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2013年9月 2日 (月)

【気象災害】埼玉・千葉で竜巻被害発生

本日9月2日午後2時過ぎ、埼玉県越谷市、千葉県野田市などで竜巻による被害が発生しました。本稿執筆時点での竜巻映像、被害映像から判断すると、管理人の判断では、F1に近いF2クラスだと思われます。今後の情報によって判断が変わることもありますが、F3クラスには達していないと考えています。

管理人は竜巻発生当時、最初に被害が発生した越谷市から南に約10kmの埼玉県南部にいましたが、北方の空が真っ暗になり、かなり強い南風が吹き始めたために、強力な積乱雲の発生を認知しました。携帯電話で気象レーダー画像を見たところ、直径10km近くにも及ぶ巨大な楕円形の激しい降雨域を確認しました。

これは「スーパーセル」と呼べるレベルの積乱雲だと判断し、空が広く見渡せる場所に移動して撮影したのが、下画像です。
130902_004
撮影時間は午後2時06分。今まさに竜巻が発生していたと思われる時間ですので、その時点では竜巻については何の情報もありませんでした。画面中央奥に見えるビルの背後の空が真っ黒な雲に覆われていますが、その方角の約10km先が、越谷市付近です。

ご覧のように、管理人の居場所上空付近まで黒い雲に覆われており、雲の末端はちょうど管理人の直上でした。真上を撮影した画像をご覧ください。
130902_003
ちょっとわかりずらいのですが、黒い雲の上に、朝顔の花状の白い雲が広がっています。これは積乱雲に特有の「かなとこ雲」と呼ばれる雲で、成層圏にまで到達した積乱雲がそれ以上は上に発達できずに、横方向に広がったものです。

積乱雲の中心から約10km離れた、雲の末端部にまで「かなとこ雲」が拡がっていることからしても、この積乱雲が非常に巨大かつ強力なものだったことがわかります。この積乱雲ならば豪雨、落雷、降雹、突風、竜巻などの被害が出る可能性があると判断し、当ブログにも警報記事をアップしたいと思ったのですが、残念ながらその場ではできませんでした。


ここで、空の様子から天候を推移を読む「観天望気」について、ひとつの例を挙げましょう。今日のように「大気が不安定」の場合に見られることが多い雲の様子です。
130902_007
上画像も本日の撮影ですが、このように綿毛のようだったり、風の中をたなびく煙のような、乱れた形の雲がたくさん見られるのが、大気が非常に不安定な時の特徴です。この状態から、雲の灰色の部分(=厚い部分)がどんどん増えて行くようでしたら、積乱雲が急速に発達していると考えられますので、しばらく後に豪雨、落雷、降雹、突風、竜巻が発生する可能性が高まります。

その場合、雲の下では急速に暗くなって風が強まり、雲の周囲では「かなとこ雲」が見られることもあります。今回のように、地上から巨大な「かなとこ雲」が観測される場合は、積乱雲が非常に強力なことが多いので、特に早めに安全な場所に避難することが必要です。それが自分のいる方向に移動・発達して来たら、ごく短時間で大荒れの天候となるのです。

なお、細かいことですが、急速に発達中の積雲は「雄大積雲」(通称・入道雲)と呼ばれ、それが成層圏に到達して横に広がり、「かなとこ雲」が形成された段階で「積乱雲」と呼ばれるようになります。また、積乱雲全体を「かなとこ雲」と通称することもあります。


最後に、ボランティアについて。今回、竜巻被害を受けた埼玉県越谷市や野田市では、現在復旧作業が急ピッチで進んでいます。後片付け等のボランティアは、必要になった段階でしかるべき組織がとりまとめ、地元のコミュニティFMでの告知や、市町村の広報などでで募集されます。ツイッター等で情報が流れる場合もあります。

被災直後の現時点では、インフラの復旧作業と地元住民による作業の段階ですので、要請も無いのにボランティアとして現地入りをすることはしないでください。この段階で個人レベルで動くことは、混乱を招くだけですので、地元からの要請があるまでは待機し、参加する際もボランティアを統括する組織の指示に必ず従ってください。

