【竜巻 マンション】ご要望にお答えします
今年は、各地で竜巻被害が発生しています。そのたびに当ブログにはたくさんのアクセスを頂戴しておりますが、検索キーワードの中に、いつも非常に目立つ言葉があります。それが、タイトルの【竜巻 マンション】なのです。今回はそんな皆様のご要望にお答えし、マンションの竜巻対策についてまとめてみたいと思います。
鉄筋コンクリート造りのマンションは、一般に竜巻に対しては非常に頑強です。建物自体が崩壊したり大きく損傷する可能性は、まずありません。米国中西部などで発生する藤田スケールF5クラスの超巨大竜巻になると、鉄筋コンクリート構造物を破壊することもあるそうですが、わが国ではそのクラスが発生する可能性は無いと言って良いでしょう。
ですから、マンションは竜巻に対して比較的安全です。しかしマンションならではの危険も存在しますから、決して何もしなくても安心という訳ではありません。最大の危険要素は、その「高さ」です。上層階になるほど強い風が直接当たり、飛来物が衝突する可能性も高くなるのです。
一戸建て家屋の場合、強い竜巻で屋根や壁が吹き飛ばされる危険が一番高くなりますが、マンションの場合は上記の理由により、窓ガラスが吹き飛ばされる可能性が高いのです。マンションのガラスは、火災時の延焼遅延を目的としたワイヤ入りガラスだったり、飛散防止フィルムなどで対策されていることも多いと思いますが、それでも飛来物の突入に関しての効果は限定的です。
さらに、F3クラス以上の竜巻になると、場合によっては自動車や大木のようなものが衝突、突入して来る可能性も出てきますので、そのような最悪のケースを想定して、避難行動をしなければなりません。
そこで、一般的な間取りのマンションを想定し、竜巻の際の危険度を色分けしてみました。
比較的安全度が高い場所が緑色で、黄色から赤になるにつれて危険度が上がります。水色で表したのはガラスです。
屋外であるバルコニーと外廊下が最も危険な場所であることは、言うまでもありません。そんな場所にいたらあらゆる飛来物の直撃を受け、身体が吹き飛ばされたり吸い上げられたりするかもしれません。次に危険なのは、窓際の部屋のガラス近くです。
上図では、窓の近くを特に赤く表現していますが、部屋の奥ならば安全という意味ではありません。窓から飛び込んだ物やガラスの破片は、暴風と一緒に部屋の奥まで突入するでしょう。あくまで「窓には絶対に近づくな」という意味です。そんな場所で接近する竜巻を眺めたり撮影したりすることは、自殺行為に等しいと考えなければなりません。
部屋の奥にある押入れやクロゼットの中も、決して安全とは言えません。むき出しよりも多少はマシでしょうが、それらの扉には重量物の衝突に対する防護効果はほとんど無く、最大の問題は、危険な方向にしか脱出できないということです。飛来物で脱出口が塞がれるかもしれません。
一方、緑色で表したのは浴室、洗面所、トイレ、廊下です。窓際ではなく、ガラス窓も無いために、飛来物や破片が突入して来る可能性が非常に低い場所です。できれば、建物の躯体(くたい=鉄筋コンクリート構造の壁)そのものに囲まれた場所が、より安全です。
これは壁を叩いてみれば、すぐわかります。コンコン、ドンドンと音が響く壁は、石膏ボード製などの中空の壁です。叩くとコツコツと硬い音がして音が響かない壁が躯体壁ですから、できればその裏側に入ります。一般的なマンションでは、浴室はユニット式のことが多いのですが、その周囲は躯体壁になっているのが普通です。ですから、もし管理人が上図のようなマンションにいたら、迷わず浴室に入ります。
その場合、壁が吹き飛ばされる可能性はありませんから、浴槽の中に入る必要は無いでしょう。それは、屋根や壁が吹き飛ばされる可能性がある、一戸建ての場合の対策です。トイレも避難場所としては悪くは無いのですが、必ずしも躯体壁で囲まれているとは限りませんから、次善の策ということになります。
なお、一応廊下も緑色で表しましたが、ご覧のように部屋との仕切りドアにガラスが使われている例が多いはずです。窓が破られれば、次にドアのガラスや、場合によってはドアごと吹き飛ばされる可能性も無いとは言えませんので、より安全な場所に逃げ込める場合は、迷わずそうするべきです。
大きな被害が出るような竜巻の場合、部屋の奥まった場所にいても、接近してくればゴーっという轟音が聞こえて来るはずです。そんな音が静まるまで、じっと待機するしかありません。竜巻の直撃を受けると停電する可能性が高いので、避難する際にはLEDライトなどの明かりを忘れずに。
最後に、マンションの話では無いのですが、竜巻に関する「机上の空論」など。
竜巻対策マニュアルのようなものに、一戸建ての場合、竜巻が接近してきたら風上側のドアや窓を閉め、風下側を開けろ、みたいなのを見たことはありませんか?そうすれば気圧の関係で、屋根が飛びにくいとか言う話です。
管理人は、そんなことを「指導」する輩に言いたい。「自分でやれるものならやってみろ」と。
理論的には正しいのでしょうが、竜巻が多発する米国中西部でさえ、危機的状況でそんなことをやれた人などいないのです。屋根が飛ばなかった家を調べてみたら、結果的にそのような状態だったという話が、「トリビア」として伝わっているに過ぎません。
何より、竜巻接近時の風向はどんどん変わって行きます。それをギリギリまで見極め、最接近時に風下側のドアや窓を開けろなど、はっきり言って死ねというようなもの。よくもまあ、そんな無責任なことが言えるものです。でもその程度の輩が、堂々と「防災の専門家」を名乗っているのですから許しがたい。
一戸建てにいて竜巻に遭遇した場合でも、そんなこと絶対に考えないでください。家よりも家財よりも、まず命を守らなければなりません。
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