釜石東中の生徒は、「ここで本当に大丈夫か?」という意識を持ち続けたからこそ、背後に迫る津波の規模という情報を集め続け、それを元に、さらなる高台へという「想定外のオプション」を選択できたのです。実際には、最初の避難場所で山崩れが発生するなど、さらなる避難を促す状況もあったのですが、危険ならばすぐにオプション手段に移行するという意識を、全員が共有していたことは確かです。

大川小でも、もし早い段階で誰かを裏山の上や校舎の屋上などに「偵察」に出すなどして、街に迫る津波の規模という情報を入手できていたとしたら、たとえ数分でも早く避難行動を始められた可能性があり、また別の結果になったかもしれません。しかし「ここの危険は小さい」という思考停止状態では、そのような発想も出てこなかったでしょう。

もちろん、周囲の様々な事情や地理的な条件などを無視して断定すべきではありませんが、こと「どうしたら生き残れたか?」ということだけに注目するならば、そうすべきだったということです。「正しい情報」無くして「正しい判断」は不可能なのです。


さて、すっかり津波避難の話になっていますが、大火災からの避難でも、必要なことは全く同じです。要はそれを火災の特性に合わせて、いかにアレンジするかということです。

まず、大火災が発生している最中は、いかなる場所でも絶対に安全であるという意識は捨てなければなりません。火災からの避難は、津波よりはるかに時間的余裕がありますが、その代わり、「どこから襲って来るかわからない」のです。いきなり、あなたの目の前の建物が火を吹くかもしれません。

大火災があまり想定されていない都心部のビルでも、周囲の建物や下層階に火が入ったら、決して安全とは言い切れないのです。火災旋風が発生すればなおさらです。ですからあなたがどこにいても、大火災の勢いが衰えるまでは「ここは安全」という思考停止をしてはならないのです。

そして、「情報収集の継続」です。大地震後は、避難所、頑丈な建物、河川敷などの広い場所に多くの避難者が集まります。帰宅困難になり、勤め先などに待機していることもあるでしょう。しかしこれまで述べた通り、どこも大火災に対して安全とは言い切れません。では、どうすべきなのでしょうか。


災害時の情報収集と言えば、まずラジオです。ワンセグテレビなどが視られれば、より詳細な情報が入手できるでしょう。しかしそれは、特に発災初期には、マクロ情報でしかありません。その時あなたに必要なのは、地域のミクロ情報なのです。

どの方面で大火災が発生しているかという情報は、メディアからも得られるでしょう。でもそれがどちらへ延焼しているか、他にどの地点で小中火災が発生しているかなどの地域情報を、リアルタイムでメディアから得ることは事実上できません。

ネットが生きていれば、量だけはかなりの情報が得られ、ある程度地域状況を把握することはできるでしょう。しかしその正確さや真偽を考えると、命を託す情報としては不安です。災害時のネット情報に、デマを始めとする大量の不良情報が紛れ込むことは、東日本大震災でも証明されました。

そんな状況下で最後に頼りになるのは、人間の五感しかありません。幸いなことに、少なくとも大火災からの避難に関しては、津波と違って、大抵は「見てからでも間に合う」のです。ですから、「見続ける」ことが必要です。

次回もつづいて、具体的な方法について考えます。


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2013年9月10日 (火)

☆再掲載☆大火災編05【首都圏直下型地震を生き残れ!15/54】

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今回から、地震後の大火災を「生き残る」ための具体的な方法を考えます。

まず、大地震の後に起きる大火災の特徴をまとめます。
■発災後短時間のうちに、同時多発的に広い範囲で発生する。
■家屋からの脱出や負傷者救護のため、住民による初期消火が不十分になるケースが多い。倒壊家屋からの出火は、初期消火がほとんど不可能。
■消防の対応能力を超え、さらに交通障害、断水などのために、迅速な消火活動は期待できない。
■大火災は自ら複雑な風を発生させ、どちらへ延焼するか予想しずらい。
■最盛期には火災旋風の発生が予想され、急速に延焼が進む。「一時(いっとき)避難場所」や河川敷などの開けた場所は、火災旋風に襲われる可能性がある。
■延焼速度は、1時間に数百メートル以上に達する可能性がある。
■海岸近くでは、工場地帯の可燃物が津波で内陸に運ばれ、大火災となる可能性がある。

このように、「生き残る」ためには非常に厳しい状況になります。大地震の第一撃を生き残っても、しばらくは全く安心できません。しかし、これらのメカニズムについてはあちこちで語られるものの、「では具体的にどうするか?」という話はあまり見られません。当ブログは、今までほとんど誰も語らなかった部分について考えます。


ここで、東日本大震災において津波から避難した生徒全員が生き残り、「釜石の奇跡」と呼ばれた釜石東中学校の事例を思い出してください。なぜ生徒たちは生き残れたのか。そこに、大きな教訓があります。

釜石東中学校の生徒は、地震後に津波の危険から避難したものの、津波の威力が予想以上だと判断し、自らの判断でさらに高台へ避難しました。その行動面においては、大火災からの避難と共通するものです。むしろ、時間的な制約は火災よりもはるかに厳しかったのです。この事例のポイントが「自らの判断で」ということはすぐにわかりますが、「なぜそれが可能だったか?」という部分にこそ注目しなければなりません。もちろん、そのために必要な教育と訓練を受けていたというのがその理由ですが、問題はその内容です。


正しい避難行動の前提となるのは、地震、津波、火災などに対する正しい知識であることはもちろんです。しかし、それだけではだめなのです。そこにある「意識と行動」が加わって、初めてその知識が生かせたのです。ではそれは何か。管理人流の表現をすれば、意識とは「思考停止しないこと」であり、行動とは「情報収集の継続」です。

「思考停止しないこと」とは、言い換えれば「オプションの確保」とも言えます。なんだか余計にわかりずらくなりますが。つまり、指定避難場所やとりあえず安全と思われる場所にいても、常に「これで本当に大丈夫なのか?」という意識を持ち続け、必要と判断したならば、躊躇せずにオプション(その他の選択)手段へ切り替えるという意識です。

