☆再掲載☆大火災編04【首都圏直下型地震を生き残れ!14/54】
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今回も、「関東大震災」の大火災で起きたことを考えます。
前回記事で「火災旋風」の脅威について述べましたが、「関東大震災」による火災で、どれだけ火災旋風が発生したかを見てみましょう。
黄色い△が、火災旋風が観測された場所、ピンク色の△が、巨大な火災旋風が発生した場所、そのうち、白線で囲んだピンク色の△が、約4万人が焼死した本所区(当時)の陸軍被服廠跡地です。上図のように焼失地域のほぼ全域で「火災旋風」が発生し、猛烈な勢いで火災を延焼させて行ったのです。大火災下では、決して特殊な現象でなかったことがわかります。
当時の東京は、現在の建物より耐火性がはるかに低い、木造家屋の密集地が多かったという理由もありますが、現在でも当時とあまり条件が変わらない地域も存在しますし、一方で、当時よりも街区の範囲がはるかに広くなっています。場所や条件が違っても、一旦大火災が発生してしまえば「火災旋風」に襲われる危険が大きいことは、今も昔も同じなのです。
上図の中央上部に黒枠の緑色で着色した部分がありますが、実はその区域は、周りをすべて焼かれながらも、ほぼ全面的に焼け残りました。そこは神田和泉町で、秋葉原駅のすぐ東側に当たります。この町は、何故焼け残ったのでしょうか。そこには、興味深い事実が見られます。
基本的には、町の住民による必死の努力によって、この場所が守られました。住民が協力し合い、手押しポンプやバケツリレーで延焼防止活動を続けた結果、火の猛威を押し戻したのです。そしてそこには、幸運とも言うべき理由もありました。その理由をまとめてみます。
■住民が協力して消火活動を行う体制ができており、活動を仕切るリーダーと組織が存在した。
■比較的耐震性、耐火性の高い建物が集まっていた。
■近くに神田川が流れており、消火用水が常時確保できていた。
■周囲が同時に火に囲まれることが無く、常に避難路が確保されていた。このため、一旦避難した住民が後で町に戻り、残った住民と交代しながら消火活動を継続できた。
■20時間以上経過後、住民が疲弊し切った段階でガソリンエンジンポンプが入手でき、放水能力が格段に向上した。
なお、上図の肌色の部分は震災当日の9月1日、ピンク色の部分は翌9月2日に延焼した部分で、町が同時に火に囲まれなかったことがわかります。でも、もし火が多方面から迫っていたら、人力だけの消火では延焼を食い止めることはできなかったでしょう。町の境界のすぐ外側は、すべて焼け落ちているのです。そこで、狭い道路を境に火が止まった理由は、何だったのでしょうか。
それは、住民の延焼防止活動が、結果的に「風を変えた」からだと考えられます。周囲から飛んでくる火の粉による発火は、小さなうちに消し止められました。そして、建物に火がつきずらいように、バケツリレーで水がかけ続けられました。その効果で、「温度が下がった」のです。
当時の火災周辺部では、火災の熱によって気温が40℃を越えていたことが記録されています。その中で建物に水をかけ続けたことで、蒸発する水が周囲の空気から気化熱を奪って冷却し、町内の気温を下げたのです。これは夏の打ち水が、周辺の気温を下げるのと同じ効果です。
その結果、風が変わりました。温度が下がった町と周辺の火災現場の温度差が大きくなるほど、周囲から町へ向かって吹く風が止まり、逆向きの風、つまり町から火災へ向かって吹く風に変わったのです。上図を見ても、延焼方向を示す矢印が町の境界でぐるりとUターンしたり、町を避けるように延焼しているのがわかります。
当時の住民がその効果を狙ったのかどうかは定かではありませんが、とにかく住民の必死の努力が風を変え、町を救ったのは確かだと言えます。
とはいえ管理人は、大火災が迫ったら、必ず踏みとどまって消火活動をすべきだ、と言っているわけではありません。火が迫りそうになったら、速やかに避難するのが基本です。しかし、機材や人員、そして水利が確保されている状況ならば、自らの頭上や建物に水をまくことで、火災が延焼して来るのを食い止められる可能性があることは知っておくべきでしょう。これはある意味で、火を目の前にした「最後の手段」でもあります。
「関東大震災」の大火災では、あまりの規模の大きさのために、各地で行われたであろう必死の消火活動によっても、火災の最盛期にはほとんど火を食い止めることができませんでした。しかし、この神田和泉町の例のように、完敗でもありませんでした。そしてそこから、ギリギリの状況の中で「生き残る」ためのヒントを見いだすことができるのです。
何より、とてつもなく困難な状況に置かれても、「最後まであきらめない」気持ちと行動が町を救い、多くの命を救ったのだと言えるでしょう。
次回からは、現在想定される大火災から「生き残る」、具体的な方法を考えます。
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