☆再掲載☆大火災編13【首都圏直下型地震を生き残れ!23/54】
■当記事は過去記事の再掲載です■
今回は、火災避難時の三要素、「距離」「遮蔽」「冷却」に関連することについてまとめます。
まず「距離」とは、火点からできるだけ距離を取り、輻射熱から身体を守ることと、迫ってくる火災から離れるために避難することです。
これを実現するために必要なのが、「情報の収集」と「素早い判断」です。大火災の延焼中は、火災の場所、風向き、火災の延焼方向などの情報を常時できるだけ把握し、必要と判断したらタイミングを逃さずに避難行動に移らなければなりません。その要素は、「釜石の奇跡」と呼ばれる津波避難行動事例に凝縮されています。この場合、特に集団行動の際に注意すべきことは、原則的には「正しい情報が得られなければ動くな」ということです。
行き当たりばったりや、曖昧な情報を元に行動を始めてしまっては、それが誤りだった場合には致命的な結果となります。小人数ならともかく、様々な人がいる集団行動で素早い転進は困難です。ですから、大火災から「生き残る」ために最も大切な「距離」を取る行動は、正しい情報が得られるかどうかにかかっています。もし自分の居場所から周辺の情報が得られない場合は、早い段階から各方面に「偵察」を出して、安全なルートを探すなどの対策が必須です。火が迫って来てからはでは遅いのです。
そして、得られる情報量が少なかったり不確かな時ほど、安全マージンを大きく取る必要があります。具体的には、より早い段階で避難行動を始めるのです。そこで大切なことは、「無駄足を恐れるな」ということです。「生き残ってから」のことばかり考えて、「生き残る」チャンスを失うことなどありませんように。大災害は、小さな判断ミスも見逃してくれません。
でも、「正しい情報が無ければ動くな」と「不確かな情報では安全マージンを大きく取って動け」というのは、明らかに矛盾する話です。しかし、どちらかが要求されるのが現実なのです。ここでの目的はただひとつ、「逃げ遅れないこと」。そのために、手に入れられた情報を吟味し、その上でどちらかの行動を選択しなければなりません。正しい情報を待っているうちに、逃げ遅れたらそこまでです。
次に「遮蔽」です。これは火の輻射熱を物理的に防ぐことであり、猛火を目の前にした時に、最も必要な行動です。具体的な方法は前述の通りですが、そこで大切なことは、ぎりぎりの状況下では「使えるものはなんでも使う」という意識です。
外国の映画などで、犯人を追跡する刑事が、たまたま通りかかった車に無理矢理乗り込んで追跡するようなシーンがありますが、そんな行動に法律的な根拠はありません。犯罪捜査中の刑事だからと言って、他人の財産を接収する権利など無いのです。
でも、それが目的のための唯一の手段ならそうする。あとで始末書の山になることがわかっていても、そうするのです。もちろん映画の話は極端な例ですが、少なくとも命がかかった状況では、「目的のためには手段を選ばない」行動が、運命を分けることもあるのです。
誰でも、無理な行動によって引き起こされる問題や混乱は、容易に想像できます。しかし、自分や大切な人の「死」など、リアルに想像できませんし、想像したくありません。ですからつい、普段の生活の延長線上の判断をしてしまいがちになるのは、ある意味で仕方ありません。
それでも、ぎりぎりの状況下では「できることはなんでもやる」という覚悟と発想の転換が必要だと、管理人は考えます。それを避けるのもひとつの選択肢ではありますが、その判断が、命と引き換えになることもあるという覚悟は必要でしょう。なんだか「遮蔽」と全然関係ない話ですが、普通は避難行動中に猛火を効果的に遮蔽できるものなど持ち合わせていないものですから、それを調達できるかどうかで、結果は大きく変わってくるのです。
ここで「遮蔽」編で書き忘れたことをここでひとつ追記しますが、火の熱を遮蔽するために、材質、大きさともにお勧めなのは、天ぷら鍋に火が入った時に、鍋にかけて消火するシートです。あれは消防服と同じ耐熱性、難燃性の材質ですから、入手しやすく、持ち運べびやすいものとしては理想的でしょう。
最後に「冷却」です。水の冷却効果でやけどのリスクを減らし、服などの発火を抑えることですが、これはもうとにかく、できるだけ大量に水分をまとうことに尽きます。しかし実際には、猛火を前にして十分な水を確保できることは少ないでしょう。本文では泥を使う方法を述べましたが、これは軍隊で教育されている方法であり、一般の「防災マニュアル」にはまず載っていないはずです。大量の泥が無くても、顔や手足に塗るくらいならば、ペットボトルの水と植木鉢の土くらいでも可能です。そしてその効果は絶大ですから、これは是非覚えておいてください。
ここまで、大火災からの避難に必要な三つの要素について述べてきましたが、このうち「距離」は絶対の安全を保証しますが、「遮蔽」や「冷却」は、猛火を目の前にしてからの「対症療法」であり、必ずしも「生き残れる」状況とは言えません。ですから、とにかく早い段階で正確な情報を入手し、タイミングを逸さずに、「無駄足を恐れずに」避難行動に移ることが、何よりも大切なのです。特に、多人数が集まっている場所では、より素早い判断が求められます。
大正12年の関東大震災では、約11万人の犠牲者のうち、約8万人が火災による犠牲でした。本所区(当時)の陸軍被服廠跡地、ここは約250m四方の広場でしたが、そこだけで約4万人が火災旋風のために焼死しました。現在は当時と状況は異なるとはいえ、大火災の恐ろしさは何ら変わっていないのです。
まず、あなたの居場所周辺の火災リスクと、避難経路、避難場所の状況を知ることから始めてください。それは街を歩いてみればわかりますし、火災危険度を表示したハザードマップや、それがなければ自治体の「防災課」や消防署に問い合わせればわかります。まず、大火災が発生したら、何が起きるかを知ってください。
それが素早い判断をするための、最も基礎となる情報であり、それなくしては情報の価値も半減してしまうのです。まずは、そこからです。
次回からは、大都市圏における大火災リスクについて考えます。
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