釜石東中学校に対し、大惨事となった石巻の大川小学校の事例では、残念ながらほとんどの指導者が、「ここの危険は小さい」という意識で思考停止したために貴重な時間を失い、オプションの選択を誤ったのです。もし、すぐに学校の裏山に登っていれば、おそらく全員が助かったでしょう。

しかし、そもそも裏山に登るというオプションが、少なくとも指導者の中には事実上存在せず、その提案も安全面や児童以外の避難者の存在を理由に却下されました。つまり、「生き残ってから」の理由のために、生き残る機会が失われたのです。明らかな優先順位の誤まりです。

念のため申し添えますが、管理人は大川小の指導者を批判したいのではありません。実際、あの災害は普段の「想定」を大きく超える状況であり、判断ミスを招く要因があまりに多かったのです。管理人も石巻の津波被災地を実際に見て来ましたが、とにかく想像を絶する状況だったのです。それも勘案した上で、あくまで、「あの時どうすれば生き残れたか」という視点のみから考えています。

次回に続きます。

□参考過去記事□
【大川小からの報告1】宮城・震災から1年8ヶ月【11】はこちらから
【大川小からの報告2】宮城・震災から1年8ヶ月【12】はこちらから
【大川小からの報告3】宮城・震災から1年8ヶ月【13】はこちらから


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2013年9月 9日 (月)

ブラジャーはどうする?

非常にあざといタイトルで恐縮です(笑)しかし、内容は非常に重要な、AEDに関するお話です。

今回は、おひとりの方のために記事を書きます。でもその内容は、多くの方に役立つものですので、ぜひご覧ください。

今日、ワード検索で当ブログを訪れていただいた方の検索ワードを見たら、「AED 女性 ブラジャー」というのがひとつだけありました。男性である管理人は、そのワードにすぐに反応してしまったのです(笑)いえ、もちろん真面目な話であり、管理人も非常に気になっていたことなのです。そして先日、やっとその答えを得ることができたばかりで、当ブログにはまだ反映させていなかったのです。

検索された方は、「AED使用時に、ワイヤーやホックに金属が使われているブラジャーを外すべきかどうか?」という事に関する答えを求められているのだと思いますので、お答えしたいと思います。

答えは「外した方が望ましいが、外さなくてもほぼ大丈夫」という感じでしょうか。

AED使用前には、4つのポイントをチェックします。
■身体が汗や水で濡れていないか
■ネックレスなど金属を身につけていないか
■心臓ペースメーカーを装着していないか
■電極パット貼り付け位置の体毛が濃くないか
という、4点です。このうち、電極と金属が接触すると、電流が身体に流れずに電気ショックの効果が失われることがあるために、金属類は身体からなるべく取り除くことが望ましいのです。

実は、日本赤十字社による救急救命講習では、ブラジャーは外す前提で考えられています。その方が確実なのは確かですが、人目の事を考えると、なかなか難しい場面も考えられます。なお、日本赤十字社の講習では、そのような場合に人目を遮断する方法も教えられました。

別の問題として、胸骨圧迫や人工呼吸(CPR)を行う場合には、胸部を締め付けるものをできるだけ外さなければなりませんので、取りあえずはブラジャーのホックは外さなければなりません。でも、ブラジャーを完全に取り除き、多くの人目の中で女性の胸を露わにしないで済む方法は無いのでしょうか。

・・・という疑問を管理人も持っていたのですが、先日受講した消防署の上級救命救急講習で、その答えが得られました。AEDの電極パッドは、「ブラジャーと身体の間に入れても、ほぼ問題無い」とのことです。電極パッドは、粘着面は当然ながら導電素材ですが、上面は絶縁素材であり、そこに金属が触れても事実上問題ないそうなのです。

ですから、人目がある状況で女性にAEDを使用する場合は、ブラジャーのホックだけを外して胸部の圧迫を解き、電極パッドをブラジャーの下に貼るという方法でも大丈夫ということです。もちろん、事情が許せばできるだけ取り除く方が望ましいのは、言うまでもありません。

「AED 女性 ブラジャー」で検索された方、ご覧になっていただいているでしょうか。これが答えです。

なお、日本赤十字社の講習で教えられた人目を遮断する方法とは、周囲の人から心ある有志を募り、傷病者に「背を向けて」人垣を作るというもので、それで無責任な野次馬ににらみを効かせつつ、視線を遮るわけです。ただ、管理人の救護経験からすると、混乱する現場でそれを実現するには、非常に強い意思とリーダーシップが必要だと感じます。そんな場合でも、救護技術だけでなく、普段からの高い意識と覚悟が無いと、いきなりできるものでは無いな、と思うのです。


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☆再掲載☆大火災編04【首都圏直下型地震を生き残れ!14/54】

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今回も、「関東大震災」の大火災で起きたことを考えます。

前回記事で「火災旋風」の脅威について述べましたが、「関東大震災」による火災で、どれだけ火災旋風が発生したかを見てみましょう。
Photo
黄色い△が、火災旋風が観測された場所、ピンク色の△が、巨大な火災旋風が発生した場所、そのうち、白線で囲んだピンク色の△が、約4万人が焼死した本所区(当時)の陸軍被服廠跡地です。上図のように焼失地域のほぼ全域で「火災旋風」が発生し、猛烈な勢いで火災を延焼させて行ったのです。大火災下では、決して特殊な現象でなかったことがわかります。

当時の東京は、現在の建物より耐火性がはるかに低い、木造家屋の密集地が多かったという理由もありますが、現在でも当時とあまり条件が変わらない地域も存在しますし、一方で、当時よりも街区の範囲がはるかに広くなっています。場所や条件が違っても、一旦大火災が発生してしまえば「火災旋風」に襲われる危険が大きいことは、今も昔も同じなのです。