なお、ボランティア活動をする際には、衣食住等がすべて自己完結、つまり被災地に負担をかけずに自分でまかなえる体制と、ボランティア保険に加入していることが最低限の条件です。「すぐ行きたい、行けばなんとかなる」という甘い考えのボランティアも少なく無いのですが、そんな人は現地の迷惑になるだけですから、必ず地元の要請に従う形で参加していただきたいと思います。


■■■当ブログでは、2012年5月6日に茨城県つくば市周辺に被害をもたらした竜巻の発生直後から、緊急特集として竜巻対策関連記事をアップしております。下記リンクからどうぞ。

竜巻から生き残れ!【1】はこちらから
竜巻から生き残れ!【2】はこちらから
竜巻から生き残れ!【3】はこちらから
竜巻から生き残れ!【4】はこちらから
竜巻から生き残れ!【5】はこちらから
竜巻から生き残れ!【特別編】はこちらから

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コメント

京浜東北線のテレビニュースで少しだけ状況を見ましたが、電柱が軒並み倒れてたのには驚きました。屋根とか建物が巻き上げられるのは風当たりの面積が大きいので分かるんですが、電柱って細いですよね?しかも相当深く埋設してあるし、鉄筋のコンクリートですし。あれがボキボキと折れるほどの強さって想像ができないので非現実的な感じがしました。

うちにはテレビがないので見てませんが、NHKの地震特集はご覧になりましたか?YouTubeの番宣を見る限りではなかなかに扇情的でした。見ないことには断定できませんが、巨大地震が来るぞーとガンガン煽るなら報道機関として一日も早い土建国家再建のための後押しをして欲しいと思いますが、おそらく煽りっ放しで終わるんでしょうね。

知り合いが先日の越谷の台風が発生した場所の近くに住んでいました。話を聞いたら車が転がったり、近くの家の屋根が飛び、窓が割れたそうです。知り合いは、呑気に写真まで取っていたので流石に注意しましたが、無事で良かったです。なぜ逃げなかったのか聞いたら、昼寝をしていて気がついたら風が強くて家の外に出れそうになかったからだそうです。

>tntさん

電柱は、根元近くが挫屈、つまりコンクリートがグズグズになって鉄筋が折れ曲がる状態になっています。ほとんどの場合、電線は切れていませんので、長い電線に受ける風圧によって傾き、電線によって引きずられるように、連鎖的に倒壊したように見えます。電線に受ける風圧は想像以上のようです。普通の台風の2~3倍の風速ですからね。

NHKのMEGAQUAKE視ましたが、まあ、目新しい内容はそれほど無かったですね。9/1放送分の「スロークエイク」解析には期待したのですが、要はスロークエイクと巨大地震との関連が「少し見え始めた」という話にすぎません。

今後の研究に期待したいと思いますが、結構ショックだったのは、米国シアトルでは、スロークエイクの異常発生がメディアで流され、大規模地震の警戒を促していたことです。我が国では、そうやるとパニックを誘発するだの誰が責任を取るだのの話になって、本当に大切なことがうやむやになるんですよね。

シアトルでは結局何も起きなかったのですが、我が国で「最近わかってきた」と言われることが、あちらではもう現実の警戒情報として使われている。この意識の差が何より悲しいですね。まあ、受け取り手が「大人」だってことでしょうね。

国土の防災力を強化するには、公共工事は必須です。いろいろな議論はありましょうが、必要なことはやってもらわないと。でも、優先順位を間違えないでもらいたいですね。

>由一さん

ご友人、無事でよかったですね。家から出なかったのは正解ですけど、寝ているだけでは何か飛び込んで来たら大変です。

まあ、あれだけの「スペクタクル」に遭遇したら記録残したくなるのは人情かもしれませんが、今回もガラス窓の中からカメラ回していたり、竜巻に向かって進みながらや、進行方向から撮影した画像が出てきてますね。

みんな、偶然無事だっただけなんですが。たまたま何も飛んでこなかったから。昨年のつくば竜巻の時より、撮影者に「怖かったです」とか言わせるだけのくだらない、しかし「良く撮った」と持ち上げるようなインタビューは減ったように思えますが、やっぱり「素人スクープ合戦」を煽ってることには変わりないです。

ま、メディアは撮影のために何人逃げ遅れようと、何の責任も無いですからね。

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