特別警報講演会に出席してきました【後編】
前回は、8月30日から運用が開始された「特別警報」の概要と発表時の対処方法について述べましたが、今回はその他の関連事項について述べることにします。
まず、なぜ「特別警報」制度が創設されたのかについて。それは、気象情報だけが注意報・警報の「上」が無かったからです。つまり、警報発表後に気象状況が深刻度を増し、さらに大きな災害の危険が迫った場合でも、それを告知する指標が存在しなかったのです。
気象情報では「記録的短時間大雨情報」や「土砂災害警戒情報」というのを聞くことがありますが、前者は大雨警報発表中に、1時間雨量が100mm前後の大雨が観測された場合に発表されるもので、直接的には災害の危険を警告するものではありません。
一方後者は、大雨などによる土砂災害の危険が高まっている場合に発表されるもので、洪水などのその他の気象災害を警告するものではありません。広範囲、長時間に渡ると想定される気象災害を包括して警報するものではないのです。
ですから、今までは警報発表後にさらに大雨が続くなどして大災害が予想される状況になっても、今までは制度的にはその危険を知らせる手段が無く、気象庁の方の言葉を借りれば、「非常に悔しい思いをしていた」とのこと。「特別警報」制度は、そのような状況を改善するために創設されたわけです。
このことからしても、「特別警報」が発表される状況が、いかに危機的かがおわかりいただけるかと思います。そこで注意すべきは、「特別警報」の創設によって、今までの警報が「格下げ」された訳では無いということです。
防災研究・指導者である講師の方は、うんざりしたように言いました。「特別警報が発表されたらどうしたら良いのか?」という質問をやたらと受けると。その答えは「自分で考えろ」です。
本来は警報の段階で、自分の居場所の危険を判断して避難行動を始めなければならない事に変わりありません。そこでさらに特別警報が発表されたら、気象災害に遭遇する危険がより大きくなっていて、避難できる可能性も小さくなっている状況だということです。これは管理人の表現ですが、「生き残る」可能性がより小さくなっている状況を知らせてくれている、「最後の一押し」なのです。
基本はあくまで自己判断なのですが、実際には行政頼みの人があまりに多いとのこと。中には、「避難したいので早く避難勧告を出せ」と市町村に苦情が来るという、笑い話のようなことも少なくないそうです。自分で避難が必要だと判断したのなら、いつでも行動すれば良いだけのこと。だれも文句は言いません。
それではわかりずらいからと、「特別警報が出たらこうしろ」というマニュアル化するようなことはもってのほかです。言うまでもなく、災害の危険は場所や条件によって千差万別ですから、マニュアル化には意味が無いどころか、判断を狂わせる大きな危険をはらんでいるのです。
皆様も、どこかで「特別警報対応マニュアル」のようなものを見つけても、決してそれを鵜呑みにはされませんように。話題性にかこつけて、そんなものが作られるようなことが無いとは言えません。
ところで最近のメディアでは、いわゆる「ゲリラ豪雨」が取り沙汰されることが多いので、ついそちらに意識が偏ってしまいがちですが、局地的で短時間の豪雨の通称である「ゲリラ豪雨」は、局地的に冠水などの被害を発生させることはあるものの、基本的には防災上の重大な脅威ではありません。ゲリラ豪雨で犠牲者が出た例は、ごく少数なのです。
本当の脅威は「広く・長く・多く」降る豪雨であり、「大雨特別警報」は、そのような場合に発表されるものです。
最後に、気象災害に限らず、すべての災害の危険から身を守ることに共通する「3K」を記しておきます。、
『考える・気づく・行動する』
それが、あなたとあなたの大切な人を災害から守るのです。
【おわり】
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