上図の中央上部に黒枠の緑色で着色した部分がありますが、実はその区域は、周りをすべて焼かれながらも、ほぼ全面的に焼け残りました。そこは神田和泉町で、秋葉原駅のすぐ東側に当たります。この町は、何故焼け残ったのでしょうか。そこには、興味深い事実が見られます。

基本的には、町の住民による必死の努力によって、この場所が守られました。住民が協力し合い、手押しポンプやバケツリレーで延焼防止活動を続けた結果、火の猛威を押し戻したのです。そしてそこには、幸運とも言うべき理由もありました。その理由をまとめてみます。

■住民が協力して消火活動を行う体制ができており、活動を仕切るリーダーと組織が存在した。
■比較的耐震性、耐火性の高い建物が集まっていた。
■近くに神田川が流れており、消火用水が常時確保できていた。
■周囲が同時に火に囲まれることが無く、常に避難路が確保されていた。このため、一旦避難した住民が後で町に戻り、残った住民と交代しながら消火活動を継続できた。
■20時間以上経過後、住民が疲弊し切った段階でガソリンエンジンポンプが入手でき、放水能力が格段に向上した。

なお、上図の肌色の部分は震災当日の9月1日、ピンク色の部分は翌9月2日に延焼した部分で、町が同時に火に囲まれなかったことがわかります。でも、もし火が多方面から迫っていたら、人力だけの消火では延焼を食い止めることはできなかったでしょう。町の境界のすぐ外側は、すべて焼け落ちているのです。そこで、狭い道路を境に火が止まった理由は、何だったのでしょうか。

それは、住民の延焼防止活動が、結果的に「風を変えた」からだと考えられます。周囲から飛んでくる火の粉による発火は、小さなうちに消し止められました。そして、建物に火がつきずらいように、バケツリレーで水がかけ続けられました。その効果で、「温度が下がった」のです。

当時の火災周辺部では、火災の熱によって気温が40℃を越えていたことが記録されています。その中で建物に水をかけ続けたことで、蒸発する水が周囲の空気から気化熱を奪って冷却し、町内の気温を下げたのです。これは夏の打ち水が、周辺の気温を下げるのと同じ効果です。

その結果、風が変わりました。温度が下がった町と周辺の火災現場の温度差が大きくなるほど、周囲から町へ向かって吹く風が止まり、逆向きの風、つまり町から火災へ向かって吹く風に変わったのです。上図を見ても、延焼方向を示す矢印が町の境界でぐるりとUターンしたり、町を避けるように延焼しているのがわかります。

当時の住民がその効果を狙ったのかどうかは定かではありませんが、とにかく住民の必死の努力が風を変え、町を救ったのは確かだと言えます。

とはいえ管理人は、大火災が迫ったら、必ず踏みとどまって消火活動をすべきだ、と言っているわけではありません。火が迫りそうになったら、速やかに避難するのが基本です。しかし、機材や人員、そして水利が確保されている状況ならば、自らの頭上や建物に水をまくことで、火災が延焼して来るのを食い止められる可能性があることは知っておくべきでしょう。これはある意味で、火を目の前にした「最後の手段」でもあります。

「関東大震災」の大火災では、あまりの規模の大きさのために、各地で行われたであろう必死の消火活動によっても、火災の最盛期にはほとんど火を食い止めることができませんでした。しかし、この神田和泉町の例のように、完敗でもありませんでした。そしてそこから、ギリギリの状況の中で「生き残る」ためのヒントを見いだすことができるのです。

何より、とてつもなく困難な状況に置かれても、「最後まであきらめない」気持ちと行動が町を救い、多くの命を救ったのだと言えるでしょう。

次回からは、現在想定される大火災から「生き残る」、具体的な方法を考えます。


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2013年9月 6日 (金)

☆再掲載☆大火災編03【首都圏直下型地震を生き残れ!13/54】

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前回(大火災編02)から続きます。

「関東大震災」での象徴的事例として、本所区(当時)の陸軍被服廠跡の空き地で、4万人とも言われる人々が、ほとんど一瞬で焼死した惨事があります。それに隠れてあまり知られていませんが、近くにある台東区の田中小学校(現在の東浅草小学校)校庭でも、1000人以上が一瞬で焼死しています。

それら惨事を引き起こしたのが「火災旋風」、つまり炎の竜巻です。大火災に向かって周囲から吹き込む風がぶつかって渦を巻き、上昇気流が炎を吸い上げて竜巻となる現象です。

これが空き地に避難している人々を襲いました。広大な空き地は風の通りが良く、周囲より相対的に気圧が低かったので、火災旋風を吸い寄せたとも考えられます。隅田川沿いだった被服廠跡では、当時は周囲三方向から火災が迫っている状況で、そこへ隅田川からの風が吹き込むことで、大火災旋風に発展したという説が有力です。

地震による火災ではありませんが、太平洋戦争中の昭和20年3月10日、東京大空襲による大火災でも火災旋風が発生し、北風の中で隅田川上を北から南に移動しました。そのため、両岸の火災に追われて橋の上に避難していた多数の人々が、一瞬で焼死しました。特に言問橋(ことといばし)上では、2000人以上の人々が犠牲になりました。これも、北風が吹き抜けることで周囲より気圧が低くなっていた隅田川が、火災旋風を吸い寄せたと考えられます。。

当時、橋の上に逃げて生き残った人の証言に、「隅田川の両岸から火の粉が降ってきた」というものがありますので、このことからも両岸から川に向かって風が吹いていたことがわかります。余談ながら、現在も当時のままである言問橋の、石造りの親柱(おやばしら。欄干の両端にある柱)には、あの日猛烈な炎で焼かれたどす黒い焦げ跡が、今でも生々しく残っています。


さておき、火災旋風に襲われると、何が起きるのでしょうか。まず、猛烈な輻射熱と火の粉で、髪の毛や衣服などの可燃物が一瞬で燃え上がります。大火災の周囲では、熱によって物も空気もからからに乾燥している状態になるので、非常に火がつきやすくなっているのです。さらに「関東大震災」では、広場に避難していた人々が家財道具をたくさん持ち込んでいたために、それらに火がついて被害を大きくしました。

