☆再掲載☆大火災編03【首都圏直下型地震を生き残れ!13/54】
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前回(大火災編02)から続きます。
「関東大震災」での象徴的事例として、本所区(当時)の陸軍被服廠跡の空き地で、4万人とも言われる人々が、ほとんど一瞬で焼死した惨事があります。それに隠れてあまり知られていませんが、近くにある台東区の田中小学校(現在の東浅草小学校)校庭でも、1000人以上が一瞬で焼死しています。
それら惨事を引き起こしたのが「火災旋風」、つまり炎の竜巻です。大火災に向かって周囲から吹き込む風がぶつかって渦を巻き、上昇気流が炎を吸い上げて竜巻となる現象です。
これが空き地に避難している人々を襲いました。広大な空き地は風の通りが良く、周囲より相対的に気圧が低かったので、火災旋風を吸い寄せたとも考えられます。隅田川沿いだった被服廠跡では、当時は周囲三方向から火災が迫っている状況で、そこへ隅田川からの風が吹き込むことで、大火災旋風に発展したという説が有力です。
地震による火災ではありませんが、太平洋戦争中の昭和20年3月10日、東京大空襲による大火災でも火災旋風が発生し、北風の中で隅田川上を北から南に移動しました。そのため、両岸の火災に追われて橋の上に避難していた多数の人々が、一瞬で焼死しました。特に言問橋(ことといばし)上では、2000人以上の人々が犠牲になりました。これも、北風が吹き抜けることで周囲より気圧が低くなっていた隅田川が、火災旋風を吸い寄せたと考えられます。。
当時、橋の上に逃げて生き残った人の証言に、「隅田川の両岸から火の粉が降ってきた」というものがありますので、このことからも両岸から川に向かって風が吹いていたことがわかります。余談ながら、現在も当時のままである言問橋の、石造りの親柱(おやばしら。欄干の両端にある柱)には、あの日猛烈な炎で焼かれたどす黒い焦げ跡が、今でも生々しく残っています。
さておき、火災旋風に襲われると、何が起きるのでしょうか。まず、猛烈な輻射熱と火の粉で、髪の毛や衣服などの可燃物が一瞬で燃え上がります。大火災の周囲では、熱によって物も空気もからからに乾燥している状態になるので、非常に火がつきやすくなっているのです。さらに「関東大震災」では、広場に避難していた人々が家財道具をたくさん持ち込んでいたために、それらに火がついて被害を大きくしました。
加えて、猛烈な炎は周囲の酸素を一瞬で燃焼し尽くし、人間は窒息状態になります。周囲は数百℃の熱気で満たされ、息を吸えば灼熱の空気を吸い込んで、肺が焼かれます。このため、ほとんどその場から動くこともできないままに人々は倒れ、焼かれたのです。このような地獄が、いま再び大都市で繰り返されないとは、誰にも言えません。火災旋風は、風に流されて人が走るよりもはるかに速い速度で移動することもあります。もし、自分の方に向かって来る火災旋風を見てしまったら、手遅れである可能性が大きいのです。
そして大都市では、そこにいるのはあなただけではありません。「ラッシュ時のホームのような」群衆の中にいる可能性が高いでしょう。逃げようにも、思うように動けません。そして、パニックが発生します。その中で「生き残れる」可能性は、あまりに低いのです。火災旋風が発生しなくても、火に囲まれて進退窮まることは十分に考えられます。
同時多発的な大火災が発生している状況下では、とにかくなるべく早い段階で危険を察知し、本当に危険が無くなるまで、手遅れになる前に、正しい避難行動を続けなければなりません。それまで、安息の時間は無いのです。そのためには、まず正しい知識を身につけることが大前提です。行政任せ、他人任せ、ましてや運任せでは、それなりの結果を招くだけです。
大火災が多数発生している時は、指定の避難場所にいるからもう安心、河川敷のような、周りに何もない広い場所にいるからもう安心、などということはまったく成り立ちません。都市部への通勤者は、そんな中を無理に帰宅しようとして、自ら危険に近づいて行く行為がいかに無謀なことか、おわかりいただけるでしょう。
災害時は、その規模が大きくなるほど、判断ミスが許容される範囲は減って行きます。それは東日本大震災の惨状を見れば明らかです。そして我々は、事実上世界で最も巨大な都市である、「首都圏」に生きているのです。
次回に続きます。
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