台風18号が残したもの
台風18号が西日本と東日本を縦断し、各地に大きな爪痕を残しました。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
今回の台風は、去る8月30日に制度施行されたばかりの「特別警報」のうち「大雨特別警報」が初めて発表されることとなった「雨台風」でした。「記憶に残るほどの大災害」が予想され、実際にかなりの被害が発生したことで、皮肉なことに「特別警報」がどのような場合に発表されるのかが、制度施行早々に周知される結果になってしまいました。
今回、豪雨以外に非常に特徴的だったのが、西日本から東北の各地で竜巻と思われる突風が多発したことです。報道されているだけでも四カ所と、過去に例を見ないほど集中的に発生しました。報道だけから判断すれば、竜巻の規模はF0(ゼロ)~F1クラス、ごく局地的にはF2クラスに達したかもしれません。
これは、台風前から日本列島上空の高層に大陸からの乾いた冷たい空気が入り、低層に南方海上からの湿った暖かい空気(暖湿流)が入るという、いわゆる「大気が不安定」な状態だったところへ、台風によってさらに大量の暖湿流がもたらされ、各地で強力な積乱雲が発生したことによります。
一般には、台風が竜巻をもたらすことは多くはないものの、今回のような条件が揃うと、その限りではないということを目の当たりにさせられました。そして、このような条件は今後さらに増えることが予想されます。近年、地球高温化の影響と思われる海水温の上昇が目立ち、特に今年の日本列島近海ではそれが顕著です。例えば南西諸島周辺では、海水温が理論値の上限にまで達しているのです。
海水温の上昇による大気中の水蒸気の増加は、台風の大型化、強力化や、雪も含めて降水量の増加をもたらします。さらに全地球的な熱分布の変化によるジェット気流や海流の変化が加わり、各地で「過去に経験の無いような」気象となることが確実に増えています。ですから、今年だけが「異常」なのだという考え方をすべきではありません。
注目すべきは、今回発生した竜巻の多くが、深夜に発生していることです。一般に、竜巻は日射によって暖められた空気によって上昇気流が発生し、強い積乱雲が発達しやすい晴天の午後に起きることが多いのですが、今回は高層の乾冷気と台風による低層の暖湿流と強風という条件によって、日射のない深夜に多発しました。
言うまでもなく、これは防災的には非常に厳しい条件となります。今後、気象条件によっては「就寝中の竜巻対策」という、今までにほとんど無かった発想も必要になったということです。
台風一過の日本列島は、空気が乾燥したさわやかな秋の晴天になっています。埼玉県南部では、台風通過後の9月16日、とても美しい秋の夕暮れになりました。
台風がもたらした暖かく湿った空気が吹き払われ、低層まで大陸からの乾冷気に覆われたために低い雲が消え、、高層には薄い層状の「秋の雲」が夕日に輝いています。美しい秋の夕暮れを単純に愛でたいものではありますが、ここに南方海上からの強い暖湿流が流れ込むと再び大荒れの天候になるかと思うと、管理人は空を見上げながら、ちょっと複雑な気持ちではありました。
台風シーズンはまだ終わりではありませんし、秋雨前線もやってきます。海水温の上昇は、冬には豪雪の可能性も高めることになるでしょう。この先、被害をもたらすような気象災害への警戒、対策を、過去の事例にとらわれずに、より厳重に進めなければならない段階になったという現実を、台風18号は我々に突きつけたと言っても過言ではないのです。
被害に遭ってから「こんなことになるとは思ってもいなかった」などと言っても、あとの祭りです。もっとも、そんな言葉を言えるうちは、まだ幸せというものですが。
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