加えて、猛烈な炎は周囲の酸素を一瞬で燃焼し尽くし、人間は窒息状態になります。周囲は数百℃の熱気で満たされ、息を吸えば灼熱の空気を吸い込んで、肺が焼かれます。このため、ほとんどその場から動くこともできないままに人々は倒れ、焼かれたのです。このような地獄が、いま再び大都市で繰り返されないとは、誰にも言えません。火災旋風は、風に流されて人が走るよりもはるかに速い速度で移動することもあります。もし、自分の方に向かって来る火災旋風を見てしまったら、手遅れである可能性が大きいのです。

そして大都市では、そこにいるのはあなただけではありません。「ラッシュ時のホームのような」群衆の中にいる可能性が高いでしょう。逃げようにも、思うように動けません。そして、パニックが発生します。その中で「生き残れる」可能性は、あまりに低いのです。火災旋風が発生しなくても、火に囲まれて進退窮まることは十分に考えられます。

同時多発的な大火災が発生している状況下では、とにかくなるべく早い段階で危険を察知し、本当に危険が無くなるまで、手遅れになる前に、正しい避難行動を続けなければなりません。それまで、安息の時間は無いのです。そのためには、まず正しい知識を身につけることが大前提です。行政任せ、他人任せ、ましてや運任せでは、それなりの結果を招くだけです。

大火災が多数発生している時は、指定の避難場所にいるからもう安心、河川敷のような、周りに何もない広い場所にいるからもう安心、などということはまったく成り立ちません。都市部への通勤者は、そんな中を無理に帰宅しようとして、自ら危険に近づいて行く行為がいかに無謀なことか、おわかりいただけるでしょう。

災害時は、その規模が大きくなるほど、判断ミスが許容される範囲は減って行きます。それは東日本大震災の惨状を見れば明らかです。そして我々は、事実上世界で最も巨大な都市である、「首都圏」に生きているのです。

次回に続きます。


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2013年9月 5日 (木)

「観天望気」のススメ

9月2日の埼玉・千葉に続き、4日には栃木県で竜巻被害が発生しました。その他にも、全国各地で豪雨、突風による被害が多発しています。

現時点では、統計上では竜巻の発生が増えているという事実は無いそうで、これは今年に特有の現象なのかもしれませんが、少なくとも我が国の気象が、過去に比べてどんどん過激な方向へ推移しているのは確かだと言えるでしょう。

気象災害を誘発する要素はいろいろありますが、大きな要素のひとつが「大気が不安定」という状態です。これは大気上層に冷たい空気が流れ込み、下層には比較的暖かい、湿った空気がある状態です。その状態では、暖かい下層の空気が上昇気流となって上層の冷たい空気の中で冷やされ、含まれた水蒸気が急速に強い積乱雲になりやすいわけです。

ここ最近の日本列島上空は、上層に大陸方面から冷たい空気が流れ込み、下層には南方海上から暖かく湿った空気が流れ込むという非常に不安定な状態が続いています。さらに晴天の日には下層の空気が強い日射で暖められ、強い上昇気流となって強力な積乱雲を発生させやすくなります。簡単に言えば、上層はもう秋なのに、下層はまだ真夏に近いという状態です。

強い雷雨や竜巻が起きる前兆として、「空が急速に暗くなる」、「強い風が吹き始める」というものがあり、そうなったらすぐに避難をと言われていますが、その段階になると、残された時間はあまり多くありません。では、その前に危険を察知できないのでしょうか。

もちろん、各種の気象情報や気象レーダー情報を活用したいものですが、それが無くても、特に昼間ならば天気の推移を知ることは可能です。空を「読む」のです。それが「観天望気」(かんてんぼうき)と呼ばれるもので、例えば、土地の古老が「あの山に雲がかかると、明日は雨だ」と言い当てたりする、あれです。

観天望気ためには、気象についての知識や、その土地の天気の「くせ」を知る長い経験が必要となりますが、こと「大気が不安定」で、強い積乱雲が発生しやすい状況は、比較的簡単に読みとることができます。

掲載する画像は、9月4日昼ごろの埼玉県南部の空です。ここから何が読みとれるでしょうか。
Cloud_002
Cloud_003
Cloud_006
Cloud_011
Cloud_013
Cloud_014
Cloud_012

画像から読み取れる特徴をまとめてみましょう。
■低層に比較的厚い、灰色に見える(=密度が高い)雲が多い
■雲の上部は、綿毛状やたなびく煙のように乱れている
■乱れたちぎれ雲が風に流されている
■中層の雲の頂部がカリフラワー状になっている
■高層に層状の薄い雲が広がっている

これらはまさに「大気が不安定」な晴天の典型的な空で、この後、強い積乱雲が発生する可能性が非常に高い状態です。この段階で「しばらくしたら強い雷雨が来るかも」と警戒を始めるべきです。

低層に密度の高い雲が多いのは、低層に湿った空気があり、上昇気流によって発達する「積乱雲のタネ」が多いということ。雲の上部が乱れているのは、上昇気流と下降気流がぶつかりあい、気流が乱れているということ。ちぎれ雲が流されているのも同じ理由。カリフラワー状の雲は、強い上昇気流によって今まさに急速に発達中で、このあと「入道雲」となり、さらに積乱雲に発達する可能性が高いということ。高層にある薄い層状の雲はいわゆる「秋の雲」であり、高層に比較的乾いた冷たい空気が入っているということ。この空から、このようなことが読みとれるのです。

あとは、発達中の入道雲が自分のいる方角に移動して来るのかどうかを見極めれば、かなり早い段階で強い雷雨など大荒れの天気を予想できます。

なお、一般に雲は西寄りから東寄りに移動することが多いのですが、風向きや地形によってはその限りではありませんので、しばらく推移を観察し続ける必要があります。

入道雲や積乱雲の下層は灰色で層状の雲となりますので、近くに来ると上層の雲が見えなくなることが多いのですが、その段階では空が暗くなり始め、強めの風が吹き始めているでしょうから、避難行動のタイミングが近いということです。

さらに、低層の灰色の雲の下をちぎれ雲が強い風で流されるようになると、いよいよ強い雷雨はもちろん、雹、突風、竜巻が発生する可能性が高いということになります。

ここに挙げたのは平野部の例ですが、山に近い場所になると、山にぶつかった上昇気流により、平野部よりはるかに急速に積乱雲が発達・移動することが多いので、より早い段階で避難の判断をする必要があります。山の天気は変わりやすいのです。なお、山間部や山に近い場所では、竜巻が発生する可能性は低いものの、雷雨は平野部より激しくなるのが普通ですから、その意味でも、早い段階での避難行動が必要になります。

特に専門的な知識が無くとも、普段から空を注意深く見ていれば、このようにある程度の「先読み」ができるようになります。特に、危険な天候をもたらす入道雲や積乱雲は短時間で変化して行きますので、推移が比較的わかりやすいのです。

防災的におまけの効果として、普段から空を見ていれば、ちょっと変わった雲が出ると、すぐに「地震雲」だとか騒ぐ連中の愚かさが良くわかりますよ。そんな連中は「こんな雲は初めて見た」とか言いますが、普段から普通に見られるものばかりなのです。一枚目画像の高層に見える雲など、あの連中に言わせれば完全に「地震雲」ですよね(笑)

なにしろこの先、気象がどんどん過激になり、気象災害が増えて行くのは間違いないと思われます。そんな時代に「観天望気」の力を身につけることは、すなわちセルフディフェンスであり、「生き残る」力をアップする方法なのです。


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2013年9月 4日 (水)

☆再掲載☆大火災編02【首都圏直下型地震を生き残れ!12/54】

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今回は、大火災のメカニズムを考えます。知っておくことで「生き残る」確率を大きく高めることができる知識が含まれています。

地震による記録的大火災といえば、1923年(大正12年)9月1日に発生した、いわゆる「関東大震災」によるものが真っ先に思い出されます。この地震では約11万人が犠牲になりましたが、そのうち火災による犠牲者が約9万人と言われています。下図をご覧ください。(下段は主要部分を拡大)
Photo
2
これは当時製作された、「関東大震災」による東京の焼失区域と主な出火点、そして延焼して行った方向を示した図版です。「関東大震災」による火災は、東京市(当時)市街の半分近くが焼失する、超巨大火災でした。隅田川両岸の、木造家屋の密集地を中心に、発災直後に136件の火災が発生したとされ、そのほとんどは、なす術も無く燃え広がりました。


当時の状況を見てみましょう。発生は9月1日、午前11時58分。昼時で、多くの家で昼食の準備のために火を使っていました。当時の火気はかまどや七輪が中心で、使用中に家が倒壊すると、出火を止めることは非常に困難でした。そして地震によって耐震性が低い木造家屋が多数倒壊し、各地で同時多発的に火の手が上がりました。

家の倒壊によって多数の人が下敷きになり、その救助が優先されたため、初期消火までほとんど手が回らなかったという事情もあります。これは現代の災害でも、同様になると考えられます。当時の消防体制は貧弱なもので、消防車やエンジンポンプは少なく、各地の消防団レベルでは、手押しポンプとバケツリレーくらいしか消火手段が無い場所が多かったのです。

天気は晴れ。しかし日本海の能登半島付近にあった台風に向かって吹き込む強い南寄りの風が吹いており、それが延焼を早めました。しかし、ここで上図で延焼方向を示す、赤い矢印をもう一度見てください。強い南風の中でも、必ずしも北方へ向かって燃え広がっているのでは無いことがわかります。それは何故なのでしょうか。


結論を先に述べますと、「火が風を起こす」のです。大きな火点では、熱せられて軽くなった空気が強い上昇気流となります。するとその付近の気圧が下がり、そこへ向かって周囲から風が吹き込みます。その風によって、周囲の火がさらに燃え広がるのです。

大火災の際には気象による風に加え、火災の状況によって複雑な風が吹き、延焼の程度によって刻々と変化して行きます。ですから、大火災の際には、例えば「今日は南風だから火点の南側は安全だ」というような考えは捨てなければなりません。どのような風が吹き、どちらへ延焼するかの予測は、とても困難です。これは非常に重要なポイントですから、忘れないでください。

さらに、上図を良く見るとわかりますが、風を起こすのは火だけではありません。おわかりになりますでしょうか。それは「川」です。焼失区域の中心を流れているのは隅田川ですが、両岸から隅田川へ向かって、火が迫っているのがわかります。川は遮蔽物が無いために風が良く通り、風速が上がります。すると、流速が上がった気流の中は、周囲より相対的に気圧が下がります。「ベルヌーイの定理」です。

この日の強い南風は、南北に流れる隅田川を吹き抜け、そこの気圧を下げました。そして、川に向かって吹く風を発生させたのです。これを知っていれば、もしあなたが大火災と大きな川の間にいたとしたら、何を警戒すべきかお判りになるでしょう。なお、「関東大震災」の状況下では、延焼速度は最大で1時間に800~900mに及んだとされています。現在の街にそのまま当てはめられない部分もありますが、大火災が1km先に迫ったら、もはや一刻の猶予も無いと考えるべきです。

忘れてはならないのは、大地震による火災は、同時多発であるということです。もしあなたが逃げるべき方向に、先に火が回ったらどうなるか。想像するだけで背筋が寒くなります。巨大災害下では、たった一度の判断ミスでも、最悪の結果を招くことに繋がります。

複雑に吹く強い風は、遠くまで火の粉を吹き飛ばして火点を増やし、加速度的に延焼して行きます。その時無事だった方角も、数分後にはどうなっているかわかりません。つまり一旦大火災が発生したら、延焼が止まるまで、事実上は燃えるものが無くなるまで、一切気を抜く時間は無いということです。

詳しくは後述しますが、現在の東京では、都心部をぐるりと取り囲むように、木造家屋が密集した火災危険地帯が存在します。都心部からどの方角へ行っても、大火災に遭遇する可能性が高いのです。そしてこれは、他の大都市でも似たような状況でもあります。

それがわかっていても、地震の第一撃を生き残ったあなたは、帰宅を急ぎますか?

次回に続きます。


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【9/2の竜巻はF2】スクープより十分な防護策を!

9月2日に埼玉県越谷市、千葉県野田市とその周辺を襲った竜巻は、気象庁調査チームの現地調査により、竜巻の規模をF0(ゼロ)~F5の6段階で表す藤田スケールの上から4段階目に当たる、F2(風速50~69m/秒)に相当すると発表されました。

昨年(2012年)5月6日に茨城県つくば市周辺を襲った竜巻(F3)の一段階下となります。

主な竜巻の移動距離は約19kmに及んでいるとのことですが、同時に「多重渦」と呼ばれる複数の竜巻が発生し、約1000棟もの建物を損壊させたとのことです。撮影された映像を見る限りでは、「多重渦」はF0(ゼロ)~F1クラスだったようです。

今回の竜巻でも、典型的な現象がたくさん観測されました。まず晴天の中で急速に発達した巨大積乱雲「スーパーセル」によって、場所によっては雷と共に時間降雨量80mmを超える豪雨が降り出しました、そして強い風が吹く中、低く垂れ込めた雲から逆三角錐型の「漏斗雲」が地表に向かって伸び、それが竜巻に発展して行く様子が鮮明に捉えられています。さらに複数の「多重渦」が発生しました。

このため、早い段階で竜巻発生を察知でき、素早く身を守る行動を取れたことも多かったようで、それが建物などの被害の割には、人的被害を少なくすることに繋がったようです。視覚的に、早くから自分に接近する竜巻を察知しやすい条件だったのです。

ただ、「漏斗雲」は必ず観測されるとは限りませんから、空が暗くなって強い風が吹き始めた段階で竜巻が発生する可能性が高いと考え、特に屋外にいる場合は予防的に避難を始めることが必要です。竜巻を起こすような強い積乱雲は、豪雨や雹を伴うことが多いのですが、今回のように竜巻が先に来ることも少なくありません。

竜巻が起きなくても、積乱雲からの強い下降気流である「ダウンバースト」によって、例えばテントなどを吹き飛ばすような突風が吹くことも多いのです。

今回のように「多重渦」が発生していれば、ひとつの竜巻が通過したと思って安心したところへ別の竜巻が接近することもありますから、空が明るくなりはじめ、風が弱まるまでは避難行動を続ける必要があります。

その間、竜巻の接近を見ようとして窓際などに近づくことは危険極まりありません。竜巻がある程度遠くにあっても、巻き上げられた飛来物がどこから突っ込んで来るかわからないのです。窓際にいたら、瓦一枚の直撃で致命傷にもなりかねません。言うまでもなく、開けた場所や窓際でカメラを回し続けるなどもっての他です。

テレビでは視聴者撮影映像をたくさん流しておきながら、一方で「撮影などしないで逃げろ」と矛盾に満ちたことを言います。比較的安全な場所から撮られているから(窓際など十分危険な映像も流れていますが)、結果的に撮影者が無事だったから良いというものでもありません。メディアには、「素人スクープ合戦」を助長するような「煽り」は自重していただきたいと強く思いますが、「ヤバい」映像ほど数字になるという現実の前では、あまり期待しない方が良いのかもしれません。

大竜巻(トーネード)が多発する米国中西部では、映像撮影や学術調査のために竜巻に接近する「ストームチェイサー」と呼ばれるプロがいますが、竜巻を知り尽くしたそんな人たちでさえ、判断を誤って犠牲になることがあるのです。くれぐれも「スクープ」のために生命を危険に晒すような行動はされませんように。

東日本大震災においては、津波の映像を撮ろうとして低地に降りて犠牲になった人の数は、全被災地で数百人では済まないはずです。津波も竜巻も、映像的には非常に「オイシイ」素材なのは確かですが、そのために素人が危険を冒すほどのものでもありません。今回も「無事」に撮影された映像は、たまたま「竜巻の規模がそれほどでもなく、自分の居場所を直撃しなかった」という、単なる偶然の上に成り立っているに過ぎません。

最終的には個人個人がどう考えるかなのですが、あなたの生命は、あなただけのものではないのです。


・・・などとメディアに苦言を呈するのも、こういう事態になるとたいてい、放送局のリモートホストからのアクセスをいただくからなのです。放送制作のための情報収集の一環だとは思いますが、是非ともこういった意見にも耳を傾けていただきたいと思っております。


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大積乱雲発生中

9月4日午前10時45分現在、埼玉県中部から東京都北東部にかけて、また巨大積乱雲が発生しています。

スーパーセルと呼べるほど集中していませんが、大荒れとなるのは確実です。竜巻発生の可能性もあります。

これから千葉県、茨城県、栃木県方面へ移動すると思われます。厳重に警戒してください。


■9月4日20:55追記
当初は主に茨城県、千葉県方面へ流れて行くと思われた大積乱雲は、栃木県南部で発生していた小さな積乱雲と合体するようにして急速に発達し、栃木県中南部を覆うようにして勢力を一気に強めました。レーダー解析によれば、中心部では時間雨量100mmを超える勢力にまでなっています。そして、竜巻が発生しました。

当初、埼玉県内で発達していた場所のほぼ真北で最大勢力となったのです。これは、一般に「雲は西から東へ動く」という考えからは予想しずらかったことです。このことからしても、積乱雲の動きや発達程度は固定観念に捉われず、こまめに監視し続けなければならないということです。

2013年9月 2日 (月)

【気象災害】埼玉・千葉で竜巻被害発生

本日9月2日午後2時過ぎ、埼玉県越谷市、千葉県野田市などで竜巻による被害が発生しました。本稿執筆時点での竜巻映像、被害映像から判断すると、管理人の判断では、F1に近いF2クラスだと思われます。今後の情報によって判断が変わることもありますが、F3クラスには達していないと考えています。

管理人は竜巻発生当時、最初に被害が発生した越谷市から南に約10kmの埼玉県南部にいましたが、北方の空が真っ暗になり、かなり強い南風が吹き始めたために、強力な積乱雲の発生を認知しました。携帯電話で気象レーダー画像を見たところ、直径10km近くにも及ぶ巨大な楕円形の激しい降雨域を確認しました。

これは「スーパーセル」と呼べるレベルの積乱雲だと判断し、空が広く見渡せる場所に移動して撮影したのが、下画像です。
130902_004
撮影時間は午後2時06分。今まさに竜巻が発生していたと思われる時間ですので、その時点では竜巻については何の情報もありませんでした。画面中央奥に見えるビルの背後の空が真っ黒な雲に覆われていますが、その方角の約10km先が、越谷市付近です。

ご覧のように、管理人の居場所上空付近まで黒い雲に覆われており、雲の末端はちょうど管理人の直上でした。真上を撮影した画像をご覧ください。
130902_003
ちょっとわかりずらいのですが、黒い雲の上に、朝顔の花状の白い雲が広がっています。これは積乱雲に特有の「かなとこ雲」と呼ばれる雲で、成層圏にまで到達した積乱雲がそれ以上は上に発達できずに、横方向に広がったものです。

積乱雲の中心から約10km離れた、雲の末端部にまで「かなとこ雲」が拡がっていることからしても、この積乱雲が非常に巨大かつ強力なものだったことがわかります。この積乱雲ならば豪雨、落雷、降雹、突風、竜巻などの被害が出る可能性があると判断し、当ブログにも警報記事をアップしたいと思ったのですが、残念ながらその場ではできませんでした。


ここで、空の様子から天候を推移を読む「観天望気」について、ひとつの例を挙げましょう。今日のように「大気が不安定」の場合に見られることが多い雲の様子です。
130902_007
上画像も本日の撮影ですが、このように綿毛のようだったり、風の中をたなびく煙のような、乱れた形の雲がたくさん見られるのが、大気が非常に不安定な時の特徴です。この状態から、雲の灰色の部分(=厚い部分)がどんどん増えて行くようでしたら、積乱雲が急速に発達していると考えられますので、しばらく後に豪雨、落雷、降雹、突風、竜巻が発生する可能性が高まります。

その場合、雲の下では急速に暗くなって風が強まり、雲の周囲では「かなとこ雲」が見られることもあります。今回のように、地上から巨大な「かなとこ雲」が観測される場合は、積乱雲が非常に強力なことが多いので、特に早めに安全な場所に避難することが必要です。それが自分のいる方向に移動・発達して来たら、ごく短時間で大荒れの天候となるのです。

なお、細かいことですが、急速に発達中の積雲は「雄大積雲」(通称・入道雲)と呼ばれ、それが成層圏に到達して横に広がり、「かなとこ雲」が形成された段階で「積乱雲」と呼ばれるようになります。また、積乱雲全体を「かなとこ雲」と通称することもあります。


最後に、ボランティアについて。今回、竜巻被害を受けた埼玉県越谷市や野田市では、現在復旧作業が急ピッチで進んでいます。後片付け等のボランティアは、必要になった段階でしかるべき組織がとりまとめ、地元のコミュニティFMでの告知や、市町村の広報などでで募集されます。ツイッター等で情報が流れる場合もあります。

被災直後の現時点では、インフラの復旧作業と地元住民による作業の段階ですので、要請も無いのにボランティアとして現地入りをすることはしないでください。この段階で個人レベルで動くことは、混乱を招くだけですので、地元からの要請があるまでは待機し、参加する際もボランティアを統括する組織の指示に必ず従ってください。

なお、ボランティア活動をする際には、衣食住等がすべて自己完結、つまり被災地に負担をかけずに自分でまかなえる体制と、ボランティア保険に加入していることが最低限の条件です。「すぐ行きたい、行けばなんとかなる」という甘い考えのボランティアも少なく無いのですが、そんな人は現地の迷惑になるだけですから、必ず地元の要請に従う形で参加していただきたいと思います。


■■■当ブログでは、2012年5月6日に茨城県つくば市周辺に被害をもたらした竜巻の発生直後から、緊急特集として竜巻対策関連記事をアップしております。下記リンクからどうぞ。

竜巻から生き残れ!【1】はこちらから
竜巻から生き残れ!【2】はこちらから
竜巻から生き残れ!【3】はこちらから
竜巻から生き残れ!【4】はこちらから
竜巻から生き残れ!【5】はこちらから
竜巻から生き残れ!【特別編】はこちらから

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特別警報講演会に出席してきました【後編】

前回は、8月30日から運用が開始された「特別警報」の概要と発表時の対処方法について述べましたが、今回はその他の関連事項について述べることにします。

まず、なぜ「特別警報」制度が創設されたのかについて。それは、気象情報だけが注意報・警報の「上」が無かったからです。つまり、警報発表後に気象状況が深刻度を増し、さらに大きな災害の危険が迫った場合でも、それを告知する指標が存在しなかったのです。

気象情報では「記録的短時間大雨情報」や「土砂災害警戒情報」というのを聞くことがありますが、前者は大雨警報発表中に、1時間雨量が100mm前後の大雨が観測された場合に発表されるもので、直接的には災害の危険を警告するものではありません。

一方後者は、大雨などによる土砂災害の危険が高まっている場合に発表されるもので、洪水などのその他の気象災害を警告するものではありません。広範囲、長時間に渡ると想定される気象災害を包括して警報するものではないのです。

ですから、今までは警報発表後にさらに大雨が続くなどして大災害が予想される状況になっても、今までは制度的にはその危険を知らせる手段が無く、気象庁の方の言葉を借りれば、「非常に悔しい思いをしていた」とのこと。「特別警報」制度は、そのような状況を改善するために創設されたわけです。

このことからしても、「特別警報」が発表される状況が、いかに危機的かがおわかりいただけるかと思います。そこで注意すべきは、「特別警報」の創設によって、今までの警報が「格下げ」された訳では無いということです。

防災研究・指導者である講師の方は、うんざりしたように言いました。「特別警報が発表されたらどうしたら良いのか?」という質問をやたらと受けると。その答えは「自分で考えろ」です。

本来は警報の段階で、自分の居場所の危険を判断して避難行動を始めなければならない事に変わりありません。そこでさらに特別警報が発表されたら、気象災害に遭遇する危険がより大きくなっていて、避難できる可能性も小さくなっている状況だということです。これは管理人の表現ですが、「生き残る」可能性がより小さくなっている状況を知らせてくれている、「最後の一押し」なのです。

基本はあくまで自己判断なのですが、実際には行政頼みの人があまりに多いとのこと。中には、「避難したいので早く避難勧告を出せ」と市町村に苦情が来るという、笑い話のようなことも少なくないそうです。自分で避難が必要だと判断したのなら、いつでも行動すれば良いだけのこと。だれも文句は言いません。

それではわかりずらいからと、「特別警報が出たらこうしろ」というマニュアル化するようなことはもってのほかです。言うまでもなく、災害の危険は場所や条件によって千差万別ですから、マニュアル化には意味が無いどころか、判断を狂わせる大きな危険をはらんでいるのです。

皆様も、どこかで「特別警報対応マニュアル」のようなものを見つけても、決してそれを鵜呑みにはされませんように。話題性にかこつけて、そんなものが作られるようなことが無いとは言えません。


ところで最近のメディアでは、いわゆる「ゲリラ豪雨」が取り沙汰されることが多いので、ついそちらに意識が偏ってしまいがちですが、局地的で短時間の豪雨の通称である「ゲリラ豪雨」は、局地的に冠水などの被害を発生させることはあるものの、基本的には防災上の重大な脅威ではありません。ゲリラ豪雨で犠牲者が出た例は、ごく少数なのです。

本当の脅威は「広く・長く・多く」降る豪雨であり、「大雨特別警報」は、そのような場合に発表されるものです。

最後に、気象災害に限らず、すべての災害の危険から身を守ることに共通する「3K」を記しておきます。、

『考える・気づく・行動する』
それが、あなたとあなたの大切な人を災害から守るのです。

【おわり】

■当記事は、カテゴリ【気象災害】です。

☆再掲載☆大火災編01【首都圏直下型地震を生き残れ!11/54】

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新テーマを始めます。

都市部で大地震が発生すると、大火災の発生が懸念されると言うより、確実に発生するでしょう。最初は小さな火事でも、様々な理由で初期消火が不十分なケースが多発するでしょうし、倒壊家屋から火が出た場合は、そもそも初期消火がほとんど不可能です。

そしてそれが同時多発的に発生し、それだけで消防の対応能力を超えてしまうでしょう。さらに交通渋滞や道路障害で消防車も駆けつけられず、出場しても人命救助優先の活動になる可能性が高く、火災はかなりの数が「放置」されることになります。仮に消防車が火災現場に到着しても、断水していたら消火栓の使用もままならず、遠くから水利を確保しなければなりません。その作業の間にも、火はどんどん燃え広がって行きます。

現実的には、大地震後に発生した多くの火災は、「だれも助けに来てくれない」と考えなければなりません。実際、1995年の阪神・淡路大震災では、そのような状態になりました。

地震発生から15分後までに発生した火災が46件。その時点で、当時の神戸市消防局の同時火災対応能力である10件をはるかに超え、その後さらに増加して行きました。出場した消防車は渋滞に阻まれ、さらにその途上の家屋倒壊現場などで、人命救助の要請を数多く受けました。それも、すぐに対応し切れる数ではありません。

そのため神戸市消防局は活動方針を転換し、人命救助を最優先とし、多くの火災は事実上「放置」されざるを得なくなりました。神戸市長田区をはじめとする、燃えるに任せられた大火災の惨状は、当時を知る人にとっては未だ鮮烈な記憶です。そして、あの猛火の中に取り残された、多くの命があったのです。

神戸の場合、唯一幸運だったことがあります。下画像をご覧ください。
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煙がまっすぐ立ち上っています。つまり冬の乾燥した晴天にも関わらず、風がほとんど無かったのです。もしこれが強風下だったら、比較にならないほどの大火災になっていた可能性もあります。

東日本大震災では、津波の襲来によって、地震による火災被害の実態は、ほとんど把握できていません。その一方で、宮城県気仙沼市など、津波によって火と可燃物がまき散らされ、大火災が誘発された場所もあります。下画像は、3月11日夜の気仙沼市です。NHKテレビからのキャプチャー画像を掲載させていただきます。
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一方、千葉県市原市のガスタンク爆発火災は、コンビナート地帯における火災の恐怖を強烈に印象付けました。もしあの火災がさらに巨大化していたら、津波が発生して可燃物が内陸にまき散らされたらと考えると、背筋が寒くなります。
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都市部の大地震では、地震の第一撃を生き残っても、かなり長い時間に渡って大火災の危険にさらされることになるでしょう。当ブログでは、過去に「火災を出さないため」の方法と、「火災の建物から避難する」方法を述べて来ましたが、ここからはその後、延焼する「大火災から生き残る」方法に焦点を絞って、考えて行きたいと思います。

都市部、特に都市規模が巨大な首都圏では、地震後の大火災に対する判断を誤ると、猛火の中で逃げ場を失うという、考えるだけでおぞましい状況に放り込まれる可能性が非常に高くなります。そこで生死を分けるのは、正しい知識とそれに基づいた判断、そしてすばやい行動しかありません。

次回からは、現代の首都圏大地震における火災で、何が起きるかを考えます。


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